ガンダムビルドファイターズ/ゼロ   作:ジャージ王子

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お久しぶりです。ビルドファイターズ2期がやるらしいですね、どんな物語になるのか気になります。


第4話 黒い闘牛と雷鳴

「ふぁ~~~あ」

 

「随分と大きいあくびだね」

 

部室でセイバーの改造をしていたアキラは、シュウの気の抜けるようなあくびに苦笑する。

 

「最近、また徹夜が続いてさ…。でも今日ちゃんとできたから一安心だな」

 

シュウの言葉に部室にいたアキラとアミはお互いになるほどと思う所があった。

 

「アンタ達のクラスもあったのね」

 

「何が?」

 

「何がって、テストよテスト。私のクラスであったからてっきりそれかと…違うの?」

 

「あー、違う違う」

 

しかし、アミの思っていた事とは別のようで、シュウは手を振りながら否定してみせた。その動作がオーバーだったからかアミはムッとした表情に変わる。

 

「じゃあ何で徹夜したのよ」

 

「そりゃあお前…」

 

「ガンプラ、でしょ」

 

シュウの返事を遮りアキラが途中から答えた。

 

「ふっ、やはりアキラはよく分かってるぜ…」

 

「シュウ君が徹夜と言ったらガンプラしか有り得ないからね」

 

評価が高いのか低いのか微妙な事を満面の笑みで言うアキラ。しかしその言葉はシュウにとっては評価が高い意味合いだったらしく満更でもない顔をしている。

 

「アンタ達に一般常識を求めた私が馬鹿だったわ」

 

はぁとため息をつくアミ。

最近ため息をする頻度が増えたなと思いつつも、今の日常が悪い気はしていない事を感じ、ついつい顔が綻ぶ。

 

「そういえばワイズミはどこ行ったんだ?」

 

シュウの言葉にハッと我に返ったアミは今の表情が2人に見られなかったか確認。どうやらまた新しい会話を始めていたようなので安心した後で表情を普段通りに戻し話に耳を傾けた。

 

「ワイズミ君ならゲーセンじゃないかな」

 

「ゲーセン?ガンプラバトルでもしてんのか?」

 

「うん、昨日から完成したAGE-2でバトルしに行ってると思うよ」

 

先日、イオリ模型店でガンダムAGE-2を購入したユウトはアキラの指導を受けながら3日で完成させ、完成したその日からゲーセンに向かい様々な相手とバトルを行っているようだ。

 

「く~~~っ!俺もバトルしてきたくなった!」

 

ユウトのバトルを想像してか、自身が新しいガンプラを作ったからか、恐らくその両方が理由だろうがシュウはいても立ってもいられなくなった。

 

「よしっ!皆でゲーセン行くか!」

 

「最初からそのつもりだった癖に…」

 

ボソッと呟きながらもアミもちゃっかり行く準備をしてたりする。

 

「悪いんだけど、僕はパスするね」

 

「「え?」」

 

「とりあえずセイバー本体だけでも作っておきたいなぁと思ってて…」

 

元々アキラが作ったヴァンセイバー。次はそれをユウト専用機にする為の改造を行っている。また一から作るという考えもあったが、ヴァンセイバーはアキラにとって初めて戦場を舞った自作のガンプラで、ユウトの初めて動かしたガンプラでもあるので、改造という案に至ったのだった。

 

「それならしょうがないか…頑張れよアキラ」

 

「うん、シュウ君もバトル頑張って」

 

勝手に話が進行していく中アミはある事に気付く。

 

(これ、私とヒビノの2人だけって事…?)

 

「よしっ!んじゃ行くとするか」

 

バトルしたくてしょうがないといったような笑みを見せるシュウ。この表情を見る限り自分が想像していたような事はないだろうと感じつつも、今までシュウのバトルを見た事がなかったアミは良い機会だと彼の誘いに頷くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

00000

 

『~~~~!!!』

 

バトル終了のブザーが鳴り響き、ユウトはふぅとバトル中に押し殺していた息を吐きだした。現在の戦績は全戦全勝。バトル中は熱くなるが終わってみると少しあっけなくも感じる。

 

(昨日と場所を変えてみたものの、レベルは大体同じか…)

 

