目覚めたら某有名ゲームの悪役だったけど、正直言って困るんだが   作:プルスサウンド

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サムライエッジが感想欄でガバトンエッジ扱いされてるの、おハーブもりもり生えてしまった。
でもあそこでガバトンエッジしなくても、おじさんのチャート的には自白不可避なんで、あまり問題ないです。イベント前倒しみたいなもんなんで(震え声)




爆発オチなんてサイテー!

 

 

 

「しんみりしてるところ悪いんだが、少し良いか?」

「何かあったのか?」

「ちょっとな」

 

 扉を開けてひょっこりと顔を出したタイレル氏は、そのまま入ってくると適当な椅子にどっかり座り込んだ。疲れてはいるが、達成感がにじみ出た表情だ。

 

「実はな、やっと交渉がまとまった」

「本当か!」

「交渉って?」

 

 あ、そういえばジルさんは滅菌作戦のことをまだ知らないはずだから説明しないと。

 実はですね、かくかくしかじかまるまるうまうま、というわけでして。

 

「そういう事はできれば先に知りたかったわ…なんなら叩き起こしてくれても良かったのに」

「いや、ジルさんかなり顔色も良くなかったし、栄養点滴してようやく今の顔色に戻ったくらいだから、無理はさせられないって話になって」

「そんで交渉はタイレルに任せきりにして、俺たちは仮眠とってたからな…悪かった」

「地下を駆けずり回ってたお前らよりは疲れてないさ」

 

 現在、9月30日の24時近く。

 滅菌作戦の実行が早朝らしいので、あと数時間はあると言ったところか。

 

「で、ウイルス汚染を食い止めなきゃならん事もあるせいか、残念ながらミサイルによる消毒はどうしても避けられない。核を落とすってんでこの街は軍が封鎖してるし、ストーン・ヴィルをはじめとする近隣の街でも避難が始まってるそうだ」

「確かに山と森に囲まれた土地はそれだけ生物が多いし、ウイルスも広まりやすいだろうな」

「分かってはいたが、おっそろしい雇い主様だよ全く」

「まだ生存者は居るはずなのに…」

 

 タイレル氏が部屋の天井近くに設置されたテレビの電源を入れる。通常の放送は停止し、待機画面のまま音声だけが避難勧告を繰り返していた。これは試験放送ではありませんという念押しまでされている。

 

「ただな、交渉の結果として猶予ができた。俺たちが街を封鎖している軍の拠点にワクチンの現品を届ければ、それだけで街の寿命が6時間は伸びる。そして携帯できる形でワクチンを配備できれば、救助作戦が決行されるかもしれない」

「なら早く届けないと!」

「そこまで焦らんでも大丈夫だ。向こうも準備がある。幸いにもナサニエル式ワクチン培養法の論文は業界じゃ有名らしくてな。希釈液や必要機材は、H.C.F.やらトライセルやら(その他の製薬企業)が速達でデリバリーしてくれるそうだ」

「アンブレラは何もしないつもりかしら」

「雇い主の動向に関しては、もう連絡も途切れてるから分からん。ただ、俺が交渉していた相手は反アンブレラ派閥だ。つまりアンブレラの商売敵というわけで、そりゃ積極的にもなるだろうよ」

 

 わあ、トライセルってバイオ5に出てくるヤバい企業じゃん。

 まさかこのタイミングで名前を聞くとは思わなかった。今のところはタイレル氏の言うとおり、アンブレラを袋叩きにできるのと、シェア奪取のための宣伝も兼ねて動いてるんだろうが。

 

「ジルも起きたし、みんな体調に問題は無いな?」

「ああ」

「もちろんよ」

「私もこの子も問題ない」

 

 というわけで、病院の屋上に残してきたヘリに乗り込み、街の手前で道路を塞いでいる軍隊まで濃縮ワクチンを届け、そのまま街から脱出することになりまして。

 

