IS -香港のダイヤモンド-   作:7seven

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改行の仕方をちょっと変えてみました。


第十一話 変色

あたしは舌打ちしたい気分になった。

試合が始まって一分。エリザとの連携を軸にした2対少数陣形、ランチアでアイリーン・ボーデヴィッヒ組に対抗してるけど、不安要素が大きすぎる。

 

 

そもそもエリザは、実戦となると気が大きくなる節がある。

今迄にも格闘技の大会で、特に決勝戦になると危うく怪我しかけたり、実力を見る限り余裕で勝てる相手に負けかけるような胆の冷える戦い方をする。要するに、エリザは油断しやすいのだ。

 

普段は冷静で、逆にあたしが猪突猛進なわけだけど、戦いの場において頭脳労働はあたしの仕事だってふたりで話し合って決めるぐらい、実戦でのエリザには不安要素がある。更に、あたしとエリザが長い付き合いだとはいえ、あたし達は今搭乗してる機体との付き合いが浅い。一次移行(ファースト・シフト)こそ完了してるけど、もう機体に乗り始めて長いアイリーンちゃんやボーデヴィッヒには稼働時間で敵うべくもない。

 

「エリザ、油断大敵だよ」

「わかってる」

 

他のテンペスタシリーズに比べて、多くの銃火器を搭載する、「アンジェロ」。後ろでアイリーンちゃんに目を配りながら、当初の予定通り、ボーデヴィッヒに狙いを定める。

 

そもそもアイリーンちゃんから落とすなんてことは不可能だ。

それにボーデヴィッヒの「シュヴァルツェア・レーゲン」に搭載されたワイヤーブレードやプラズマ手刀は本人の操縦を除いても厄介な代物で、アイリーンちゃんを落とそうとしてもそれらが邪魔しにくるだろう。助け合う、なんて意味じゃなく、除け者にするな、という理由で、だろうけど。それでもあたし達じゃ、まだこのふたりには敵わない。

 

だからあたし達は、一本の(ランチア)となってボーデヴィッヒとアイリーンちゃんを、順に貫く。

 

 

射撃でアイリーンちゃんを牽制し、至近距離でボーデヴィッヒとやり合うエリザを援護する。

エリザがそっちに集中できるように、アイリーンちゃんへの足止めには全力を使う。正直、アイリーンちゃんへは、あたし達が一本の槍となって向かったとしても、勝てるかどうかわからない。でも、やってみなきゃわからない。

 

「で? ベルナルドーネ、もう気は済んだかな?」

 

アンジェロに積んでいる≪キャンディ・ドロップ≫と≪フィオレ・デ・インフェルノ≫でアイリーンを牽制してたはずなのに、いつの間にかアイリーンちゃんはあたしのすぐそこに迫ってて。手には近接ブレード≪時雨≫を展開している。気付かなかった、いつの間に!!

 

-59口径アサルトライフル≪キャンディ・ドロップ≫収納

-近接ブレード≪カンツォーネ・ディ・ディオ≫展開

 

 

近接ブレードを展開してすぐに迎え撃つ。

アンジェロは射撃特化用にチューンしたものだけど、元はと言えばイタリアが誇る第二世代型純格闘型IS「テンペスタ」だったことに変わりはない。スペックも全然いじってないし、射撃に必要なシステムと射撃武装を追加してスラスターをちょっと減らしただけのこの機体だから、打鉄とかラファール・リヴァイヴよりも近接格闘においては強い。

 

 

ガキンッ

 

 

すごい音を立てて近接ブレードがぶつかり合う。

 

「へえ、乗り始めてそんなに経たない割には、展開速度もまあまあだな」

「まあ、あたしは入学前からこの子のチューニングの為に何回か乗ってたから、ねっ!」

 

エリザへの援護は中断せざるを得ないけど、このまま一方的にあたしが落とされるのだけはダメだ。

アイリーンちゃんには、あたしとエリザが力を合わせなきゃ、勝てない。勝率があるとしたら、あたしは今をなんとか凌いで、ボーデヴィッヒを撃墜したエリザが援護に来てくれる。勝てる可能性があるのは、ただこれだけ。

 

