魔法少女まどか☆マギカ [新編]救済の物語(完結)   作:曇天紫苑

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この世界における初陣

 小さな廃工場の中へ入ると、不気味な気配の中を、奇妙な人型をした存在が立っていた。

 此処はハコの魔女が出現する確率の高かった工場だが、この世界には最早存在しない。代わりに、別の敵が配置されている。

 

 人間にも似た形をしているが、顔には有るべき物が無く、人間よりも遙かに大きく真っ白な姿をしている。感じ取れる気配は、呪いの物。魔女に近いが少し違い、規模も大きくは無い。

 あれが、この世界における魔法少女の敵、魔獣。情報収集の段階で知っていたが、この目で見るのは初めてだ。魔女程ではないが、何て不気味な存在感だろうか。

 奴らはきっと、魔女が居なくなった分を埋める存在なのだろう。そう考えるとケンナの姿が頭に出てきたので、小さく首を振って消し去る。

 

 工場のより奥へと入っていくと、そこには見慣れた金髪ロールの先輩が居た。

 まだ戦闘は開始していないのか、魔獣の様子を窺っている。魔獣に見つからない様に注意しながら彼女の元へ行くと、こちらに気づいて小さな声をかけてきた。

 

「来たわね、暁美さん」

「ごめんなさい、少し遅れてしまいました」

「いえ、良いのよ。無理に呼び出しちゃったのはこっちだもの」

 

 巴マミと挨拶を交わしながら、魔獣の様子を見てみる。向こうはまだこちらに気づかず、静かに立っているだけだ。奴らが攻撃する姿を、私はまだ知らない。油断は出来ない状態だった。

 

「多いですね」

「そうね……」

 

 私の言葉に相槌を打ちつつ、巴マミ……いえ、マミは戦闘準備に入る。

 私は、マミから情報を得ていた。最初はインキュベーターにしようと思ったのだが、不思議と連中を見かけなかったので、代わりに彼女へ声を掛けたのだ。

 お陰で、今の私はマミと敵対する事も無く、友好な関係を築けている。魔女化という恐るべき真実が無いので、安心して関われるのが嬉しい所だ。

 

「貴女、見滝原だとこれが最初の戦いになるのかしら?」

「ええ。この見滝原で魔獣と戦うのは、これが最初です」

 

 八割以上事実とは異なるが、嘘ではない。確かに、私は見滝原で魔獣と戦っていた訳ではないのだから。

 そんな私の返答を聞いて、マミは眉を顰めた。

 

「暁美さん。そんな堅苦しい言葉遣いじゃなくても良いのよ?」

「……なら、お言葉に甘えさせて貰うわ」

 

 見抜かれたかと思って内心冷や汗を浮かべたが、そうでは無かったらしい。安堵しながらも、普段通りの言葉遣いへ戻しておく。

 マミと協力出来るのは、良い流れだ。彼女なら、私が危険な状態になれば助けてくれる。

 

「悪いけど、此処は私に譲って貰えないかしら」

「え? 大丈夫なの? 貴女、確か……」

「そう、つい最近、固有魔法を失ったわ。だから、新しい戦闘方法をちゃんと試してみたいのよ」

 

 ベテランだが、固有魔法を失った事で能力が落ちていて、誰かの手を借りないと不味い。私の経緯は、そういう風に説明している。性根から繊細で優しい彼女なら、助けを求められれば断らないという確信が有った。

 何とも打算的だと思う自分が居るが、そんなのは今更だ。実際、マミは私の事実とは半分異なる言葉を信じて、協力する事を約束してくれた。

 この世界でも佐倉杏子は固有魔法を失っているらしく、そういう意味でも私を心配してくれているのだ。

 

「だったら、私と一緒に戦えば……」

「大丈夫。これでも魔法少女やって長いのよ。魔法を失ったからと言って、そうそう落とされはしないわ」

「……でも、心配よ?」

「心配してくれるのは嬉しいけど、一応、私は貴女と同じくらいベテランなのだけれど。それに、一人で戦えるのかも確認しておきたいのよ」

 

