こんなのを読んでくださって本当にありがたいです。
800人超えて
も特に何もせず今まで通りです。
翌日の教室、朝から中はざわついていた。
それでも神楽坂は敢えて止はせず、分かり易いようにカタカナで文字を書く。
白いチョークが1文字書く度にカツカツ音を立てるが、生徒達の声にかき消されてしまう。
全て書き終えた神楽坂はチョークを置いて振り向き、隣に立つ彼女の事を説明する。
「え~。今日から2週間、短い間ではありますがニューヨークから留学に来たテレサ・テスタロッサさんです。皆さん、仲良くするように」
神楽坂の簡単な説明が終わると、女子生徒の歓喜の悲鳴と男子生徒の野太い怒声が響き渡り教室を揺らした。
その中で宗介は額からダラダラ冷汗を流し、かなめは驚きで口をあんぐり開けたまま硬直してしまう。
けれどもヒイロだけは肘杖を付いてマドの外を眺めて居た。
「テレサ・テスタロッサです。仲の良い人からはテッサと呼ばれてます。よろしくお願いします」
自己紹介が終わるとまた生徒達の声で教室がどよめいた。
みんなに歓迎されテッサは頬を赤らめ小動物のようにモジモジしてしまい、さらに男子生徒達から好意の眼差しを向けられる。
けれども時間はいつまでもテッサを歓迎する事を許してはくれず、神楽坂は短いホームルームを切り上げようとした。
「アナタの席は一番奥、ユイ君の後ろに用意したから」
「わかりました」
「ではホームルームを終わります。それと相良君、くれぐれもアナタの常識を彼女に押し付けないように」
神楽坂の目尻は釣り上がり、鋭い目線で宗介を睨んで来る。
鈍い宗介でもソレは感じ取り、当たり障りのない言葉で返した。
「り、了解です」
「よろしい。あと5分もすれば担当の先生が来ると思いますので、全員必要なモノを準備して置く事」
生徒達に言い残して神楽坂は出席簿を片手に教室から出て行った。
テッサは支給された新品のカバンの取手を両手で持ち、長い銀髪を揺らしながらヒイロの後ろの席に向かって歩く。
通り過ぎる姿を男子生徒は眼球が飛び出る程視界に焼付け、まさに今の彼女は注目の的だった。
席へ着いた彼女はカバンを机の上に置き、マドの外を眺めたまま反応を示さないヒイロに話し掛ける。
「よろしぐお願いしますね。『ヒイロ・ユイ』さん」
「軍人ごっこの次は学生ごっこか」
「ごっこではありません。私は本当に軍に所属していますし、本当に陣代高校の生徒です」
「殊勝だな」
「難しい日本語もご存知なようで」
他の人には聞こえないように話し互いに牽制しあう2人。
そんな事を知らないかなめは同じように声を小さくし、誰にも悟られないようにして宗介に事の経緯を問い詰めて居た。
「ちょっと、どうなってんの!! 何でテッサがここに居るの?」
「溜まった有給を消費したいと大佐殿が提案したのだ。断る事は出来なかった」
「だからって!? それでこの前、アノ人が来てたのね。アンタだけでも手一杯なのにテッサまで見きれないわよ。アタシは」
マデューカスが学校に来ていた理由をようやく理解したかなめ。
超運動音痴のテッサの事を心配するが、宗介は懐から銃を取り出し自信を持って応えた。
「問題ない。大佐殿の護衛は全て俺に任されて居る。千鳥は心配する必要はない」
「はぁ~、全然わかってくれない」
///
学業に置いてテッサは他の生徒とは比べ物にならない頭脳を発揮する。
数学、物理、世界史、その他諸々。
ウィスパードである事を差し置いても、彼女の成績は他の追随を許さない程に優秀だった。
そして留学して初めての体育の授業がやって来る。
外は暗雲が漂いグラウンドには水溜りが大量に出来ており、水を張ったプールの水面も雨で絶え間なく揺れていた。
2年4組の生徒は全員体操服に着替えて体育館へ集合する。
「クッソ~!! テッサちゃんの水着姿を見れると思ったのによ!!」
中で小野寺 孝太郎は水泳の授業が変更になってしまったのを酷く悔やんで居た。
「これだけの雨だからしょうがないよ」
「こうなったら俺のカッコイイ所を見せて、テッサちゃんにアピールするしかないよな!! そうだろ風間?」
「僕に言われても……」
風間は何と応えて良いのかわからず、呆然とするしか出来なかった。
ザワザワして居る生徒達の所へ保険体育教師の小暮 一郎が青色のジャージを着てやって来る。
中年太りして腹が膨れた体型に短足で低い身長。
それでも生活指導を担当して居る身でもあり、日頃から怒鳴り散らしている印象も相まって威圧感がある。
「休憩時間はとっくに終わったぞ!! 黙らんか!!」
響き渡る怒号に全員の視線が一気に小暮へ集まる。
だが宗介は銃を構えて周囲を見渡して居た。
テッサを護衛する為に、銃弾が飛び交う戦場のド真ん中に立たされたかの様な緊張感を持ち、いつでも発砲出来る準備は整えて居る。
注意すべき人物は自然とヒイロへ絞られる。
(ヒイロ・ユイ、大佐殿には指一本触れさせはしない!!)
