今日は涼しい・・・。修正しながら書くのに楽です。
ユリアやクローゼと話始めてどれだけの時間が過ぎただろうか。と言うか二人は俺の膝の上で眠りこけているのだが。すごく幸せそうな顔を見せているので、起こせないというのが現実だ。しかし俺たちを心配して見に来た女王のおかげ(?)で笑われもしたが自然に起こすことができた。
「そろそろ戻ったほうがいいみたいだね」
「そう・・・・・・ですね」
「名残惜しいです」
アドルの呼びかけにクローゼ、ユリアが答える。
「でも、これが最後って訳でも無いでしょ?」
「それはそうですが・・・」
「明日から殿下には公務が待っているのです。時間が自由になるのは夜しかありません」
「そっか、そっか・・・・・・。やっとクローゼも自分の道を決めて進むことができているんだね。単純に俺は嬉しいよ」
クローゼが王族として進むことに対して心配しているアドルだったが、それを隠すようにして嬉しいと感想を述べた。
「はぅぅ・・・。アドルさんがそう言ってくださると思ってました。私にはユリアさんや他にも、頼りになる方たちがいますので大丈夫です」
「殿下・・・・・・」
「ならどうして今更俺を呼んで護衛にしようと思ったんだか・・・。ねぇ、アリシア女王?」
アドルの呟きは城内に戻ろうとしている二人には聞こえていないみたいだった。
「アドルさん?どうかされましたか?」
「いや、ちゃんとここに戻ってきたんだな。って感慨深くなっていただけだよ。さて城内に戻りますか。また心配されても困るだろうし」
城内にいくと、ちょうどエステルと出会った。
「あれ、アドルさん?城の中にいなかったけど、今までどうしていたの?」
「エステルか。クローゼたちと話していたんだ。エステルは用事終わったのかい?」
「あたしは終わったけどヨシュアとレンがまだ謁見してる。何だかアドルさんの事を話しているみたいだよ。何かやったの?」
やけに長い話し合いなのでさすがのエステルも不思議に思ったようだ。
「俺の職歴について話し合ってるんでしょ。多分。ユリア、俺は城内をブラついている」
「承知しました。もう夜ですので、城外には出ませんように・・・・・・」
「ああ、分かった。資料室にいる。調べたいことがあるんだ」
三人と別れて向かった先は、城内に設けられている資料室。
「フム・・・。さすがに沢山あるな。だが、俺が調べたいことがあるとは思わないけど。あったとしても少ないだろうな」
ユリアと離れたことによって一人になれると思ったが、それは叶わぬ願いだったようだ。視認できない場所から監視されているような気配を感じる。
「・・・・・・」
俺が知りたいのは
「
資料に没頭していたのかもしれない。いつもだったら察知できるのにユリアが近づいていることに気がつかなかった。
「何を読んでいるんですか?」
「ユリアか?全然気がつかなかったよ」
「いえ、私としては嬉しいですが・・・」
何かもごもごと呟いたのでそれを聞くためにユリアに近づいた。その近づいた角度は、遠くから見たらキスをしていたように思えたのかもしれない。
「ア、アドルさん?ユリアさんも何をしているのですか?」
強張った口調が資料室の入口付近から聞こえてきたのはそれから間もない頃だった。
「ま、待てって。クローゼ、お前は何か誤解してないか?」
「や、痛っ。離して、逃げないから・・・」
「嘘!絶対逃げる。クローゼの嘘は分かりやすいんだよ。ほら、今だって視線を逸らして目と目と合わせない・・・・・・。それは嘘の証拠。ちゃんと公務出来ているのか不安になってくるよ」
クローゼから逃げようとする力が抜けていくので、それに合わせてアドルもクローゼから離れていく。
「殿下。ご覧のように、私とアドルさんは何もしていません。殿下と交わしたあの時の約束を一度も
「約束って・・・・・・?」
今のユリアの言葉の中で、気になったセリフがあったので聞いてみる。
「いえ・・・これは、私と殿下の間で交わしたものですのでおいそれと話すわけにはいきません」
きっぱりと断られてしまった。そこがユリアの良いところだけど。
「・・・・・・らい・・・」
「えっ?」
クローゼが何かを言ったが、聞き取れなかったので聞き返した。
