それぞれの世界が歩む道   作:???

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第二話です。
間違い等があったら教えていただけると幸いです。

今回の会議参加者を列記しておきます。

司令官           山本重雄(やまもとしげお)
参謀長           佐藤守(さとうまもる)
参謀副長          端島忠(はしじまただし)
行政参謀          赤嶋雄一(あかしまゆういち)
情報参謀          野崎信也(のざきしんや)
作戦参謀          日比野好降(ひびのよしたか)
後方参謀          磯崎隆俊(いそざきたかとし)
通信参謀          武田典弘(たけだのりひろ)
企画参謀          野島正樹(のじままさき)

以上となります。


第二話 会議

・3020年6月21日 要塞「暁」第三会議室

 

「では、そろそろ始めましょうか?」

 

そう言いながらその男、山本は会議室の議長席から見回し参加者に会議の開始を宣言する。

 

今回の議題は、先日に行われた20世紀の地球と思しき惑星に対する調査任務の結果報告と、調査によって得られた情報の共有そして、其れを下にしたこれからの行動計画の決定にあった。

 

「まずは私から今回の調査任務の報告をさせていただきます。ではこちらをご覧ください」

 

最初に立ち上がり声を上げたのは、作戦参謀日比野好降(ひびのよしたか)であった。

 

その声とともに会議室の照明が落ち円卓中央に置かれたホログラフィックディスプレイに地球が映し出される。

 

「まず本調査任務は、18日から20日にかけて行われました。 結果として調査は無事成功、当方の損害はゼロ、得られた情報は、多岐に渡っています。また、得られました情報は現在、情報部、技術部、衛生局で精査していただいており後程、情報部より詳細が報告されると言う事でしたので割愛させて頂きます。続きまして任務の経過を順を追って説明させていただきます。」

 

日比野はホログラムに映し出された地球を指し示しながら報告を進めていく。

 

そこには艦隊を示す赤い光点と無人機(ファントム)各機を表す青い光点が示され、青い光点は彼の説明と共に地球へと降りていく。

 

「任務には幻日(げんじつ)10機が使用されました。その際偽装として、隕石に見せかけて大気圏降下を開始させました。任務開始から30分がたちますと、この偽装隕石に未確認勢力より光線の照射が行われます。この段階で艦隊は全艦が戦闘態勢にシフトし、戦機・航宙機パイロットに戦機への搭乗待機が命令されます。しかし、この後偽装排除と同時に行われた幻日からの光学シールドと各種妨害により照射は止みます。この時点で艦隊上層部は無人兵器による隕石の破壊であったと判断し任務を続行を決定、この時点では戦闘態勢は第一種が維持されたままですが、その後の敵対行動が確認されなかった為、順次落されていきます。」

 

彼がそこで、一旦区切ったのを確認し佐藤は、即質問を投げかける。

 

無人機(ファントム)が攻撃された理由はわかったのか?」

 

彼の一番の関心事はそれだった。

 

20世紀と言う世界において彼らの技術力から見て発見はありえないと思っていた彼にとって一時でも攻撃を受けた事は看過できない事だった。

 

これからの作戦全てに影響するからだ。

 

それ問いに対して情報参謀の野崎信也(のざきしんや)が答える。

 

「いえ、残念ながら今だ正確な理由は解っておりません。ですが小官も艦隊上層部の考えと同じく隕石の排除が目的であったと考えます。目下その際の環境データと無人機(ファントム)のログ等から技術部によって調査が行われており確定次第報告させていただきます。また、それに伴い攻撃が止んだ理由も現在究明中です。こちらも解り次第報告させて頂きます。」

 

野崎の報告は、思った以上に得られている情報が少ないと会議出席者に思わせるには十分な事だった。

 

重い空気を抱き、その後他に質問が無いのを確認すると日比野は説明を続けていく。

 

