最強を目指す剣士の境界線   作:三代目盲打ちテイク

12 / 14
十一

 そして、時は進み、始まる。本来は開けぬはずの臨時生徒総会。シロジロによって示唆された本多・正純の不信任決議という裏の通り道を使ってそれは確かに開かれた。

 単純明快。三対三の相対戦を行い決議する。

 武蔵側、梅組一同。

 聖連側、本多・正純、ネイト・ミトツダイラ、直政。

 武蔵側が勝てばホライゾンを助けに行き。

 聖連側が勝てば、ホライゾンの自害を認め、武蔵を移譲することとなる。

 武蔵側は抗うことの意味を示す。

 聖連側は抗うことの無意味を示す。

 二勝した側の勝利とし、相対を始める。

 相対は交渉、戦闘、なんでもあり。

 

「じゃあ、一番手は――」

「あたしがもらうよ」

 

 直政が出る。

 

「あたしらはどちらかと言えば教導院側さね。だけどね、ちょっと、不安なのさ。逆らうのは良い。だけど、それで万が一にも武蔵が沈められたらどうすんだ、ってな具合さ。だから、聞いてみたいのさ。明確な武装を持たない武蔵が、この先、どうやって戦うのかね!」

 

 直政の眼前に鉄色の鳥居を模した表示枠(サインフレーム)が来る。書かれている文字は、太字の『射出許可』の四文字。

 

「接続!!」

 

 直政が左の握りを表示枠へと叩き付けた。その刹那、来る。

 

「あたしの走狗(マウス)はちょっと特殊でね」

 

 来る。赤と黒の衣装を纏いし女性型の鉄の巨人。

 

「重武神“地摺朱雀”。あたしが地上にいた頃、戦場になった実家周辺で見つけた武神の残骸の寄せ集めさ。でも、ちゃんと十トンクラスで、あたしの右手の遠隔操作で動く可愛いヤツさ。

 さて、そんな重武神相手にできる奴は誰だい? 見極めさせてもらうよ。武装解除された極東にも戦う手段があるのかどうなのか、ってのをね」

 

 さあ、

 

「武神でサシでやれるのなんざ、各国の英雄クラス、向こうで言うところの立花・宗茂や教皇総長という八大竜王や、ガリレオクラスだろ。こっちでいうと、ミトとか悠理がそうかね? ああ、三河の本多・忠勝もそうか。

 だけど、聖連に逆らうなら、それくらいの者がフツーにいないと困る。

 どうだい? コイツとやれるヤツはいるかい?」

 

 それを見た悠理たちが、小さく呟く。

 

「おーおー、地摺朱雀じゃんか。直政本気だねぇ。私もなんだか燃えてきたよ」

「直政殿、テンション高めで御座るな」

 

 それで、誰が出るのか。

 

「よし、シロ――」

「ちょっと待った」

 

 シロジロを指名しようとした馬鹿(トーリ)を悠理は止める。

 

「おいおい、なんだよ、悠理止めんなよ。これから、武神にやられるシロが見れるんだぜ?」

「完全に私怨だろそれ。シロジロもできないではないだろうけど、ここはさ、もっと面白くしようぜ」

「おいおい、シロ以上に面白いやついねえだろ」

「いるいる、点蔵」

「自分になんか、回ってキター!?」

 

 おお、その手があったか、とぽんと手を合わせるトーリ。いやいやいや、とは点蔵。そりゃ自分が武神相手にぶつけられそうになっているのだから、当たり前だ。

 

「どうして、自分で御座るか?! 武神と毎日やりたいやりたいと言っていた悠理殿の方が、適任で御座ろう」

「なんでって、そりゃ、この先幸せ街道まっしぐらで、点蔵もげろにしかならない、お前が憎いからにきまっているでしょ」

「何のことだかさっぱりわからないで御座るよ!」

「あ~、言ってなかったか。じゃあ、言うよ。私はてめえが、嫌いなんだよ」

「ええー!?」

 

 ここに来てのカミングアウト、大丈夫か、こいつらと、相手待ちの直政は思うが、いつも通りだったので気にしないことにした。

 

「ほ、ほかに、他に代案はないで御座るか!」

「あー、あるよ。その場合だとノリキ」

「ぬ……」

「ほら、ノリキならやれるって」

「いや、それならお前がやればいいだろう」

 

