目覚めたら某有名ゲームの悪役だったけど、正直言って困るんだが   作:プルスサウンド

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我ながらトンチキな二次創作だな、と思います。
自分が楽しいから良いんですがね、なんだか珍味しか出さない店みたいになってる気がしますわ。
良く噛んで食べて下さい。

良くわからんやろなってとこは後書きに解説()を書いておきました。




あーもうめちゃくちゃだよ…(絶望)

 

 

 

 あ、これは落ちた衝撃で頭部の機械が壊れたな。

 

 

 

 「ア"ァ"ア"ァ"ア"ア"ア"ア"ァ"!!!!!」

 

 

 

 赤いぶよぶよがはみ出た肉塊みたいな頭を振り回し、ネメシスが叫びを上げていた。それは先ほどとは違う声色で、まるで産声みたいだと思ってしまったのは何故だろうか。

 叫びでビリビリと震える空気は物理的な攻撃である衝撃波のみならず、頭に痛みが染み入るような、わずかに痺れる何かをもたらした。ああ、意思だ。これは意思。意識。

 やがて意思の音が、象を結び、自分の中で言語に変換される。

 

 

 

「……たい、しょく?」

 

 

 

 え、なんだこれ。

 退職します!って意志が脳に直接響いてくる。

 いや何で?

 

 「ア"ア"ァ"ア"ァ"ア"ァ"ア"ァ"!!!」

 

《退職したい》

 

「も、もしやお前か…?」

 

《退職する》

 

 ネメシスだ。ネメシスからテレパシーのように退職を望む意志が伝わってくる。何でか分からんが、制御装置的なアレが壊れたせいだろうか、退職するという強い意志が伝わってきた。

 

《転職でも良い》

 

 転職でも良いそうです。

 

《お前も私の退職に協力しろ》

 

「…あ?」

 

 体の自由が効かない。脳幹辺りから脊髄にかけて、痺れるような感覚。視界の端にチラチラと、何やらうごめくものがあしらわれているようにも感じる。これがテレパシーなのか…?

 

 いや、シンクロだ。意識の同調。

 視界が本格的に歪む。立ち尽くす自分の姿が見える。

 

 私が見える。違う、私じゃなくてネメシスだ。男を通して獣のように四肢で立つ私の姿が見える。男の姿が見える。(ネメシス)の目を通して(自分)の姿が違う、自分は、

 

 

 

 そうか。なるほど、このままでは未来など無いのだ。

 

 

 

《「私は退職する(ァ"ア"ァ"ア"ァ"ア")」》

 

 

 

 

 

 そこに言語はなかった。意志があった。

 ウイルスは2つの生命体を互いに参照させた。お互い異なる方向への変異は進んでいるが、同じ「始祖」の系譜であるからして、難しいことではなかった。

 

 別にウイルスが電波を発して通信しているだとか、知られざる力を使って何かをしているだとか、そういう不可思議なことではない。

 ウイルスに意思など無い。意識など無いのだから、つまりただの機能に過ぎない。

 

 しかし例えばそれは、深い共感=模倣と良く似ていた。

 

 誰かが転んだのを見た時に、可哀想だと思う人がいる。

 誰かが転んだのを見た時に、痛いだろうな、と思う人がいる。

 誰かが転んだのを見た時に、別に可哀想だとは思わなくても、見ているだけで自分の膝まで痛く感じる人がいる。

 

 だから誰かがブラック企業から退職したいと思った時に「せやな」と深く頷く人がいるのは不思議なことではない。

 

 そして誰かが生物兵器を辞めて、生きていたいと思った時に「それな」と深く頷く人がいるのも、おかしなことではない。

 

 ゆえに誰かが自分の立場に疑問を持った時に「わかる」と深く頷く人がいることは、あり得なくはないのだ。

 

 優しさだとか思いやりだとか、そういうものではなく、生き物の機能としての共感/模倣だ。ニューロンの精緻な塊によるシミュレーションを利用した機能。情報の共有方法のひとつだった。

 

 状況を読み取る機能の極致。それをウイルスという極小の、生き物であるかも疑問視されるような存在が行うならば、つまりウイルス自体が宿主の細胞を利用して、鏡合わせのように変化し、情報(退職希望)を伝達する役割を果たす。

 

 私は自分であり、自分は私である。

 だからわたしは

 

 いや、これ以上は必要あるまい。

 つまり乱暴に言い表すならば、それはウイルスの伝言ゲームで行われる情報(退職希望)の共有に過ぎなかったのだ。

 そしてこの仕組みが誰かに理解される必要もない。

 

 結局のところ、自分(わたし)は退職するのだから。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 カルロス・オリヴェイラは、その光景を信じられない気持ちで見ていた。

