宇宙戦艦YAM@TOガミラス戦役編   作:Brahma

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七色星団で会いまみえるヤマトとドメル艦隊。地球とガミラスの命運をかけた戦いの幕はきって落された。


第9話 決戦!七色星団

七色星団へ向かうヤマトでは、各部署が整備と点検を念入りに行っていた。

「第一砲塔電探連動異常なし。」

「第二砲塔も異常なし。」

「ヤマトのメインレーダーが破壊されたときにきちんと砲塔が敵機や敵艦隊を捕らえて攻撃するためのレーダーよ。念入りに点検してね。」

「はい、水瀬補佐。」

「第一副砲異常なし。」

 

コスモファルコンも航宙隊員が念入りに点検する。

「みんな、エンジンの調子はだいじょうぶかしら。あと射角の調整をわすれないでね。」

「おお!!」

力強い答えが唱和される。

「難しいところは、整備班の皆さんにやってもらいますけど、自分でできる範囲ではやっておいて。射角がずれてて、あとで整備班長とけんかしたり、なぐったりしないでね。」

格納庫は笑いにつつまれる。

 

「まこちん、補助エンジン、波動エンジンともに快調だよ。」

「亜美、真美ありがとう。」

「まこちん。」

「何?」

「この戦い、勝てるよね。きっと。」

「「しゆうを決する」って「雌雄を決する」って書くって、りっちゃんが教えてくれたんだ。雌(メス)の字のほうが先にあるから、亜美たちがかつってことだよね。」

真は苦笑して

「ボクたちは、いざというときにエンジンが完全に動くよう努力すればいいんだよ。」

「そうだね。」亜美と真美はにっこりと笑顔を返した。

 

ガミラス本星ではドメル艦隊の壮行式が行われていた。

総統府の前の広場にはドメル以下の将兵が整然と整列していた。広場を埋め尽くす兵士とそれを取り囲むバレラス市民。「ドメル!ドメル!」という歓声が広場全体をつつむ。

やがてデスラーが現れ、市民は「デスラー総統万歳!デスラー総統万歳!」と歓呼する。

デスラーは身振りで市民の歓呼に答え、それを制止するよう合図をするとマイクへ向かって激励の演説をはじめる。

「諸君!いよいよ大ガミラスの力を見せるときがきた。われわれはすべてをここにいるドメル将軍以下の勇敢なる戦士諸君の双肩にゆだねる。われわれは勝利する。次に戦士諸君に会うときは戦士諸君が凱旋したときになるだろう。戦士諸君は存分に戦ってきてほしい。そして再びわれわれに雄姿を見せてほしい。」

デスラーの演説が終わると広場は「デスラー総統万歳!ドメル将軍万歳!」の大歓声につつまれる。

「では、これより出発する。諸君の健闘を祈る。全員、乗艦せよ。」

ドメルの命令で将兵たちは自分たちの乗艦に乗り込んでいく。

やがて各艦から報告がなされる。

「第一空母分艦隊、ゲットー、全員乗艦完了。」

「第二空母分艦隊、バーガー、全員乗艦完了。」

「第三空母分艦隊、クロイツ、全員乗艦完了。」

「戦闘空母分艦隊、ハイデルン、全員乗艦完了。」

ドメルは、旗艦の艦橋から艦隊をながめながら諸将からの報告を聞いていたが、全員乗艦の報告を確認すると、

「全艦、発進せよ。」と命じ、第一空母から浮上を開始し、戦闘空母の浮上を確認すると旗艦を発進させた。

七色星団へ向けて航行中にドメルは分艦隊司令官たちにスクリーンを通して作戦を伝えていた。

「われわれは、この暗黒星雲の外でヤマトを待ち構える。ヤマトは七色星団の発する電磁波でレーダーに障害が起こるだろう。第一攻撃隊がヤマトのレーダーを破壊し、やつらの直援機を誘い出す。電探連動で主砲を発射するだろうが、精度はレーダーがあるときよりは落ちる。事実上まるはだかだ。」

