『master』
「ユエかい。何か現状に変化あった?」
『はい、線路上にて脱線事故が生じました。その調査に支援課が駆り出され、私も現場に向かっております』
「へぇ・・・・・・それでユエなりに気になるところでもあった?」
『はい。最近旧市街に住んでいるヴァルドと言う不良がいるんですが、その人物にクスリが渡ったという噂を耳にしまして。それに現場の様子が普通の脱線事故と違っているんです』
「そうか、ユエがおかしいって思うんだったらそれは違和感があるんだろうね。支援課に貼り付き現場の調査も実行し、ヴァルドとやらの動向も情報を得られたらいいね。・・・他に何かあるかい?」
『・・・・・・いいえ、今のところはありません。もし、事態が進展するようなことがあればお知らせいたします』
「そう?いつも言っているようにくれぐれも怪我だけはしないでね?」
『っ。勿論です。masterのお心遣いに感謝します、では・・・・・・』
変わらず、少し畏まったようなユエとの通信が切れた。その様子はいつまで経っても変わらないことに苦笑しながら郊外へ行き、そこからユエの気配を辿って転移を始めた。時間にして一秒未満のまばゆい光が立ち上り次の瞬間にはアドルの姿が消えていた。
現場にたどり着いた。そこは臨時のバスが行き交い、警備隊の連中が重々しく警備をしていた。そして線路側に支援課のロイドの姿も確認することができた。どうやら、お得意の推理でその場にいる責任者を唸らせているみたいだ。こちらも行動することにした。まずは・・・・・・。
「ユエ?」
「はい、master」
シュタッ・・・と言う軽快な音を立てて横に現れるユエ。
「こちらから質問するからわかった点を述べていって・・・・・・」
「はい、master」
佇まいを正して聞く姿勢を取るユエ。
「脱線事故と言えば落石の可能性がまず先に考えられますが、それに関してはどうです?」
「それは真っ先に否定できます。否定できる根拠として機関車先端の傷の少なさが挙げられます。落石の場合、先頭列車に当たって脱線するというのが考えられます。しかし、こちら側から見て奥の方向に押し付けたような跡を確認しました。それで落石という原因は排除することになりました」
「そっか・・・・・・。それでユエは何が原因だと思う?」
「まだ断言できませんが、ここまで押し付けて脱線させることができるパワーの持ち主から、大型の魔獣もしくは幻獣やその
「ふむ・・・・・・・・・」
俺が考えている間は、ユエも気を散らすことがないように直立不動の姿勢でいた。
「ユエの考えも尤もな考えの一つだ。良い点に着目できたじゃないか。褒美は何がいい?」
「あ、ありがとうございます。えっと、次の休日を一緒に過ごすことができたら他は何もいりません」
「そう?全くユエは形無いものが好きなんだから・・・・・・」
「わ、私にはmasterがいればそれだけで幸せなんです。胸の奥がホワホワって・・・・・・」
「分かった、分かった。じゃあ次の休日は一緒に時を過ごそう?」
「はいっ、嬉しいです!!」
「じゃあ、決定って事で。にしても、この現場には何かの怨念でも宿っているのかね?」
ユエを見てから視線をそらし、機関車のほうを見る。と、あまり聞いたことのない唸り声がそこらじゅうに響いた。
――ガルルルルゥゥゥゥ・・・・・・グルルルルォォォォォォ――
「っ、ユエ?」
「了解です、現場に直行します」
短い言葉で分かってくれるユエに感謝しつつも、支援課を視界に入れながらこれからの事を考えるアドルだった。どうやら、自分の理解していないところでも問題が発生しているようだったから。それにキーアがこれからどうなっていくのかも心配の要素になっていた。
「さてさて、これでハッピーエンドになってくれよ・・・?俺がバッドエンドを全部覚えているなんてきつすぎるからな・・・・・・」
新しく出た零の軌跡は最高です。フリーズしなければ・・・・・・。