フルメタルWパニック!!   作:K-15

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第44話 最終決戦

6歳になる市之瀬 達哉と妹である由加里は季節外れではあるが海に来て居た。

自営業を営んでる父、俊之に無理を言って連れて来て貰った2人はアサリの貝殻を集めて居る。

 

「夏じゃないとアサリは食べられないぞ」

 

「良いの!! これで首輪作ってお父さんにプレゼントするんだもん!!」

 

達哉の言う通りで季節外れの海の砂浜には僅かばかりの貝殻があるだけで食べられる貝はもう居ない。

由加里はしゃがみ込みながら手に持ったビニール袋に白や黒の貝殻を詰め込む。

笑顔を浮かべながら貝殻集めに勤しむ妹を見て達哉も童心に戻り砂浜の貝殻を探した。

 

「ん、これは……」

 

中にはゴミが入り混じる砂の中で不意に見つけたモノ。

気になって手を伸ばして拾ってみるとそれは青い色をした鉱石。

 

「何だろ? 石かな?」

 

「ナニそれ? わたしも見たい!!」

 

由加里は直ぐ様その様子に気が付くと達哉の元へ飛び付いた。

 

「うわっと!? ほら」

 

「うわぁぁぁっ!! すっごくキレイ!!」

 

目をキラキラさせながら小さな手で握り締める由加里。

大切に握りしめたまま貝殻を入れたビニール袋へ入れた。

 

///

 

トゥアハー・デ・ダナンは太平洋の海底で隠密作業をして居た。

マオとクルツが搭乗するM9は水中でも活動出来る装備を取り付けて海中を進む。

肩にあるサーチライトから照らされる光は強力だが一切の光が届かないこの空間では数メートル先しか見えない。

面倒な任務にクルツは通信越しにマオへ愚痴る。

 

「ったく、何で俺がこんな事しなきゃならないんだぁ?」

 

「テッサからの命令よ。文句言う暇があるならさっさと動く」

 

「ヘイヘイ、わかってますよぉ。でも本当にあるんだろうな? 無駄骨に終わったらあの野郎、もう容赦しねぇぞ」

 

「まぁ、アンタの気持ちはわかるけどさ。でも今は目的を共有した協力者だ。そこはわきまえな」

 

2人が進む先。

容易には踏み入る事の出来ないこの場に隠されたモノは、サーチライトの光を受けるとツインアイを輝かせた。

 

「ガンダム……ようやくご対面ね。クルツ、ワイヤーの設置。手筈通りにね」

 

「了解。でもやっぱ気が乗らねぇよ」

 

クルツは渋々ではあるがガンダムをサルベージする為にワイヤーをボディーへ引っ掛ける。

一方でトゥアハー・デ・ダナン艦内ではようやく到着した新型機の調整を行って居た。

白と赤で塗装されたボディー、肩には別パーツが装備されて居る。

宗介は1人コクピットの中で久しぶりに再会した相棒と言葉を交わす。

 

「これが彼女が設計した新型か」

 

『肯定。今の戦闘力ならどんな相手だろうとも負ける筈がありません』

 

「お前だけで戦況が変わるなどありはしない。ヤツが乗る新型、そこへ待ち構える防衛網を突破出来なければ作戦は失敗だ」

 

『敵ASのデータはインプットされてます。今度は前回のようには行きません』

 

「どこからその自信は出て来る?」

 

『自信に根拠などありません』

 

「AIのお前がそんな事を言うようになったか」

 

宗介は操縦桿を握り締めながらAIのアルと会話を続けながら淡々と作業を進めた。

残された戦力は微弱でトゥアハー・デ・ダナンに搭載されたASも宗介の新型を含めて3機しか居ない。

それでもガラガラの格納庫では整備兵が慌ただしく動いてた。

アマルガムとの最終決戦、その為の準備である。

だからガンダムのサルベージも手伝うし、ヒイロも自分の機体が引き上げられるのを格納庫で1人待って居た。

両腕を組んで壁にもたれ掛かりながら、宗介の新型機の調整作業を眺める。

背部にドッキングさせる緊急展開ブースター。

その巨大な両翼に対空ミサイルやガトリング式機関砲を装備させて居る。

手伝う事もなくジッとしてるヒイロの所へ、新型機を届けたレイスが地下より視界に入った。

 