「なるほど...」ゲットーとバーガーが首を軽く縦に振ってうなづいてみせる。

「その状態で瞬間物質移送機で至近距離に出現する急降下爆撃機や雷撃機の攻撃にさらされて無事にすむまい。普通ならここで撃沈だが、それでも沈められなかった場合に瞬間物質移送機で送り込まれた重爆機からドリルミサイルが発射され、波動砲口を封じて内部から爆破する。ヤマトはわれわれの位置を突き止めることすらできずに沈むということだ。」

「ドメル司令。さすがです。十重二十重に考えられた作戦。ヤマトは手も足も出ないですな。」ハイデルンがコメントすると、クロイツがうなずく。

「だが、君たちも知っているようにヤマトの艦長、ヒダカマイは油断ならない人物だからな。万一、レーダーが効かないためにわれわれの背後に回って波動砲を撃って一気に勝負を決めようとする可能性もある。その場合の作戦も考えてある。まあ、楽しみにしていてくれたまえ。」

 

そのころヤマトの食堂では珍しくステーキがふるまわえていた。

艦医であるあずさが食事をしていた。亜美と真美がそれをそばで眺めている。

「ステーキはたしかにおいしいけれど力がでるっていうのは本当かしら。」

「あずさお姉ちゃん...」亜美と真美があずさの顔をながめているのに、あずさが気づく。

「わたしは、みんなの忍耐と使命感が鍵だと思うのよね。そう思わない?」

何の気なしにあずさは二人に話しかけるが

「ふうううん。」亜美と真美の顔がだんだんにやついてくる。

「いっただきまーす。」ふた切れに切られたステーキがあっというまに皿から取り去られる。

「あ、こら!亜美、真美、それはわたしのステーキじゃない。」

あずさはあわてて二人の後を追う。そばで見ていた乗組員は苦笑しながらそれを眺めていた。

 

第一艦橋では、千早が舞に報告する。

「艦長、あと30宇宙キロで七色星団に達します。」

「自動操縦にきりかえて。」

「了解。」

「みんなを大会議室にあつめて。」

雪歩が

「皆さん、大会議室に集合ですぅ。艦長からこれからの指示がありますぅ。」

と全艦放送で伝える。

「何だろう?」

「作戦の変更かな?」

「ガミラスのやつらはどうやって攻めてくるんだろう」

「やつらを片付けるチャンスともいえるぞ。」

乗組員はわいわい話しながら集まってくる。

そのうち一人が春香を見つけて話しかける

「天海班長、なんだかこんな挑発に乗るべきじゃないって気がしてきましたよ。」

「いい?たとえばここで逃げたとするよね。自分がドメル将軍だったらどうすると思う?」

春香に話しかけた乗組員はだまりこんでしまった。

 

「艦長が来たぞ。」

大会議室は静まり返る。

「いよいよ、ドメル艦隊との決戦になるわ。彼らも地球への移住を考えていたみたいだからなみなみならない決意を持っているわ。

この戦場からかんがえて、彼らは戦闘機による奇襲を考えているでしょうね。ここで勝って地球の危機を救うわよ。みんなこの私がこれまで勝ってきたように、勝てるための算段はしてあるから、思う存分戦って。」

「班長たちは未成年が多いのよね。水さかづきでちょうどいいわね。」

舞のことばに爆笑がおこる。

「水さかづきの意味を知ってる人もいると思うけど、これは、死を決意するものじゃない。もう一度みんなで勝利を宣言するためのものなの。成人してる人は勝った後に思いっきり飲んでね。」また、爆笑が起こる。

「春香、お願い。」

皆が円陣をくんで手のひらを重ねる。

「ヤマトクルー、ファイトー」

 

「レーダーが効かなくなりましたぁ。」

雪歩が伝える。

「みんな、戦闘機隊がくるか、目で確かめるのよ。」舞がいう。

「目ですか。」

「そう。それが勝利を分けるの。」

「総員、戦闘配置。」舞が指示すると

「総員、戦闘配置。」と春香が復唱し、非常警報のブザーがブーツブーツっと艦内にひびきわたる。

 

砲術員は、パルスレーザー砲塔、主砲塔、副砲塔の持ち場に着く。

コスモファルコンの搭乗員も出撃準備をととのえた。

 

