フルメタルWパニック!!   作:K-15

15 / 51
かなり遅くなってしまいました。今月はこの話だけになります。
来月からは2話投稿出来るようにしていきたい。


第15話 ガンダムの存在意義

「ドクターJ、ですか?」

素っ頓狂な声を上げるかなめ。

本名を明かした2人に対して、目の前の老人が口にしたのはとても名前と呼べるモノではない。

不気味なゴーグルの奥に潜む瞳で、ドクターJは義手のアームを動かしながらほくそ笑む。

ドクターJに警戒心を表しているのは宗介も同様だ。

ヒイロ・ユイとの唯一の関係者であり、ガンダムの開発者でもある。

一切の素性を明らかにしない人物の事を信用出来る筈もなかった。

 

「ふざけている。名前ではない」

 

「今重要なのはそんな事ではなかろう。ヒイロがまだ戦い続ける理由が知りたいんじゃろ?」

 

「くっ!? そうだな」

 

ドクターJの言葉に宗介は押し黙るしかない。

 

「さて、何処から話せばいいものか」

 

「ねぇ、おじいさん。どうしてガンダムを作ったの? アレだけ強力なのを個人で作るなんて無理だと思うんだけど」

 

話すべき事が多すぎて悩むドクターJに、かなめは素直な疑問を問いかけた。

それを聞いてドクターJはニヤリと笑うと、質問の答えを包み隠さず話し始める。

 

「ガンダムを作った理由か。簡単じゃよ。宇宙の平和の為じゃ」

 

「宇宙の平和?」

 

「話が飛躍しすぎている。真面目に話せ」

 

「大真面目じゃよ。と言っても、今では必要のない存在だがな」

 

ドクターJの話す言葉に2人は付いて行けない。

宗介はほとほと呆れ、話を聞く気が失せてしまう。

けれどもかなめは付いて行けないながらも、情報を少しでも吸収しようとさらに問いかける。

 

「何でガンダムが宇宙の平和に繋がるの?」

 

「ワシも始めはそう考えておった。だが、戦うべき相手が居なくなってしもうた。もはやこの世界にガンダムは必要ない」

 

「戦うべき相手が居ない? でも、ヒイロ君はまだガンダムに乗っている。それはどうして?」

 

「ヒイロはガンダムで戦っているのではない。死のうとしているのじゃ」

 

『死』と言う単語が耳に入りかなめの体は一瞬だけ力が入り硬直する。

ドクターJは淡々と聞かれた事だけを話し、ヒイロが死のうとしている事でさえも全然気にかけている素振りはない。

かなめは息を呑み、その事に付いて深く追求する。

 

「ヒイロ君が死ぬってどういう事!? アタシには何となくだけどわかる。ガンダムがこの設計図通りなら、普通の軍隊がどれだけ束になって戦っても勝ち目がない。これだけの兵器を持っていながら、どうして死のうなんてするの?」

 

かなめが握る机の上の紙の束、それはガンダムの設計図の一部である。

荷電粒子の計算式、ガンダニゥム合金の破壊数値の値、複雑なフレームを運動性能を向上させる為にはどのようにすればいいのかなど。

中にはドクターJが独自に発案した物も含まれており、一般人はおろか専門家ですら解読出来るか怪しい物を、かなめのウィスパードの能力が囁き、理解させてくれる。

 

「それはさっき話したじゃろ。ガンダムはもう必要ない。だからヒイロはガンダムを破壊する為に、わざわざ敵地へ乗り込んでおる。アイツには自爆装置も付けてあるんだがな、それでも完全には破壊出来ん。ヒイロはガンダムをこの世から葬り去るつもりじゃ。ネジ1本と残さずにな」

 

それを聞いて宗介はガンダムの今までの不可解な行動に1つの仮説を思いついた。

圧倒的な力を持っているにも関わらず、何処か本気を出していなかったガンダム。

各地の拠点を攻めて来たガンダムだが、戦略的な物を感じられなかった。

ドクターJのガンダムを破壊する為に戦っていると言うのを聞いて、宗介は答えを導き出す。

 

「では、これまでにガンダムが現れたのは自ら死にに行く為だと言うのか? でもソレなら納得が行く事もある。電磁兵器、ベヘモス、この前の基地襲撃。あれは破壊しに行ったのではない。自ら負けに行ったのか。ガンダムを壊す為に」

 

「そうじゃ。だがあの程度ではワシの作ったガンダムは破壊出来んだ」

 

「次は何処へ攻めるつもりだ」

 

「知りうる限りのあらゆる兵器や武器を調べ上げた。そして、行き着く先は同じじゃ。スイッチ1つで全てを破壊する。美学の欠片もない」

 

