咲 -saki- 二人の少女のハイスクールメモリー   作:レイ・シャドウ

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更新遅れてすみません!


UA2000突破! ありがとうございます!!


第三局

「うー…重い。」

 

閑静な住宅街の朝の道路、その道をキャリーバックを引きずりながら私は下っている。

中に入っているのはデスクトップパソコン、昔私が使っていたもので結構なお古だ。確か、買ったのも8年前くらいだった気がする。

で、どうしてそんなものを引っ張って学校に行っているのか?

それはというと…数日前に遡る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜数日前〜

入部から3週間近くが経ち、部室行く→二麻を打つ→久と話す→帰るという生活がそろそろマンネリ化してきたころ、ふと久がこう呟いた。

 

「…何か部室が殺風景な気がするわね」

 

「…どうしたの、急に?」

 

部室にもともとあったベットで、横になりつつ私はそう返答した。

因みに久は雀卓の椅子にいる。

 

「いや…雀卓とベットしかない部室がなんだか急に寂しく思えてきたのよね、壁のフローリングも剥がれてきてるから余計にそう思ってしまうのかも。」

 

確かに部室の壁のフローリングは所々剥がれ落ち、色も褪せてきていた。それどころか、破れてしまい柱が丸見えという場所もある。昼ならいいけど夜に電気をつけずに入ったらかなり不気味だろう…

 

「とは言っても、新たに設置する物なんてないでしょう。というか、話が急展開すぎますよ…何の前触れもなく部室の模様替えしたいだなんて」

 

「模様替えとは言っていないのだけど…にしても、このままこのオンボロ部室を使い続けるのもどうも気乗りしないのよね…新入部員が部室の影響で麻雀部に悪い印象持たれたらたまったもんじゃないし。廻?誰か麻雀部の知り合いに自分のところの部室がどんな物なのか聞いてくれない?」

 

「無茶言いますね…とはいってもこの部室に足りないものって考えたこともなかったっけ。少しばかり考えてみましょうか。」

 

えーと…今ある設備は、雀卓・ベットあと一応バルコニーにも椅子があったっけ。結構年季のはいっているものだけど。

スペースは結構余ってるし、それほど大きいものでなければ置けるはずなんだけど…

 

「…野球部やサッカー部とかと違って置き場に場所を取るものがないから余計にそう見えるのかもね。牌や点棒も、隙間収納可能だし。」

 

どーするべきか…と呟く。

フローリング部分は業者を呼ぶにしても模様替えは自分たちでしなければならない。中学の部室にここにないもの何か置いてあったっけ?

思案に暮れる…

 

「あ、そーいえば中学の部室にPC置いてありましたね〜、結構お古で、あまり使い物になりませんでしたが。」

 

「へぇ、それでも豪勢ね。学校からの支給?」

 

「まぁ、それに似たところですかね〜。PCルームのパソコンを新しいのに買い換える時、処分するくらいなら一台くれ!って顧問がごねたものですから。ま、ないよりかは随分マシでしたがね。」

 

 

「そう、それで、急にその話を持ち出してきたのは?」

 

「あぁ、うちに一台古いデスクトップパソコンがあるのでそれを持ってくれば…」

 

「確かに、空白は埋まりそうね。だけど、大丈夫?絶対重いし精密機械だから運搬は無碍に出来ないし…」

 

「その辺は大丈夫でしょう。父も車持ってますから。その日は送ってもらいますよ。」

 

「そう、それじゃ、ごめんけどお願いね。パソコン置く机は何処から引っ張りだしてくるから。」

 

「リョーカーイ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…そう思ってたのに

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何でその当日に限って遠征試合が入っちゃうんですか!!!か弱い女子にパソコン持たせて学校に登校させるなんて何の拷問ですか!?」

 

〜今朝〜

「おはよーござまーす」

 

若干寝ぼけ眼でリビングへ降りると、父はすでにユニフォームに着替えていた。

別段これは珍しい光景ではない。いつも通りの風景だ。

車の鍵を持って外に出ようとしているのを除けば…

…あれ?

 

そのまま父は玄関から出て行き、車のエンジンをかけて仕事場へ言ってしまった。

 

わけも分からずその場に立ち尽くしていると、机の上に置き手紙を見つけた。

 

 

それを手に取って見ると…

 

 

ごめん廻!

今日新潟遠征で早く家出ることをすっかり忘れてた。

目覚まし早めにセットし直しておいたから自分でパソコン持ってってくれ!!