 ヘリの運転は今回もカルロス氏。もちろんワクチンは、頑丈そうなタイレル氏のベストに捩じ込まれている。というか自分が捩じ込んだ。

 そしてジルさんはアンブレラ関連の資料をガッチリ握り締め、自分はぐんにゃり寝ているアリエルを抱き上げた……ら、流石に起きた。

 

「おはよ?」

「…おはよう。具合は?」

「へいき」

「良かった」

 

 やはりこうして、きちんと目覚めている姿を見ると安心する。ぬくい体をわしっと抱き締めていると、背中をバシバシ叩かれた。

 

「おじさん…なんか臭いよ?」

「あ、すみません」

 

 丸一日駆け回っていたので言い訳のしようが無いです。そしてみんな苦笑い。

 でも自覚してしまうとお風呂に入りたい。ものすごく入りたい。そして湯船でふやけた後に柔らかめの布団で寝たい。枕は固めで。

 

「やっとお目覚めね」

「お姉さんたち、誰?」

 

 そういえば、ずっと寝てるか熱でぼんやりしていたアリエルからすれば、いつの間にか知らない場所で知らない大人に囲まれているようなものか。

 

 この後めちゃくちゃお互いに自己紹介していた。

 

 

 

 

 

 その後に語ることはあまり無い。

 なんてことはなく、山ほどあった。

 

 企業から派遣された医療スタッフと軍が待つポイントにワクチンを配達した我々は、それはもう丁寧に扱われた。なんせウイルス汚染地域の真っ只中から出てきたわけで、ワクチンを打っていないメンバーは念のために打たれてから、消毒液でびちょびちょにされた後、隔離されることとなったのだ。

 アンブレラ側の者に手を出されると困るという、反アンブレラ側の思惑もあったのだろう。普通の脱出者ならワクチン&消毒した後に後方の隔離施設へ輸送されるところだが、我々は前線基地と化したここで待機するように指示された。

 

 まあ、別にやる事はなにもないから気楽なものだ。強いて言うならプロ集団の邪魔をしないように、待機そのものがやるべき事か。

 傭兵の二人は緊張が切れて死んだように眠っているが、まとまった睡眠が取れていたジルさんとアリエル、体力お化けの自分は起きたままだった。

 

 ちなみに現在、軽い診察をしてくれた年配の医療スタッフからチョコバーをせしめたアリエルは満足そうにそれをかじっている。

 ジルさんへの好感度は高いらしく、歯が溶けそうなほどに甘い銘柄のそれを半分ほど差し出していた。

 二人とも良く水無しで食べられるな。

 

「おじさんには分けてあげなくて良いのかしら?」

「甘いのが苦手だから大丈夫だもんね!」

「それを食べたら私は歯から溶けて死にますね!全身が儚く溶けて死にますね!」

「ほらね!」

「死に方がむごいわね」

 

 溶死はまぬがれた。

 

 

 

 近くにある、無人になったスタンドから緊急徴用されたガソリンを飲んだ発電機が、バリバリと元気な音を立てている。いくつものサーチライトが夜の奥まで貫くように照らしている中を、兵やスタッフがてきぱきと動いていた。

 街の水道が汚染されているため、人員や物資を積んだトラックだけでなく、給水車も何度か行き来している。夜中とは思えないほど騒がしい。

 

 バイオハザードが始まってもう数日になる。避難勧告の放送にワクチン情報が追加されたものの、やはり軍が思っているより自力で脱出できる人は少なかったようだ。自分が見ている間、自力でここまで辿り着けた者は二桁に届かなかった。

 

 救出部隊は希釈ずみのワクチンを携えて、とっくに出発している。

 街中は厳しいだろうが、住宅が建ち並ぶだけの郊外ならば生きた人間がまだ籠城しているかもしれないと、有志で向かった先発隊の成果が後押したというのもあった。

 こちらから"化け物"に関する詳しい情報を得ていた事もあり、彼らは自分たちに数名の犠牲と感染者を出しながらも民間人の集団を保護し、生還して見せた。感染者は兵を含め全員がワクチンでどうにかなったとのこと。