アイリーンちゃんは≪時雨≫であたしの斬撃をいなしながら、まるで花弁のようにISに寄り添った、とてもじゃないけどアサルトライフルには見えない離接のそれを巧みに使って、距離を取ろうとするあたしを狙い撃つ。距離を取っても詰めてもあたしより高い実力を誇るアイリーンちゃん。あたしもレールカノン≪フィオレ・デ・インフェルノ≫で対抗するけど、アイリーンちゃんの右手にある、巨大な盾の前では意味を成さないみたいで、唇を噛みしめる。

 

「うん、まあ悪くない機体だ。そのレールカノンもいい代物だし。ただまあ、ISっていうのは武装がものを言うわけじゃない」

 

アイリーンちゃんがバイザー型ハイパーセンサー越しに、微かに笑ったような気がした。その瞬間、あたしの「アンジェロ」がビーッビーッと警告アラームを鳴らす。

 

 

-IS「ヴァイオレット・キャンディ」に ロック されています

 

 

アイリーンちゃんのお兄さん、もといミカエル先生が教えてくれた。第3代ブリュンヒルデのISには、AIを埋め込んでいるんだと。あたしも頼み込んで、女性の声をしたAIを搭載してもらった。ある意味、アイリーンちゃんとお揃いのもの。それが無機質な声で、アンジェロの危機を伝えている。

 

やだ、まだ負けたくない。エリザはまだ、「テンペスタⅡF01」に乗り始めてから、まだ少ししか経ってない。

そんな中で2対1の状況にしたら可哀想だし、あたしはそんなことしたくない! 助けて、「アンジェロ」!!

 

必死で搭載武装のコンソールを開くけど、いつも通り、≪キャンディ・ドロップ≫≪フィオレ・デ・インフェルノ≫≪カンツォーネ・ディ・ディオ≫≪ブラスカ≫しか表示されていない。事前に相当練りこんだ奇策であっても勝てるかわからない相手なのに、あたしには隠し札の一枚もない。当然だ、アイリーンちゃんは全力を出さずに勝てる相手じゃない。……いや訂正、全力を出しても勝てない相手だから。

 

その時、コンソールのスクロールバーが小さくなる。つまり記載内容が増えたってことだけど……。

おそるおそる、スクロールしていく。そこには、≪????≫の文字。なんでもいい、今、アイリーンちゃんに対抗できる力なら、なんでも!!

 

-Are you ready?

 

 

女性のマシンボイスが滑らかに英語を紡ぐ。

ミカエル先生にAIを載せてほしいとお願いしてた時に、プログラムの奥深くは英語でできてるよ? と言われていたのを思い出した。

 

プログラム中枢が英語でできていると、AIに支障があった時、英語ができなきゃ修理できない。そういう意味なんだろう。

でもあたしは英語もちゃんと勉強してたし、大丈夫です、と言って積んでもらったことを思い出す。出ていたOKのボタンを押すと、一度視界がレッドアウトした。

 

 

赤は刺激が強い色だから、一瞬目が眩む。でも、すぐに視界が冴え渡る。ハイパーセンサーが自動的に補助してくれたんだろうなってすぐに思いついた。ハイパーセンサーが捉えたアイリーンちゃんは、少しばかり、目を見開いていた。でもすぐに気を取り直して≪時雨≫を構え、あたしの方へと向かってくる。

あたしは右手に持っていた≪カンツォーネ・ディ・ディオ≫を一度ぎゅっと握りしめて、そのままアイリーンを迎え撃つ。その瞬間、あたしも驚くしかなかった。長剣の形をしていたはずの≪カンツォーネ・ディ・ディオ≫が、太い三叉の槍に変わっている。しかもその槍を掴んでいたのは、ターコイズブルーの装甲を纏った腕だった。でも、それに驚いている暇はない。あたしは、今撃墜されるわけにはいかない。

 

ぴこぴこと意識の片隅で、アンジェロが何かを伝えてくる。メールでたとえるなら、新着メールが来ました、って感じ。

それを開いて確認する。

 

-We have completed the SECOND SHIFT.

 

セカンドシフトを完了しました……。えっ、セカンドシフトって第二形態移行のセカンドシフト!? あの、人によっては単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)が発現するっていう、あの!?

 

-Now do you use the ONE OFF ABILITY?