キャリーバックに詰めておいたからm(_ _)m

 

父より

 

 

「あのバカ親父…今度対局する時に絶対純正九蓮宝塔食らわしたる!そんでもって絶対土下座させてやる!」

 

もはや口調すら崩壊しているなか、私は静々とキャリーバックを引く。

幸い父は本当に早めに目覚ましをセットしてくれていたようで時間には余裕がある。

ただ、学校まではあと1,5km近くある。その距離を徒歩で行くのも辛いものがある。

因みに私は普段は自転車通学だ。おかげで何時もより倍以上の登校時間をかけなければいけない。

 

「はぁ…せめて誰かが手伝ってくれればなぁ。」(ポトッ)

 

まぁ、どうせそんな都合のいいことなんて起きないんだろうけど

 

「? あの〜…」

 

うーん、何か九蓮だけでは物足りなくなって来た…四暗刻単騎でも和了して…それから…

 

「あの…?」

 

あ、そうだ。数え役満もいいかもしれない。ただあくまで理想論だから、実際にそれをできるかどうかと言われると微妙だけど…あのバカ親父も一応は元プロだからなぁ…

ま、九蓮和了っとけば土下座するでしょ…

 

「あの!!」

 

「はひ!?何でしょう?」

 

急に後ろから声がかけられた。

振り向くとそこには制服を着た紫髪の女性が立っていた。

見たところ清澄高校のものでは無い。

 

「これ、落としましたよ?」

 

「へ?」

 

その人に差し出された手の先にあったのは…萬子の一?

 

あ、そういえば久に予備の一萬が一個足りないからどっかからもらって来れない?って言われたから父にもらって来てもらったんだった。

 

「すみません、わざわざ。ありがとうございます。」

 

「いえ、偶々落としたのを見ただけですので、お構いなく…?」

 

 

そういいつつ、その女性の目線はキャリーバックに向いている。そりゃそうか…制服でキャリーバックなんてミスマッチにもほどがあるからね。

 

「あぁ、このバックに関しては、ちょっとした事情がありまして…あまり気にしないでいただけたら幸いです。」

 

「そ、そうですか…

あの…宜しければ、それを持って行くの手伝いましょうか?」

 

「へ?いや流石に初対面の人にお手を煩わせるのは…」

 

「ですが、それを引いてそちらの目的地へ行くのも大変でしょう?先ほども独り言でそういっていたようですし

制服を見る限り、清澄高校ですよね?

あと1,5km近い道のりを一人で行くのは大変かと…?」

 

「うぐ…確かにそうですが。」

 

「幸い方向は同じなので少々遅れたところでなんの問題もありませんが…どうでしょうか?」

 

何だろう…理詰めというか、いちいちこの人の言うことは説得力がある。頼ってもいいのかな?

 

「…じゃぁすみませんが…登校時刻は大丈夫なんですか?」

 

「大丈夫です。あと1時間はありますのでお構いなく。」

 

「それなら…お願いします。あ、私は、清澄高校の一年生の伊奘諾 廻と言います。先ほどの牌から予想できるように麻雀部所属です。」

 

「あ、同級生だったんですね。

私は…

 

 

 

 

 

 

鶴賀学園一年生 麻雀部の加治木 ゆみです。部とはいっても、部員二人だけなんですけどね。」

 

「ほうほう、加治木さんも麻雀部ですか、人数も二人…これはまたなんとも奇遇なことで…」

 

「も?…ということは伊奘諾さんのところの清澄も?」

 

「えぇ、そうです。あ、同級生なんで敬語いらないですよ〜。それに呼び捨てでいいですし。」

 

「…そうか。分かった。それでは、口調を崩して話させてもらおう。廻でいいか?」

 

「OKです。加治木さん。「ゆみでいい。」…ゆみさん」

 

「さん付けしなくても構わないのだが…まぁいいか。それでは、行こうか。廻。」

 

「了解です。」

 

 

そういって、ゆみさんがキャリーバックを引いてくれる。

正直助かった。このまま一人で行くことになっていたら恐らく学校つく前にバテバテになっていただろうし…

基礎体力ないからね〜私は…

 

 

〜40分後〜

流石に、ゆみさんにばかり荷物をもたせるのも罪悪感がしたので、途中何度か代わる代わる荷物を持って行き、やっと学校付近にまでたどり着いた。

 

「あ、ここからは自分で行けるので大丈夫ですよ〜。」

 

「そうか。ならここまでにしておこうか。」

 

「はい。ゆみさん、ありがとうございました!」

 

「いや、途中持ち手を幾度となく交代したし…そんな感謝されるほどでは…」

 

「それでもですよ!何もできそうもないですけど…取り敢えずお礼だけでも受け取ってください」

 

「そうか、なら受け取っておこうか。」

 

「はい!