「ねずみがわなにかかってきたな...」

ドメルは薄ら笑いをうかべた。

「全艦、戦闘配備!」

「全艦、戦闘配備!」副官が復唱する。

「戦闘機第一波発進。」

第一空母の司令官ゲットーは、

「戦闘機隊第一波発進せよ。」

 

「敵戦闘機、発見。」

観測員が第一艦橋に伝える。」

「ワープ準備。暗黒星雲の裏に抜けるわよ。」

「ワープ準備、各自ベルト着用。」

ガミラス戦闘機は、爆撃をしかける。

「左舷、101装甲板被弾!」

「右舷、210装甲版被弾!」

「左舷、150装甲版被弾!」

「右舷、271装甲版被弾!」

「このままじゃやられてしまいますぅ。」

「かまわないわ。このままワープよ。」

 

「ヤマト、抵抗してきません。」

「そうか。ヤマトはワープしてわれわれの背後にまわりこむつもりだ。やつがワープする瞬間にワープアウト予想地点を計算しておけ。われわれの位置を予想している場合も計算しておけ。」

「伊織、主砲を一発見舞ってやって。」舞が指示する。

「にひひっ。主砲発射。」

サーモバリックモードでガミラス戦闘機のエンジンから引火してあっというまに半数の機体が撃墜される。

 

「なんだ、あれは...」

驚愕したのはドメルのほうだった。戦闘機隊も動揺している。

「いまよ、千早。」

「ワープ10秒前..3,2,1,ワープ。」

 

「ヤマト、ワープしました。」

「ワープトレースからワープアウト位置を計算しろ。」

「われわれの後方、4時半の方向、3500宇宙キロと思われます。」

「われわれの位置がわかってるわけではないな。」

「そのようです。」

 

「瞬間物質移送機作動!」

「戦闘機隊第二波、ワープ光線のエリアに入れ。」

「全機、ワープ光線のエリアに入りました。」

「よし!」

ドメルはにやりと笑い、移送スイッチを押す。

 

「ワープ完了。」

「敵が襲ってくるわよ。」

「!!」

「左上方に、ガミラス機出現。」

「主砲、発射!」

「航宙隊、発進。」

主砲が発射され、引火して、ガミラスの編隊は一気に半数消滅する。

やがて、コスモファルコン隊が発進し、空中戦になる。ガミラス機はレーダーを執拗に狙ってくる。激しい空中戦でレーダーも破壊される。ドメル艦隊のガミラス機パイロットはガミラスきっての精鋭である。なかなか撃墜されず、さすがの小鳥も苦戦を強いられる。「左捻り込み」を相手も使ってくるのだ。しかも混戦になるとサーモバリックモードは味方機もまきこんでしまう。この混戦の状態のまま、ガミラス編隊はヤマトのコスモファルコン隊を引き離しにかかっていく。

「ぬうう。このままじゃ撃てないじゃないの。」

伊織は思わず不平を言ってしまう。

「伊織、またやつらはワープで飛行編隊を送ってくるわ。主砲のほかに煙突ミサイルも準備しておいて。それから、律子、ていさ...気象探査衛星を4機ほどうちあげといて。」

「はい。」

「了解。」

 

ドメルはヤマトの戦いぶりをみていて、

「なんだ、あの砲門は」

「やつらには予想より優れた兵器と指揮官がいるようです。」

「そうだな。あの砲門は、設定を変えられるということだな。」

「そのようです。われわれが戦闘機による攻撃をしかけてくることをあらかじめ予想していたということです。あれは、戦闘機のエンジンに引火して爆発する物質を撒き散らしているんでしょう。」

