ガンダムビルドファイターズ/ゼロ   作:ジャージ王子

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第1話 白い衝撃

「……」

 

手にしたプラモの関節を入念に動かす。

こちらは問題無くクリア。

 

「……」

 

次は360°グルリとプラモデルを見回し、塗装の塗り忘れや、今動かした部分が落ちていないか確認する。

これも問題無くクリア。

 

「……」

 

最後に机に立たせてシルエットをチェック。

これは最初から問題が有るとは思っていない。我ながら良い出来栄えだと、少年は自負する。

 

「~~~~~っ!」

 

長い作業の時間を振り返る。それはもうしんどくなる事もあった。しかし、この機体を見ればそれ程まで時間をかける価値もあったというものだ。

 

「出来たぞーっ!!!」

 

これが彼の、彼だけのガンプラ。

 

そのガンプラは今にも咆哮を放つかのように力強く立っていた。

 

 

 

 

 

ガンダムビルドファイターズ/0

 

 

 

 

 

感動に浸って、ひたすら自分のガンプラをいじる彼を後ろから呼びかける声がする。

 

「お兄ちゃんおはよ」

 

「うわっ!ノックしてから入れよな…」

 

「何度もしました~。それよりも朝からそんな大声出してたら近所迷惑」

 

「は?朝ってお前、まだ深夜の2時か3時…だ…ろ」

 

壁に立てかけている時計に目をやる。

一本の針は3を指している。しかしもう一つ、短い方の一本はしっかりと、全く折れる気配がないくらいに堂々と7を指していた。

 

「……」

 

いや、勘違いかもしれない。もしかしたら時計が壊れているのかもしれない。たしかそんな気がしてきた。

そう思いながら彼はカーテンを開いた。

 

そこには眩しいくらいの朝日と青い空が広がっていた。

 

「おまっ!マジか!?」

 

「マジだよー」

 

「今日俺、入学式じゃん!」

 

「知ってる、私も始業式あるし」

 

「お前歩き、俺電車じゃん!?」

 

「知ってる、早くしないと初日から遅刻だねー」

 

「くぁー!なんということだ、コイツを作るのに夢中で時間を忘れてた!」

 

「お母さーん、お兄ちゃん起きたよー」

 

「シュウ、早くしないと遅刻だよー」

 

「それはさっきも聞いたわ!マイは早く出ろ!着替えるから!」

 

「はいはーい」

 

「と、とりあえず大体の荷物は鞄に入ってる…後は制服着て朝飯マッハで食べるだけ…!」

 

そこで制服に手を伸ばしてふと、違和感を感じる。今まで着てきた学ランとは違う、しわのないブレザータイプの制服。

 

(今日から俺も高校生か…)

 

またしても感慨深いものを感じしみじみとしてしまう。

 

「って、急がないと遅刻だっての!」

 

 

 

 

 

 

 

 

00000

 

その後の事はあまり記憶にない。とにかく必死の思いで高校まで急ぎなんとか初日から遅刻の新入生という肩書きからは逃れた。

とりあえずは校門で受け取ったクラス表から自分の名前を探し教室に入る。

 

(名簿見て思ったけど、このクラス同じ中学の奴いねーのな…)

 

辺りを見回しながら自分の席を見つけて座る。

 

(おっ…?)

 

すると、身体が緊張から解放されたせいか途端に眠気が襲ってきた。昨夜から今朝にかけて一睡もしてないのだから当然と言えば当然の事ではある。

 

(いいや、このまま寝てよう)

 

そのままシュウは深い眠りの中に入っていった。

 

 

 

 

 

 

星の光が瞬く宇宙空間。ビームが飛び交い爆発が起こるここは正に戦場だ。そこに黒き戦艦ミネルバが現れる。

 

「おー、やってるねー」

 

「ヒビノ少尉、発進どうぞ」

 

「よっしゃ!」

 

グリップを握り直し、もう一度その感覚を確かめる。

 

「ヒビノ・シュウ、ゼロスプレンダー行きます!」

 

ミネルバの射出口から戦闘機が飛び出す。すると続けて2機のパーツが発射され戦闘機とドッキング。白いMSとなって戦場へと駆けていった。

 

 

 

 

 

(ん?)