背後で宗介が狙って居るにも関わらず、ヒイロは気にもせず前を向いたままだ。
「今日はドッジボールをやるぞ。全員半分に別れろ!!」
小暮の号令と共に生徒達は言われた通り、バラバラになりながらも人数はキッチリ半分に別れた。
適当に移動して行く中で宗介と小野寺だけはテッサの後ろに付いて行き同じチームに入る。
敵チームに回る事になったかなめとヒイロ。
彼女が全く運動出来ない事を知って居るかなめは少しだけ心配してしまう。
「あの子、ケガしたりしないでしょうね? ただ歩くだけでも躓くのに」
「さぁな」
「宗介も何をやらかすかわかったもんじゃないし」
かなめが見つめる先ではテッサを中心にした人の輪が出来上がっており、こちらに声が届かないようにして何やら指示を伝えて居た。
ホイッスルの甲高い音が響き、バレーボールを持った小暮がコート中央に立つ。
「始めるぞ。どちらを先攻にするかはジャンケンで決める。誰でもいいから前に出ろ」
チームの代表格であるかなめとテッサが中央に寄り添い、右手を伸ばして声を出し合いながらジャンケンをする。
「最初はグー」
「じゃんけん、ポン!!」
出たのはグーとパーで主導権はテッサが握った。
ボールを小暮から受け取り、2人はまた左右へ別れる。
(幸先が良いですね。ジャンケンはただの運勝負ではありません。相手の癖などを見極めればある程度は予測出来ます)
ほくそ笑みながらテッサはボールを小野寺に手渡し、自分はラインギリギリの一番奥まで下がった。
「小野寺さん、よろしくお願いします。作戦通りに行けば勝てますので」
「任しとけ!! 絶対に勝ってやるからさ」
「はい!!」
1人1人に役割を与え、作戦を組んで勝負に挑むテッサ。
一方対戦相手であるかなめのチームはてんでバラバラで、ボールが怖くて隅へ逃げる女子、寝転んでやる気のない男子などチームの統率は皆無。
それでもまだやる気のあるかなめはヒイロと一緒に前に出る。
相手チームの様子を見てテッサは口元を緩めた。
(この勝負、勝たせて頂きます。ヒイロさん、前にアナタが言った『実力』をここで見せ付けてみせます!!)