あ、そうだ!今度うちの麻雀部とそちらの麻雀部での対局やりませんか?丁度2-2なので4人で卓を囲めると思うんですが?」

 

私たちは未だに高校入学してから4人で麻雀を打ってはいない。それを考慮するとインターミドルまでは少しでも多く実践経験をつける必要がある。

コネがないわけでもないが、まさか照のいる名門白糸台が無名校のウチと勝負してくれるわけないだろうし…他の知り合いも殆どが県外+α名門校のベンチ入りとかばかりだ。勝ち負け以前に勝負を受けてはくれない。

久が実践経験があるのかどうかは分からない。でも、今まで対局して来た様子だと腕前からすれば長野の名門 風越のベンチ入りに匹敵するくらいのレベルだ。恐らく、経験を積めばもっと上がるだろう。それに経験を積みたいのは何も私たちだけではないはず…。図々しいとは思うが互いにデメリットはないからいいとは思うんだけど…

 

「確かにな…だが、ウチのもう一人の方は問題ないのだが、私は麻雀を始めてそこまで時間が経っていない。4人でやるにも実力が拮抗していないと意味があまり感じられないだろう。私がいても大丈夫なのだろうか?」

 

へぇ…ゆみさんって初心者だったんだ。眼光とかそう言った面から、結構な場数踏んでいるのかと思った。意外だな…

とはいっても、別にそんなことはどうでもいい。正直言うと麻雀は実力ではなく運で左右される世界だ。ど素人がプロから役満を上がる…何てことも確率は相当低いけどあり得ない話ではない。本当に天文学的な確率なんだけどね…

 

「大丈夫。麻雀はあくまで運が主体ですから初心者でも、案外勝てるものなんですよ。それに、ゆみさんなら直ぐに上達すると思いますけどね…」

 

「そういうものか…それでは「おーい、ゆみちーん」っと迎えが来たようだ。それでは私はこれで。」

 

「っと、ゆみさん。一応私のメルアド渡しておきますので、都合が着いたら連絡してください。」

 

「確かに承った。出来るだけ早い段階に話がつくように調節しよう。」

 

「お願いします。それでは〜」

 

「あぁ、また会おう!」

 

そういって私はそのまま校門へ、ゆみさんは敦賀学園の方へと向かっていった。

ただ、学校にキャリーバックというミスマッチが流石に目立ってしまい、その時登校していた全生徒から注目を浴びてしまったことは、心の奥底にしまっておくことにしよう。そしてその羞恥心を打倒バカ親父に全部向けよう。

 

 

〜side out〜

 

 

 

「あんなところで何していたんだい?ゆみちん。」

 

加治木ゆみの隣で、加治木に話しかけている少女は蒲原 智美

 

「ん?あぁ、ちょっとした人助けだよ…蒲原。そしたら得する拾い物をしてしまったわけだ。」

 

「ほうほう…さしずめ、話していたあの人が拾い物と見た。誰だったんだい?」

 

「伊奘諾 廻…だな。何処かの麻雀専門誌に名前が乗っていた気がしたが、イマイチ思い出せなかった。」

 

「…ワハハ。そりゃ、相当な大物だよ。海老で金目鯛を釣り上げたものだよ。さすがはゆみちん。伊達に鶴賀の人タラシとは言われていないねぇ。」

 

「そんな風に言われた覚えはないのだが…はぁ、まぁいい。それで、具体的にその伊奘諾 廻は何者だ?」

 

「ワハハ、伊奘諾 廻といえばインターミドル団体戦優勝、萬子に愛された少女、女王とも言われる全国区の雀士だ。すでにプロのスカウトもリストの中に入れて、動向を注目しているらしいぞ。」

 

「…………どうしよう、蒲原。」

 

「ん、どうしたんだい、ゆみちん?」

 

「その伊奘諾 廻から練習試合の申し込みが入ってしまったんだ。それも、話はほぼ了承の方向へと動いてる…。」

 

 

「…………わはは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

精々飛ばされないことを祈ろう。」

 

「……それしかないか。」

 

 

そういって、二人は跪き手を合わせて天に何かを懇願し始めた。

 

 

 

 

「久〜、今度練習試合の日程入りそうだから〜予定空けといてね。」

 

「…人数随分足りないんだけど大丈夫なの?それにいつの間に決めているのよ…部長の私の意味ないじゃない。」

 

「いいじゃないか。最終的な決定権は久が持つことにしたんだし…。それに人数は問題ないよ、2-2の4人でやることになっているから。」

 

「唯の4人麻雀ね…ならいいけど、何処となの?」

 

「鶴賀学園。今朝、そこの人にあってこのパソコン運んでもらうの手伝ってもらったんだよ。」

 

「鶴賀ねぇ、麻雀部としては聞いたことがないけど…、まぁ初っ端から全国常連校と当てられるよりかは…」

 

「およ?久はそっちの方がお望み?それなら、大阪の千里山女子に知り合いいるからそこに…」

 

「違うわよ!大体、千里山ってそれもう、常連校の域を逸脱してるじゃない!」

 

「えー?面白そうなのに…去年の個人戦3位の人とかいるから。」

 

「…それを面白いと感じられるのは私の知っている中では貴女だけよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「はぁ〜…」」」

 

一人の少女の手によって、2箇所から同時にため息が放たれた。

 

 




恐らく次は鶴賀vs清澄での対局になると思います。
まだまだ未熟ですが、これからもよろしくお願いします!!

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