――同日、13:00 マクダエル議長の開会の言葉で会議が始まる――。
「それではこれより『西ゼムリア通商会議』の本会議を開始いたします。議事進行は僭越ながら私、ヘンリー・マクダエルが行わせていただきます。会議は一度休憩を挟んで、約5時間を予定しております。ただし進行次第では多少の延長はありえますのでよろしくご了承ください」
粛々とした雰囲気の中、会議の進行が始まっていく。マクダエル議長の挨拶が続く。
「・・・・・・それと会議に際して2名のオブザーバーに参加してもらっています。イアン・グリムウッド弁護士。クロスベルのみならず周辺諸国で活躍している法律専門家です。国際法・慣習法にも通じているため本会議への参加を要請しました」
首脳で囲んでいるテーブルから少し離れた壁際に一つの机と椅子がおいてあり、そこにイアン弁護士が座っていた。そして挨拶のために立ち上がる。
「はじめまして。イアン・グリムウッドです。誠心誠意、務めさせていただきます」
「・・・遊撃士、アリオス・マクレイン。やはり周辺諸国で多大な功績を上げていることで知られています。遊撃士協会と言う中立的立場から本会議の安全を保証してもらうため、参加を要請しました」
ビルの窓際に立ち続けているアリオスが挨拶をする。
「アリオス・マクレインです。お見知りおきを」
「それでは早速ですが、各議案の検討に入りましょう」
「少し待っていただけないでしょうか?」
と、声を上げたのはリベール王国名代クローディア殿下。
「ええ、なんでしょうか?」
「万全を期するためにこちらから一人出してもよろしいでしょうか?」
「私は構いませんが、皆様の意見はどうでしょうか?」
ぐるりと見渡して、首脳らに声をかける。反対意見は無くもう一人呼ぶことになった。
「はい、大丈夫なようです。それは誰でしょう?」
「この会議だけの護衛の方なのですが、私たちが最も信頼する方です。どうぞ、“召喚”」
耳慣れない“召喚”と呟くと、
「どうも、アリオスの影から失礼します。リベール代表クローディア殿下の
「っ。ア、アドルさん・・・?」
同様を隠しきれないアリオスだった。周りの首脳の反応はそれとはちがったもののようだ。多分、アリオスがアドルに対して敬語であると言う点だろう。
「・・・少し会議の中断になりそうですが、このまま進めたいと思います。アドルさんはどうぞクローディア殿下の横に・・・・・・」
「ええ・・・」
『殿下やりすぎです。どうしていきなり私を会議の護衛に呼ばれるのですか?』
確かに直前の話し合いの時、“召喚”すれば傍に来ることができます。とは言ったものの会議に呼ばれるとは思ってもいなかったアドルだった。
『私、この会議中にとんでもないことが起こる予感がしてならないのです。それで先にアドルさんをお呼びしておこうかと思いました。ダメ・・・でしょうか?』
『・・・反対しているわけではありません。貴女がそう仰るのでしたら私はそれに従うだけのこと』
念話は人知れず行なわれ、ある時は殿下の暇つぶしの為に、ある時は真面目に相談するために用いられていた。
「提議者、ディーター・クロイス市長。説明と補足をお願いします」
マクダエル議長の横に座っている市長が声をあげる。
「は。まずお手元にある資料の最初にある議案ですが・・・・・・」
その会議の様子をガラス越しに見ているのは1階上から眺めている支援課の面々。
「始まりましたね・・・・・・」
「ああ・・・。それにしてもアリオスさんが呼ばれていることは聞いていたけど、イアン先生まで呼ばれているとはな」
「しかも“熊ヒゲ先生”の名前で知られているみたいですし」
「国際会議では、様々な合意や協定が交わされることがあるわ。その場合既存の国際法や、国際慣習法に照らし合わせて妥当かどうか判断する必要があるの」
「そのためのアドバイザーがあの熊ヒゲ先生っていうわけだね」
ノエル、ロイド、ティオ、エリィ、ワジが会議の冒頭に関する感想を述べる。
「しかし会議は小難しそうな内容だな」
「まあ、会議の内容に関しては我々が関与するところではない。この通商会議が無事に終わるか、それだけに集中しておけ」
「はい、心得ております」
「では手はずどおりに?」
「ああ、お前たちには34F、35F、36Fを一通り巡回してもらう。一応お前たちの身分は全関係者に伝えている状況だ。各国首脳のスタッフや招待されたマスコミなどにも話を聞いてみるといいだろう」
「分かりました!」
「では私は34Fに戻る。・・・
そうダドリーは支援課に告げるとエレベーターホールのほうへ歩いていく。
「やっぱりダドリーさんも何かあると思っているらしいな」
「ええ・・・・・・」
「これだけ怪しい動きがあって、何もしないのは不自然かと・・・」
ロイド、エリィ、ティオが話す。
「どうやら気合を入れて巡回する必要がありそうですね!」
「だな」
ノエルがはりきって声をだしそれにランディが応じる。
「それにしてもあの場にアドルがいるなんてなぁ・・・。みんなも驚いたんじゃないか?」
「それは・・・・・・」
「そうね・・・」
ロイドの問いにエリィとノエルが肯定する。
「アリオスのダンナも敬語だったな・・・。ひょっとしてアリオスの弱みを握っているとか?」
「いや、それよりもアリオスよりも強いと考えたほうがありそうな気がしないか?」
ランディ、ワジがそれぞれの意見を述べる。
「どっちにしろ、あの場でアドルが会議を覆すためにいるとは考えにくい。会議場は任せて俺たちは手はずどおりに巡回をしよう」
「分かったわ(ねぇ、アドルさん。クローディア殿下を見る目がいつもと違うよ?やっぱりクローディア殿下の事が好きなの・・・。ねぇ、分からないよ。私
「了解であります!(あぁ、アドルさんが近くて遠い・・・。あの時のデート忘れていないよ。私もフランもあなたの事が好きみたい・・・。この早まるだけの鼓動どうしてくれますか?)」
「ええ・・・(どうやらエリィさんとノエルさんはアドルさんに惹かれている様子。どうしてなんでしょうか。私にはまだその気持ちは分からないみたいです。ガイさん・・・。私はロイドさんを見ていればわかるでしょうか・・・?)」
「
「了解ッス(ハハ、罪作りなヤツめ。確定2人は毒牙にかけたか。こりゃあ面白くなってきたかもしれない。だが、赤い星座の事もあるし俺たちは気を抜けない。はむかうのが無理でも抵抗しないといけないな)」
エリィ、ノエル、フラン、シャーリィはアドルに恋心を抱いてます。誰とくっつくかはわかりませんが・・・。