以前の事を未だに根に持つテッサは心の中で闘志を燃やして居る。
けれども全く運動やスポーツの出来ないテッサは専門外の事に相手の力量を見誤っており、その事が今後の展開に大きく狂いを生じてしまう。
再びホイッスルの音が鳴り響き試合が開始された。
ボールを持った小野寺はまず、隅へ逃げて居る女子に向かってボールを投げる。
(戦力外とは言え、数が減るのは相手にとってプレッシャーになります。まずはそこから狙って下さい)
指揮官のテッサは有効打撃を与えようと的確な指示を飛ばす。
小野寺もそれに従い動くが、本来のスピードよりも少し遅くしてボールを投げた。
(流石に全力で当てに行く訳にはいかんだろ)
ボールは狙った方向へ真っ直ぐ進み、女子は目を閉じ縮こまっるしか出来なかった。
腰の部分に命中し、バウンドしたボールはかなめに拾われる。
「女子から狙うなんて、随分卑怯になったじゃない小野D」
「しょうがねぇだろ、そう言う作戦なんだから!!」
「ならこっちも遠慮しないからね。このォォ!!」
小野寺に目掛けて全力でボールを投げに行くかなめ。
早いスピードで迫るボールに小野寺は後ずさりし、捕球専門の生徒が間に割って入りボールを受け止めた。
「止められた」
ボールは大きく山なりに投げられかなめ達の後ろに居る外野に渡されてしまう。
攻撃から逃げるべく内側にラインへ移動するが、寝転んだままの男子はその場から動いてない。
「これで2人目!!」
またしてもボールを当てられ、早くも戦力を2人なくしてしまう。
内野に転がって来たボールを今度はヒイロが手に持ち、視界にテッサを入れてソレを投げた。
瞬間、宗介は彼女の前に壁として立ち、握って居る銃を前に向ける。
「伏せて下さい、大佐殿!!」
トリガーが引かれ閃光が走る。
投げられたボールには銃弾で穴が開き、中に溜め込まれていた空気が破裂して爆音が響いた。
破損したボールは重力に引かれ、無残な姿となり落ちて来る。
「危なかった。もう少しでケガを負わせる所だ」
「危ないのはお前だ!!」
かなめの鋭いハリセンは瞬時に宗介の脳天を叩く。
「痛いぞ千鳥」
「やかましい!! 体育で銃は使うなって何回も言ってるでしょ!!」
かなめに言われ宗介は渋々銃をしまった。
「そうか……わかった」
「そうよ。お願いだから体育の度に何か壊すのは――」
かなめの声を最後まで聞かずに、宗介はまた懐に手を伸ばし何かを取り出した。
「ナイフなら良いか?」
「良い訳ないだろ!!」
ハリセンがまた宗介の頭部を引っ叩き、乾いた音が響く。
危険に思ったかなめはロープで体をグルグル巻きにして宗介の身動きを封じた。
止まってしまった試合が再開され、ボールを持ったヒイロの番から始まる。
「今、チームを引っ張って居るのはアイツだ。アイツを仕留めれば他の動きも悪くなる」
「そうかもしれないけど、ガードが硬くて難しいわよ」
「その場合は1人ずつ落とす。1番簡単で確実な方法だ」
「口では簡単に言うけど、出来れば苦労しないわよ」
事もなく言うヒイロは助走を付けてボールを振りかぶる。
動作を見た捕球者の風間が前に出て投げられたボールをキャッチしようとする。
「僕が取りに行く!!」
メガネ越しに見えるボールはかなめが投げたボールと比べるまでもなく早く、特別に身体能力の高くない風間は受け止める事が出来ない。
構えた両腕をすり抜け鋭い衝撃が腹部へ直撃し、口から唾を吐き出して膝から崩れ落ちた。
喉が詰まり呼吸が困難になる風間は最後の力を振り絞り、霞む目でヒイロを見る。
「僕が……部長なの……に。もう少し、手加減……しても」
「風間、こう言う言葉がある。ソレはソレ、コレはコレ」
「そんなぁ」
風間は意識をなくし床へ倒れた。
ボールはまたヒイロの足元に転がって行き、それを見た小野寺は額から冷汗を流す。
(何だ今のは!? あんなのドッジボールじゃねぇよ。バレーのスパイクと同じだ!! む、無理だ!!あんなの取れねぇよ)
小野寺が思った事は他のメンバーも感じており、たった1球投げただけで全員が弱腰になってしまう。
ジリジリ後ずさりし、攻めの体制から守りの体制に切り替わって行く。
それを感じ取ったテッサは指揮を上げるべく、みんなにエールを送る。
「皆さん、弱気になってはいけません!! 相手はたったの1人です。ヒイロさんさえ外野に送れればこちらの圧倒的有利です」
「そ……そうだぜ、みんな!! ここでアイツをぶちのめして、ヒーローになるぞ!!」
(予想を間違えた。ここでもし抑える事が出来なかったら、こちらが不利)
小野寺はやる気になり、弱気になって居た他のメンバーも大声を上げ一時的に下がってしまった指揮も今まで以上に向上する。
けれどもテッサの考えとは裏腹に守備陣は次々ヒイロに討ち取られてしまう。
「ぎゃあああぁぁぁ!!」
「く、苦し……」
「優しくお願いします!!」
簡単に形勢は逆転し、残った男子は小野寺しか残っておらずテッサと女子が3人だけ。
もうヒイロに勝てる戦力はなく、このままボールを当てられて外野に送られるのを待つしかない。
(つ、次は俺の番か!? どうする? どうする!? どうするよぉぉぉ!!)