 

どれくらい寝ていただろうか、シュウは突然自分の身体が揺らされたのを感じ目を開けた。

 

「こ、これから体育館で入学式…だって」

 

声の方に視線を向けると小柄な男子が立っていた。

 

「お?そっか、起こしてくれてサンキューな」

 

「べ、別にいいよ」

 

「俺はヒビノ・シュウ」

 

「え?」

 

「名前だよ、名前」

 

「あっ、ぼ、僕はコグラ・アキラ」

 

「よろしくな、コグラ」

 

「うん、よろしく」

 

その後、体育館に行く道中や戻る際にコグラと話してみると、彼もガンプラが好きだという事が分かって話がはずみ、2人は初日から意気投合するに至った。

 

 

教室に戻ると、新しいクラス定番の自己紹介が始まる。とは言ってもシュウは名字からすると後ろの方なので出番はまだ後。コグラの紹介までは粘ってはいたが、それが終わるとまたうとうとしてくる。

 

(順番回ってくるまで起きとかないといかんだろ…)

 

「はい次、ヒビノ君、ヒビノ・シュウ君」

 

「はいはいっ」

(よし来たっ!)

 

なんとか眠るのをこらえ、やっと自分の番が回ってきた。こうなれば頭も回りだし眠気も吹き飛ぶ。

 

「え、えー、ヒビノ・シ「ガラガラ」…です?」

 

まずは名前からと思い名乗り出すと、途中扉を開ける音で遮られてしまった。

 

「「「……」」」

 

当然ながらクラス中の視線はシュウから扉を開けた人物へと移る。

 

「……」

 

扉を開けた少年は視線を気にする事もなく先程から空いていた一番後ろの一番端の席に座る。

 

「えっと、ワイズミ・ユウト君…かな?」

 

「そうですけど」

 

先生が少しビクつきながら少年に問いかける。先程紹介していたのだが彼女は今年教師になったばかりの新卒らしい。そうなるとこういった事態にはまだ弱いのだろう。

 

「初日から遅刻は感心しない、かな。明日からはしっかりHRの前に来てね」

 

「はい」

 

悪びれのないその態度にクラス中の生徒がワイズミ・ユウトがどういった人物なのか定める。

 

(おいおい、アイツ完璧に不良のレッテル張られてんじゃねーか。良かったー俺は遅刻しなくて)

 

「じゃ、じゃあヒビノ君に自己紹介の続きしてもらおうかな!」

 

「あ、はい」

 

散々考えた結果、ガンプラが好きという事だけは確実に紹介できた。そんな内容で彼の自己紹介は終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

00000

 

高校の初日も終わり、それぞれが教室を出て帰路に着き始める。

シュウも荷物をまとめているとコグラが声をかけてきた。

 

「ねぇヒビノ君」

 

「なんだーコグラ」

 

「ヒビノ君は部活動とか決めた?」

 

「んー、どうすっかな」

 

春休み中はガンプラばかり作って、あまりこれからの高校生活というものは考えてはいなかった。そんな事だから彼女の1人もできないのだとは妹、マイの談である。

 

「まだ決めてないなら模型部に入ろうよ!」

 

「模型部、そんなのあんのか?」

 

「うん、一応模型部の部室はあったから多分あると思うよ」

 

「へー」

 

「よ、良ければこれから見学に行かない?」

 

行きたい、というのが本音だったが、正直にいえば寝不足で身体が保ちそうになかった。

 

「悪いな、俺今日は帰って寝ないと命に関わりそうだ」

 

「あぁ、徹夜でガンプラ作ってたんだっけ。どんなMSなの?」

 

やはりガンプラ、というかガンダムが好きなコグラにとってはこういう話は大変興味があるようだ。

 

「明日持ってきて見せるよ」

 

「そっか、実は僕、普段からガンプラ持ち歩いてるんだけど、それだったら僕も明日見せるね」

 

「おう、楽しみにしてる」

 

 

 

 

 

 

 

 

00000

 

翌日、自分の自信作のガンプラを見せるとあって上機嫌なシュウは登校してきたや否やコグラを見つけ、早速話しかける。

 

「よっ、コグラ!」

 

「ヒ、ヒビノ君!?」

 

「どした?そんな驚いて」

 

「い、いや。何でもないよ、ハハ…」

 

「?それより、持って来たぜ俺のガンプラ!」

 

「そのことなんだけどね」

 

「?」

 

「実は今日、家にガンプラ置いてきちゃって、お互いに見せ合うのはまた今度にしよ!」

 

そう言うとコグラは逃げるように教室を出ていった。

 

「随分と強引に拒まれたな。なんかあったか?」

 

 

 

 

 

まだ新学期が始まったばかりという事もあり、今日も学校は午前中に終わった。

 

(あれからコグラと話せてないな)

 

そう思いコグラの席を見ると既にコグラの姿はない。

 

「先生」

 

「どうしたのヒビノ君」

 

「模型部の部室ってどこっすか」

 

「模型部?確かウチにはなかった筈だけど」

 

「はい?」

 

「資料で確認した時は模型部なんてなかったと思うな」

 

「っ!」

(どういうことだ…!?)

