「やれやれ、昨日はとんでもない目にあったぜ・・・・・・。もう、ベルの思惑にはひっかからないことにしたいものだ」
体のいたるところをさすりながらミシュラムにあるホテルのロビーを歩くアドル。昨晩はベルの策略に逢ってクローゼとユリアの恨みを買ってしまった。そのお詫びに高級店の指輪を買ったらどこ吹く風のように期限が治ったのはさすがに驚いた。数百万ミラが吹っ飛んだ・・・がね。
「さて、今日から本番だ。先にオルキス・タワーに行って護衛の準備でも始めようかな」
借りている小舟に乗って港湾区へ行き、行政区を通ってオルキス・タワーへとたどり着いた。荘厳な雰囲気を出しているタワーだが、アドルにとっては何か違和感を感じさせる建物であった。一階受付で身分を証明し、各階を探索しかなりの時間をかけて屋上に向かった。
「俺がテロリストだったら、屋上から攻めること間違いないからなぁ。ただでさえ、不穏な空気が漂っている中で
瞳を
「ロイド・・・・・・ってことは支援課?それと一緒にいるのは新市長なのかな?クロイス家の思惑がどうであれ今回の会議を利用しようと願っているのは確実。新市長のあの笑顔には裏がありそうだ。騙されないようにしないと・・・・・・」
「はは・・・。言葉も出ないな・・・」
アドルとは別の場所から地平線を眺めているロイドら。やはり傍には新市長もいた。
「ええ、そうね・・・」
「街がまるで
「いや~、夜はさぞかしすげぇ景色なんだろうな!」
エリィ、ティオ、ランディも言葉少なめに景色を眺めているようだ。
「ハハ、この場所はいずれ市民に展望台として開放しようと考えている。政府関係者だけが独占するのはあまりにも勿体無いからね」
「ああ、それはいいですね」
「ふふ、キーアちゃんもここに連れて来たいわね」
ロイド、エリィがディーター市長の言葉に賛成する。と、そこに電話がかかってきた。どうやら市長の気分転換する時間が無くなったようだ。
「・・・うむそうか、分かった。すぐにそちらに向かおう。どうやら首脳がタワーに着いたようだ。申し訳ないがこれで失礼するよ」
「そうですか。本当にありがとうございます」
「どうもです」
「いや~、マジ楽しかったッス」
「いい経験をさせて頂きました」
「はは、こちらこそいい気分転換になったよ。・・・それではまた後で。警備のほうは頑張ってくれたまえ」
ロイド、ティオ、ランディ、ノエルが感謝の言葉を告げる。ディーターも嬉しそうだ。
「はい、お任せ下さい」
「ま、推薦分ぐらいは頑張らせてもらおうかな」
「
ロイド、ワジ、エリィが続けて言う。
「私も祈っているよ」
そう言うと威厳ある堂々とした佇まいで歩いて行った。
「それじゃあ、俺たちもダドリーさんのところに行こうか」
「たしか34Fの警備対策室でしたよね」
「しかし、このまま何も起きなきゃいいんだが・・・・・・」
ティオ、ランディが答えるが、何も起きないことはないのではないか。そのまま足早に支援課メンバーもエレベーターを使って降りて行く。
「これが無事に済むとは思ってないですが・・・ね。
『アドルさん、どこにおられますか?』
物思いに
『タワー屋上で探索中ですよ』
『会議に参加する首脳たちが皆揃いました。屋上には異常ありませんでしたか?』
『ええ、今のところは・・・。しかし一般人に紛れて特大な氣を発し続けている人がちらほら見受けられます。まぁ、始まってから行動するみたいですねー』
『・・・・・・ええっと、それはアドルさんに任せて大丈夫なのですか?』
『クローディア殿下に指一本も触れさせませんよ』
『・・・・・・あ、ありがとうございます。アドルさん』
ユリアとの念話で忘れていたが、クローディアにも筒抜けだった。作った自分が忘れているとはなんたる失態。
『と、とにかくですね。殿下が“召喚”と念話してくだされば、殿下の影から出ていくことも可能ですので危機が迫ったときはお使いください』
『何から何までありがとうございます。(惚れ直しそうですぅ・・・)』
『・・・何かおっしゃいましたか?』
『いっ、いいえ!』
何やらすごく焦った念話が飛んでくるのを尻目に屋上から景色を眺めていた。
『私からもその・・・お礼を申し上げたい』
ユリアも律儀に感謝を表してくる。
『あー、今更だがユリアはもう少し固い口調を何とかしてもらいたいんだがなぁ・・・』
『無理です・・・。アドルさんは武術の先生でもあられますし、この会議だけですが上官ですのでこの口調に慣れていただけないでしょうか?』
『善処しよう・・・。それでは二人とも後ほどに・・・・・・』
『はい・・・それでは』
『ええ・・・』
クローディア、ユリアの順に念話が切れる。
「はぁ・・・。今更言いにくいが念話している最中は心に思っていることも聞こえてくるだぜ。これは製作者の権限でだがな。だからクローゼの『惚れ直しそうですぅ』はバッチリ聞こえていましたわ」
多分、言ったら軽蔑されるだろうか。まぁ、面白そうだしそれは内緒にしておくことにした。
「ねぇ、リーシャ・・・?俺が昨日から心をかき乱されていることに気づいているのかな。いや、気づいていないだろうねー。形だけの兄妹だって言ったとしても、向こうは血の繋がった兄妹だって信じているわけだし・・・。ままならない物だな・・・。さ、これから通商会議が始まる。気を引き締めないと・・・」
誰もいなくなった屋上から眼下に広がるクロスベル市を眺め、一喜一憂するアドルだった。
戦闘表現がザルなのでどこかにうまく書ける表現方法など載ってないかな?って最近、素で思ってしまう。