「続けます。各機は当初の計画通り、ヨーロッパ、アフリカ、中央アジア、ロシア、東南アジア、東アジア、北米、南米、北極、南極へとそれぞれ無事降下に成功し調査を開始します。そこで得られた情報につきましては先ほど申し上げた通り情報部から説明があるそうなのでこれも割愛させて頂きます。ただ、此処でシステム等過去に使われていた物と同じであることが確定しましたので、ヨーロッパ、東アジア、北米、南米、アフリカにおいて担当方面の幻日(ゲンジツ)各機を、あらゆる軍事回線に侵入させことごとく情報を抜きとることに成功しました。その際相手方には一切こちらの行動が露見しているそぶりはありませんでした。その後、東アジアにて発見した損傷の少ない巨大な戦機を回収船艇に乗せ回収しております。余談ですが、その際未知の生物の肉片と思われる物もサンプルとして回収し、現在化学班において解析を始めております。以後20日まで現地の政府や戦場等に機体を派遣し新たな情報を求めて調査を続行したのち、回収艇を派遣し全ての作戦機を回収し艦隊は帰還しました。以上が作戦部からの報告です。続きまして情報部より今回の調査で得られた情報について説明して頂きます。」

 

彼が席に座ると中央にあったホログラムは消え、次の情報部の報告の為に新たな情報を映し出す。

 

そして、続くように情報参謀 野崎信也(のざきしんや)が立ち上がる。

 

「今回の調査任務では、作戦部からの報告にもありました通り、多岐にわたる面白い情報を得る事に成功しました。ですが何分得られた情報が多い為、精査に時間がかかっている事をご了承ください。本会議では其の中からいくつか既に判明した事実を報告させていただき、後日判明しました情報は次回にてご報告させて頂きます。」

 

彼は得られた情報について、ディスプレイに映し出された映像資料を交えながら説明を始める。

 

その内容は次の通りである。

 

まず、現状について

1,此処は、西暦1998年の地球であること

2,上記の事を証明する為に、再度行われた座標確認においても彼らの良く知る地球の座標と同一であった事

3,地上に存在する国家は当時の歴史通りの国家である事

4,上記1,2,3であるにもかかわらず、主要な歴史が彼らの知る物と少しだけ異なっていること

5,言語やシステムは過去の物と一致

6,回収した遺体からの血液サンプルを解析した結果、問題の惑星の人間も我々と同じDNA構造をしていることが判明したこと

7,上記のことから当地は異世界、又は俗に言うパラレルワールドの地球である可能性が高いと推測されること

 

続いてディスプレイには、地球上の生物とは思えない奇妙な生物が映し出され野崎は説明を続けていく

 

「続きまして地上に生息しているこの謎の生物について、幾つか判明しましたので説明させて頂きます」

 

1,奇妙な生物は、Beings of the Extra Terrestrial origin which is Adversary of human race、通称BETA /人類に敵対的な地球外起源種と呼ばれていること

2,BETAの建造していた構造物はハイブと呼ばれるものであること

3,BETAには複数の種類が存在し、現地の各国軍による分類は、光線級、重光線級、要撃級、突撃級、要塞級、戦車級、闘士級、兵士級となっていること

4,作戦部の説明にあった偽装隕石に光線を照射したのは、おそらく光線級もしくは、重光線級と呼ばれる種であること

5,軍事回線から得られた重光線級のデータから、所有している戦力である通常の戦機・無人機もフォースフィールドの展開無しに長時間の照射を受け続けるのは危険である可能性が高い事

6,BETA本拠地は、おそらく中国新疆ウイグル自治区 喀什(カシュガル)にある現地軍呼称オリジナルハイヴ(H1:甲1号目標)と思われている事

7,BETAの目的は不明

8,現地軍の情報と周辺宙域の調査を行った部隊の報告から、月と火星にハイブらしき構造物を確認した事

 

説明が終わると、今まで謎の生物BETAが映し出されていた画面に現地軍の資料が映し出される

 

「最後に、現地軍の状況について説明させて頂きます」

 

1,地球以外の太陽系居住可能な惑星は、BETAに占領されている。

2,すでに穀倉地帯の多くを失い世界的に食料自給率は壊滅状態であり、合成食材に頼っている国が殆どである事

3,回収した戦機(せんき)に似たものは、戦術機/Tactical Surface Fighterと呼ばれるものであること

4,多岐にわたる技術が、この当時としては破格のものであるが一部技術は低く歪な技術体系となっている事

5,長すぎる生存戦争で徴兵年齢が低年齢化していること

6,オルタネイティブ計画と呼ばれる計画が進んでいるということ

7,朝鮮半島の放棄が決まったらしいこと

8,この世界のアメリカは、日米安保を破棄する予定であること

9,現地勢力にまとまりが無くどうも各々戦線をそれぞれ維持していると思われること

10,緑地の激減で酸素濃度の低下も見られ始めている事

11,衛星軌道上にある船団は、外惑星用の船であり主導はアメリカである事

 