 ノリキの言うことは至極当然のことだ。

 武神、それも十トン級。それを真正面から相手にできるの者は今の武蔵アリアダスト教導院では、ミトツダイラと悠理だけだろう。ミトツダイラがあちらについた今、それができるのは悠理くらいだ。

 

「ばっか、直政が問うてるのは、普通の奴でも武神に勝てるかどうか。いや、正確には相手にできるかどうかだよ? 副長の私が出たらだめじゃん。それに……」

 

 一間。

 

「副長として宣言するけど、私、この三回の相対。出る気、ないよ」

 

 ええーー、と武蔵側梅組勢から声が上がる。

 

「だって、ほら、私、怪我人だし」

「お前のどこが怪我人だよ!」

 

 全員のツッコミにえーと不満たらたらですといった表情の悠理。

 

「だって、私、か弱い乙女だよ。お腹さされたり、腕ぼろぼろだったりで、まともに戦えないんだよ」

「え、誰がか弱い乙女だって? 鬼の間違いじゃ――」

「あん?」

 

 不届きな発言を睨んで止める。

 

「――と、言うわけで、私は、この三回の相対には、出ない。で、いっちょよろしく」

「おう、いいぜ。俺ってさ、お前に頼ってばっかりだったからさ。今度は、俺がやる番だ。さあ、行け、シロ! そして、盛大にやられて来い!」

「この人最悪で御座る!」

「ふん、いいだろう。この相対で、機関部の信用と、我々が武神相手に戦える証明が買えるのだ。リスクは大きいが見返りもそれに見合っている。なら、やらない手はない」

 

 そう言ってシロジロが前に出る。その時に、走狗であるエリマキが彼の頭の上に乗る。

 

「はあ、可愛いな、シロジロの走狗。私のも、もふいのがよかったな」

 

 そんな悠理の発言は置いておいて、

 

「直政、術式契約のためハイディの仲介支援を用いるが良いか?」

「Jud.、構わないよ。それで、こいつを止められるんならね。派手に行くよ!」

 

 シロジロと直政の相対が始まった。

 

 

 おーおー、シロジロも本気だねえ。一時間当たり百五十万ってところか。

 シロジロは、地摺朱雀の攻撃を受け止めていた。

 

「いいよなー金の力って。私が十年以上かけて、必死になって培った力を、その場で、金を支払うだけで得ることができるんだからさ…………ちょっと妬けるな、こちらとしてはさ」

 

 やっぱり、お前も嫌いだ。あとでちょん切る。しかし、それでも、目の前の光景は悠理としてもかなり有用だ。なので、きちんと記録する。

 シロジロが契約している神、サンクトは稲荷系に組み込まれた商業の神である。商業神は他の神に対して、ある力を持つ。それは、神々の間のやり取りに金銭が用いられるという力。

 悠理は背後を見やる。そこには、人の群れが座っていた。警護隊副長、以下百五十名。

 シロジロが何をやっているのか。端的に表すとレンタルだ。警護隊百五十名が持つ“労働力”をレンタルしているのである。時給払いの一括レンタルである。その力は、約十、五トン。地摺朱雀相手には十分すぎる。むしろおつりがくる。

 

「さて、本番はこっからこっから。まあ、彼らは大丈夫。私は、そう見てきたから」

 

 この後はシロジロが勝つ。地摺朱雀の労働――つまりは攻撃なのだが――が建物に行かないようにされていたのを、あたり一帯を買い取ることによって無効化し、地摺朱雀を倒した。そして、シロジロは極東が完全支配された場合、各国が極東にしている借金が踏み倒され、尚且つ、極東が稼いだ金が奪われることを言い、武蔵に各居留地からの奉納によって武蔵が燃料庫になっていることを示した。それによって、武蔵が戦えることと、飛び続けられることを示した。

 次の相対戦はミトツダイラと鈴の相対。ミトツダイラは皆より偉く、封建騎士なので、民を守らなければならない。本来ならば武蔵アリアダスト教導院側。しかし、民の安全のため騎士階級をやめることによって、極東側が聖連に逆らわないようにしようとした。だが、鈴によって騎士の誇りを取り戻さされたために、ミトツダイラの勝ちで終わる。

 その次はトーリと正純の相対。あの馬鹿、不可能男はやると言ったのだ。ならば何も心配はいらない。

 

「だから、私は、ちょっと、行くかな」

 

