小マゼラン雲ルビー戦線、サファイア戦線などの生き残りの駆逐形デストロイヤー艦25隻、巡洋艦10隻、三段空母7隻を率いてデスラーの旗艦である真紅の戦闘空母デスラー・ガミラシアが大マゼラン雲サンザー太陽系へ向かう宇宙空間を航行していた。
「偉大なる大ガミラスの戦士諸君。われわれがガミラス大帝星を離れてすでに2年になる。
しかし、戦士諸君もよく知っているようにわれわれはただいたずらに宇宙を放浪していたわけではない。ガミラス民族のガミラス民族によるガミラス民族のための国家の再建、大ガミラス帝国の復興、この宿願を果たさんがためであった。
諸君、宇宙は無限に広がると称されることはよく知っていると思う。したがって、われわれの新国家建設を可能とする惑星は必ず発見されるであろう。あらたな首都星となる惑星に新国家を建設し、十分に戦力を増強し、周辺の惑星系をことごとく征服して偉大なるガミラス帝国を再び宇宙の盟主とするのだ。これよりわが母なるガミラス星を訪れ、最後の別れを告げたのち、新天地への大航海へ向かう。諸君のいままでの労苦に感謝し、なお一層の忠誠を期待するや節である。」
「うおおおお~」
集まった兵士たちのどよめき、歓声、雄たけびか艦内にこだました。
デスラーは「全艦、ガミラス星に進路をとれ。」と命じ、艦隊は右35度に進路を変えた。
さて、一方、白色彗星とデスラーとの戦いが終わって春香たちが地球に帰還して
一ヵ月後の地球防衛軍病院前では...
「春香!」
「千早ちゃん。」
「律子さん。」
「みんなすっかり元気になりましたね。」
「ヤマトの状態は?」
「いつでも出航できます。律子さん。」
「白色彗星を倒したのはよかったけどデスラーとの戦いでかなり傷を負ったから。」
「白色彗星をテレザートで倒したじゃないですか。だから地球は無傷ですんだんですよ。」
春香は持ち前の肯定的思考で律子との会話をつなぐ。
「そうね。春香。」律子は微笑みながら同意した。
数日後、春香と千早は訓練航海の準備のためにヤマトを訪れていた。
「みて、千早ちゃん、すっかりもとどおりになってる。」
「そうね。よく短期間でここまで修復できたわね。」
「あ、あれは。」
「真。」
「へへー。機関部の整備にちょっと手間取って。みんなの退院祝いに迎えにいけずごめんね。」
「真はいつ退院したの。」
「かすり傷程度だった入院すらしなかったよ。」
「春香、千早おひさしぶり。」
「舞さ、...艦長。」
「真クンはかすり傷ですんだから、ずっとヤマトの面倒を見てくれたのよ。」
「真、ありがとう。」
「真がしっかり整備してくれるから安心だわ。これからもよろしくね。」
「ありがとう、律子。」
訓練学校の卒業式が行なわれ、ヤマト乗り組みを命ぜられた卒業生が兵員輸送艇になってヤマトへ向かってくる。なかには卒業生でない、配属が変更された者の姿も散見された。
「新しい乗組員が乗ってくるわね。」あずさが舞に話しかける。
「昔の春香たちのようね。」舞が微笑みながらつぶやく。
新乗組員の乗った兵員輸送艇はヤマトにぶつかって転覆した。
「あらら~。」あずさは苦笑するしかない。
舞は「これは先が思いやられるわ。」とつぶやいて苦笑した。
びっしょ濡れの新乗組員といっしょに古参のはずの双子姉妹の姿が見える。
「双海亜美、双海真美、ヤマト乗り組みを命じられました。」
「徳川太助以下機関部員30名、ヤマト乗り組みを命じられました。」
「亜美、真美。それに徳川君、どうしたんだよその格好は。」
「まこちん、ボートがヤマトにぶつかって沈んじゃったから、亜美たちも海のなかにどぼんしちゃったんだよ。」