 説明しながらも、心の中で肩を竦める。確かに私は固有魔法を無くした状態なので、不安なのは仕方無いのかもしれないけど、マミは心配し過ぎだ。

 私だって油断するつもりは無いが、肩に力を入れすぎるのも不味いのだから。

 

「……危ないと思ったらすぐに助けるわ。良いわね?」マミはかなり不満だった様だが、とうとう折れて頷いた。

「なら、お願いしておくわね」

 

 好意は素直に受けておく事にする。今は、彼女の援護が頼もしい。使用するのがマスケット銃とはいえ、彼女の技能は私のそれを遙かに上回っているのだから。

 それに、危険な場合は即座に助けてくれるだろう、という信頼も有った。

 

「じゃあ、合図と同時に飛び出すわ。良いかしら」

「ええ……私は、此処から暁美さんの援護をするわね」

 

 既に私達は魔法少女に変身し、武器を準備している。マミはマスケット銃を手に持ち、私は弓矢を片手で握っていた。

 物陰から飛び出せる様に姿勢を正しつつ、少し息を吸って落ち着く。魔獣との初めての戦い。それは、何だか魔女と最初に戦った時の様な緊張を覚えさせた。

 

「3……」

 

 息を吐き、弓を握る力を強める。

 

「2……」

 

 マミに視線を送って頷き合い、意識を魔獣へと集中させた。

 

「1っ!」

 

 迷わず、私は物陰から飛び出して弓を構える。即座に魔力を使い、狙いを定めた。

 現代兵器という武装を無くした私の、新しい武器。それが弓だった。

 そこに魔力で精製した矢を付けて、射る。魔獣はこちらの行動に反応し切れていない。その隙に、もう一発射る。ホーミング機能が付いているので、狙いは適当でも当たる。

 まどかの意志を守る、という決意を篭めて、記憶の中のまどかが持っていた弓に形を似せたそれは、十分な威力を持って魔獣を破壊した。

 その余韻に浸る暇も無く、魔獣達は糸の様な攻撃を私へと飛ばしてくる。

 

「っ!」

 

 私は地面を蹴り、背中に生えた翼で空を飛んだ。今まで自分が居た床は魔獣の攻撃によって砕けていたが、私には傷一つ無い。

 固有魔法の代わりに作ったのが、この翼だ。最初は白い羽にしようと思っていたのだが、気づけば魔女の結界にも似た真っ黒い翼になっていた。

 そこから、また弓を構えて、打つ。最小限の魔力だが、それでも十分に効果を発揮してくれる。効率良く魔力を運用出来る様に特訓した甲斐が有るという物だ。

 魔獣からも攻撃は来るが、大半は避けられる。危ない物は、事前にマミが打ち落としてくれた。

 

(魔女よりは、やりやすいわね)

 

 頭の片隅で、そんな感想を覚える。

 想像していたより、魔獣は弱く脆かった。油断はしないが、強力な魔女よりは遙かに戦い易いと思える。少なくとも、固有魔法の無い私が苦戦せずに倒せる時点で、強いとは言えないだろう。

 やはり、魔法少女の絶望から生まれた存在には及ばないのだろうか。少しばかり考えながらも、身体は自然と魔獣を倒していく。

 幾らかの攻撃を羽で防御しながらも、私をすり抜ける様に魔獣を狙い撃っていくマミへ賞賛を送った。

 

(ねえ、まどか……貴女は、私を見ていてくれるのかしら)

 

 頭を冷静に保ちながらも、まどかの事を考える。あの子が見守ってくれていると思うと、身体はより動かし易くなった。

 恥ずかしい姿なんて見せたくないし、少しくらい、格好付けたかったのだ。

 気がつけば、魔獣はもう殆ど残っていなかった。油断せずに戦っていけば特に問題の無い相手だったので、想像していたより早く片づいていた。

 その残り数体も弓で次々に射ると、この場に居た全ての魔獣は全滅した。

 