 その前に、済ませておくことがある。

 悠理は、一人。教導院の階段を下りた。目指すは、後悔通り。自身の後悔の場。

 

「ここに本格的に来るのって、久しぶりだな……」

 

 通りを歩き、悠理は石碑と刀の前に立つ。心なしか、その顔色はすぐれない。

 ぽつりと懺悔するように悠理は言葉を紡ぐ。まるで泣いているかのようであった。

 

「私ってさ、未来を知ってるんだよね。だから、優越感っての? 感じてたんだよね。神みたいになったつもりだったんだよ。でもさ、そんな神様きどってても、結局、私はホライゾンを救えなかった。いや、救わなかったんだよ。酷い、女だよね。私ってさ……」

 

 悠理の告白は続く。

 十年前、悠理は動かなかった。知っていたのに。それは、恐怖もあったのだ。自分が知っている物語が、その通りにならくなることを恐れたのだ。結局は自分のためにホライゾンを犠牲にした。その結果、あとに残ったのは、後悔だけだった。

 それから、悠理は逃げたのだ。その事実から。目を背けて、ただ、ホライゾンが十年前と交わした最強になるという約束。それを果たすという覚悟を免罪符にした。それが、この刀。後悔の形。罪の茨。

 でも、

 

「でもさ、こんな私でも、本多・忠勝と鹿角を救うことができたんだ。その時になってさ、ようやく、決めたんだ。私はもう逃げないって。そして、今度こそ、ホライゾンを救うって、いなくなったあとに交わしたトーリとの約束を果たすって、私は決めたんだ」

 

 悠理は刀の柄を掴みとる。

 

「もう、逃げるのは終わりにする。いらないものは全部捨てて、みんなと一緒に舞台に上るって決めた。だから、行くね」

 

 刀を抜く。するりと、この時を待っていたかのように刀は抜けた。それを傍らに安置してあった鞘に納める。

 そして、悠理は静かに、教導院へと戻った。ちょうど、トーリと正純の相対が始まろうとしているところであった。

 

「どこに行っていたんですか?」

 

 浅間が聞いてくる。

 

「ちょっと、懺悔に」

「そうですか……」

「で、今、どんな状況?」

「はい、トーリ君と正純との相対で、討論をすることになったんですけど、トーリ君が、ホライゾンを助けるのやめないと言いました」

 

 討論のルール。

 お互いが疑問を出し合い、それに答えていく。相手側の不利か、自分がの有利を認めさせれば勝ち。助言あり。

 

「なるほど」

 

 それにしても頭悪い作戦だ。

 要は、頭が悪くて、どう考えてもトーリではホライゾンを助けるその意義を示すことができない。だが、正純は違う。簡単に言えばそういうこと。トーリは自分がホライゾンを助けない側へ回ることで、強制的に正純をホライゾンを救う側へとしたのだ。

 こうなってしまえば、正純は、色々なことの前に、ホライゾンを救うことを示さなければならない。そうしなければ、どのみち相対で負けて、ホライゾンの救出へと赴かなければならないのだ。

 

「でも、トーリが考えたわけじゃないでしょ」

「Jud.、――」

「あ、言わなくてもわかる。シロジロでしょ。こんなこと考えるのあいつくらいだろうし」

 

 正純とトーリは契約をしている。今回の前提条件、互いの立場に分かれて、討論を行うこと。破ればオリオトライ=リアルアマゾネスからの罰則。

 それは、おいておいて、トーリがホライゾンを救いに行くことを止める宣言で動揺している正純は、どうやっても、これを取り消すことができない。

 討論は、始まる。

 

「んじゃ、教えてくれよセージュン。馬鹿な俺にさ。俺がやろうとしていることの意味ってやつを」

「……わかった。ホライゾンを救うことの最大の利点は、武蔵の主権を確保できることにある」

 

 主権を持っていない国は、国として認められず、そこに住んでいる人も人と認められない。そんな状態になってしまえば、交渉どころの話ではなくなる。何もできなくなるのだ。

 だが、ホライゾンさえ救出してしまえば、聖連の支配の及ばない支配者が極東武蔵に誕生することになる。そうすることで主権が確保され、武蔵は晴れて他国と対等になるのだ。

 ただし、そんなもの聖連が認めるわけないので、戦争必至ということ。

 今まで、それができなかったのは、三河君主が武蔵の搭乗ができなかったため。しかし、今は、三河が消失したため、乗艦が可能となっている。そして、その権力は武蔵王である、へたれキングよりも上。