「もう。しょうがないな。風邪引くから早く着替えてきてね。」
「申告します。北野始以下戦闘部、砲術部、航海部40名、ヤマト乗り組みを命ぜられました。」
「みんなをそれぞれの部署につかせてください。伊織。」
春香は伊織のほうへ向いて目配せする。
「北野、あんたは砲術副長補佐で第一艦橋勤務。といっても今回は実戦同様の訓練で、あんたをびしびししごくからね。」
「はい、伊織先輩。」
「総員配置につきなさい。」舞の言葉が艦内放送で響く。
「乗組員の皆さんに告げます。宇宙戦艦ヤマトはこれよりテスト航海に出航します。この航海の目的のひとつは新乗組員のみなさんに一日も早く立派な宇宙戦士に育ってもらうことにあります。従って訓練は実戦同様に行います。」
「舞さん、はりきってるわね。」医務室で両手を組んで微笑みながらあずさはつぶやいた。
機関室では新人たちの会話が交わされる。
「いきなり出航かよ。おどろきだな。」「一週間くらいのんびり講義でも聴くのかなとおもったよ。」
「出航準備します。総員配置についてください。」
「補助エンジン動力接続。スイッチオン。」
「スイッチオン。」と唱和し、機関室で新人がレバーをおろす。
「補助エンジン定速回転1500、両舷推力バランス正常。」
「微速前進0.5」
「波動エンジン内エネルギー注入!補助エンジン第二戦速から第三戦速へ。」
「波動エンジンシリンダーへの閉鎖弁オープン。」
機関室では...
「閉鎖弁ってどれだっけ。」
「えっとあれだよ。」
「スイッチオン。」
亜美の指差した方向にあったと思われるレバーを太助が押し下げてしまった。
「あああ~、太助っち。それ違うよおお。」
「あ~違う違う、やばいよ。まこちんが(汗)」
「亜美、真美なにやってんだ。それは非常制動装置だ。訓練学校で何を...」
「すみません。自分であります。双海曹長たちには責任ありません。」
「太助君か。気をつけてよ。冥王星で亡くなったお父さんの徳川機関長が泣くよ。それから亜美、真美、指導しっかり頼むよ。」
「まこちん。ごめん。太助っちをばしばししごくからあ。」
「太助っち、こうなったらちかたないね。」
「波動エンジン、第4戦速へ。」
「波動エンジン内圧力上昇。」
「フライホイール始動。」
「メインエンジン点火、10秒前、9,8,7.....2,1,0、ヤマト発進。」
機関室で新人によるちょっとしたトラブルはあったもののこうしてヤマトは無事に訓練航海へたびだった。
「後方100kmから飛行編隊50機が接近中。コスモファルコン隊ですぅ。通信回路につなぎますぅ。」
「こちら音無小鳥以下50名、ヤマト配属を命じられました。20名は今年の卒業生です。」
「小鳥さん、おひさしぶり。」
「春香ちゃん、よろしくね。ああああ、坂本君だめだって。」
坂本機がヤマトの前で急上昇し、らせん状に回転飛行をしてみせる。
「もう、何してるの。あれ。」
「坂本君みたいね。」
「ちょっと、ほっておくわけにはいかないわね。」
舞の美しい顔がけわしくゆがんだ。
「早く着艦しなさい。」
舞の美しいが静かな怒りを含んだ顔が坂本機のパネルに映し出される。
坂本が格納庫に降り立ったとき、そこには舞の姿があった。
「坂本君。なぜ私がここにいるかわかる?」
「お気に召しませんか。」
次の瞬間坂本のほおに舞の鉄拳がとんだ。
坂本はどうと倒れた。
舞は両腕を腰に当てて坂本をにらむ。若く美しい舞だが歴戦の指揮官である。その眼光にやどる気迫は坂本を圧倒した。
「わたしは、指揮官としてガミラス、白色彗星と命がけで戦ってきたの。」