「私からは以上です」

 

野崎が、そう発言し席に着く。

 

「まさに黙示録の世界だな…」

 

そう発言したのは通信参謀 武田典弘(たけだのりひろ)だった。

 

だがこの発言は、彼一人の思いではないこの場にいる誰もが思った事だった。

 

正直此処まで押し込まれてしまうと彼らに勝ち目など無い、今のままなら先にあるのは緩慢な死を迎えるだけだろう。

 

さらに武田は続ける

 

「この上安保の破棄となると、この世界の日本は進退此処に極まると言ったところか…」

 

彼らの世界では、どんなに日本が窮地に陥っても日米安保は破棄される事無く今日まで続いていた。

 

今では安保もその性格は既に安全保障ではなく、相互防衛協定に近いものになり、部隊の駐留は既に無かったが20世紀に、その名がつけられてから今だに続く古い古い条約であり、何よりこの条約が存在した事で、21世紀からの3度の紛争でこの条約に日本人としてそれぞれ思うことはあるが国土は荒廃してしまっても、紛争に勝利し国を維持し続ける事ができた遠因であると今日まで教えられてきた。

 

そして、彼らの国はこの条約を、その後自分達に不利にならないようにしながらも大事に、そして慎重に扱ってきた歴史があった。

 

その為、会議参加者はうつむいている者、目をつぶっている者等様々なであったが皆一様に、破棄という報告を聞き考え込んでいるようだった。

 

山本は険しい顔で理由を求める。

 

「本当にアメリカは安保を破棄するつもりなんですか。」

「はい、米国国防総省の回線に進入した幻日(げんじつ)が、在日米軍の撤退計画書を入手しています。おそらく破棄が決定してから下手をすると1月かからず撤退が完了するでしょう。」

「破棄の理由は解りますか?」

「幾つか予測はすでに立ててありますが、確証が持てません。ですので一旦保留とさせていただきます。確定次第報告いたします。」

「推測で構いません。あなたの意見を聞かせてください」

「は、では僭越ではありますが、恐らく戦力の温存と米国における防衛ラインの引き下げ、そして日本に対する牽制といった所ではないでしょうか」

「牽制、親米派の勢力を拡大するためだと?」

「ええ、得られた情報の中に現在の日本政府は、国連よりであるという情報がありました。これを今後予想されるBETAの進行による被害の矢面に立たせ、何らかの形で民意を操り親米派に首を挿げ替える考えであると考えます。その後日本を米国防衛の盾とする腹積もりでしょう」

 

そう語った彼の言葉に皆一様に押し黙るしかなかった。

 

再度武田は続ける。

 

「それでこの世界における日本は、どうなっていくのか?」

 

野崎は答える。

 

「既に無いものと思って頂けばいいでしょう。はっきり言います。詰んでいます。どうやってもこの世界の我が国は滅びます」

 

この時点でこの回答を既に予想していたのだろう山本は、その理由を求める。

 

「理由は…」

「まずこの世界の我が国は、我らの世界の20世紀程の経済力、及び工業力は無いものと思って頂きたい。何しろ日本の高度経済成長に繋がった主な原因が起こっておりません。その為経済力は良くて1970年代半ばといった所でしょう。そんな状況で、先頃九州で警戒警報をだし疎開が行われたようです。これにより北九州工業地帯の生産力等の低下は否めません」

 

山本は質問を続ける

 

「現地の対策は…」

「これの対策としては、どうやら東日本において工場等の誘致を行い対応する事と、前々から実施している海外での生産で乗り切ろうとしているようです」

 

山本は、その答えを聞きつぶやく。

 

「遅すぎる…時期が。もっと早く警戒等でなく全力で工場の疎開をするべきだったんだ」

 

「現在の内閣総理大臣職にある人物もそう考えていたようで彼の周りの人間と、ずいぶん前から動いていたようですが色々と政敵等に邪魔されてかなわなかったようです」

 