 

迷わず、無機質な女性の声に答える。

 

「イエス!!」

 

 

**********

 

 

-検索終了しました

-68口径レールカノン≪フィオレ・デ・インフェルノ≫に該当

 

 

ふむ。ベルナルドーネのIS「アンジェロ」に搭載されたレールカノンはモデルを見る感じじゃミカエルのデザインっぽかったけど、なるほど正解だ。武装名は前に聞いたことあったし、これはミカエルとイタリアが共同開発したもののひとつと見て間違いないだろう。本来は第三世代型ISの開発援助だけがミカエルの仕事だけど、ミカエルが個人的に親しい国の場合、それ以外も少しだけ手伝ったりしている。まあその親しい国っていうのが、イギリスとイタリアなわけだが。

なるほど、ものがいいのと、本人が射撃を得意だと言うだけはあった。ベルナルドーネはフェラーラの援護射撃を加えつつ、俺に牽制までしてくる。援護は完璧で、まるで機械で同時統制してるんじゃないかってぐらい。2対少数用と思われる、フェラーラの背にベルナルドーネの左腕を向けた陣形は、多分フェラーラの援護射撃をしつつ、他に気を配るためだろうな。悪くない。でもまあ、そんなついでみたいな牽制で俺を抑えられるかっていうと、そんなはずないけどな。もう十分ベルナルドーネの射撃の腕は見たし。ベルナルドーネをフェラーラの背中から引き剥がして、いざやるか。

 

 

-近接ブレード≪時雨≫展開

 

「で? ベルナルドーネ、もう気は済んだかな?」

 

一気に間合いを詰め、≪時雨≫で斬りかかる。

それに気付いたベルナルドーネは咄嗟に持っていた≪キャンディ・ドロップ≫を収納し、近接ブレード≪カンツォーネ・ディ・ディオ≫を展開。長剣型の一般的な近接ブレードだが、近接格闘のノウハウで日本と首位を争う国、イタリアの武装だ。相当いい代物だろう。

 

「へえ、乗り始めてそんなに経たない割には、展開速度もまあまあだな」

「まあ、あたしは入学前からこの子のチューニングの為に何回か乗ってたから、ねっ!」

 

ガキンッガキンッ

 

俺の≪時雨≫は短剣……というほど短くはないが、長剣と呼ぶには長さが足りない。

俺の身長に合わせて振るうことや、右手で≪ディープ・ミラー≫を持ったまま使用することが前提の武装なわけだから、あんまりに長いものは不向きだ。その分ベルナルドーネと間合いが変わってしまうが、長い剣はなんてことない。懐に飛び込んでしまえば何もできないのが馬鹿でかいだけの長剣だ。レールカノンはともかく、この近接ブレードはベルナルドーネには合っていない。フェラーラのようなやつが使う武装だからな。

 

「うん、まあ悪くない機体だ。そのレールカノンもいい代物だし。ただまあ、ISっていうのは武装がものを言うわけじゃない」

 

 

武装の良し悪しだけじゃなく、操縦者の技量がものを言うんだぜ、IS戦闘っていうのは。

 

-57口径離接アサルトライフル≪レイン・ドロップ≫Drop01 「アンジェロ」を ロック します

 

4対の非固定マルチウィングスラスターが特徴の俺の機体「ヴァイオレット・キャンディ」。

 

これに主力武装の離接アサルトライフル≪レイン・ドロップ≫を展開すると、まるで花弁のように見えるという。

それもそうか、≪レイン・ドロップ≫は一見しただけではアサルトライフルだとわからないように設計されてるし。

 

花弁のうちの1枚がベルナルドーネに狙いを定める。その瞬間に、トリガー。

俺のロックオンの速さとトリガーを引く速さはモンド・グロッソで射撃部門を制しただけのものだ。

悪いけど、ベルナルドーネ程度の操縦者に当たらないわけがない。事実、命中した。のに、俺は驚く羽目になる。

 

 

ハイパーセンサーがあるからわかる。ベルナルドーネの意識がなくなってる。ぐったりとして、体をISに支えられている状態だ。向こうで近接戦を繰り広げているフェラーラとボーデヴィッヒは気付く様子もない。おいお前ら、もうちょっと周りを気にしながら戦え。

ISには操縦者の生命維持装置みたいなのがついてて、呼吸であったり脈拍であったり、そういったものを完璧にサポートしている。どんなGがかかろうとも、絶対防御圏内であればブラックアウトすることもない。……そのはずなのに、どう見ても今、ベルナルドーネに意識はない。まさかISのシステムエラーか? そう思った瞬間、朱色のボディが一瞬粒子化して、すぐに再形成する。カラーは朱色ではなく、ターコイズブルー。握っていた長剣型近接ブレードも粒子化して、すぐに再構築。三叉の槍に変わる。

