目覚めたら某有名ゲームの悪役だったけど、正直言って困るんだが 作:プルスサウンド
バーに色がつくの早い…早くない?
やっぱ皆バイオ好きなんすねぇ
ウェスカーおじさんって水回りの掃除を始めたら何時間もやってそう。
趣味がフットボールと戦史研究だそうですが、戦史研究してるうちに兵器って美しい…となって、最終的にタイラントは兵器として美しい!となってそうな感じある(個人的な推測)
大艦巨砲主義(ロマン)の生物兵器版か?
もはやおじさんと幼女の日常回です。
翌朝、アリエルにテレビを見せながら、お留守番を頼むことにした。
「アリエルが外に出かけるために必要な物を買ってくるから、お留守番は頼んだよ。ここにピーナッツバターサンド置いとくから」
「……」
「ダメだ…テレビに魂を奪われている……」
昼間にテレビを見たのはかなり久しぶりらしく、アリエルはキッズ向け番組にかじりついてしまった。こちらのことはガン無視である。
まあ訪問者が来ても外から見られないようにカーテン閉めて、リビングのドアに注意の紙を貼って、玄関前の廊下を棚で塞げば良いか。
というか小さい子を一人で留守番させているのがバレたら普通に虐待扱いなのでヤバい。絶対に外から分からないようにしないとな。
「じゃ、留守番よろしく」
下は洗濯した自分のズボンをはいて、上は家主の服を借りてまずは服の量販店に出発。
「着て帰ります」
ロストバゲージ…つまり空港でのトラブルにより、預けたトランクがどっかに行ってしまうのは良くあること。遠方からこの街に住む弟の家にやってきた男を装い、それを笑い話にしながら買った服のタグを切ってもらう。
ウェスカーって言うと黒っぽいので、真っ黒は避けて紺やグレーをチョイス。グラサンの代わりに濃いめの色眼鏡を買って、ようやく日差しの眩しさを防ぐことができた。
後はデカいスーパーで野菜などの生鮮食品や冷凍食材、保冷バッグを始めとする雑貨類を買い、ホームセンターを2つ回って石灰とスコップ2本、ブルーシートを購入。
帰宅したら家主の服に着替え、石灰とスコップ以外を置いて、車庫に放置していた家主をシートで包んで積み込み、山に埋めに行く。
全てが終えて帰宅する頃には夕方になっていた。
しかし家の中のことはまだ終わらない。
アリエルにオヤツを投げて、シャワーを浴びたらゴミだらけの室内やら水回りの掃除やらに取り掛かる。一度気になり始めるとどうにも止め時が分からず、腹を空かせたアリエルに止められてようやく夕飯になった。
「凄い!マダオおじさんってご飯を作れるんだ!お父さんは作れないのに!」
「私はマダオの中でも優秀な方だからな」
面倒だからって時短メシにしたのに無限に褒められてしまった。将来は人を育てるのがめちゃくちゃ上手い大人になりそう。
冷凍野菜とベーコンと芋を卵液で焼いて固めただけのスパニッシュオムレツと、キャンベルのミネストローネ缶の味をちょっと調えたやつに、焼いたパン出しただけなのに……野菜うめぇ。
「アリエルの靴を買ってきたから、明日は公園とビデオショップに行こうか」
「ほんと!?」
「何でも借りて良い」
「何でも?」
「何でも」
時代を感じる古いパソコンで調べてみたら、ポケモンはまだこっちじゃギリギリ放送していない様子だった。自分も視たかったので残念。
スポンジボブも放送前だし。
トトロはビデオが出てる…ディズニーや普通の映画も借りよう。
あ……そういえばさっき見たの日本語のサイトなのに読めたな。
そうか、日本語能力を失っていなかったのか。嬉しい。
「公園いくならピクニックしたい!」
「8月だから暑いぞ」
「テレビで見た!ピクニックしたい!」
「しょせんマダオに拒否権などなかった」
本屋にも行きたい。バイオハザード始まったら引きこもる必要があるし、ガソリン発電機をレンタルした方が…いや、音がデカいと不味いだろうし止めとくか。
バッテリーを用意しようか。日本みたいに嫌な暑さじゃないが、アリエルもウェスカー氏も人種からして北方の人間なので空調が使えなくなるのはよろしくない。
ちなみにウェスカー氏のような、大人になっても金髪と分かるくらいに色が薄いのは珍しかったりする。青い目もそうで、成長すると色が濃くなるのだ。こういう部分を見るとキャラデザだなぁ…としみじみしてしまうのであった。
「そろそろ寝るぞー」
「はーい」
「どこの部屋で寝たい?」
狂喜乱舞するアリエルを寝かしつけるのに一時間かかった。つら。
翌日、プロレス(意味深)について「本当は大人同士でやるものだから、子どもとやってはいけなかった。お父さんが警察に捕まってしまうから、外では黙っていてあげよう」と言い含め、公園に連れて行った。
昨日のうちに髪と眉をアリエルの濃い茶髪と近い色に染めてあるし、前髪が邪魔なのを我慢してオールバックをやめているので、子連れの自分をアルバート・ウェスカーだと分かる者などおるまい。わはは。