「ヒダカマイ、おそるべき指揮官だな。瞬間物質移送機の効果が半減している。すぐれた部下にも恵まれているんだろう。ゲールごときが負けたのもうなづけるな。」

そうこうしているうちに第二空母のクロイツから通信が入る。

「急降下爆撃隊、発進準備完了しました。」

「よし、雷撃隊発進、ワープエリアに入れ。」

「それからハイデルン、重爆機の発進をいそげ。このあとすぐにワープさせる。」

「了解。」

「やつらの偵察機はきていないか。」

「見当たらないようです。ただ歌のようなものが周波数を変化させて聞こえはじめました。」

「乙女よ大志をいだっけ~、ゆ・め・みてすてっきになれ~、乙女よ大志をいだっけ~、恋してきれいになれ~、たっちあがれ、お・ん・な諸君~ たたた~たた~チャチャ~...目覚ましジリジリ、学校にまたギリギリ….。」とドメル旗艦の通信機から緊張感もそっけもない歌が流れる。

 

その歌はヤマトにも流れてくる。

「えええ~。これって。」

春香が顔を赤らめて、第一艦橋をきょろきょろと見回す。舞はあさっての方向を向いている。律子の顔がいつもよりも涼しげに見える。

機関室では亜美と真美が「あ~、はるるんの曲だwww。」とはしゃいでいた。

「みんな、ドメル将軍は一流の将帥なの。そういう人の足元をすくうには二流のトリックが有効って話した将軍がいたの訓練学校の戦史の授業で習わなかった?もちろん、この春香の歌はすばらしいわ。」

「あのぉ~艦長。そうじゃなくって。」春香は舞をにらむ。

「宇宙まで貴女の曲が流れるなんてロマンチックじゃない。わたしのaliveじゃなくてあなたの曲を流したのよ。」

「….」

「しかたないわね。マゼランパフェかゴージャスセレブプリン

【挿絵表示】

で手打たない?」

「うん..もう。わかりました。」春香が仕方ないといわんばかりに生返事をする。

 

ドメルの旗艦では...

「暗号の可能性は?」

「その可能性はすくないようです。もしかしたら何かを伝えている可能性があります。」

「発信源をさぐれ。」

「はつ。」

「発信源は複数です。110宇宙キロ2時の方向、125宇宙キロ5時の方向、122宇宙キロ7時の方向、117宇宙キロ11時の方向です。」

「妨害電波を発信せよ。」

「はつ。」

 

「敵妨害電波発信されました。」

「周波数帯と発信源の座標を確認して。」

「敵の急降下爆撃機、ヤマト甲板の直上に出現です。」

「左舷、140装甲板被弾!」

「右舷、50装甲板被弾!」

「上部甲板、20装甲板被弾!」

「上部甲板35装甲板被弾!」

「波動防壁展開。」

 

 

「!!」

「ドメル司令?。」

「妨害電波発信やめろ。」

「!?」

「いいからやめるんだ。お前がつきとめた発信源には敵の監視衛星がいる。冥王星の反射衛星砲の応用で、こっちの位置を探るための欺瞞工作だ...まあ、もう遅いかもしれないが...。」

 

「敵の座標確認しました。」

「暗黒星雲でてこずったけど、大体予想どおりの位置だったわね。いまのうちにワープ準備して。敵に殴り込みをかけるわよ。」

急降下爆撃機がさかんにヤマトに攻撃をかけるが波動防壁に防がれる。

「敵重爆機出現。12時の方向、仰角20度。至近です。」

「ワープ10秒前、9、8、7、...」

 

「ドリルミサイル発射。」

 

「3,2,1,ワープ。」

ドリルミサイルがワープの時空震で爆発する。

 

「ドメル司令、何かがワープアウトしてきます。」

「3時の方向、350宇宙キロです。」

 

「ワープ終了。」

「主砲発射!」

まさかのヤマトのワープによる攻撃に的が定まらず、ドメル艦隊は爆煙につつまれる。

「波動砲発射準備。エネルギー充填。」

「ぬ、やつは波動砲を撃とうとしている。やつの波動砲の予想到達時間とこちらのワープ準備時間はどのくらいだ。」

分析士官の顔が青くなり始めた。

「司令、やつの予想到達時間は、1分30秒前後、こちらがワープできるのが1分45秒前後です。」

「全艦散開して、逃げるのだ。」

 

