ガミラス本星、デスラー総統の寝室には、副総統のヒスが戦況報告のために訪れていた。
「総統」
「ヒス君。君は寝室にいるわたしをつまらない用事で起こすなと命じたはずだが。」
「実は、ヤマトが機雷原を突破したもようです。」
「何い?」
「地球人たちは、われわれの思いもつかない手段で機雷原を突破しました。つまり手で動かして...。」
「ふふふ....ふははははは。ヒス君、あの機雷の名前はなんといったかな。」
「はつ。誠に申し訳ございません。」
「地球人にヤマトか。まあ、よい。野蛮人らしい素朴な発想に感服したとしか言いようがないな。次の作戦はわたしが指揮をとろう。このグラスを見たまえ。」
「総統、この黒いものはなんでしょうか。」
「これはガス生命体だ。見ろ。」
デスラーはブラスターをガス生命体に向けて撃った。
黒い生命体は、ブラスターの光線を吸収し。電気を発しながらぐんぐん大きくなっていく。
デスラーがガス生命体にブラスターを投げ込んだら、ガス生命体はさらに大きくなった。
天井にある吸収装置がガス生命体をすいこんでいく。
「ヤマトの運命は、このガス生命体にのみこまれるか、バーナード星につっこむかいずれしかない。赤色矮星とはいえ、若く活発な星であるのは変わりない。至近距離なら溶鉱炉と同じだ。生命が生きていくことはできない。このガス生命体を封入した魚雷をシュルツに送れ。復讐戦と名誉回復の機会を与えるのだ。」
「ははつ。」
シュルツは、バーナード星第一惑星ガミラス基地へのがれていた。
「シュルツ司令。ヒス副総統がでました。」
「シュルツよ。聞け。総統より復讐戦と名誉回復の機会をあたえる。この特殊魚雷には、すべてのエネルギーを吸収して成長するガス生命体が封し込められている。艦隊を率いてバーナード星の至近距離でヤマトへ向かって放つのだ。ヤマトは、このガス生命体にのみこまれるか、バーナード星につっこんで、飛んで火にいる夏の虫になるしかない。どうだやれるか。もし成功しない場合はヤマトと刺し違えてでも沈めろ。ガミラス軍人の意地をみせるのだ。」
「ははつ。必ずやヤマトを沈めます。」
シュルツは揮下の艦隊を率いて第一惑星基地から出航した。
「真。」
「どうした?千早。」
「艦の速度が落ちているわ。スピードが出ない。」
「エンジンの調子はどうだ、亜美、真美。」
「まこちん、エンジンは異常ないよ。なにかに反応して自動制動装置が働いて速度が落ちてるみたい。」
「超磁力バリアーデス。ヤマトノ周囲ニ張リ巡ラサレテイマス。」
「バリアーがないのはバーナード星の方向だけね。」
「後方5時ノ方向及ビ7時ノ方向カラガミラス艦隊出現。」
「ガミラス艦隊カラ発射反応。魚雷10コチラニ向カッテキマス。」
「魚雷ガ自爆シマシタ。」
「何なのかしら。」
「魚雷の自爆した方向の星が消えたわ。いや宇宙空間にある微量な物質が自爆地点から吸収されてる。」
「黒色ガスノヨウデス。少シヅツ大キクナッテイマス。」
「ただの黒色ガスじゃないわ。ヤマトのエンジン噴射口にひきつけられている感じ。エネルギーや物質を吸収して成長するガス体よ。」
「じゃあ、主砲を撃ったりしたら?」
「間違いなく大変なことになるわね。」
「それにしても、ぴったりくっついいてくるわね。ど変態ガス。どうしたらいいのよ。この天才伊織ちゃんのせっかくの出番がないじゃないの。」
それまで黙っていた舞が決心したように言った。
「これよりヤマトはバーナード星付近に突入します。」
デスラーが総統府でメインパネルを見ている。
「ふふふ。ヤマトは、溶鉱炉へ突入する道を選んだか。」
「真。艦の速度が落ちているわ。ここままだとバーナード星に引き込まれる。」
「バーナード星のエネルギーを吸収して艦内空調システムフル稼働でしているけど外の温度が高すぎて船体は高温のために外面が溶けかけてる。艦内温度はなんとか50度。」
「エンジンの調子はどうだ、亜美、真美。」
「まこちん、なんかエネルギーが吸収されている感じだよ。なにか外にエネルギーを吸収するようなものがいるの??。」
「例のガス体ね。バーナード星の近くにいるおかけでかろうじてヤマトは動いているけど...」
「如月さん、スウィングバイができるバーナード星の周回軌道に乗って。」