「何の用だ?」

 

「受け取れ。預かり物だ」

 

レイスは手に持ったモノをヒイロに向かって投げた。

受け取ったヒイロはソレを見ると再び視線をレイスに向ける。

 

「ICチップか」

 

「クダン・ミラからお前に渡して欲しいと言われてな。中身のデータは自分で確かめろ。解除コードはZ、E、R、Oだ。あと、あのネコ型ロボットは何だ?」

 

レイスが指差す先。

ドクターJが開発したサムが転がってたボルトをオモチャにしてじゃれついてた。

 

『ナァゴ』

 

「知らん。邪魔になるならスクラップにでもしろ。俺は他にやる事がある」

 

言うとヒイロはレイスの前から立ち去ってしまう。

残されたレイスはサムが遊ぶ方を見ると口からため息を吐いてから近寄った。

無邪気に遊ぶ様子からは周囲の事を全く警戒してないように見える。

 

「はぁ、何故私がこんな事をせねばならん」

 

『ニャァ、ニャァ』

 

録音されたネコの鳴き声を発するサムに背後から忍び寄ると、伸ばされた尻尾に手を伸ばす。

けれどもレイスの手は寸前の所で届かず、気が付けばサムの頭部に着けられたゴーグルから赤い赤外線の光を向けられてた。

 

「気付かれたか」

 

『グゥゥゥゥッ』

 

「ただ電源を落とすだけだ。オモチャは主人に順応な筈だろ」

 

警戒心を示すサムにレイスは再び手を伸ばすがボディーに触れる事はない。

 

「うん?」

 

もう1度手を伸ばすが寸前でまた距離を離される。

 

「コイツ!!」

 

何回手を伸ばしても、走って追い掛けても、サムのボディーに一瞬たりとも指が触れる事はない。

 

「待て!!」

 

『ニャァゴ!!』

 

走り回るサムにレイスが追い付く事はなく、20分程追い掛け回した所で彼女は捕まえるのを諦めた。

 

///

 

ブリッジの艦長シートにはクタクタのYシャツを着たテッサが座って居た。

蓄積された疲労のせいで目元にはクマが出来てるがそんな事を気にする暇などない。

隣に立つ歴戦の兵士であるマデューカスでさえ疲労は隠せないが、目の前に迫る最終決戦に気合を入れる。

 

「各員、配置完了。艦長、おわかりだとは思いますがダナンもASも次の戦闘が限界です。本当にあの場所に敵の本体が居るのですか?」

 

「間違いありません。その為に危険な事にも手を出しました。レナードはメリダ島のTAROSを狙ってます。それを利用して世界の改変を」

 

「私にはまだ信じられません。彼らのやろうとする事が。過去を変えるなどと、そんな映画のような事が可能なのですか?」

 

「彼は本気よ。その為にかなめさんを拉致だってしたし、邪魔になるアマルガムの幹部を消して来た。ヤムスク11に行ったのも改変をより確実なモノにする為。今のかなめさんはかなめさんではありません。精神を乗っ取られソフィアの自由にされてしまってる」

 

淡々と語るテッサにマデューカスはふと疑問を投げ掛ける。

 

「失礼ですが艦長。どの様にそこまでの情報を手に入れたのですか?」

 

「言ったでしょう。危険な事にも手を出したと」

 

テッサの顔を覗き込んだマデューカスは思わず息を呑む。

彼女の右目の焦点が定まっておらず黒く濁って居た。

視力は完全になくなり、もう光が届く事はない。

それだけの犠牲を払ってまで手に入れた情報は余りにも少なかった。

目的地がかつてのミスリルの基地であるメリダ島と言う事まではわかったが、相手がどれだけの戦力を投入してくるのか等の戦術は一切わからない。

今の少ない戦力で乗り切るのは誰から見ても無謀だ。

それでも彼女らは死地に飛び込むしかない。

時間が解決してくれる問題でもないし、戦わなかったとしても退路は何処にもなかった。

これ以上は言葉を交わさなくてもマデューカスには伝わる。

 