「ドメル艦隊、逃走をはじめました。」

「エネルギー充填120%、波動砲発射準備完了。対ショック対閃光防御。」

「電影クロスゲージ明度10、波動砲、発射10秒前、9,8、・・・3,2,1,発射。」

ヤマトから激しい勢いで光の束が発射され、漆黒の宇宙空間を照らす。その束は、散開して逃走しようとするドメル艦隊へ向かっていく。

 

「司令、前方イオン乱流です。」

「いかん、ヤマトのいる方向へ散開して逃走せよ。」

 

「うわあああああ。」

ドメル艦隊の6割は、波動砲にのみこまれ、3割は、イオン乱流にのみこまれる。

「うわあああ、ぶつかる。回避~、回避~。」

ドメル艦隊の艦内では、波動砲にのみこまれる悲鳴とイオン乱流のために艦の姿勢をたもてず、回避できずにぶつかるのを回避するよう叫ぶ悲鳴の二種類でうめつくされた。

 

「主砲、発射。」

ショックカノンの光条は、イオン乱流と波動砲をのがれた残り1割にそそがれ、ガミラス艦は次々に貫かれて四散した。もうすでにまともに隊列を組める数はのこっておらず、混乱した状態になっていた。しかしそのなかでも白い円盤状の宇宙船がヤマトへすさまじいスピードでせまってくる。

ドメルのゼルグート級の艦橋から切り離された「旗艦」である。

 

「敵艦がこっちへ向かってくる。何よ、すばやくて狙いが定まらないじゃない。」

伊織の声に思わず「泣き」がはいる。舞は、直感でドメルの意図を悟る。

「まずい、逃げて。」

 

「ヤマトめ。このドメルから逃げられると思うなよ。」

 

「敵艦、当艦の直下ですぅ;;。」

「千早ちゃん!」

「くつ...間に合わない!」

 

「こうなったらやつに接舷して、自爆するのだ。」

「司令...」

「これが私の切り札だよ。ヤマトに接舷したらセットしたまえ。」

ドメルは副官に告げる。副官は無言で同意を示し、上官の意図を察して口を閉じてわずかにうなずいた。

 

「メインスクリーンになにか反応していますぅ。」

「ゆっきー、投影して。」

「了解。」

 

メインスクリーンに映し出されたのは精悍な軍人の顔だった。

その顔だけで歴戦の勇将であり、数々の会戦に打ち勝ってきた人望ある名将であることがわかる。

ドメルは、艦長席にいると思われるウエーブかかった髪の優美な女性をみてちょっと驚いた色を一瞬その顔にうかべたが、すぐに表情をひきしめる。

「ヒダカマイ艦長、わたしはガミラス銀河系方面軍司令官、ドメルである。」

(うわつ、かっこいい...。)雪歩以外は心の中で叫んでしまう。女性乗組員はほおをわずかに赤らめてつぶやき、男性乗組員は圧倒されてしまう。

「ドメル司令、わたしが宇宙戦艦ヤマト艦長の日高舞よ。」

「偉大なる地球の名将であるあなたの勇気、決断力、知恵に心からの敬意を表する。冥王星会戦の話からあなたの話をうかがっていたが...まさか女性とは...」

「ドメル司令、あなたの勇戦ぶり、指揮ぶりはこの戦いで十分拝見させていただいたわ。紙一重の戦いだった。わたしたちは、お互いの星のために戦ってきたけど、これ以上犠牲を出すことは望まない。わたしたちをイスカンダルへ行かせていただけないかしら。」

「それはできない。」

「女性でありながら軍人として大成し、地球のために戦ってきたあなたならわかるはずだ。あなたが地球を救うために戦っているのと同じように、わたしの戦いにも、ガミラス人の命運がかかっている。あなたにはガミラスに生まれてほしかった。」

「あなたこそ、地球に生まれてほしかった。あなたが地球にいればここまで地球が苦戦することもなかったし、わたしも夫を喪うこともなかった...。」

「!!」

「わたしは、冥王星で自分のわずかばかりの戦果と引き換えに夫を喪いました。」

「そうだったのですか...しかし、わたしにもエリーサ...妻がいる。妻を悲しませることになるのかもしれないが、それでも、ヤマトをイスカンダルには行かせるわけにはいかない。ガミラスを救うためにはあなたたちをイスカンダルへ行くのを断固阻止しなければならないのだ。最後に、あなたのように女性としても指揮官としても一流の人物と戦えたことを光栄に思う。さらばだ、偉大なる地球とガミラスに栄光あれ!」