昨日は高校から電車で一駅の所にあるゲーセンでバトルをしたユウト。始めに自分が初心者である事を明かすとたかりにきたかのようにファイターが勝負を申し出てきたが、初心者とは思えぬユウトの技量に全員が返り討ち。2時間が経たぬ内に彼とバトルをしようとするチャレンジャーは現れなくなっていた。その為、今回は昨日とは反対方向の駅へ向かい最寄りのゲーセンに立ち寄ったのだが、またしても昨日と同じような状況になり始めている。

 

(ヒビノ位の実力を持ったヤツはそうそういないという事だろうか)

 

そう思いながらフラッシュバックするシュウとのバトル。初めてでありながらあそこまで立ち回る事が出来たのはシュウの実力がユウトの全力を引き出した結果なのかもしれない。そう考えるとユウトの心の中にはシュウへのリベンジという文字が浮かぶ。

 

(明日にでもバトルに誘ってみるかな)

 

「あれ?ワイズミじゃん、なんでこんな所にいるんだ?」

 

「っ!?」

 

ただ話かけられただけ、ではあるがまさかたった今考えていて、この場にいないだろうと思っていた人物から声をかけられれば誰でも驚く。

 

「お前こそなんでここにいるんだ……ヒビノ」

 

「ここら辺は俺の地元だし」

 

努めて冷静に疑問を口にしたユウトだったが、シュウのあっけらかんとした返事に頭を抱えそうになる。

 

「いやー、まさかワイズミがこのゲーセンでバトルしてたなんてな。調子はどうだ?」

 

「…悪くなはない」

 

本当にガンプラの事になると笑顔が絶えないなと思いながら話を進めていく。ふと、後ろに誰かがいるのに気がついた。

 

「ノミズも来ていたのか」

 

「ま、まぁね」

 

「コグラは来ていないのか?」

 

「アキラは部室でセイバーの調整をしてる」

 

「そうか…苦労をかけるな」

 

「そんな事ないさ、本人も楽しそうにやってる」

 

などと会話を続けていくが、ここにはGPベースがあり、2人ともガンプラを持っているこの状況。お互いにバトルをしたいという気持ちは変わらない。ユウトも明日までお預けだったバトルを今日出来るので万々歳だ。しかし、

 

(俺はコイツに勝てるのか…?)

 

なまじ今までの勝負に連勝してきたせいで負けというものがとても大きい壁に感じ始めていた。

 

(だが、ここで知っておかなければ…)

 

いつまでも上には登れない。

そう思い、バトルを申し込もうとしたその時。

 

「ヒビノーっ!!!」

 

「「あ?」」

 

シュウを呼ぶ声が2人を遮る。勿論、ユウトの声ではない。

声のする方を見やると、前髪を全て上に持ち上げた髪型の気の強そうな青年が立っていた。制服を着ているところを見ると学生なのだろう。

 

「ここであったが100年目!バトルだヒビノ!」

 

「知り合いか?」

 

自分が言うつもりだった言葉をあっさりと持って行かれてしまったユウトは少し不機嫌になりながら聞いた。

 

「あー、知り合いといえば知り合いだけど…」

 

「俺の名前はハリヤマ・コウダイ、そこにいるヒビノの永遠のライバルだ!」

 

「「………」」

 

ここまでくるとユウトも何となく察してくる。

コイツは人の話を聞かない、要するに面倒くさいタイプの人間なのだろうと。

 

「相変わらずね、ハリヤマ君」

 

「ノ、ノミズさんっ!こんなっ、こんな所で会えるなんて奇遇ですね!」

 

シュウの後ろにいたアミが声をかけるとハリヤマは飛び上がったように驚き、直後に顔を赤らめながら対応した。その態度は先程とは別物だ。

 

「い、意外ですね。ノミズさんもガンプラバトルをするんですか?」

 

「する…というか、これから始めるというか…」

 

「ノミズは俺の付き添いだぞ」

 

「んなっ…!?」

 

どもってしまったアミをフォローするようにシュウが事情を説明すると、ハリヤマは頭の上からタライが降ってきたかのような衝撃を受けた。

 

「ヒビノ、貴様ぁ!ノミズさんと同じ高校になっただけでも飽きたらず、2人でデートだとぉ!?」

 

「デ、デートって別に私達そんなんじゃ…!」

 

「いいや、言わなくても大丈夫ですよノミズさん」

 

「へ?」

 

「大方、ヒビノに無理やり連れて来られたんでしょう」

 

シュウとアミが揃ってため息をつく。ニュアンス的にはそれに近い感じではあったが、今回の件はアミ自身が選んでついてきたのだ。

 

「あのねぇハリヤマ君…」

 