8月の日差しを遮る帽子を被せ、日焼け止めを塗って放したら、目の届く範囲の芝生で犬みたいにボールを追いかけ回していたアリエルだが、運動不足のせいで早々にへばって木陰のあるベンチに戻ってきた。
「おじさん何してるの?」
「本を読んでいる。本当は日陰でも太陽光で読むと目に悪いが、私は頑丈なのでセーフ。タブンネ」
「何の本?私は魔法使いの男の子の本が好き」
「アレはベストセラーだもんな。私の本はあれだ…戦いの本だよ」
本屋で見かけた火葬戦記モノが面白そうで、つい買ってしまったのだ。もちろん普通の仮想戦記の方も買った。
何かこういうの、各部隊の動きとか戦況の流れを史実と比較すると面白いな。この手の本をもう少し買っておくか。
「そろそろ昼にしようか」
「わーい!おべんと!」
「ただのホットドッグと、朝の残りのコールスローサラダだぞ」
「コーンが好き!」
「ほら、手を拭く。今朝みたいにコーンだけほじくりだして食べたらデザートは出さない。断固として」
「そんなー…」
パンケーキミックスをぺらっぺらに焼いたやつに、ゼラチン入り生クリームと冷凍フルーツ混ぜたのを巻いただけのブツなんだが…そこまで執着せんでも……。
まあ、こちらのケーキはバタークリームが主流だから、ホイップクリームが珍しいのかもしれない。今朝ちょっと味見に与えたら中毒患者みたいになってたもんな。
「……クリーム甘いのにチョコソース掛けるとか正気じゃないぞ」
「おじさん甘いの苦手なの?」
「ほどほどが好き」
生クリームの味見をさせた時点でかなり甘めに作らされたのだが、アリエルはチョコソースを持って行くと言ってゆずらなかったのだ。
純粋なアメリカ人の味覚って怖い。
アイスコーヒー持ってきて助かった。
その後、少し買い物をしてからレンタルショップでビデオを借りて帰宅したが、走り回って疲れたのかアリエルはソファーで撃沈した。
子どもって本当に電池が切れたみたいに寝るのな。ウケる。
と、まあこのような感じで何日か過ごしたが、一向にバイオハザードが始まる気配がない。
しまいには近所の人に自分とアリエルの存在を気付かれてしまったので、仕方なく「自分はアルフレッドの従兄だ。夢を追いかけてNYに行った彼に家を任されたので、娘と暮らしながら管理している。妻を亡くしたが、日本語の翻訳で生計を立てている在宅ワーカーなので問題ない」と言い訳をするはめになった。
アリエルは虚弱気味だから自宅学習をしている子、という設定だ。
「アメリカ人なんでホームパーティーこんな好きなん?」
「おじさ…パパはパーティー嫌い?」
「頻度がつらい。あと、家の中なら設定を守らんでも良いぞ」
「明日、間違えないようにしてるの!」
だから怪しまれないように近所付き合いを全て切るわけにもいかず、たまにホームパーティーやバーベキューに参加させられるわけだ。しかも季節は夏だから、みんな余計にそういうことをしたくなるらしい。
で、まだ1998年の設備というのもあるが、肉の焼き方がクッッッソ下手なご近所さんに捕まるともう地獄。
マジでステーキが靴底みたいな固さなのは勘弁して欲しかった。ダディクールやめろ。
でもこういう所で「私は肉を焼くのが得意でーす」とか言ったらメイン労働者にさせられる可能性もあるので、黙って靴底を食べる。次回は肉を普通に焼けるご近所さんが呼んでくれないかな、とか思いながら食べる。超人の顎ってこういう使い方するためにあったのか…って気分になるね。
もちろんアリエルはソーセージを食べていた。
挽き肉は偉大だ。誰が焼いても固くならない。
「夕飯はクラムチャウダーが良い!」
「先生、アサリの缶詰がもうないです」
「白いクラムチャウダー食べたい!」
「やはりマダオに拒否権などなかった」
「デザートはチョコのアイス!」
買い物に行くからと冷凍庫に無い味のアイスを要求するとか、アリエルは賢いなぁ…(棒読み)
そろそろ8月も終わりに差し掛かっていた。
・ご飯めっちゃ作るやん。
→缶のスープ開けて火を入れながら、ちょっと材料切って卵と混ぜて焼くだけなら時短だと思ってる人。
・めっちゃ面倒みてるやん。
→ウェスカー氏ご本人に息子が居るって分かってたら、予定を変えて迎えに行くタイプだったりする。
・生クリームにゼラチン?
向こうの生クリーム、乳脂肪が足りないのでゆるくなってしまうようで、ホイップ食べたい人々が使う対策としてゼラチンを混ぜる手法があるんだとか。大変だなぁ。
■おじさんと幼女
バイオハザードは夏なのに、今の季節が冬で体感が寒いから長袖になってしまった。筋肉はあるのに肥満な家主の服を拝借してるので、筋肉が目立たないおじさん。
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