 

疑問に思った途端にシュウは部室棟に向けて走り出した。

 

「ちょっとヒビノ君!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

00000

 

「はぁはぁ…、ちゃんと、部室、あんじゃん」

 

模型部と書かれた看板の前で乱れた息を整える。模型部の部室は最上階の3階、更には階段から一番遠い端の部屋であったので、下から順にしらみつぶしで回っていたシュウはこの部室棟の全体を走り回った事になる。

 

「ふぅ、なんかヤバい事でもあんのかと思ったけど勘違いだったかな」

 

そうぼやいて扉に手をかけようとすると、中がなにやら騒がしい。それも賑やかな部類のものではなく、強い脅しの様な声だ。

 

「っ!?」

 

勢いよく扉を開けた先には、がらの悪い男3人が小柄な男子を囲んでいるという構図が出来上がっていた。勿論シュウには小柄な男子の後ろ姿に覚えがある。

 

「コグラ!」

 

「ヒビノ君!?」

 

「あ?誰だお前、コイツのツレか?」

 

早速男の1人がシュウにも絡んでくる。

 

「そうだよ、というかアンタら何してんの」

 

「オイオイオイ、こっちは先輩なんだからさ、一応敬語使ってくれよ」

 

(んなこと知るかよ。…ん?)

 

内心で毒づきながら男達を睨むと、その奥にどこかで見た事がある少年が1人。

 

「ワイズミ!?」

 

「……」

 

「お前、ホントにそっち側だったのかよ…!」

 

「ユウト、コイツ知り合いか?」

 

「いや、クラスが同じってだけです」

 

シュウの言葉には反応しないが、男達の言葉にはしっかりと返事をする。

 

「コグラ、帰るぞ。こんなの模型部じゃない」

 

「で、でも!」

 

「でもって何だよ」

 

「コイツはさぁ、もうこの模型部の部員なワケ。部外者は引っ込んでな」

 

「あー!もう何がどうなってんだ!最初から説明してくれ!」

 

「実はね…」

 

コグラの話を聞くかぎり詳細はこうだ。

昨日、模型部に立ち寄ったコグラは入った途端にその容姿もあってか意図もたやすく男達に絡まれる。

どうやらこの男達はコグラのような気の弱そうなガンプラファイターにバトルを挑み、勝てば相手から何かを奪い取っていくというハイエナの様な奴らしい。

例によってコグラもバトルを挑まれ、コグラが勝てば何もされず模型部から立ち去れる。男の1人が勝てばコグラは模型部に入り、持っていたガンプラも貰いうけるという内容でバトルとなった。

結果はコグラの敗北。こうしてコグラは模型部に強制的に入れられて今に至る。

 

(なるほどね。コグラみたいな奴はガンプラバトルにそれなりのこだわりがあるからそう簡単に約束は破らなそうだもんな。ワルのくせに変に頭使いやがって)

 

「でだ。お前も俺達とガンプラバトルするか?」

 

その煽り文句に他の男が笑い出す。向こう側で笑っていないのはワイズミくらいだろう。

 

「やろうぜ、ガンプラバトル」

 

「へぇ、そうこなくっちゃ「ただし」…あ?」

 

「俺が勝ったらこの部室を貰う」

 

「何ぬかしてんだお前」

 

「今この学校に模型部ってない事になってんだろ?だったら俺がここで新しい模型部を作る」

 

「そんだけ言うんだったら、こっちもそれに見合うくらいは要求しないとな」

 

「いいぜ、アンタらの言う事なんだって聞いてやる」

 

「そいつはいいz「しかも」…チッ、なんだよ」

 

先程から自分の言葉に被せてくるシュウに男がイラつきだす。

 

「ハンデだ。アンタら全員を俺1人で相手する」

 

「「「!?」」」

 

その言葉にはコグラや男達は当然の事、今まで無反応だったワイズミすら驚く。

 

「何言ってんの!無茶だよ!」

 

「こんくらいしないと部室と釣り合わないだろ?その代わり、俺が勝ったらついでにこの部室をきっちり綺麗にしてもらうのも追加な」

 

この言葉が男達にとっても最後の決め手となった。確かにこの提案は自分達の勝ちが揺るぎないものになるのは間違いない。受けることはあっても拒む理由はない。

 

「いいぜ、その条件のった」

 

「ちゃんと約束は守れよ」

 

「当たり前だ、お前こそ多対1で負けたからって後で言い訳するなよ」

 

「しねーよ、俺負けないから」

 