「ヒビノ!改めてバトルを申し込む!俺が勝ったらノミズさんを解放しろ!」

 

「少しは人の話を聞きなさいよ…」

 

「いいぜ、やろう」

 

「「!?」」

 

ハリヤマの挑戦にシュウは不敵な笑みを浮かべて応じてみせた。

 

「ちょっとヒビノ!こんな馬鹿げた勝負受けなくていいわよ!」

 

「だーいじょうぶだって、ようは勝てばいいんだろ?俺を信じろ」

 

「っ!!!」

 

自分が景品のようは扱いなのが気にいらないのだろうと思ったシュウのなだめ方は、アミを赤面させるのに十分な威力をもっていた。

 

「んじゃ、早速やろうぜ…「ちょっと待て」今度はなんだよ…」

 

シュウの言葉を遮ったのはユウトだった。

 

「いきなり出てきた奴に俺の対戦相手を横取りされるのは気に食わねぇな」

 

「何?」

 

その言葉にハリヤマも食いつく。

 

「君の言いたい事も分かる。だが俺はヒビノからノミズさんを解放しなければならないんだ!」

 

「折角、骨のある相手が見つかったんだ。俺は譲る気はないぞ」

 

ユウトの方もハリヤマの言葉を一切受け付けない。

 

「おいおい…」

 

流石にシュウもこれはマズいと止めに入ろうとするが、ある一言がそれを止めた。

 

「だったら俺とバトルするってのはどうだ?」

 

「「「?」」」

 

その言葉を発したのはシュウでなければ、ユウトでもハリヤマでもない。

声のした方を向くとこちらに向かってくる男がいる。どうやら彼が声の主のようだ。

 

「いきなり入ってきてすまないな」

 

「…アンタは?」

 

3人の前にやってきた男はユウトの方を見ながら話し出した。その為、自然と名を尋ねたのもユウトだった。

 

「“ライトニングジャック”…。人は俺の事をそう呼ぶ」

 

その二つ名を聞いた途端に周りの客達がざわめき出す。

 

「ね、ねぇヒビノ、有名なの?そのライトニングなんとかって」

 

アミの問いにシュウはあぁと返事をして言葉を続ける。

 

「ライトニングジャック。スピードバトルを信条とするファイターで、ソイツと戦う奴はその機体の早さに追いつけず攻撃も当てられないまま負ける…っていう噂を聞いた事がある」

 

「で、そのジャック様が俺に何の用だ?」

 

シュウの話を聞く限り、目の前の男は相当な実力者だ。自分に話しかけてくる理由が分からなかった。

 

「おいおい、そんなのバトルの申し込みに決まってるだろ」

 

「…俺にか?」

 

正直、それは最初から予想の外に追いやっていた返答だった。まだバトルを始めて少ししか経っていない自分に実力者が向こうからバトルを申し込んでくるとは思っていなかったのだ。

 

「仲間内から連絡があってな、かなりデキる可変機使いがいると」

 

「それが俺だと?」

 

「あぁ、最近の相手はノロマな奴ばかりで退屈していたんだ。お前だったら満足させてくれるかもしれない、そう思ってここに来たってわけ」

 

「面白い、俺もアンタみたいな奴と戦ってみたかったんだ。受けて立つ」

 

ユウトもまた、相手をまっすぐと見据えて勝負を受けた。

 

「つっても、どうするか…ここのゲーセンにはバトルシステムが1台しかないぞ」

 

シュウの疑問にジャックがある提案を持ちかけた。

 

「1台でもこれはかなりの大型だ。2対2のチーム戦はどうだ?」

 

「チーム戦か…状況的にはワイズミと俺、アンタとハリヤマってのがベストだな」

 

「それでいいだろう。まぁチームと言っても、それぞれ1対1で戦い合うのだから援護なんかは不要だな」

 

シュウの言葉にジャックが了承し、他の2人からも反対がなかったので、この形式でバトルを行う事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

00000

 

紆余曲折を経て、いよいよバトルが開始されるようだ。

シュウとユウト、ハリヤマとジャックがそれぞれ並んでガンプラとGPベースをセットする。

 

「…ヒビノ」

 

「ん?」

 

バトルシステムがデータを読み込み始めると、ユウトは顔を見る事もせず、シュウに話しかけた。

 

「お互いにバトルに勝ってこのフィールドに残った時、その時は俺とバトルしてもらうぞ」

 