「あなたは空戦のプロなんでしょ。艦載機をおもちゃにするんじゃなくて実績をみせなさい。」
「はい...。」と坂本は弱弱しく返答するしかなかった。
「大マゼラン雲サンザー太陽系ガミラス本星まで40宇宙キロ」
タランがデスラーにそう告げると
「あれから、20ヶ月になるのだな。タラン。」
「ガミラスをみるのはこれで最後になるのかもしれん。そしてあのイスカンダルも。」
デスラーはヤマトとの戦いやスターシャのことに思いをはせていた。
デスラーは外郭にあいた穴からガミラス星の表面を見つめると、外郭の空洞から内部にいくつかのゴマのような黒点があり、発光信号のような光が点滅していた。
「あれは何だ。」
「メインスクリーンに拡大しろ。」
それは見たこともない艦種であったが、どうみてもガミラシウム採掘の工作船団であった。
掘削機がガミラス星を深く掘削している様子が見えた。
デスラーの心の中に怒りの火が燃え上がった。
かってガミラス星は、ガミラシウムによって宇宙船を稼動させ、兵器としても用いてきたが、星の寿命を縮めることが判明して以来、波動エネルギーへの転換を図ってきたのであった。
「許せん。わが母なる星を傷つけるとは。」
「全艦、戦闘配備、紡錘隊形で続け。」
「主砲発射準備にかかれ。」
「敵工作船団、護衛艦隊、射程距離に入りました。」
「全艦主砲斉射。」
正体不明の工作船団がうす赤い光条に貫かれ、また円盤型の護衛艦も貫かれて四散していく。
その頃、ガミラスとイスカンダルより50宇宙キロには、採掘船団からの報告を待っていた不気味に黒光りする円盤型の巨大戦艦と100隻あまりの巡洋艦部隊が宇宙空間に集結していた。円盤型をした巨大戦艦の巨体は直径350mに達し、同じくらいの高さの艦橋を持つ。主砲の口径は51cmはあるであろう。艦橋の幅は、ヤマトの船腹くらいあろうかという大きさで摩天楼というより、要塞といったほうがいい威圧感である。
巨大戦艦の名前は「プレアデス」といった。たまたまおうし座にある散開星団M45の地球からの呼称と酷似しているが、「~アデス」というのは、この星間国家での円盤型の巨大戦艦の呼称をあらわす語尾であり、同型艦には「ガリアデス」がある。ちなみにこの星間国家の持つ堅牢な浮遊要塞をあらわす一般的な呼称は、地球人には「ゴルバ」と聞こえる名称である。さて、プレアデスの艦橋はひろびろしており、前方の空間を270度にわたって視界に見渡すことができる。その中央には指揮官席があり、やや肥満であるが堂々たる体躯で筋肉隆々の人物が座っていた。その人物には、頭髪がなくメキシコのオルメカ文明の巨石人頭を思わせるようないかつい顔をしている。
彼は、地球から50万光年離れた暗黒星雲に本星をもつ「暗黒星団帝国」という一大星間帝国の大マゼラン、小マゼラン方面を担当する「マゼラン方面軍」の第一遊撃機動艦隊の司令官であって、その名をデーダーといった。
そのデーダーにガミラシウム採掘作業船団より通信がはいったのはそれからまもなくのことであった。
プレアデス艦橋内には、五角形のスクリーンがある。その画面には狼狽した様子の採掘船団司令の上半身が映し出された。
「デーダー総司令、デーダー総司令」
「何事か」
「緊急事態発生。緊急事態発生。ガミラス星にてガミラシウム採掘中、正体不明の敵の攻撃を受け、なおも交戦中。」
「うむ。すぐ救援に向かう。それまで戦線を維持するのだ。」
第一遊撃艦隊旗艦プレアデスは、その威風堂々たる巨体をガミラス星に向け、巡洋艦部隊を引き連れて進撃を開始した。