 

 しばらくすると街の方からバリバリと音を立てて現れ、降り立つヘリ。慌てた様子でワクチンと消毒薬の噴霧器を構えて駆け寄る医療スタッフに、護衛の兵。

 珍しい。自力で脱出してきた人々のようだ。

 しかもヘリで。

 

「エマ!!エマ!!!」

「大丈夫ですからお父さんは離れてください!貴方もワクチンを!」

「落ち着けロバート!」

 

 降りてきたのは武装した年配の男が二人と少女が一人。

 大人と違い少女はしっかり症状が出ているようで、医療スタッフに群がられて濃いめのワクチンを投与されている様子だった。

 しかし父親の方はどっかで見たような。

 

「ロバート?…それにバリー!」

 

 あー!!!ガンショップの人ォ!!!

 ジルさんがバリーと呼んだなら、もう片方はバリー・バートン氏ということか。

 はえー…もしやこれ原作のイベントだったりする?

 

 ロバート氏はそのまま娘さんが搬送されたテントについていき、残されたバリー氏に駆け寄ったジルさんは再会を喜んでいる。

 

「あの人、ジルお姉さんのお友達かな?」

「だろうね」

「さっきの子は大丈夫かなぁ」

「お医者さんが頑張ってくれるよ」

 

 バリー氏がこちらをチラリと見て…あ、二度見した。

 あっあっあっこっち来た。顔怖い。めっさ顔怖い。アリエルも彼の顔が怖いのか、背中に回ってしがみついている。わかるマーン。

 

「バリーだ」

「あ、アルフです」

 

 握手に応じたところ、凄い力で手を握られた。

 普通の人なら手が潰れるやーつ。

 

「バリー…彼は、私の命の恩人の一人よ」

「ああ。しかし驚くほど似ているな」

「きちんと理由もあるの。後でしっかり説明させて」

「分かった」

 

 わーい!当然だけど当たりが強い。

 いやぁ、ジルさん以外のスターズメンバーにエンカウントするの怖いな!とづまりしたい!

 

 バリー氏はしばらくジルさんと話していたが、やがてケンド親子の付き添いとして後送された。

 彼と再会するのはかなり後の事になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 爆心地から遠かったものだから、音もなく光が空を裂き開いたように見えた。しかし次の瞬間には、まっすぐな道の先にある街の上に生えた、大きなキノコの雲。

 衝撃波は減衰されているはずなのに軍用の車両を揺らし、やがて発せられた爆風は音に遅れて届く。

 

「あ、ラクーンくんのぬいぐるみ…置いてきちゃった…」

「また買おうか。他のぬいぐるみになるかもしれないけど」

「…うん」

 

 

 

 しがみついてくるアリエルと共に、窓越しに全てが消えるのを見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 




 
次がエンディング的なアレ(を予定)ですが、後日談と称してまだまだ書きますゆえ。



・おじさん
トライセルは覚えてたけど、H.C.F.(ウェスカー氏の転職先)は全く覚えていなかった人。
儚いので大量の砂糖をぶつけると死ぬ。



■原作キャラ一部生存のリスト

●タイレル・パトリック
→おじさん乱入による予定変更で、ネメシスとの遭遇イベントがキャンセルされたため。

●ロバート・ケンド&エマ・ケンド(DLC参考)
→避難勧告にワクチン情報が追加されていたことと、バリー・バートンによる救助連絡が比較的早かったことが理由。

●マービン・ブラナー
→おじさんの乱入によるイベントの微妙な時間変更と、カルロス・オリヴェイラによるゾンビと化したブラッドへの射撃成功が理由。
その後、本人の尽力によりRE2を主人公と共に生き延びた。

●名も無きラクーン市民
→ワクチンの存在に加え、反アンブレラ派閥の指示と尽力により、原作にない救出作戦が決行されたため。
後に、アンブレラに対し集団訴訟を起こす。






※1週間くらい所用でガチ多忙になりもうす。



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