「アドルさんなんて大ッ嫌い・・・」
口から出た咄嗟の一言だったのかもしれないが、アドルの精神を深く傷つけるには十分の一言だった。
「・・・・・・」
三人で会話していた時に見せていた瞳の輝きが消え、濁った瞳へと変化するアドルの様子を見てクローゼも自分が言ったことの間違いに気づいた。しかし時間を戻そうと思ったとしても、もう遅い。
「ア、アドルさん。殿下も本気でそう思っておられないはず。咄嗟に出た言葉でしょうから安心して下さい。ど、どうか気を静めて下さい」
ユリアの必死な問いかけにも無表情、無反応を示すアドル。そしてその無表情で濁った瞳のまま出した言葉は・・・。
「ええ、分かってます。知っていますか?言葉って、心で思っている本心が口から出てくるそうです。今の気持ちが分かりましたからそれで十分です」
そう呟きながら段々と後ろ向きに下がっていく。握り締めた手からは鮮血が滴り落ちていた。
「ねぇ、戻ってきてよ・・・。わ、私が悪かったから・・・・・・」
「・・・・・・」
クローゼの強い口調にやっと足を止めたアドル。だが・・・。
「何ですか?クローディア
偽の微笑みを浮かべたアドルに恐れを抱いているのかビクビクしながらクローゼは聞いてみる。
「用事ってなんですか?」
「仕事としてクローディア姫の護衛を引き受けると・・・そう伝えに行くんですよ」
聞き間違えではない。はっきりと聞こえた。そして明らかな拒絶反応は愛称のクローゼではなく、クローディアと言った事から理解できる。
「ど、どうしてそんなに濁った瞳が出来るの?」
「それをあなたに教える義務はありますか?ありません。それでは失礼します」
もう話すことはないと言わんばかりにそのまま離れてゆくアドルだった。アドルが、歩いていく廊下には握り締めた手から落ちたと思われる血が等間隔で滴り落ちていた。
その場に残されたクローゼとユリアはただただ、追いかけることも出来ずに呆然とするしかなかった。
「ねぇ・・・ユリアさん。私はどこかで間違ったのかなぁ?どうしていいか分からないよ」
「殿下・・・。今は何を言っても無理だと思いますが、アドルさんも時間が経てば元に戻るのではないですか?」
力無く床にペタリと座り込んだクローゼの呟きにユリアは、後ろから抱きしめて励ましそして一緒に慰めあった。
~アリシア女王私室~
「夜分遅くにすみません。アドルですが今よろしいでしょうか?」
「アドルさんですか。ええ、どうぞお入りなさい」
「失礼します」
親しき仲にも礼儀ありだ。アドルは勝手に入ることなく断ってから中に入った。
「アドルさん、こんな時間に一体何の用ですか?」
「申し訳ありません。すぐに失礼しますのでこれだけをお伝えしたく参上しました。私に対する結論が如何なるものだとしても、私は仕事として引き受けることにしました」
「アドル・・・さん?如何なされましたか」
「はい、なんでしょうか?」
女王が
「やっと分かったんです。
「クローゼと何かありましたか?」
「何もありませんよ。現在も将来もこれからそのままの関係を続けていくだけです・・・・・・」
「分かりました。アドルさんのその気持ちを尊重した上で結論を出したいと思います。あとは何かありましたか?」
「私にとって、ここに取って下さった部屋は大きすぎます。なのでここに滞在するのではなく、どこか都市内の宿泊施設に行くことをお許し下さい」
「意志は堅いようですね、分かりました。あとは・・・勝手に消えないで下さいね?」
やや諦めたかのようにアリシア女王は息を一つ吐き出し、それから許可を出した。
「ありがとうございます。では失礼します」
一礼してから部屋を後にする。そしてそのまま城を出てホテルに宿泊することにした。
「これでイイんだ。これで・・・クローディアには余分な負担をかけてしまったけど、これからは負担をかけずに済む。これでイイんだ」
人から拒絶されることには慣れているはずなのにどうしてこんなに胸が痛むのだろう。
――ズキン、ズキン――
「ってぇな。悪ぃ・・・。ユリア、クローゼ。俺が淡い期待を抱いて近づきすぎた結果がこれだよ」
さあ、歯科にいくぞ。続きの投稿は午後以降になります