「わかりました。この戦い、勝ちましょう」

 

「無論、そのつもりです。敗北は許されません。マデューカスさん、深度浮上、索敵」

 

「イエス、マム!! 深度浮上!!」

 

復唱に合わせて各乗組員がトゥアハー・デ・ダナンを制御する。

海水を大きく唸らせて海の女王は速度を上げ浮上して行く。

ブリッジにまで揺れが伝わるがテッサはシートの肘置きを強く握り締め体を支えた。

 

「敵の数は?」

 

「ベヘモス4、上空にはアパッチを12。たったコレだけとは随分舐められたモノですな」

 

「レーバテインの発進準備を!!」

 

「イエス、マム!!」

 

///

 

格納庫では背中に巨大な翼を装備した赤いAS、レーバテインが発進準備に入る。

両手には愛用の76ミリ散弾砲、胸部から展開されるサブアームには40ミリライフル。

サイドスカートのハードポイントには20ミリガトリング式機関砲。

腰部には対AS用グレネードが8個、ASが使う武器では規格外のデモリッシュガン。

両足にもグレネードが8個とこれ以上ない程に重武装が施されて居る。

緊急展開ブースターにも勿論武装が装備されており、両肩にはラムダドライバを強制的に解除させる妖精の羽根も装備された。

最後の決戦に使えるモノは全て投入し、宗介のレーバテインにメリダ島へ侵入する為の突破口を開いて貰う。

コクピットの中で宗介は操縦桿を握りながら軽くペダルを踏む。

 

「ぶっつけ本番か。マニュアルである程度は把握した。このサブアームとやらは使えるな」

 

『緊急展開ブースターとサブアームの操作はこちらにお任せを。軍曹は正面の敵を落として下さい』

 

「お前に言われるまでもない。ラムダドライバも使えるんだろう?」

 

『パイロット次第です。クダン・ミラ様に設計され開発したこの機体は完璧です』

 

「言うようになったな。お前に遅れを取る訳にはいかない。俺も千鳥を助ける為に全力を尽くす。頼むぞ相棒」

 

『肯定。エリゴールなどと言う欠陥品は一撃で落として見せましょう』

 

脚部が1歩前に出るとカタパルトへ固定される。

隔壁シャッターも開放され眼前に見えるのは夜に包まれた大海原。

その先にはかつての自分達の基地であるメリダ島。

レーバテインを出撃させる為だけにトゥアハー・デ・ダナンは浮上して居る。

短時間で出撃しなければ敵の射程圏内に入り袋叩きに会う。

 

「こちらウルズ7。緊急展開ブースターへ燃料供給完了。いつでも出られます」

 

『相良さん。突破口を』

 

通信でテッサの声が聞こえて来た。

両手で操縦桿をしっかりと握り直してから宗介は返事を返す。

 

「肯定です。必ず千鳥を連れ戻します」

 

『……援護攻撃は15秒後に。その後、ダナンは再び浸水。海中からの突入を行います』

 

「了解。行くぞアル!!」

 

『ラージャ』

 

宗介はレーバテインに背負わせた緊急展開ブースターに火を入れた。

ASよりも巨大な翼。

大口径の噴射口からは高熱の炎が吹き出し推進力を生む。

カタパルトに固定されたせいでまだ機体は動かないし、内部から繋がる燃料供給ケーブルが引っ張られる。

 

『ご武運を』

 

テッサの最後の一声に合わせてカタパルトからレーバテインが射出される。

燃料供給ケーブルが限界まで引っ張られるとコネクターから解除され、宗介は更に加速を掛けた。

強風が装甲に叩き付けられる。

100メートル以上はあるカタパルトから機体は力任せに投げ出され、レーバテインは空を飛ぶ。

強烈なGがパイロットの体に襲い掛かる。

 

「ぐぅっ、くっ!!」

 

