咲 -saki- 二人の少女のハイスクールメモリー   作:レイ・シャドウ

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闘牌部分が違和感だらけかもしれませんが
ご容赦下さい


一年編
第一局


~廻side~

卒業式に照に対戦を誓ってから一ヶ月が経過した。

卒業式が終わった後、間髪入れずに長野に引っ越し、3月中に色々と準備をしていたおかげか、私は学校で転校生みたいな扱いを受けることなくごく普通の学校生活を送れている…と思う。

まぁ、入学直ぐは大体の人が同じ中学校出身者同士のグループで固まってしまうため、正直友人関係は出来ていませんし、孤立している感は否めないが…

 

べ、別にボッチってわけじゃないですから!!これから本気だすんです!

 

と、そんな訳で学校生活は特に特筆するようなことは無く、淡々と授業時間は経過していきました。

 

 

放課後

私は、清澄高校旧校舎の前にいる。

どうやら、今の新校舎が出来上がったときからコッチは部室棟としての役割を果たしているらしく、部活道具を持った多数の生徒達が中に入っているのが見受けられる。

遠目に旧校舎の外観を確認すると、3階立ての建物の屋上に一軒家のようなものが建っている。そこが私の目的地、麻雀部部室。部員、一人でもいればいいのですが…

 

部室のドアの前で一呼吸置き、真軽く周囲を見わたす…

麻雀部と書かれた古びた標識…いかにも埃だらけのドアの取っ手…見るからに誰も近づいていないことが明らかだ。

 

「まさか、本当に部員私だけ…?」

 

覚悟していたこととはいえ、それが現実味を帯びてくるとなると流石に焦燥感は浮かび上がる。

一抹の不安を抱えつつ、控えめにドアをノックする。

 

これで返事が来なければ仕方ないや…へぇへぇどうせ麻雀する人は皆風越に流れるんでしょ〜ねっと割り切るか

 

投げやりになってしまっているのが目に見えてわかる。

 

しかし…

 

「ちょ、ちょっと待って!今開けるから!!」

 

私の予想とは裏腹に、中からは返事が聞こえてきた。少し待っていると中からはガタンッ、ゴトンッ、

 

「うわ!あぁ、やっちゃった!!」

 

っという音が聞こえてきた…

一体何をやらかしたのだろうか気になるところではあるが、この状況でドアを開けるのもなんかなぁ、中にいる人の威厳に傷がつきそうだし…としばらく自分の心の中で葛藤していると

 

「…どうぞ」

 

か細いような気の抜けたような声が中から聞こえてきた。

本当に何があったのだろうか…

 

 

 

ギギギッという古びたような音を立てながらドアを開く

中に入ってまず目に入ったのが雀卓、そしてその後ろにグッタリしたような表情をしたセミロングの髪にロングスカートを着た女性がいた。

因みに後ろには山から崩れた書類やクリアファイルが多数あった。これの所為で、あんなに大仰な音が立っていたのか…

 

「えーと…入部希望者かな?」

 

恐る恐る、その女性はそう聞いてきた。だが、その中言葉の中には、期待と歓喜の意が込められている。

恐らく、部員が自分だけで一年間どうしようか不安にくれていたのだろう。まぁかく言うこちらもそんな感情は抱いていたが…

 

「えぇ、入部希望者の1年 伊奘諾 廻です。これからよろしくお願いし…。」

 

「こちらこそよろしく!!!私は竹井久。同じ一年生よ。よかった〜、部員が私だけじゃなくて。ずっと不安だったのよ…」

 

せめて最後まで言わせてくれませんかね。まぁそう言ったところで今の竹井さんには聞こえないでしょうが…

 

「本当にありがとう。とはいえ二人じゃ東風戦どころか三人麻雀もままならないのだけど…」

 

「まぁ、こればっかりは仕方ないでしょう、長野で麻雀なら大体が風越に流れますし…それに二人いれば二人麻雀くらいはできますから」

 

 

 

そういって雀卓を見つめる。廃部寸前とはいえ、ある程度の設備は整っているらしく卓も自動卓だ。

中学の時は手積みでしたからね…自動卓なんてインターミドルくらいしか経験ないから慣れるまでが心配です。

因みに自宅にも雀卓は一応ありますがそれも手積みです。

 

「そうね、なら善は急げというし早速だけど、麻雀部らしく…」

 

「「一局やりましょう!!」」

 

二人麻雀

2索〜8索抜き

3万点先取 (点数は一人分ではなく3人分とする)

赤ドラ4枚、アリアリ、ダブル役満無し、数え役満あり

全て点数は親番で計算する。

 

ドラ{南}

 

竹井久

{二三四七②③③④⑥⑧北北發發}

 

伊奘諾廻

{一二三四五六七九①①⑧西南}

 

(…何とも言えないわね、トイトイがいけそうな気もするけど…立直自摸撥で9600、それを狙いましょう)

 

竹井さんは{③}を捨てる

 

(一通…ドラ1、竹井さんの手持ちがわかんないからなんとも言えませんが…どうでしょう。ま、初っ端からリミッターを外す必要はないですし、様子見ですかね。)

 

相変わらず萬子には好かれてますけどね…と苦笑しながらツモる

 