一方、ガミラス星では、正体不明の採掘船団が爆発し、エネルギー採掘機と誘導パイプも爆発を起こした。それは空洞化によってマントルの表面が固まっているだけの脆弱なガミラス星の地盤を引き裂くこととなり、深刻な打撃となった。マントル奥深く食い込んでいたエネルギー採掘機と誘導パイプの爆発による誘爆は、ガミラス星のマントル自体を発火、爆発させることになった。
さしものデスラー艦隊も危険な状態に置かれていることに気づいた。
「マグマが吹き上げてくる。誘爆が続いていて極めて危険だ。全艦、反転上昇せよ。」
ガミラス艦隊が上昇し、ようやくガミラス星から30宇宙キロ離れたとき、ガミラス星は、大爆発を起こして、宇宙空間の闇を一瞬照らしたかと思うと、無数の岩塊となってとびちった。
それをみたデスラーは呆然と艦橋に立ち尽くした。
「ガミラスが、わが母なる星が...」とつぶやくと、やがて悲しみと絶望感に襲われて
方膝をつき、顔をふせ、目を閉じるしかなかった。
「消えてしまった...。」
そう言葉をようやく吐き出すと
「やがて滅び行く運命にあったとはいえこのような残酷な結末を迎えることになろうとは...それをこの目で見ることになろうとは...」
艦橋にいた面々は、自らの主君と同様に顔をふせ、目を閉じていた。かすかな声であったにもかかわらず、すすり泣きと嗚咽がもれ聞こえていた。
その状態にもかかわらず、デスラーの副官であり忠臣であるタラン将軍は自分の任務に忠実であった。彼は、イスカンダルの動きに異常があることを見つけ、
「総統、イスカンダルが...動き出しました。」
デスラーははっと我に返り、次の瞬間「追え、追うのだ。」と叫んでいた。
イスカンダルはガミラス星が消失したため、二重惑星の重力バランスが失われ、ちょうど砲丸が投げ出される瞬間のように急加速して暴走をはじめた。しかもそのスピードは抑えるものがないため、加速する一方であった。
そのころ、プレアデスの艦橋では、デーダーが状況報告のために艦橋につったって上官からの連絡をまっていた。部下の通信士から
「マゼラン方面総司令官メルダーズ長官が出ました。」
とアナウンスがあり、メインパネルには、細面で薄青い皮膚をしたまったく頭髪のない人物が姿をあらわした。
「どうしたのだ。デーダー」
「ガミラス星で採掘作業中、正体不明の敵の攻撃を受け、交戦中にガミラス星が大爆発を起こして消滅しました。」
「なに...」
「作業船団及び護衛艦隊は全滅の模様。」
「イスカンダルはどうなっている?」
「通常軌道をはずれ、暴走をはじめました。ガミラスとイスカンダルは二重惑星ですから、引き合っていた引力の一方が消滅したため、軌道から弾き飛ばされることになったようです。」
「貴官も知っているように、ガミラスのガミラシウムとイスカンダルのイスカンダリウムは、我が帝国が遂行している星間戦争で必須のエネルギー源だ。これを採掘せずに帰還することは許されん。すなわち、イスカンダルを見失なってはならん。追え、追うのだ。」
「はつ。」
デーダーがメインパネルに向かってそう答えると、まもなくメルダーズの姿が画面から消えて、メインパネルの画面は漆黒の状態にもどった。
ヤマトは新乗組員をのせ訓練航海に出航します。一方、サンザー太陽系では、なぞの採掘船団が現れ、それをみたデスラーは怒りのあまりにそれを攻撃、ガミラス星が爆発してしまいます。ガミラス星がなくなったため、双子星のもう一方であるイスカンダルが暴走してしまいます。なぞの採掘船団は、暗黒星団帝国に属する船団で、星間戦争で必要なエネルギー源としてガミラシウムとイスカンダリウムを採掘するのが目的でした。