空気を切り裂き空ながら移動するその様は飛ぶと言うより飛ばされて居ると表現した方が正しい。

従来の緊急展開ブースターから改良を咥えられ多少は動きに融通が効くようになったが、前に向かって真っ直ぐにしか飛べない。

旋回するだけにしても前に進む力が強すぎて酷く時間が掛かってしまう。

回避運動は出来ない。

 

(今の俺なら出来る!! ラムダドライバを)

 

歯を食いしばりながら意識を集中させる。

機体の両肩と脚部装甲がスライドし機体の放熱が開始されラムダドライバが正常に起動した。

 

(行ける。まずは邪魔な航空部隊)

 

空を守るアパッチ部隊が先陣で突っ込んで来る。

回避運動の取れない状況で攻撃を受ければ普通のASならひとたまりもないがこの新型機は違う。

前面に防壁を展開させ雨のように降り注ぐ砲撃を全て防ぎきる。

 

『迎撃はお任せを』

 

アルは両翼に装備されたガトリング式機関砲を操作すると狙いはアパッチへ定め砲撃を開始する。

高温の薬莢が放出され小さな光の弾が無数に夜空を輝かせた。

回避運動を取る相手に機関砲は容赦なく迫り、2機、3機と火だるまに変えて行く。

 

『ラムダドライバか。ベヘモスとコダールに任せれば良い!!』

 

『下じゃない、上に行け!!』

 

太刀打ち出来ないと見るや航空部隊は撤退を開始するが後ろを向けばたちまち撃墜されてしまう。

高度を下げてくぐり抜けようとしたアパッチは右のサブアームが握ったライフルの砲撃に一撃でエンジンを破壊されて海へ落ちた。

正面、下方と攻撃に隙がないレーバテイン。

だが上方を抜けてしまえば背中はガラ空きだ。

宗介も勿論、その事に気が付いてる。

 

「高度は?」

 

『間に合いません。上方より4機抜けられます』

 

「なら……」

 

レーバテインの頭上を抜けて行こうとする航空部隊。

だがそれは阻止されてしまう。

 

『な!? 何だ!!』

 

『脱出!! まにあわ――』

 

攻撃を受けてないにも関わらず戦闘ヘリは爆発し戦闘能力を失う。

レーバテインの後頭部にはポニーテールのように冷却材が噴出されて居た。

 

「やったか!?」

 

『成功、お見事です』

 

レーバテインは前面に展開させた防壁を更に巨大化させる事でヘリにダメージを与えた。

 

「次が来る。対空ミサイル、何発だ?」

 

『測定不能』

 

「加速しろ。一気に突き抜ける!!」

 

メリダ島へ配置された全ての対空ミサイルがレーバテインへと向く。

回避出来ないなら防ぎきるまでと宗介は緊急展開ブースターで機体を更に加速させ攻撃時間を短くさせる考えだ。

ブースターのエンジンが甲高い唸りを上げ機体の速度を今まで以上に早くさせる。

同時にパイロットに掛かるGも上昇するが耐えるしかない。

 

「ぐぅぅっ!! 防衛線を……突破するんだ」

 

『攻撃、来ます』

 

ラムダドライバを展開させながら眼前に迫る大量のミサイルに向かって装備した武装を全て向けた。

頭部機関砲、サイドスカートに取り付けたガトリング、サブアームのライフルと両手の散弾砲。

両翼のガトリング式機関砲も使いミサイルを叩き落とす。

 

「残弾は気にするな。撃ちまくれ!!」

 

『ラージャ』

 

一斉射撃。

レーバテインの前面は激しい光で包まれる。

そこから少し先の位置では砲撃を受けたミサイルが爆発の連鎖を起こす。

夜空に浮かぶ火の玉。

爆音と衝撃波が入り混じる。

だがミサイルは撃ち落としきれない。

大量のミサイル群がレーバテインに襲い掛かるもラムダドライバの防壁で弾き飛ばす。

 

「想定よりもキツイ!!」

 

『軍曹、参考までにその想定をお聞かせ下さい』

 

「そんなモノ、今聞いてどうする!! 無駄口を叩く暇があるのならミサイルを落とせ!!」

 