スクリーンからドメルの顔が消えるや否や

「敵艦は自爆するつもりよ。第三艦橋の乗組員は大至急上にあがりなさい。」と舞は叫んだ。

「第六、第七隔壁閉鎖。放射線防御壁注水開始。」

そのときヤマトに下から突き上げる衝撃、轟音とともに大爆発が起こった。

「波動防壁展開に成功しました。ヤマトは無事です。艦長?艦長!」

律子が振り向くとあの元気で明るく、いつも余裕綽々で不敵な笑みを浮かべている舞が下を向いていた。

「きっとご主人のことを思い出しちゃったのね...」

「ドメル司令が立派な方だったのは画面を見ているだけで伝わってきたわ。」

「春香、なんでそんな悲しそうな顔してるのよ。」

「そういう伊織だって...。」

「あんなかっこいいやつ、地球にいないわね。この伊織ちゃんの心が動いちゃったじゃないの。敵なのに...。ジュピターみたいなイケメンはいっぱいいるし、金持ちでハンサムでってやつはいっぱいいるけど...。地球が苦戦したのもなんかわかる気がするわ。」

「艦の応急処置がすんだら宇宙葬よ。準備がすんだら艦長室に...。」

舞はようやくそれだけつぶやくとこもるように艦長室へ行った。

 

「宇宙葬の準備がととのいました。甲板へお願いします。」律子が呼びに行くと

「わかったわ。」と舞は答えて宇宙服に着替える。

 

「地球のために命をかけたすべての勇士に送る。わたしたちは決してあなたたちを忘れません。」

舞が弔辞をよむと、春香が

「敬礼!」と言った。

弔砲としてコスモガンが数回撃たれ、それに続いて副砲が撃たれた。多くの戦死者のカプセルが宇宙空間に放たれていった。

 




後日談
「艦長、どうでもいいですけれど、あの偵察…ごほん、気象探査衛星から流れてきた曲はなんで春香のアイドル時代の曲だったんですか。」と千早が問うと、舞はにやにやしながら、
「亜美~、真美~説明してあげて。」と亜美と真美に振る。
「艦長とりっちゃんがあの衛星のニックネーム考えてくれって、いいの考えたら、ごほうびにマゼランパフェかゴージャスセレブプリン
【挿絵表示】
か、イケイケファンシーゼリー
【挿絵表示】
をプレゼントするからって。」
「それで、「はるるん」と、「はるかっか」を採用して4つあるから偶数ってことで「はるるん1号」、「はるるん2号」、「はるかっか1号」と「はるかっか2号」って名前に決めたわけ。」
「艦長、それ逆だよぉ。この戦場にふさわしいのは、「乙女よ、大志を抱け」だから、なにかいい名前ないかしら、って言ったじゃん。」
「艦長!それでわたしをお菓子でなだめたみたいに、亜美たちをお菓子で釣ったんですか。」春香がききつけて舞をにらむ。
「あ~ら、釣ったなんて人聞きの悪い。わたしは地球の歌をガミラスの皆さんにも聞いてもらいたかっただけよ。それから三人ともちゃんとご褒美もらってるじゃない。文句いいっこなしよ。」
春香はほおをふくらませてみるものの反論できずに、はあ、とため息をつくしかなかった。

サーモバリックモードとは、紺○の艦隊に出てくる新三八弾(小説だと「新三式弾」)という燃料気化弾がアメリカ航空機隊を一瞬にして消滅させた描写にヒントを得てチート律ちゃんが開発したということになりますでしょうか^^;。ヤマトが艦載機に攻撃される機会が多いのに生き残れているという理由付けにもなりますし...新三八弾ヤマトバージョンということで...

気がついた方もおられるかもしれませんが銀英伝ネタが2ヶ所あります。え?3ヶ所のまちがいじゃないかって?そう見れなくもないですが...

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