来たのは{白}だ

 

(…白ですか、確かにこのままだと2900しかもらえませんが白が揃えば

白、一通、混一色、ドラ2の24000…

倍満ですし賭けますか)

 

賭けに出ることを選択した廻は南を捨て、白を入れる

 

次の竹井さんの捨て牌は南

私のツモリ牌は…

 

(来ましたね…八萬)

 

八萬だ。これで白と北が来れば立直だ。

とりあえず{①}を捨てて様子をみる。

 

 

その後暫くは動きは無かった。

 

動きが起きたのは7巡目

 

「立直!!」

 

言ったのは私ではなく竹井さんだ。

 

対面 竹井久

 

{■■■■■■■■■■■■■}

 

{北北①⑧西③ 横七}

 

 

伊奘諾廻

 

{一二三四五六七八九西西白①}

 

{南①發南北北}

 

一向聴なんだが白が来ないのでリーチできない…上に安牌がない

とはいえ、ツモらないことには始まらないので牌をツモると…

 

 

 

 

(ここで發ですか…)

 

やってきたのは{發}、3巡目に捨てているしそのまま捨てても自分の上がりには支障はない…が

 

(何か妙に嫌な予感するんですよね…

恐らく、これが当たり牌みたいな…)

 

私の予感は別にあたりやすい訳でも外れやすい訳でもない、正直そこらの一般人レベルだ。だがそれ故に、ここまで露骨な予感の提示に、答えをどう弾き出そうか悩んでいる。發を残して様子を見るか、發を捨てるか。

 

暫く長考しているが竹井さんからは特に文句は出ない。それどころか、悩んでいるこっちの様子を見てという意地の悪い笑みを浮かべている。いい性格しているよ…

 

 

 

 

結局、發を捨てた。

仮に残しておいても、予感通りなら發二枚を竹井さんが持っていてもおかしくないし、それだと私が上がれない。仮に上がられたとしても、役満とかでなければ即座に逆転が可能。それに發を保存しておくメリットが少ない。

降りて流局聴牌狙いでもいいのだが、折角だしどんな手牌で上がるのか様子見してもいいだろう。大会じゃないんだし、それくらいは許される。

 

「ロン」

 

やはり予感は的中。

 

{二三四②③④⑥⑦⑧北北發發 } {發}

 

「立直、一発、發で7700ね。」

 

「發のシャンポン待ち…しかも捨て牌に發あるのにかぁ、よくやりますね」

 

「私は昔からなぜか良い待ちでは和了れないことが多くてね…悪い待ちの時ほど上がれる感じがするよ。」

 

「不思議なこともあるのですね…まぁ人のことを言えたわけではありませんが」

 

「…?それってどういう…」

 

「さて、次の局行きますかね」

 

「あ、ちょっと!!」

 

 

 

廻 -7700

久+7700

 

二局 0本場

ドラ {九}

 

(なるほど…これはまたまた趣のある手牌ですね

とりあえず、ツモったばかりの{⑨}を捨てましょうか。)

 

 

 

 

 

〜久side〜

何も躊躇なく9筒ツモ切り…

普通なら、単純に不要だから捨てただけだと思うけど…

なんだろうか、このモヤモヤ。

さっきの伊奘諾さんの発言が無性に気になってしまう。

 

(まるで…彼女にも何かしらの事象が起こりうるかのような)

 

可能性は無いとは言い難い。

事実、去年のインターミドル覇者の宮永照は牌全体に愛されているし、私は悪待ちに愛されている…

私が見た中で東場に愛されている人もいれば南場に愛されている人も過去に見かけている。

なら彼女は?

 

そもそも、先ほどの撥の振り込みにも違和感があった…

彼女が一度出している撥を、立直がかかっているとはいえ、あんなに長考する必要性があるのだろうか?

まるで私の当たり牌が分かっているかのように…

私の悪待ち癖がばれているのならばそれもわかる。…がいざ言ってみると返答はごく平凡で当たり障りのない答え…本当に初耳のようだ。

 

(それに、伊奘諾 廻という名前…)

 

何処かで見覚えがあるのよね…

確か何処かの情報誌に乗っていたのを見た気がするんだけど…何だったかしら

 

「立直!」

 

早い!?まだ二巡目なのに…

しかも、最初に九筒ツモ切りしたってことは最初の手牌の段階で一向聴だったってこと!?

本来は速攻麻雀を得意としているのかしら?

そう思いつつツモった牌を見ると⑤

ツモ切りし、また考察に入ろうとすると…

 

「残念、私は速攻麻雀なんて得意じゃないよ」

 

!?読まれた

 

「さっきから私に起こりうる事象を考えていたのだろうけど…

結局貴女と同じ麻雀の何かに愛されているだけ…

それが何かというと…」

 

 

そう言って彼女はツモった牌をおいて手牌を明らかにする。

 

 

 

 

{一一二三三四四五六六六八九} {七}

 

 

 

 

「ツモ」

 

思い出した…

 

 

「立直、一発、自摸、清一色、ドラ2」

 

伊奘諾 廻

去年のインターミドル団体戦覇者

通り名は萬子に愛された少女

 

又の名を…

 

 

 

 

 

 

 

「3倍満 36000ですね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

団体戦の女王


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