「このガキ…!」

 

 

 

 

 

 

一応、昔はこの学校にもちゃんとした模型部があったのだろう。その証拠に部室には1ユニットのバトルシステムが設置されていた。

シュウと男達が向かい合ってお互いの機体をセットする。

 

「あれ、ワイズミはやんないのか?」

 

「……」

 

「アイツはまだ自分のガンプラ持ってねぇからな」

 

「なるほど」

 

するとバトルシステムに工場都市のようなマップが広がる。今回のバトルステージは機動戦士ガンダムSEED DESTINYに登場したコロニー〈アーモリーワン〉だ。

 

(“コイツ”の初陣にはピッタリなフィールドじゃねーか)

 

「んじゃ、やるとするか」

 

「おう!ヒビノ・シュウ、ゼロスプレンダー行きます!」

 

シュウの側から白い小型戦闘機が出撃する。シュウはすぐさまスロットを操作しEXの番号を選択。続けて2機のユニットが射出され、戦闘機を挟むように直列する。

 

「もしかしてヒビノ君の機体って…!」

 

3機はそのまま合体することで、1機の白いMSとなった。

 

「これが俺の機体!〈インパルスガンダムゼロ〉だ!」

 

(へぇ…)

 

男の1人がシュウの機体を見てほくそ笑む。あれは素人目で見てもかなり完成度の高いガンプラだ。昨日手に入れたガンプラと合わせて売ればそれなりの金になるだろうと画策さる。

 

「それにしても…」

 

「あ?」

 

「フィールドはアーモリーワンで相手の3機はカオス、ガイア、アビス。テンション上がってくるな!」

 

(何言ってんだコイツ…)

 

男達はガンプラを金集めの道具として持っており作品の知識は全くないので、この状況が原作と重なっているという事は分かっていない。

 

「まぁいい、相手は一機だ。囲んでやるぞ!」

 

「「おう!」」

 

まずはカオスとガイアが進撃し、アビスはその場で砲台のように肩部の連装砲を放つ。

 

「かかってこい!」

 

シュウもまたインパルスゼロの脚部スラスターを使いながら砲撃を避けつつ進む。

 

「まずは、コイツから」

 

そういってスロット1を選択し、ビームライフルを撃つ。

 

「なっ!?」

 

すかさずガイアはシールドを構え防御に移る。足は止まってしまったが、シールドを使わなければ直撃は免れなかっただろう。

 

「テメェ!」

 

ガイアの動きは止まったが、カオスはそのままインパルスゼロに接近し、ヴァジュラビームサーベルを振るう。

 

「うぉっと!」

 

シュウはすぐさまスラスターで急ブレーキをかける事で回避。そのまま後退すると見せかけフェイントでカオスを抜き去った。

 

「何!?」

 

そのまま向かった先にはガイア。インパルスゼロは相手に対してライフルを撃ちながら進んでいく。

 

「く、来るのか!?こっちに!」

 

ガイアもまたビームをシールドで対処しながらヴァジュラビームサーベルを抜いて迎撃態勢となる。

 

「うおぉぉっ!」

 

「よっと」

 

ガイア渾身の突きはジャンプによって軽々とかわされ、そのまま踏まれてジャンプ台代わりにされる。

 

「お、俺を踏み台にしたぁ!?」

 

「お、いいねその反応」

 

そう言いながらシュウは先程から動き回るインパルスゼロに照準が定まらないアビスへと突撃する。

 

「本命はこっちか!」

 

「とばすぞ、ゼロ!」

 

続けてインパルスゼロはビームライフルを投げ捨て、腰部に装備していた対装甲ナイフを手に取る。

 

「く、来るな!」

 

アビスがインパルスゼロに向けて乱射をするが、ファイターが焦っている為か中々当たらない。それどころか相手が加速した事もあり、その距離はいつの間にかゼロになっていた。

 

「はぁっ!」

 

そのままコクピット部を一突きしアビスは戦闘不能となった。

 

「テメェ、やりやがったな!」

 

間もなく背後から四足獣のようなMA形態に変形したガイアが迫って来る。

 

「っ!!!」

 

シュウはもう一本のナイフを引き出すと、頭上からの攻撃を紙一重で避け腹部を二刀流でかっ裂く。

アビスに続いてすぐにガイアも沈黙する。

 

(凄い…!)

 

この戦闘を見ているコグラはシュウの技量にただただ感動していた。

 

(それにあのインパルス、小さいスラスターがいくつか付いてる。しかも装備も今の所ライフルとナイフだけの軽装備で機動性はかなり上がってる筈…!)