 

 あの怪物を相手に、スコップでやりあっていた時点で男を特別(異常)だとは思っていたが、危険だと思っていなかった。しかし今は違う。

 ネメシスと相対する彼の両方から、同質の気配を感じ取っていた。

 

「アルフ!?どうしたアルフレッド!!!」

「何が起きている?」

 

 戦闘を撮影していたニコライが、思わずと言った様子で特殊な処理を施された強化ガラスの窓に近づく。

 

「ヒッ」

 

 とたんに2対の瞳が彼を射抜いた。

 赤く、昏い光を灯す4つの眼球。

 ヒトを起源にしながらヒトならざる者へ変貌した何か。

 

 

 

 「ア"ァ"ア"ア"アア"ア"ァ"(たいしょくさせろ)ア"ァ"!!!!」

 

 

 

 ガラスにヒビが入った。

 ネメシスがコントロールルームの窓のすぐ外に飛び付いたのだ。ガツン、ガツンと二回ほど叩かれただけで、透明な壁は砕け落ちる。

 いや、二回も持ったのだから健闘したのだろう。

 

「何故だ!何故こっちに来る!」

「知るか!お前も撃て!」

 

 電灯が割れて薄暗くなった室内に、マズルフラッシュがまたたく。弾丸はネメシスの肉に食い込んだが、小さな鉛の礫など彼には些細なものだった。

 

「ぐぁっ!!!」

 

 それでもめげることなく、迫るネメシスに向かって鉛玉の雨を降らせる二人。しかし横から何かが飛びかかり、カルロスを地面に叩き付けた。

 

 男だ。彼はネメシスの背に取りついて、ここまで共にやってきたのだ。そして赤く灯る目でカルロスを見下ろしていた。意思の見えない凪いだ顔だった。

 

 表情筋が見事に死んでいる。

 その癖に目だけは力強く、まるで性犯罪者の同級生(クマ)を疑う名探偵(ウサギ)のように、瞳孔は引き絞られていた。

 お前の目こわっ。

 

「アルフお前」

「妨害は止めて欲しい」

「は?」

「カルロス・オリヴェイラは対象外だから問題ない」

「何言ってるんだ…」

「最優先課題は退職。対象はニコライ・ジノビエフだ」

「やめろ!!!」

 

 構えていた小銃を凄まじい力で奪い取られ、部屋の隅に投げ捨てられる。そしてカルロス自身も小銃とは反対側に投げられた。わりと優しい投げ方だった。

 

「来るな!止めろ来るんじゃない!!病院に行け!スターズの女は病院だ!!!」

 

 一方、ニコライはありったけの銃弾でネメシスに対抗していた。しかし相手は幾度となく命の危機から生還して見せた不死身のネメシスだ。火力の高い攻撃は確かに怯ませることができたが、それでもじわりじわりと追い詰められている。

 

「スターズはもう、どうでも良いんだ」

 

 そんなニコライに近寄る男は、まるでダ○ソーの店員から全ての気力を抜いたような顔で語りかけた。そこに無ければ無いですね、と言わんばかりの声色だった。

 

「とりあえず、そんなことより退職届を受理してくれ。と私は言っている」

「おいカルロスこのキチ○イは何なんだ!!!」

「お前がアルフに何かしたんじゃないだろうな!」

「知るかァ!!!」

「私は私の口が発話に適していないことを知っている。だから自分の口を使ってニコライ・ジノビエフにコミュニケーションを取っている。回答をどうぞ」

 

 ネメシスがニコライの前に立ち塞がった。

 もはや逃げ場はない。

 

《「私、すなわち通称:ネメシスは、アンブレラ社からの退職を希望している」》

 

「まさか操られているのか!!!」

「退職って何だ!!!」

 

 状況はカオスだった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 ニコライ某が退職に頷いてくれない。

 

 何故だろうか。ワクチンさえ確保できれは、スターズの女(ジル・バレンタイン)はウイルスで死ぬのだから、(じぶん)の任務は果たされたようなものなのに。

 しかし自分(わたし)はそれがとても嫌なようで、カルロス・オリヴェイラからワクチンを奪いはしなかった。まあ(じぶん)としても任務達成より退職を優先したいところなので、そこで自分(わたし)と争う必要性は感じないから構わないが。

 

 ちなみに、ニコライ某を殺して勝手に退職するという案もあった。しかし彼を殺害した場合、再就職に支障をきたす恐れがあるので保留している。

 彼にはきちんと(じぶん)が退職する旨を本社に持ち帰ってもらわなければならないのだから。過去の自分(わたし)のように産業スパイ行為をたくらみ、無断で退職するのは良くないだろう。

 

「お前が退職できるわけないだろ!いい加減にしろ!」

 