 魔獣の居た場所には、四角形の物体が幾つか転がっている。拾って眺めていると、その奥に呪いの様な物が見える気がした。

 これが、この世界におけるグリーフシード。実際に見るのは初めてだが、やはり、ソウルジェムから生まれた物に比べれば小さく、感じ取れる呪いも薄い。

 指先で摘んで眺めていると、マミがこちらへ向かってきた。

 

「どうかしら」

 

 新しい戦い方は、上手く行っていたのだろうか。自分では、それなりの形に出来たと思っているんだけれど、人に聞いて見た方が良いだろう。尋ねてみると、マミは少し考えて、柔らかに微笑んだ。

 

「そうね。やっぱり、上手いと思うわ。ちょっと弓の方がぎこちない感じはしたけれど……立ち回りはとても綺麗よ。流石はベテラン、という感じね」

「ありがとう。その辺りは、後々で直していくわ」

 

 自分でも、殆ど扱っていなかった武器なので、時折戸惑う箇所が有った事は分かっている。

 だけど、想像していたよりは早く弓という武器に慣れる事が出来た。銃器ばかり使っていた自分が、同じ遠距離攻撃とはいえまるで使い方の異なる物を扱えているのは、少し不思議だ。まどかが背中を押してくれている気がして、何だか嬉しい。

 

「このグリーフシードは、どうするの?」

「暁美さんが使えば良いと思うわよ。今回、私はあんまり手を出さなかった事だし……」

「それでも助けになったわ、使って」

 

 マミに幾つかのグリーフシードを手渡し、自分の分は仕舞っておく。使い方は、前と変わっていない筈だ。

 

 さて、この辺りの魔獣は消えたと思って良いのだろうか。魔獣については全く詳しく無いので、その行動は魔女に照らし合わせて考えるしかない。

 魔女はその生まれ方からして、倒してしまえば増援が現れる事は殆ど無い。だが、魔獣はこの世の呪いから生まれているのだから、新たに出現したとしても不思議ではなかった。

 私では判断出来ない。ならば、判断出来る人に任せよう。

 そっとマミの顔を窺うと、彼女はまだ警戒を続けていた。どうやら、魔獣はまだ出る可能性が有る様だ。

 

「まだ嫌な感じがするわね……暁美さん、気をつけ……っ」

「ええ、解っ……!」

 

 言われる前に、周囲を警戒する。そこで私達は殆ど同時に気づいて、顔を上げた。

 誰かが、此処へ向かって来ている。それを捉えた私がマミヘ目配せをすると、彼女は小さく頷き、物陰に飛び込んだ。

 私も、少し遅れて隠れ、何時でも攻撃出来る様に弓を持った。姿が見えない内は、攻撃してはならない。魔獣なら倒すが、迷い込んだ一般人なら、対応を考える必要が有る。

 

「……」

「……」

 

 私とマミは、二人で同じ場所を見ていた。

 気配がかなり近づいて来たと思うと、私達が入った時に使った扉が開き、何かが入り込んでくる。

 

「あれー? マミさんが居ると思ってたのに……」

「何処行ったんだ、あいつ」

 

 入り込んできた者の声と姿を見て、思わず肩の力が抜けた。見慣れた赤髪長髪と青髪短髪の組み合わせは、間違い様の無いくらい佐倉杏子と美樹さやかだった。

 彼女達もまた、魔法少女に変身した状態で此処に来ている。恐らくは、魔獣の気配に気づいて向かって来たのだろう。

 

(……ああ、そういえば。美樹さやか、貴女、魔法少女になっていたのね)

 

 美樹さやかが既に魔法少女になっている事に、私は此処に来て初めて気づいた。どうも、私は謎の転校生に気を取られていて、他の事にまで気が回らなかったらしい。

 ともあれ、彼女達であれば姿を見られても問題では無い。まどかの居ない世界で彼女達と敵対するメリットなど、何処にもないのだから。

 そう考えて、二人へ声をかける為に立ち上がろうとした、その時。

 

「さやかちゃん、杏子ちゃん。巴先輩は?」

「んー。あたし達、遅れてきちゃったみたいだよ」

 