 

ギィンッ

 

≪時雨≫で斬りかかってみるけど、ベルナルドーネはぐったりしたまま三叉の槍で俺の剣撃を受け止める。うっすらと目が開いてるのを確認して、一度スラスターを吹かせて距離を取る。意識が戻ったんなら、この後何かが出てくるんだろうけど、まだ何が出てくるかわからない。

 

 

ISというものは、基本的に大きく変形はしない。

第二世代以降ならパッケージでの武装換装の際、多少の変化はあれど、それもパッケージのせいであって、パッケージを取り外せば元に戻る。そのパッケージ換装さえ、ベルナルドーネはしていない。

 

ならミカエルだけが持つ技術・装甲換装か? いや違う。装甲換装の技術はそう簡単に使えない。

あれは相当クラスの拡張領域を必要とする。量産ISで世界一の拡張領域を持つのはラファール・リヴァイヴだが、装甲換装を施そうと思えば、リヴァイヴの拡張領域が3機分ぐらいあってもまだ足りないのだ。そもそもテンペスタシリーズの拡張領域の量は大したことなかったはずだ。近接格闘用だから、ブレードとシールドとスラスターぐらいしか要らないんだから。

だから装甲換装じゃない。ってことは……あれしかない。

 

「イエス!」

 

その時ベルナルドーネがいきなり叫んだ。意識はもう戻ってたようで、三叉の槍を手に俺に飛びかかってくる。それを≪時雨≫でいなし、≪レイン・ドロップ≫の3機で牽制しながら距離を保つ。

 

……上手い。さっきまでは何だったんだってぐらい、接近戦のレベルが段違いだ。

実は槍術の使い手だった……とかか? いや、そうでもない限り、この違いは生まれてくるはずがない。俺はモンド・グロッソの第3回大会において、格闘部門で優勝することはできなかったけど、それでも準優勝だった。世界レベルの接近戦ができるという事実に変わりはない。その俺が困惑するんだから、間違いなく素人ってことは有り得ない。……ってことは、もしかしてイタリアは、ベルナルドーネが槍術の使い手だってこと、知らなかったのかよ? 知ってたら長剣じゃなくて槍を近接武装として積むよな? まったく……。

 

 

-IS「アンジェロ」に ロック されています

 

 

警告音が鳴り響くけど、ロックしてるところがわからない。ハイパーセンサーを通してもわからない。

その時、何かが一斉に俺の背中を狙っているような気がして、ばっと≪ディープ・ミラー≫を背中側に向ける。

 

すると何もないところから、ビームがまるで大波のように押し寄せてくる。

それを全て「対光学兵器コート」の施してある≪ディープ・ミラー≫で反射させると、何かがボン!! と音を立てた。そこから、煙をあげる、ビットのようなものが現れる。そう、何もなかったところから。それに気を取られて、向けられた殺気に一瞬だけど反応が遅れた。何かが俺の胸を貫こうとして、絶対防御が作動、大きくシールドエネルギーが減少。俺の胸を貫こうとした「何か」もまた光学兵器……ベルナルドーネの持っていた三叉槍の先端三か所から放たれたレーザーだった。

 

なるほど、大体理解した。これは、イギリス製第三世代型IS「ブルー・ティアーズ」に搭載されたBT兵器≪ブルー・ティアーズ≫の上位互換種だ。……ただ、イタリアの機体であるアンジェロにBT。これだけは色々と意味がわからない。たとえ第二形態移行(セカンド・シフト)で新たに何か武装が発現したとしても、実弾系でまとめられてたやつがいきなり光学兵器になる意味が。

 

「……おもしろいじゃん」

 

俺はぺろりと唇を舐めた。さあ、これからが本番だ。

 

 

-22mm口径6砲身ガトリングガン≪夕立≫展開 4000発をロードします

-システム≪ALS≫作動 ≪夕立≫とリンクします

 

 

俺の大好きなこの戦法、名付けるとしたら「飛んで火にいる夏の虫」。もしくは食虫花でもいい。

これを奇襲だと、一度きりの戦法だと思ってるとしたらとんだ間違いだ。なぜならキャンティはともかく、キャンディの速さなら火が自ら夏の虫を捕えにいくことができるんだから。

 