 

「おいおい、それじゃダメだろ。確かに、主権ってのは大事だろうけどさ。戦争起きたら人が死ぬんだぜ? それについてどう考えてんだ? と、商人の小西君からの質問です」

 

 小西君とは、正純が馬車であった商人である。

 

「あらら、なかなかうまくやってんじゃんトーリ。いつの間にコニたんからの質問集めたのかは知らないけど。これは、うまいな」

 

 対する正純も負けてはいない。むしろ、このバカに負ける奴の方が驚きである。

 

「戦争でも戦死者はでる。だが、戦争を回避しても、“戦死者”は出るんだ」

「?? どういうことだ? 戦争してないんだから“戦死者”なんてでないだろ」

「つまりだな。そこの商人も言ったが、戦争が回避され完全支配されると、極東の金融は凍結される。そうなると、各居留地への予算もなくなる。そうなってしまうと、公的な事業、そうだな、病院と言った方が分かりやすいな、が動かない。金の総量も少ないから貧困が進む。もうわかるはずだ」

 

 病院が動かなければ、怪我や病気に対処できない。いずれ死ぬ。貧困が進めば食うものがなくなり、いずれ死ぬ。そうなれば、戦争が起きようが、起きまいが“戦死者”は出る。それが早いか遅いかの違いなだけだ。そして、その時に対処できるか、できないかの違いでもある。

 少なくとも戦争をし、主権を獲得すれば、金融は凍結されず、公的事業も動く。戦争で負った傷は治療できる。だが、完全支配されればそれもできない。

 どちらがマシかは、わかるだろう。

 

「ふーん、じゃあ、次だな。え~っと、お、これよくね? 政治家、正信君の質問です!

 さっきまでは、自国のメリットだったけど、敵対する聖連を悪とする大義名分はなんだ?」

 

「うはっ! あんの親ばか、何やってんだか。これに答えることができれば、それがとどめ、一撃になるようにしてるよ。親ばかだねえ。くくく、お、あそこでみてんのんな。内心ではきっと、正純こたえて、こたえてー、とか言っているに違いない。くくく、ははははははは」

 

 悠理がなぜか、馬鹿笑いしていた。

 その間も、相対は続く。アデーレが、黒藻の獣を連れてきて、黒藻たちが、ホライゾンを助けてと正純に懇願している。

 

「……では、馬鹿な葵にもわかるように言ってやる。

 まず、三河を消失させたその張本人は三河と共に消失してしまっている。そんなことを何も知らないホライゾンを嫡子として、強制的にその責任を取らせようとしているんだ。

 それだけじゃない。仮にホライゾンがいなくても、おそらく誰かが選ばれていただろう。つまり、これは聖連が自分の思い通りに処刑を行う悪魔のシステムということだ」

「じゃあ、責任はどこに行くんだよ」

「簡単な話だ。責任なんてどこにもない。今、三河の住人は武蔵の輸送艦を仮の居住区としている。なら簡単だ。その船を三河として武蔵と同じ航空都市とし、武蔵と連結し、武蔵が三河の役割を引き継ぐ。結論として、三河は消失しない。つまり、責任はどこにもない」

 

 事実上、武蔵の上に三河を作り、三河の消失をなかったことにする。正純が言っているのはそういうことだ。

 三河は消失していないのだから、責任はない。責任はないのにホライゾンを処刑しようとしている聖連は悪である。

 正純は聖連に対し、対応の見直しを要求した。

 それに対応するのは、教皇総長インノケンティウス。

 対論の潰し合いを行う。

 互いの対案を出し合い、潰し合い、平行線を保つことで、互いの意見を使い捨てにしていく。教皇総長が圧倒的に有利だ。歴史を積み重ねた、いや、無駄に年食ったオッサン対若造では勝負は見えている。反論できなくなれば負けなのだから。

 そこで、正純は、

 

「聖連と我々の価値観には相違があり、わかり合うことはありませんよね」

『いや、話せばわかると思っている』

 

 教皇総長のその言葉を聞き、正純は、聖連を無視し、自分たちの利となるようにシロジロと浅間を動かす。

 それから、無茶苦茶身勝手な解釈を出す。

 