 二人に少し遅れて、扉の向こうからもう一人が現れた。

 その、長身で細身の人物を見た私は、大きく目を見開いた。

 長い黒髪は先程見た時と同じくらい綺麗で、その非現実的な、あるいは幻想的なまでの美貌が目に飛び込んで来た時、私は思わず声をあげていた。

 

「ケンナっ……!?」

「あれ、ほむらちゃん?」

 

 物陰から勢い良く立ち上がった私を見て、環之小鳥ケンナは驚きつつも、首を傾げている。細かな動きだというのに、やはり目が離せない。

 

「暁美さん、お知り合い?」

「……」

 

 マミが問いかけてくるけど、返事をする余裕が無い。

 どうして、彼女が此処に居るんだろうか。そうやって疑問を抱く一方で、私はその疑問の答えに気づいていた。

 ケンナの格好が、全てを物語っている。彼女は今、見滝原中学の制服を着ていなかった。なら私服なのかと言われれば、それも違う。

 少々可愛らしくアレンジされているが、制服に近いデザインだった。しかし、ヘドロの様に濁った黒に埋め尽くされている事が服としての魅力を完全に奪っている。スカートまで真っ黒で、そこから伸びる足も黒のストッキングで覆われていた。

 見事に黒一色、しかも不気味な色合いを持つ、その格好。長身痩躯の彼女だからこそ着こなせると言っても良いだろう。

 そして、それは私の魔法少女としての服装に少し似ていた。だからこそ、それが環之小鳥ケンナの魔法少女としての服装だという事が、理解出来た。 

 

「貴女も……魔法少女だったのね」

「うん。変、じゃないかな?」

 

 ケンナは私へ向かって身体を一回転させて、自分の格好を見せた。おぞましい単色を纏った服なのに、彼女が着ると、それはまるで宇宙の様にキラキラとした星々の輝きを帯びている様に感じられた。

 

「……悪くないと思うわよ」

「やった。ありがとう、ほむらちゃん」

 

 広大な世界を見せつける服装とは違い、彼女の笑顔はほんわかと、のんびりとしている。気づけば警戒が自然に解けて、持っていた弓を下げていた。

 それにしても、綺麗な子だ。まどかの可愛らしさ程では無いけれど、その魅力は途方も無い物が有る。

 私がそんな事を考えているのだと、気づいているのだろうか。少しの間、ケンナは私の顔を何を考えているのかが分からないくらい楽しげに見つめていた。だが、そこで思い出した様にマミの方へ身体を向けた。

 

「あ、はじめましてっ! 私、環之小鳥ケンナですっ、えっと……貴女が、巴先輩ですか?」

 

 丁寧かつ好意的な挨拶を向けられて、マミは戸惑いがちに答えた。その瞳が見とれる様にケンナを捉えている事に気づいているのは、恐らく私だけだ。

 

「え、ええ、そうよ。でも、私の事は誰から聞いたの?」

「あ、それはあたしと杏子が教えました」

「そいつも魔法少女だからな、一応、見滝原はマミの領域だし、顔合わせくらいしないと不味いだろ」

 

 二人の説明を聞いて、マミは怪訝そうにした。

 

「ねえ、二人とも。私、聞いてなかったんだけど……?」

「ごめんなさい、忘れてました……」

「あたしは、さやかが言ってるとばっかり……」

 

 横から聞く限り、さやかと杏子はケンナが魔法少女である事を知っていたらしい。マミに教えるのは、忘れていた様だが。

 ソウルジェムの有無を確認すれば魔法少女か否かは分かる筈なのに、私とした事が、そんな事に気づかない程注意力が落ちているのか。まどかを救うという目的が無いと、どうも色々な部分で気が抜けている自分を自覚する。

 しかし、自分の直感はまだ錆びていなかったらしく、この工場全体から感じ取れる嫌な気配が増大した事には、気づけた。

 

「……来るわ」

 