山本が普段使わない悪態をついたのを佐藤は聞き逃さなかった。

 

そして佐藤は山本がつく悪態をもっともな事だと思っていた。

 

東日本へ例え、工場を誘致したとしても今までの材料の仕入れ先や、販路を確保をする事が出来るだろうか。まず無理である。例えうまく行ったとしよう、では、工場の人員はどうする、材料確保に駆けずり回る時間はどう補てんする。さらに言えばその地で新たに起業するだけの資金は湯水のように湧いてくるわけではない。

 

そして何より兵器本来の性能を出すには、できるだけ質の良い部品が必要だ。それには工場で使う質の良い機材も必要になる。これもけっして霧の様に現れるわけではない。

 

そして、海外での生産も期待道理の結果になるとは思えない、その国で生産されている兵器を買って輸入するのではなく、自分達の兵器を海外で作る。正直メリットがなさすぎる、只でさえ他国も何時国が襲われるかわからないそんなジリ貧の状態であるにもかかわらず、わざわざ相手の国が日本の兵器を生産する余裕があると言うのか、米国ならあるいは、他の国々は可能性が低い余裕がある国は、資源や製造ラインを分けてくれ稼働させてくれるかもしれない。だが、果たしてその国が危機に瀕した場合、その国の人々は彼らに資源や土地、製造ラインを供給し続けてくれるか。

 

有り得ないと言うしかない。

 

その時には、彼らも自分達が使う兵器が必要になるのだ。他国の兵器を作っている余裕などない。

 

例えその状況下で作ってくれたとしよう。其れを日本まで運んでいる余裕があるだろうか。そして無事に届ける事がきるだろうか。欲しい時にすぐ届くだろうか。

 

そう考えた時佐藤は、山本の悪態をもっともだと考えていた。

 

何もかもが遅すぎる。そして状況が悪すぎる。

 

山本は質問を続ける。

 

「他に理由はありますか」

 

「はい、次にあげますのは日本の問題だけではありませんが徴兵年齢の低下です。これは、徴兵年齢に達した男子がいない事を示唆し、兵器生産を行う工場における熟練工が低下している事を意味します。それは生産物の質の低下、生産量の低下へとつながります。例えオートメーション化された工場だとしても熟練工ほどの精確な技術は期待できないでしょう。学徒を動員したとしましょう、それでも熟練工に育つのに早くて20年から30年かかり、その間の質は低下する事でしょう。それも彼らを失わないことが前提です。これは前線での兵器の稼働状況にもつながる問題です。さらに影響はその事だけに留まらず新機軸の兵器、高度兵器の開発の遅れへもつながる事でしょう。」

 

此処まで言われれば馬鹿でも気づくだろう。

 

どう間違っても詰んでいるのだ。

 

「これらの観点から小官は、詰んでいると申し上げた次第です。質問がないようでしたら行政部からの報告に移っていただきます。」

そう言って野崎は発言を終え、しばらく意見があるか待つが誰も手を上げなかった。

 

誰もが今の内容を自分なりに整理していた。

 

報告は続く次は行政参謀 赤嶋雄一(あかしまゆういち)が立ち上がった。

 

「小官からは、現状の要塞の状況について報告させていただきます。」

 

資源について

1,現状戦闘に必要な戦略物資は、戦闘さえ行わなければ3年程の余裕がある

2,水等の生活必需物資も無補給でもって3年である

3,上記を踏まえ、この場に留まるのであればできるだけ早期に資源衛星の確保やコロニーの建造が必要である

4,要塞内の工廠は資源さえあれば直ぐに稼働可能である事

 

治安について

1,異世界に関する情報にかかわった者の中で一部で動揺が起こっている

2,上記の一部で、同じ日本人として日本の救援に向かいたいと申請を出す者たちがいる

3,今回の情報について戒厳令を敷いているが、近いうちに広範囲に拡散する可能性があること

4,要塞内の経済活動は比較的安定している事、参戦する場合居住区等の拡張作業が必要である事

 

以上を報告すると赤嶋は席についた。

 

現状についても余り宜しくない結果に、やはり会議参加者の顔は一層険しくなるのだった。

 