「了解。右30度。」
「!!前方に巨大プロミネンス出現。幅は地球の10倍です。」
「くっ...よけきれない。」
「波動砲発射準備。」
「舞!」
「律子、このままだとガスに飲み込まれるかプロミネンスで溶けるかどちらかしかない。バーナード星の近くにいるからエネルギーの回復は通常よりも早いわ。ここは撃つしかない。」
「はい、わかりました。」
「春香ちゃん、発射お願い。」
「はい。波動砲発射準備、波動エンジン内圧力上昇。エネルギー充填開始します。」
「波動砲安全装置解除。最終セーフティロック解除。」
「電影クロスゲージ明度45。エネルギー充填120%、総員対ショック、対閃光防御。」
「波動砲発射10秒前。9、8、7、....2、1、0、波動砲発射。」
波動砲の閃光と巨大な光のエネルギーの束がプロミネンスをうがって地球の直径はあるかとおもわれる孔がうがたれた。ヤマトはありあまるバーナード星のエネルギーを波動エネルギーに変えて航行しつつエネルギーを回復し、フルスピードでプロミネンスの通過し、スウィングバイのための周回軌道に乗ることに成功する。ヤマトをおいかけてきたガス生命体はヤマトよりも大きなエネルギーを放つバーナード星本体にとりつこうとしたが、その膨大なエネルギーと炎に包まれ逆に燃え尽くされていった。
シュルツは、作戦の失敗をさとったがまだあきらめてはいなかった。ガミラス軍人の意地を最後まで見せるのだ…「追え、ヤマトを追うのだ。」と揮下の艦隊に命じて追いかけようと試みる。しかし、プロミネンスに波動砲でうがたれた孔はヤマト通過後にみるみるふさがっていく。
「司令、前方にプロミネンス。よけ切れません。」
プロミネンスは、波打つ巨大な竜となってシュルツ艦隊におそいかかった。シュルツ艦隊の艦列の前方にいた艦はあっという間に溶けて蒸発した。後方の艦の中は、高温と悲鳴に包まれたがそれも一瞬で、艦列の前方の艦と同じ運命をたどった。
「ガス体が燃えていきます。」
「大きなエサに飛びついて自滅したというわけね。後方のガミラス艦隊もプロミネンスに飲み込まれて全滅したみたいだし。」
「波動エンジン出力最大。」
「スウィングバイ軌道にのりました。5分後にバーナード星の引力圏を脱出します。」
「銀河系外延部のマゼラニックストリーム近傍へ抜け、さらに大マゼラン雲方向へ流れている亜空間回廊でいっきに3万光年をワープし、銀河系と大マゼラン雲の中間地点のバラン星に向かいます。」
「いよいよ銀河系を抜けるわよ。バーナード星引力圏を脱出後、ワープします。」
ヤマトはオリオン腕付近の空間から姿を消した。
「ぬう。ヤマトはバーナード星系近傍からワープしただと。」
「はい。シュルツ艦隊は全滅し、ガス生命体もバーナード星に取り付きましたが燃えてしまいました。」
「シュルツは二階級特進だ。ガミラス名誉市民勲章を贈ってやれ。それから遺族には不自由させないだけの報奨金を送ってやるのだ。」
「ははつ。きっとガミラス臣民は総統をたたえることでしょう。」
「うむ。それからドメル将軍を小マゼラン戦線から召還するのだ。」
「ははつ。」
ヒスはデスラーの命令を受け、ドメル召還の準備をするとともに、バラン星のゲールにドメルへ召還命令があったことを伝えた。
「ゲール、総統のご意思はドメルを召還して銀河系方面の戦線に当たらせるということだ。この意味はわかっているだろうな。」
「ははつ...。」ゲールは蒼くなってヒスへの返事をした。
「なんとか、ドメルが来る前に...」
「そういうことだ。」バラン星ガミラス基地のメインパネルからヒスの姿が消えるとゲールは半ば呆然とその真っ暗な画面を眺めていた。
旧作の赤色巨星アルファ(ベテルギウスか?)の場面は、ひおあきら版ですとベーター星(あの青色巨星リゲルか??表面温度は数万度、近づくだけで蒸発してしまいそう。)、2199ですと赤色矮星グリューゼ581になっていますが、グリューゼ581と同じような赤色矮星(スペクトルM5型)で天文、SFファンにはおなじみのバーナード星に登場してもらうことにしました。
ついにガミラスの総統デスラーは、ルビー、サファイアなど小マゼラン戦線で戦う名将ドメルを召還する決心をします。