 私の声を聞いたのか、全員の視線が集中する。けど、私の言葉で魔獣の気配を察知したのか、その意識は私から逸れた。

 それに合わせた様なタイミングで気配が大きくなり、幾らかの魔獣が出現する。

 何時でも矢を放てる様に準備しつつも、身体には余裕が有った。私が倒した数よりも多いが、こちらの頭数も増えている。それほど、肩の力を入れる必要は無いだろう。

 

「魔獣の増援が来たわ……さあ、行くわよ!」

「はい!」

 

 マミの声を合図にして、私達は一斉に動き出した。

 さやかと杏子が一緒に突撃し、私はケンナに併せる形で戦う事にする。マミは私達を見守りつつも、自分の行うべき事を進めるつもりらしい。

 銃声と斬撃の音が響く中、私もまた弓を射る。感覚は先程掴んでいたから、命中率も動き方も理解出来ている。

 私達に関しては、何の問題も無い。杏子とさやかは息の合った動きで次々と魔獣を斬り伏せているし、マミも、熟練のテクニックで反撃を許していない。

 意外な事に、さやかも魔法少女としての戦闘に慣れている節が有った。元々十分に才能が有るからか、杏子の縦横無尽な戦い方に完璧に追随している。

 美樹さやかという少女が魔法少女として経験を積むと、あんな風になるのだろうか。私は、さやかが魔獣の一体をすれ違う瞬間に斬り捨てる姿を見て、そう思った。

 

(問題は、無さそうね)

 

 さやか達から目を逸らし、ケンナへ意識を向ける。彼女は新米魔法少女、という雰囲気が有ったから、少しばかり心配だった。

 でも、彼女が戦っている所を実際に見ると、その心配は何一つ無用の物だった事が理解出来る。

 

「えい!」

 

 女の子らしい掛け声をあげたケンナは、自分の足下から伸びる影によって魔獣を斬り裂き、その黒色によって飲み込んでいた。

 彼女は、魔獣の攻撃を身体を少し逸らすだけで避けている。何回か危ないと思う場面は有ったが、それらは全て影らしき物に叩き落とされ、あるいは防がれている。

 しかも、攻撃を受けたその瞬間には黒い影が魔獣に迫り、覆い被さる様にして消し去ってしまうのだ。

 影を操っているのか、それとも別の何かなのか。どちらにせよ、攻防一体の奇妙かつ強力な固有魔法だと言える。

 そんな彼女の魔法に意識を取られていたからだろうか、私は、魔獣の攻撃が迫っている事に気づいていなかった。

 

「ほむらちゃん、危ない!」

 

 声が聞こえた時には、既に影が私を守ってくれていた。盾の様に広がるそれが、魔獣の攻撃を吸い込んでいる光景を、私は目の前で見た。

 ただ黒いだけだと思っていた影には、夜空にも似た光りが混じっている。絶対に触ってはいけないと本能が警告していなければ、思わず手を伸ばしていた所だ。

 

「ありがとう、助かったわ」

「私の事は心配しなくて良いから、自分の戦いをして!」

「……気づいてたのね」

 

 ケンナに注意されて、目の前の戦いに意識を戻す。

 露骨に眺めていた為か、ケンナに気づかれてしまった。しかも、『心配している』という、かなり好意的な解釈をされてしまった事が、少し恥ずかしい。

 私はただ、彼女の魔獣を操っている様にすら見える戦い方に見とれていただけであって、心配する気持ちは有ったけれど、戦いを見た瞬間に吹き飛んでいる。

 私達の場合はまだ戦いになっているのだが、ケンナのそれは魔獣が哀れになる程に一方的な展開なのだ。そんな彼女を心配するくらいなら、自分を心配するべきだとすら思えた。

 

「そ、れっ!」

 

 ケンナが手を広げると、そこから黒い塊が現れて、魔獣を飲み込んでいく。欠片の抵抗すら許さずに取り込んでいく所は、魔法少女というより化け物の所業だ。

 でも、どうしても怖いとは思えない。彼女の戦い方は不気味だったけれど、でも、何処かで見た様な気がしてならなかった。

 





-解説-

 ……分かる人なら、ここでもう全部分かっちゃうかと思います。

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