迷って居る間にもヒイロは投球フォームに入り、豪速球を小野寺に目掛けて投げた。
空気を切り裂き唸る球。
避けるのもままならず小野寺の顔面にボールが直撃し、赤い鮮血が飛び散った。
「痛って!? ハナ……鼻が!!」
鼻からボタボタ血を流し動揺する小野寺。
ホイッスルが鳴り、小暮が心配して走って来る。
「おい、鼻血だけか」
「は、はい」
「よぅし、保健室までは行けるな?」
「スイマセン。あとは――」
流れ落ちる血を手で受け止めながら保健室に行こうとする小野寺。
そこへテッサも慌てた様子で駆け付けて来た。
「小野寺さん、大丈夫ですか!?」
「テッサちゃん……」
「すみません。私が至らなかったばっかりにケガをさせてしまって」
涙目になるテッサを見て、小野寺はもう1度だけ戦う意欲を持つ。
ティッシュを鼻の穴に詰め込んで、小暮の制止も振り切りコートの上に立つ。
「試合はまだ終わってない。やるんだ、俺がヒイロを止める!!」
「小野寺さん、ですがそれは……」
「大丈夫、俺に任せとけ!!」
勝算はないに等しいがプライドが後押しし体をがむしゃらに突き動かす。
ボールを持った小野寺は数でも個人の能力でも圧倒的に負けている相手コートを睨んだ。
投げ続けて居るにも関わらず全く疲れた様子のないヒイロ。
「アイツ、全然疲れてないじゃん。もし当てれたとしても千鳥も居るしなぁ」
「このチャンスを活かすしかありません。外野にもパスを回して挟み込みながら攻めましょう」
「わかった!!」
ラインの外まで届くよう山なりにボールを投げる小野寺。
だがヒイロは助走もせずにジャンプし、両腕を真上に伸ばしてボールに手が触れる。
脅威に身体能力に見ている全員が驚き舌を巻いた。
何よりも痛い目に会ったのに一瞬でチャンスを潰されてしまう事に、小野寺は不甲斐なさと絶望感に苛まれてしまう。
「ウソ……だろ?」
絶句してそれ以上言葉は出ない。
しかい思いがけない事態が起こる。
ボールを捕まえたヒイロだったが、着地したと同時に手からこぼれ落とした。
想像もしなかった呆気無い幕切れに体育館全体の空気が凍り付く。
バウンドする乾いた音。
ヒイロは何も言わずボールを拾い、後ろに居るかなめに手渡した。
瞳をパチクリして受け取るかなめは外野へ移動するヒイロに呼び掛ける。
「どうして…… 本気出せば取れたでしょ?」
「それも出来た。だが俺が全員倒したら授業にならない。後はお前がやれ」
手を抜いたヒイロをテッサは睨み付ける。
実戦でもこのドッジボールでも、圧倒的な力を見せ付けられては逃げられてしまう。
それもあからさまな手加減されたのでは穏便な彼女でも腸が煮えくり返る。
「わ、わざと落としましたね!!」
「偶然だ」
「アレだけのジャンプが出来て、アレだけのボールが投げられて!! 反射神経も抜群のアナタが、あんなイージーミスをする筈ありません!!」
「買い被り過ぎだ、誰でもミスはする。お前の作戦ミスと同じ様にな」
「うっ!? ぐぅぅぅっ!!」
言い返せないテッサは悔しさのあまり歯ぎしりし、ヒイロの背中を見るしか出来ない。
ヒイロが居なくなった事で戦力は大幅に下がり、テッサのチームは奮闘して巻き返す寸前まで持ち込んだ。
だが無情にもタイムリミットが迫ってしまい僅差でテッサは負けてしまう。
///
1日の授業も終わり各々は部活へ行ったり家に帰る為の準備をする。