「それは、こっちは敵対するけど、聖連は平行線のために話し合ってくれるというですよね」

『……詭弁だな』

 

 確かに、詭弁である。だが、それも無視できない詭弁だ。この言葉で教皇総長は、正純を評価した。

 

『だが、こちらは争いを望んでいない。平行線にのっとれば、そちらは争いを望んでいることになるよなあ』

 

 平行線を論じる以上。そう答えなければならない。

 また、

 

『それにお前さん、襲名失敗してるだろ。その腹いせに権威に逆らいたいだけなんじゃないか』

 

 ここで教皇総長は正純が女であることをバラした。ダメ押し大好きである。信用を得なければならない場で自らは嘘の仮面をかぶり皆を欺いていたと印象を操作する。

 

「おーおー、えげつねえな、教皇総長。いい大人が子供いじめて何楽しんでんだか。あ、忠勝様もそのけ、あるな。ああ、そっか、みんなしておれつええええがやりたいだけだったな」

 

 印象操作は有効であった。しかし、馬鹿を侮ってはいけなかった。

 

「オマエ、女なのかよ」

「いや、それは…………」

「…………」

 

 何かを企んだような顔のトーリ。

 

「あちゃー、これは……」

 

 即座に創作術式“輪廻”を発動し男子勢の眼を潰す。

 

「確認タアアアアアイム!!」

 

 トーリが正純の制服を下した。胸揉まれると思ったから上ガードしていたらまさかの下であった。そして、ぺたぺたぺた、すりすりすりと股間タッチ。

 悲鳴と、歓声のデュエット。

 

「チョーーー女あーー」

 

 そして、この発言である。

 

「ナイス貧乳ーー」

 

 そして、もみんぐである。さすがトーリ歪みない。

 

「さって、いいか、教皇総長。セージュンはな。俺がやりたいことの、その答えを示して見せてくれた。やってやれないことはないってな。

 だから、俺はセージュンを支持する。

 てなわけで、教えてくれよ。俺たちがホライゾン救いに行って、他国の奴が得することってのを」

「……ああ、教えてやる。大罪武装収集による末世の解明と、解決だ」

 

 全世界的エンターテインメント。

 そう、亡き松平・元信が言った。それの解明と解決。

 それが、武蔵が他国に提示できる最大の利益。

 

「だから、こそ、各国には大罪武装の即時返却を要求する。そして、武蔵は末世解決に全力を尽くそう(無償)。だが、この行為を妨害し、一人の少女の感情を不当に奪い取ったままならば。学生間の相対を以て応じよう」

『なるほどなあ。決裂するわけだ。そうかそうか。ガリレオやれ』

「そっちだ!」

 

 そして、現れる。

 

「K.P.A.Italia副長ガリレオであるよ」

「拙・僧・発・進」

「あ、私も乗っけて」

 

 ウルキアガが悠理を背に乗せてガリレオへと飛翔する。

 

「この異端めがー」

「ヤフー!」

 

 だが、その攻撃は、ガリレオへは届かない。

 

「ちいい! 淫蕩の御身か!」

「よく知っているな武蔵最強の少女よ。正式な使用者ではないが、私程度であれば“触れた力は放棄され遊ぶ”」

「いけ、ノリノリー!」

 

 ノリキが走りこんでくる。

 創作術式“弥生月”発動。

 だが、それも遊ぶ。

 

「君の拳は軽いようだ。天動説」

 

 ノリキとウルキアガが地を滑る。

 

「ん、少女は、どこに」

「ここだよ!!」

 

 背後から斬りつける。だが、やはり、斬撃は遊ぶ。

 

「いつの間に――なるほど、そういうことか」

 

 悠理の額には輪廻の文字の表示枠。

 

「我が天動説の軌道を繰り返し、私の背後に回ったのだな」

「わかっているなら、言わなくていいよ」

「ならば、もう少し回っているがいい」

「うわわっととと」

 

 天動説により、体勢を崩された悠理。

 ガリレオはその隙に、正純を狙う。

 

「結べ、蜻蛉切」

「ぬお!!」

 

 割断の力が走り、橋を割り、正純とガリレオを分ける。

 

「三河圏新名古屋教導院所属特殊予備役 本多・忠勝」

 

 そこに東国無双 本多・忠勝が立っていた。

 




感想、ご意見、お待ちしてます。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。