その言葉を聞いて一瞬キョトンとした表情になったシュウだが、意味を理解すると笑みを浮かべた。

 

「…ガンダムAGE-2、出る!」

 

相手の返事も聞かぬ内にユウトは自身の機体を出撃させた。空へと飛び上がったそれを見送ると、シュウも戦場へ赴くために球体型のコンソールに手を置く。

 

「ヒビノ・シュウ、インパルスゼロ!行きます!」

 

ゲートをくぐり抜けると、重力が働いて機体が落下を始める。

 

「フィールドは荒野ってとこか…」

 

砦のような大きな岩が立ち並ぶ一面土色の世界。それが今回のバトルフィールドだった。

シュウはスラスターを使いながら落ちる勢いを相殺。衝撃のほとんどない状態で着地した。

 

「それがお前の新しい機体か!」

 

早速相手から通信が入り正面を見据えると、黒いガンダムタイプのMSがホバー走行しながらこちらに向かってきていた。

 

「そういうハリヤマも更に改造したみたいだな。確かガンダムヘビーホーンだっけか」

 

シュウの言う通り、ガンダムヘビーアームズをベースにしたその機体は、オリジナルのものより砲身が太くなって左腕全体を覆う程のガトリング砲となっており、右肩にもランチャーストライカーのパーツが組み込まれていた。

 

「これぞ改造に次ぐ改造を重ねた俺の機体、ダークヘビーホーンだ!」

 

進撃を続ける黒い重装型MSは、宣言と同時に左腕のガトリング砲を撃ち出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

00000

 

Dヘビーホーンが地上を轟かせていた頃、空中では可変機同士の争いが続いていた。

お互いに航空形態になりながら飛行を続けるが、ユウトは終始相手を追いかける状態で攻撃が行えていない。

 

(速いっ…!)

 

分かってはいた事だが正直予想以上だった、とユウトは自分の認識の甘さを痛感していた。

 

「どうしたどうした!それで本気だって言うんだったら俺のライトニングヴレイヴには一生追いつけないぜ!」

 

「くっ!」

 

ジャックのライトニングヴレイヴはその名の通りヴレイヴを改造した機体で、ハリヤマのDヘビーホーンのような武装を後から追加したものではなく、各種ブースターの強化、パーツのシャープ化による空気抵抗の軽減などが施されており、火力よりもスピードが重視されている。

対してユウトのAGE-2はアキラに手伝ってもらいながら作った無改造のもの。とは言ってもその完成度の恩恵でスペックは高く、扱い易さならこちらが勝る。

 

(スピードでの勝負で勝てないのは明らか…だったら!)

 

AGE-2をMS形態に変形させたユウトは右手に持ったハイパードッズライフルを放つ。

 

「狙いが甘いな、それじゃあ当たらないぜ」

 

鼻で笑いながらなんなくビームを避けてみせるジャック。

 

「アンタの機体を狙ったわけじゃないさ」

 

「何っ!?」

 

射撃を避けられても余裕を見せるユウト。ヴレイヴを抜けていったビームはそのまま近くにある大岩の1つにあたり爆散。大量のつぶてがヴレイヴを襲った。

 

(ソイツの面倒くささは俺がヒビノとのバトルで身を持って体験済みだ)

 

「ちぃっ!」

 

飛びかかってくるつぶてを避ける為に旋回をするヴレイヴ。加速が強い分、その動きはどうしても大きくなってしまう。

 

「AGE-2を見失ったか…!」

 

つぶてと同時に土煙も舞っているため、レーダーに反応があっても目視では確認できない。

 

(チャンスは一瞬…)

 

タイミングを見計らいながら待機をするユウト。相手はいまだ航空形態。警戒のためスピードを極力弱めているとは言え、常に動き続けているのだ。そんな相手に急加速で接近し両断するタイミング…ユウトは今がその時だと踏んだ。

 

「もらった!」

 

「!!!」

 

ヴレイヴの背後、完全なる死角からAGE-2はビームサーベルを振りかざした。




今回初登場を果たしたハリヤマとジャック、/ゼロのあのキャラ達がモデルです。
ジャックの機体はスピード重視でどの機体をモデルにするか迷ったのですが、第三次スパロボZでグラハムがコードネームライトニングでヴレイヴを使っていたのでヴレイヴを採用しました。その前はヅダにしようかなとか思ってたり…

感想やご指摘、質問などあれば是非お願いします。

以上、ジャージ王子でした。ではでは( ・_・)ノシ

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