 

相手から見ればまるで獣と戦っていると感じるのではないか、少なくともコグラにはそう見えている。

 

 

 

(何だよ、何なんだよ!)

 

先程までは3対1でこちらが圧倒的に優位な状況の筈だった。それがあっという間に覆されてしまった。この男達も本物の喧嘩で培った経験もあり、決してバトルに弱い訳ではない。現に今までは勝ち続けてきたのだ。しかし、今回の相手は違った。多勢で挑んでも傷一つ付けられない。

 

「何なんだよぉっ!」

 

そう叫びながら最後の手段とばかりに背部に装備していた兵装ポッドを射出する。

 

「っ!」

 

遠隔操作可能なそれがインパルスゼロに向かって来るが、慌てる事なく両手のナイフを飛ばして撃ち落とす。

 

「あっ…」

 

「これで終わらせてやるよ!」

 

インパルスゼロが再び加速しカオスに迫る。

 

(もう手持ちの武器は無いのに!どうするのヒビノ君!)

 

カオスに近付く途中、インパルスゼロは大地を蹴って跳ぶ。そのままシュウはスロットの0番を選択。

 

「インパルス…!」

 

シュウの声と共にインパルスゼロの右手が黄金色に輝き出す。

 

「レーザークロー!!!」

 

その右手はまるで獣の爪の如くカオスを貫いた。

 

『~~~~~~!!!』

 

バトル終了のブザーがなった。今このフィールドに立っているのはインパルスゼロのみ。つまりこの勝負、シュウの勝利である。

 

「やったー!」

 

「おわっ」

 

コグラが感激のあまりシュウに突っ込んで来る。

 

「凄い!凄いよヒビノ君!」

 

「言っただろ、負けねーって」

 

まるで自分の事のように喜ぶコグラを見ると、シュウも悪い気はしない。

 

「さて、約束通りこの部室は貰「…ねぇ」…はい?」

 

「納得いかねぇつってんだよっ!」

 

そう言ってカオスを操っていた男が殴りかかってくる。

 

「マジか!コグラ、後ろに隠れろ!」

 

コグラの盾にでもなるかのように前に立つシュウ。彼自信、避けまわることには自信があるが力比べや拳のぶつけ合いは苦手な方だ。

 

「っ!!!」

 

衝撃に備え身体の前で腕をクロスさせる。

 

ゴスッ!と室内に鈍い音が鳴る。

 

「?」

 

しかし、音に反してシュウの身体に衝撃は伝わって来ない。不思議に思って目を開けると、1人の少年が代わりに自分の腕で男の拳を受け止めていた。

 

「ワイズミ!」

 

「先輩達、負けは負けなんすから大人しく条件のむのがフェアってもんじゃないすか?」

 

「ユ、ユウト!」

 

「それとも、拳使うってんなら俺が相手になりますよ」

 

「…っ!くそっ!わぁったよ!行くぞお前ら!」

 

ワイズミの睨みにすくんだのか男達は大人しく部室を後にしようとする。

 

「おい、コグラのガンプラ返せ」

 

「チッ、おら!」

 

乱暴に投げながらコグラにガンプラを返す。

 

「うわっ!」

 

今度こそ本当に男達は去って行った。

 

「あ、おい!掃除は!?」

 

「ヒビノ君論点ずれてるよ」

 

「悪かったなお前ら、迷惑かけて」

 

「ワイズミ君…」

 

「いやいや、俺もさっきは助けてもらってサンキューな」

 

「別にいい」

 

そう言ってワイズミもまた部室を出て行った。

 

「あ、行っちゃった」

 

「何にしてもだ、これでやっと模型部ができるな!」

 

「う、うん!そうだね」

 

「まずは2人でやってくとするか。よろしくなアキラ!」

 

「え?」

 

「なんだ?」

 

「今、アキラって…」

 

「あぁ下の名前で呼んだけどダメか?」

 

「そ、そんなことないよ!こちらこそよろしく、シュウ君!」

 

「おう!」

 

「あっ」

 

お互いの友情を深めあったのも束の間、突然アキラが何か気付いた様な苦い顔つきになる。

 

「どした?」

 

「多分さ、部活の申請って部員が4人集まってからじゃないとダメだった気がする…」

 

「マジか…」

 

どうやら模型部を作るにはまだ少し時間がかかりそうである。




初めましての方は初めましてジャージ王子と言います。
今回からかなり遅れ気味ではありますがビルドファイターズの二次にも挑戦してみました。
皆様からの感想やご指摘、質問をバンバンお待ちしているのでどうぞよろしくお願いします。

以上、ジャージ王子でした。ではでは( ・_・)ノシ

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