テッサの護衛任務を任された宗介は直ぐ様彼女の元へ向かい周囲を警戒した。
「大佐殿、ご帰宅でしょうか?」
「汗をかいたので早くシャワーを浴びたいです」
「了解です。戻り次第、すぐに準備します」
「相良さんは先に帰って下さい。私はまだやる事がありますので」
「それなら自分も一緒に――」
当然の様に付いて行こうとする宗介にテッサは椅子から立ち上がり、艦長シートに座って居る時の眼差しを向けて口を開ける。
背筋に緊張が走り、状況を瞬時に理解した。
「ここは私1人で行きます。彼と話がしたいので」
「了解しました」
宗介は1歩退き、テッサはヒイロの所へ向かう。
これこそが彼女が陣代高校へ留学した本来の目的。
今までに数度交戦した未確認機体、クルツの情報、以前出会った時から感じて居た疑問。
それを確かめる為、深海からはるばるやって来た。
風間と部活の写真部について話して居るヒイロの所へテッサは割って入る。
「それでレンズの絞りなんだけど――」
「ヒイロ・ユイさん、お話したい事があるのですがよろしいでしょうか?」
「あぁ、わかった。風間、先に行け。これが終われば行く」
「うん、わかったよ。コンクールも近いから僕は外に行ってるよ」
風間はヒイロに言付けして教室から1人で出て行った。
確認したヒイロも口を閉じて黙ったまま歩き出して教室から移動する。
テッサもその後に続き、異様な雰囲気を醸し出して人気のない所に向かう。
只ならぬ気配を感じたかなめは残った宗介に事情を聞いてみる。
「ねぇ、あの2人どうしたの?」
「禁則事項だ。悪いが説明出来ない」
「ふ~ん。あと宗介、古典の課題早く提出しなさいよ。単位にも響いて来るんだから」
「古典は苦手なんだ」
「古典『も』、苦手の間違いでしょ」
「ぐっ!? 肯定だ」
生徒が誰も居ない空き部屋に入ったテッサとヒイロは向かい合い、静寂が辺りを包み込む。
グラウンドから聞こえて来る野球部の掛け声。
まだ少し暑い部屋の中。
何も話さない時間が何秒も経過し、時計の長針が針を進める。
先に口を開いたのはテッサの方だった。
「アナタに聞いておくべき事があります。アナタは何者ですか?」
「前にも言った筈だ。お前と同じ、只の学生だ」
「あの時私達と別れた後、アナタは何処で何をしていたのですか?」
「お前には関係ない」
「関係あるかどうかは私が判断します!! 敵か味方かも分からない未確認機体。けれども私達の仲間も戦死しています。このまま野放しには出来ません!!」
言葉を尖らせて話すテッサ。
だがヒイロは動揺したりなどせず、表情も一切変える事なく淡々を続ける。
「それこそ俺には関係ない筈だ」
「それこそ? アナタはベヘモスが現れた事件しか知らない筈ですよね。洞察力も鋭いアナタなら状況を確認したりするでしょう。でも聞かなかった。何故ですか?」
口車に乗せられて罠に引っ掛かってしまったヒイロは口を閉じ、話の内容を肯定するかの如く瞼を閉じた。
やり返せた事にテッサは笑みを浮かべ、ヒイロが未確認機体の関係者だと確信する。
そしてそれを前提として更に話を聞こうとした。
「あの機体は何ですか? 何処で作られたのです?」
「俺も全て把握しては居ない。だが1つだけ確かな事がある」
「それは?」
「俺はもう……ガンダムには乗らない」
ヒイロがテッサに語る真相とは!?
もうガンダムには乗らないの?
ご意見、ご感想お待ちしております。