『了解。気が滅入ってるのかと思いました』

 

「まだ始まったばかりだ。こんな所で!!」

 

重なりあう火の玉は炎の海へと変わる。

ラムダドライバを展開したまま潜り抜けた先にもまだ防衛部隊は待ち構えて居た。

メリダ島の地下格納庫、開放されたシェルターから次々にASが運び出される。

ラムダドライバ搭載機コダールが10機、20機と次々現れて来た。

更には4機のベヘモスが前に立ちふさがりレーバテインの上陸を阻止して来る。

 

「アル、サポートは任せたぞ」

 

宗介はトリガーを引き両脚部に設置されたグレネードを全弾発射した。

右脚部に4発、左脚部に4発のグレネードは白い煙を吹き出しながらベヘモスに向かって進んで行く。

巨大な頭部から発射される機関砲の弾の嵐。

グレネードは撃ち落されて巨大な炎に変わる。

視界は遮られ赤で染め上がるが残されたグレネードは目標であるベヘモスへ進む。

だが目標地点に到達する寸前でラムダドライバの防壁は阻んだ。

見えない壁がグレネードに直撃しまた視界を遮る大きな炎を上げる。

 

『射程圏内、補足しました』

 

「ねじ伏せろ、アル!!」

 

『ラージャ』

 

脚部のグレネードは残弾0、デッドウェイトになるのですかさずパージし海へ捨てた。

両翼に設置された空対空ミサイル、12発あるソレをアルはベヘモスの右脚部に全弾発射する。

未だに敵から来る砲撃の雨に3発撃ち落とされてしまうが、一直線に進むミサイルは凄まじい早さで接近しベヘモスのラムダドライバの防壁に直撃した。

だが全てが破壊された訳ではない。

レーバテインは常にラムダドライバを展開しており発射したミサイルにも力場を乗せて居た。

防壁を突破する4発のミサイルは右膝に直撃し分厚い装甲をズタズタに破壊する。

幾つものパーツがこぼれ落ち、そして次第にベヘモスは自身の重量を支えられなくなって行く。

搭乗するパイロットも異変に気が付きラムダドライバで補助を掛ける。

 

『クソッ!! たかが1機にこんな事を!!』

 

ラムダドライバは機体の重量を分散させ何とか転倒を免れるが機体全体を守って居た防壁は展開出来なくなってしまう。

その隙を逃す宗介ではなくサブアームのライフルから力場を乗せた弾丸を立て続けに発射した。

通常のライフル射撃ならベヘモスの装甲が傷付けられる事はないが、ラムダドライバの力場はまるで豆腐でも撃ち抜くように僅か数発の弾丸でベヘモスの右膝を粉砕する。

 

『そんなっ!?』

 

右膝から下は完全に本体から分離されラムダドライバで補助出来るレベルを超えてしまった。

片足だけではどうする事も出来ずにベヘモスは前のめりに倒れて行く。

大きな水しぶきを上げて、大海を揺らす。

 

「残りは3機、落とすぞ」

 

『ですがこのままでは時間が掛かります』

 

「ラムダドライバを攻撃に使えば行ける!!」

 

両手の散弾砲のトリガーに指を掛けるとトライアングル状に展開するベヘモスの左右2機を見据える。

以前として続く砲撃。

ベヘモスの機関砲は凄まじくあまりに激しい閃光は今を夜だと思わせない。

ラムダドライバの防壁を展開する事で容易に防ぎながら攻撃に転じる。

緊急展開ブースターの出力を一気に最低まで下げた。

推進力が低下してレーバテインは高度を下げてつま先が海面スレスレを通る。

宗介は右足でペダルを思い切り踏み込み再加速。

一時は和らいだ加速のGが再びパイロットを襲う。

 

「くっ!? 砲撃が反れた」

 

『今しかありません』

 

「あたれぇぇぇっ!!」

 