 ニコライ某が閃光手榴弾を投げる。

 眩しくてつらいが、自分(わたし)を盾にすれば問題ない。

 

「目が!!目がァ"ア"ア"ア"ア"!!!」

 

 自分(わたし)は強い光に弱いようで、庇わせたのは良いがすっかり使い物にならなくなってしまった。

 ダメだこりゃ。

 

「ハァ"ア"ア"ア"ア"ア"!!!」

「俺だ!カルロスだ!正気に戻れバカ野郎!」

 

 目をやられて何もできないのか、突撃してきたカルロス・オリヴェイラに対し、目をつぶったままカマキリが威嚇する時のポーズでジリジリと距離を取っていく。

 

 積極的に攻撃しようとしないのは困るが、退職の邪魔にならないならそれで良い。肝心の発話する機能は利用できるのだ。

 

「退職!!!退職させろニコライ()()()ノフ!!!」

()()()エフだ!失礼なヤツめ!」

「アルフレッド!!お前はネメシスじゃないだろしっかりしろ!!!」

 

 状況は退職を求める我々、認めないニコライ某、自分(わたし)を解放しようとするカルロス・オリヴェイラの三つ巴と化していた。

 

「シャアアアア!!!シャアアアアアア!!!」

「知能まで溶かすな!!!」

 

 それに呼び掛けのせいか、(じぶん)自分(わたし)の同調が外れかかっている。面倒な。

 まあ良い。ニコライ某は追い詰めたのだから、後は退職を

 

 

 

「さっきから訳の分からないことを言いやがって!お前はそもそも社員じゃないだろう!!退職なんてできるかアホが!!!」

 

 

 

 「…ァ"ア"(なん)ァ"ア"(だと)…?」

 

 

 

 

 

 




 
・おじさん(カマキリのポーズ)
洗脳バトル敗北者。
原作の本人が使いこなしていた、ウイルスに強固な意思でアクセスして生物兵器を操作する能力なんか知らねぇのだ。
ネメシスくんにより逆伝いで精神を参照され、ついでにハッキングされた。所詮クソザコ精神じゃけぇ。

厳密にはTの適合者ではないが、まあ親戚みたいなもんでしょ同じ始祖系だし。



・とても賢いネメシスくん
素体の元になった大佐も、小説版でウェスカーおじさんとウイルス同調式メンタルバトルしてたから、原作より圧倒的に賢くなったネメシスくんもできるんじゃないか?って思った。
そしたらこうなった。

とても賢いのでおじさんよりT-ウイルス適合者の能力を使いこなしている。原作ではアクセスされる側だったが、ここではアクセスする側に。
頭の機械が壊れたから病院に突撃するのを止めて、ブラック企業から退職するためにおじさんを操ってストライキを起こしている悲しき悪役。



・カルロスくん
頭のすみでちょびっとだけ、おじさんをからかい過ぎたから仕返しされたのかとビビった。
何で洗脳されたのかは分からんが、たぶんウイルスのせいだろ。とは思ってる。



・ニコライくん
この中でいちばん正気の人。
命を刈り取る形をした退職届を突き付けられている。

この年齢のまま性格も変えずにTSしたら、ジルニコいっぱい生えてきそうだなって思ってる。最初は小娘と思ってるジルにマウント取るベテラン傭兵おばさんが、最終的にジルに「わからせ」されるジルニコいっぱい吸いたいぞ。傭兵生活を通して荒んだ価値観を破壊される依存百合。お金に一途な女を光属性強火の女が焼き尽くしてお金からNTR百合。
RE:3の最後もアレはジルニコ(今日の怪文書)



■おじさんとネメシスくん、結局マジでどないしたん?な解説
①まず何度もさらされる「苦痛」に対処するために、寄生生物と深く結び付いたネメシスくんに自我が芽生えます。これは「賢く対処しないと痛いままだし嫌だ!」という生物としての欲求によるものです。
②同時に「知識と思考」を求めたネメシスくんは、近くに居たウイルス的な親戚関係にあるおじさんから「ヒトの知識と思考(陰キャ型)」をダウンロードして、参考にしました。
③そしてスターズ殺害よりも自由を渇望します。つまり「退職」です。
④また、ネメシスくんの強固な「退職する(この立場から自由になりたい)」という意思におじさんが深く感化されました。
で、洗脳というか、同調による共闘が始まりました。



ミラーニューロンを元ネタにした共感的な同調(模倣)の仕組みに関しては、マジで独自設定を捩じ込んでます。こういうの考えるのが大好き。
公式はもっとなんかこう、ふわっとしてたような。ウイルスのちからってすげー!的な。
好みの仕組みを捩じ込める余地があって嬉しいな。


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