最後に通信参謀 武田典弘(たけだのりひろ)が勢い良く立ち上がった。

 

「私からは、良い報告と悪い報告の両方をを報告させて頂かねばなりません。まずは良い方から…皆様本国との通信は不可能では無いかと不安をお持ちでしょう。この会議が行われる数分前に判明したのですが、本国との通信が可能との事です。理由については依然不明ですが、科学班の主任と話した結果おそらく本国との行き来も可能でしょうとの事でした。古典SF小説と一緒でなく幸いといった所でしょうか。また、現地軍との交信も今の設備で十分可能だと言う報告を受けています。」

 

と言ってそこでいったん話を区切る。

 

この報告を聞いた彼らは大いに喜び安堵した。

 

それもそうだろう。

 

いきなり異世界に来てしまい、故郷に帰ることができるかわからず、勝てる見込みも無い絶望的な戦争にかかわる事がありえないと言えなかったのだから。

 

だが、今彼らには自分たちの世界に撤退するという選択肢が増えたのだ。

 

しかし、続く武田の報告内容からその喜びも一瞬で吹っ飛んだ。

 

「続きまして悪い報告です。これも本国とのことです。我々が帰還できるという事は、それすなわち我が国ひいては我らの世界もあの生物の脅威にさらされる可能性があるという事です」

 

一同の気持ちは一瞬にして冷えた。

 

赤嶋は尋ねる。

 

「その根拠は…」

 

「これは情報部の報告にありました内容から化学班が出した可能性ですが、問題の生物は何かを定期的に一定方向に向け打ち上げその何かは地球圏外に向かっています。恐らくその方向にはその生物の何某かの拠点があると考えられ、それが地球圏外となるとおそらくは超空間航法を使っている可能性があるものとして考えるべきだといわれました。という事はこの場所から我が国へといたる可能性も無きにしも非ずと…」

 

それを聞いた会議参加者は一様に、あのような生物が大挙して押しかけるという悪夢を想像し言い知れぬ不安に襲われた。

 

佐藤が続ける。

 

「もしも我が国がその対処を誤ったのなら、各国は我が国を切り捨ててでも殲滅を図るでしょうね。小惑星を大量に落とし国土を焦土にしたとしても」

 

「そんなことは…」

 

言いよどんだ赤嶋に対して告げる。

 

「あり得ないと言えますか?我が国は残念ながら、地球系の国の幾つかとは正直あまり仲が良くない。しかもどちらも大国だ。我が国は今まで奇跡的に安定して国を広げることができたことで、技術・国力共に安定している。そんな国の国力をそぎ落とすことができるとしたら。はっきり言い切りましょう。我が国の国力を落とすためなら彼らはなんだってするでしょう。アメリカやほかの国々も賛同する可能性だってある。」

 

それは今の日本の地球系国家の中での立場を知る彼らにとって、覆しようがない事実だった。

 

此処までの報告を聞いて、山本はつくづく日本人とは運がない国民なのだと思った。

 

自分たちの世界でも、此方の世界でも日本は運がないとしか言いようがない。

 

そう思うと山本はため息を漏らさずにはいられなかった。

 

 

武田の報告の後も会議は続き終盤を迎え、多少緩和された重い空気の中で、ぬるくなった緑茶で喉を潤してから山本は「では、これからの方針を決めましょう。」と言って方針を決めていく。

 

最終的にこの会議で、

 

1,作戦部は、情報部と合同で引き続き調査任務を続行する事、またこちらの日本との接触方法を研究する事

2,情報部は現地に人員を派遣し情報の収集にあたること

3,物資などは、太陽系周辺のデブリから資源を回収する事とし、コロニー建設予定地や資源衛星の選定も行う

4,治安については、現状維持だが暴発の危険が有ると判断した時は機密以外は、公開できるように用意をしておく事

5,後方参謀は、支援計画の研究を企画参謀と一緒に行う事

6,通信部は、急ぎ本国との通信ができるように用意を整えること、その際に今回の議事録を送り現状を伝えた上で、本国にも危険が及ぶ可能性がある事と幾つかの資源惑星のデータを送ること

 

以上六件の方針が決定し其の日の会議は終了するのだった。




2010年 11月06日 にじファンにて初投稿
2012年 09月21日 加筆修正の上投稿

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