急激に高度を下げた事により飛来する弾丸が減少してくれた。

その隙に宗介は力強くトリガーを引き、両手の散弾砲から放たれる弾丸は眩い光を纏う。

弾丸は止められる事なくベヘモスへと直撃した。

量産機のラムダドライバではレーバテインの攻撃を防ぐ事は出来ない。

閃光。

数秒と耐えられずに光の弾に防壁は突破され2機のベヘモスも右膝を失った。

 

「やったか?」

 

『着弾を確認。成功です』

 

「残りは1機だな」

 

『いいえ、増援が来ました。コダールタイプが20』

 

「簡単には行かせてくれないか」

 

こちらと同じく緊急展開ブースターを装備したコダールが10機、残りは上陸に備えて待ち構えて居た。

更には目前に迫るベヘモス。

普通に考えれば突破は不可能だが、新型のレーバテインの戦闘力ならソレは可能だ。

 

「上から来る。高度を上げて正面から迎え撃つ」

 

操縦桿を手前に引き機体の高度を上げる宗介。

高速で迫るコダール、絶えず降り注ぐ砲撃。

集中力を切らしてラムダドライバの出力を落としてしまえば一瞬で撃墜される。

 

「アル、お前はブースターの機関砲を制御しろ。スカートのガトリングを使うぞ」

 

『肯定。お供します』

 

ガトリング砲の巨大な砲身が回転を初めて数秒、サイドスカートにマウントされたガトリングから爆音が唸る。

両翼のガトリング式機関砲も一斉射撃を開始し、迫り来るコダールに砲撃の雨を浴びせた。

コダールの緊急展開ブースターも既存のモノと変化はなく旋回など小回りは殆ど効かない。

レーバテインの砲撃を相殺しようと両手に持つ40ミリライフル、ガトリング砲など各々が装備した武器のトリガーを引く。

浴びせられる光の雨は夜の闇の中でぶつかり合う。

 

『残弾150、6秒で使い切ります』

 

「このまま撃ち続けるんだ。使えなくなったモノは捨てれば良い!!」

 

『了解。両翼のガトリング式機関砲、残弾0。パージします』

 

翼に取り付けられた武器はこれで全て使い切った。

アルはサブアームを操作するとライフルから弾丸を飛ばす。

薄くなってしまった弾幕を元へ戻す。

それでも相手の方が数で勝っており落としきれない弾丸がレーバテインに迫る。

 

「来る!!」

 

『問題ありません。私と軍曹なら行けます』

 

「当然だ!!」

 

敵もラムダドライバを使って攻撃して来るが性能はレーバテインの方が圧倒的に上だ。

防壁は攻撃を通す事はなく、更には一方的にこちらの攻撃だけを通して行く。

ガトリング砲の大口径の弾丸はコダールを容易く破壊する。

胴体を貫かれたコダールは制御を失い真っ逆さまに落下した。

 

「まだ居る!!」

 

次の敵へ照準を向ける宗介。

光の弾は軌道を変え隣を飛ぶコダールに向かう。

 

『う、うわぁぁぁっ!!』

 

次々に落とされる味方の姿を目の当たりにしてパイロットは悲鳴を上げてしまう。

攻撃する事も忘れ機体の両腕でボディーを守ろうとするが抵抗にすらならない。

コダールの防壁を貫いた弾丸は右脚部と頭部、ブースターのエンジンを破壊した。

推進剤がまだ残るブースターに引火して機体は大きな火だるまとなり爆発する。

なりふり構う暇はない。

退路もなく、宗介とレーバテインは前に進むしかない。

サイドスカートのガトリングで飛来するミサイルとコダールを狙い撃つ。

戦闘画面に表示される残弾数が目まぐるしい速度で減って行く。

1200発あった弾丸が僅か数分の全開射撃で300発になった。

だがそれでも確実に敵の数は減って居る。

巨大なベヘモスの頭上を通り過ぎるとメリダ島から来る新たな敵反応をレーダーが捉える。

 

「コダールとは違う。この反応は……」

 

『欠陥品です』

 

同じく緊急展開ブースターを装備した真っ白なAS、サビーネの搭乗するエリゴールが宗介の前に立ち塞がる。




あの2人が出て来たと言う事は……
ご意見、ご感想お待ちしております。
次回 5月26日

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