≪夕立≫はキャンディの機動面を殺さないために、多くの仕掛けが施してあると聞く。キャンティの≪アザリア≫の後継武装であるこれは、片手で撃てるという特徴を残しながら、更に弾を小さくすることや、射程を短くすることでキャンディの長所を殺さずに済むようになった。つまり、俺のIS操縦技術が相手の思考や判断力に勝っている場合、この戦法はいつまでも生きる。ガトリングの射出リズムの速さなら、たとえある程度威力を落としたって、腹に当たれば絶対防御が働いて一気にシールドエネルギーを食うからな。まあ、あくまで「試合用」の戦法だけど、これは。

 

ベルナルドーネはクラス代表決定戦で俺の戦い方を見たせいか、ガトリングを見るやいなや、俺に近寄らず、射撃をメインに俺のシールドエネルギーを削る工夫をしてくる。貫通属性を持つはずのレーザーが俺の盾の前では無意味だとわかっていても、入射角と反射角を計算して、ボーデヴィッヒに当てる努力をしているのは立派だ。

 

花弁に激励を送ると花弁は【瞬時加速】を行う。

この花弁達、もといキャンディに搭載された4対のマルチウィングスラスターは、第一世代ISながらにして現在でも世界トップクラスの速度を誇る高機動IS「最碧弐型」を製作した香港「国家IS研究部」と、世界が認めた天才技師「ミカエル・ブルックス」の共同製作だ。速度だけでなく性能、安定性、持続力、全てにおいて世界最速のものを、4つも積んでいる。全部を同時にフル作動させたらまあ、まず俺でも無事じゃいられないかもしれない。だがしかし4つ積むことで、どれかに作動不良があっても高速戦闘を継続できるようになっている。

 

ギュンッとベルナルドーネの前まで【瞬時加速】し、スラスターの逆噴射で大きく減速、そしてそのまま≪夕立≫のトリガーを引く。残り半分程度だったシールドエネルギーはゼロになり、ベルナルドーネはリタイアした。

 

「くっ……ごめん、エリザ……!!」

 

ベルナルドーネは普段の明るさからは信じられないぐらい悔しそうな顔をして座り込んだ。

さて、まだフェラーラとボーデヴィッヒの決着はついてないのか? そう思ってふたりの方に視線をやった時、フェラーラが「あるもの」を展開した。

 

「私は……負けない!!」

 

 

持っていた、ベルナルドーネと揃いの近接ブレード≪カンツォーネ・ディ・ディオ≫を収納し、展開したのは≪トゥオノ≫だった。

≪トゥオノ≫。ミカエルとイタリアの共同製作した近接武装。超振動大型ランス。≪雷鳴≫の劣化版とも言えるそれ。大きさや素材の違いのため、≪雷鳴≫ほどの貫通力はないけど、絶対防御を発動させてシールドエネルギーをゴリゴリ削るのには十分な代物。あれがボーデヴィッヒに決まると面倒臭いな……。

 

『ボーデヴィッヒ、今フェラーラが出したランスさ。あれまともに喰らうと装甲危ないから、私が落とすよ』

 

-22mm口径6砲身ガトリングガン≪夕立≫収納

-59口径アサルトライフル≪キャンディ・ドロップ≫展開

-システム≪ALS≫作動 ≪キャンディ・ドロップ≫とリンクします

 

 

ボーデヴィッヒがちらりと俺の方に意識を向ける。大方、ベルナルドーネがどうなったのかを確認したんだろう。

そして、流石に次の試合のことも考えたのか、やれと返ってきた。

 

フェラーラが≪トゥオノ≫でボーデヴィッヒを突こうとした瞬間、≪キャンディ・ドロップ≫と≪レイン・ドロップ≫の4砲身から放たれた実弾がフェラーラの胸部に命中し、ボーデヴィッヒとやり合ってて残りが3割ほどしかなかったシールドエネルギーも尽き、試合終了となった。

 

『試合終了! 勝者、ブルックス・ボーデヴィッヒペア!!』




~オリジナルキャラ紹介~
アレッタ・ベルナルドーネ

イタリア代表候補生。1年1組所属。
学年別トーナメントの2週間ほど前に届いた第二世代型IS「テンペスタ」の射撃特化カスタム機の操縦者。射撃が得意。祖父が槍術の使い手だったため、アレッタも同じく槍術を嗜み、師範代クラスの腕前。大きなアホ毛と鼻の上のそばかすが特徴。搭乗IS「アンジェロ(改名前:テンペスタS01)」。

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