「核か」

 

宗介の答えにドクターJは無言で頷くだけだった。

現在の地球上に存在する最も強力な破壊兵器ともなれば、導き出されるのは自ずと決まってくる。

ベヘモスやコダールiのラムダドライバでさいえもガンダムにキズを付けるのがやっとだ。

既存の考えられる兵器でも破壊するには到底及ばず、ガンダムを完全に破壊出来る兵器となってくるとそれしか残されていない。

そして核を使ってでもガンダムを破壊しようとするヒイロの行動に、宗介は戦慄を覚えると共に死んででも目的を達成しようとする行動力に懐かしさを覚えた。

少年兵時代の宗介の行動理念と共通する所もあり、死ぬ事を厭わない行動は強いのを知っている。

 

「ヒイロ・ユイは何処の核を狙っている。仮にガンダムを破壊出来たとしても、それだけで終わる訳がない。放射能汚染に世界情勢が揺らいでしまう」

 

「目的を達成した後の事は知らん。ワシは科学者だからの。その先を考えるのは政治家や世論の決める事じゃ」

 

「そんな無責任な事を!! 元凶を作ったのはお前の筈だ!!」

 

「ワシの仕事はもう終わっておる。責任なんてモノを負う必要もなければ、ガンダムをどう使うのかは全てヒイロの意思じゃ。ワシはもうアイツに何の指示も出しておらん」

 

宗介が荒げる声にもドクターJはあっけらかんとして、奥が見えないゴーグルを光らせる。

考えの読めない相手に宗介は苛立つ。

核の使用によるガンダムの破壊、並みの戦力ではガンダムを食い止める事など出来る筈もなく、目に見えないタイムリミットは確実に迫りつつある。

静寂する部屋の空気。

時計の秒針がカチカチと動く音だけが響く。

カーテンに遮られて光の入らない部屋は薄暗く隅に埃が積る。

その中でかなめは重く閉ざされた唇をなんとか開け声を出す。

 

「ヒイロ君は今どこに居るの?」

 

「御嬢さんはアイツを止めるつもりか?」

 

「友達なんです。だから止めたい。生きてほしいんです」

 

「んっふっふ。そうか、友達か。なら――」

 

話を区切るとドクターJはイスから立ち上がり、隅に置かれているパソコンに歩いて行く。

老化で弱ってきた足腰では歩くのは遅く、履いているスリッパを少し引きずりながらパソコンの前の椅子に座った。

デスクトップ型パソコンの電源ボタンを押しこみ、電力が供給される。

ファンが回転するかすかな音が鳴り、ディスプレイに明かりがつく。

宗介とかなめの2人もそれを見る為にドクターJのすぐ後ろに立った。

左腕の義手ではキーボード操作が出来ないので、右手だけでマウスとタイピングの両方を器用にこなす。

キーボードをカタカタと叩き、ディスプレイには地図データが表示される。

中央には赤い丸が点滅しながら高速で海上を移動していた。

 

「これは……座標か」

 

「そうじゃ、ガンダムのな。作戦行動内容も通信で定期的に送られて来る」

 

「なら次に向かう場所もわかるな」

 

「あぁ、送られておるよ。ワシが育てたからな、考える事は同じか」

 

「ヒイロ・ユイが狙っているのはやはり核か。何処の核貯蔵庫だ」

 

キーボードをもう1度叩くドクターJ。

ディスプレイの座標が広域化され、ガンダムが向かう先が表示される。

日本を跨ぎ、アジア大陸に位置する場所。

核保有国の北朝鮮、朝鮮半島へ向かってガンダムは飛んでいる。

ディプレイを覗き込んだ宗介はドクターJが声に出すよりも早くに認識した。

 

「朝鮮半島、そこにヒイロ・ユイは向かっている」

 

「お前さんもヒイロを止める気か?」

 

「理由はどうであれ核兵器を使わさせる訳にはいかない」

 

「果たしてアイツを止めるコトが出来るかな? んっふっふ」

 

他人事とあざわらうドクターJ。

実験ではなく兵器として核を使えば、現地だけでなく近隣国にも計り知れない被害が及ぶ。

高濃度の放射能が何年にも渡り降り注ぎ、たちまち人も動植物も住めなくなる。

核が実際に使われたのは日本の2発だけでそれ以後は現在に至るまで使用されていない。

けれども当時に比べて科学技術はさらに発展しており、もしも使用されれば爆撃の威力は想像を絶する。

 

「時間がない。すぐに大佐殿に報告を」

 

「あっ、ちょっと!?」

 

宗介は笑うドクターJを無視して、事態を収拾させようとすぐに行動に移る。

薄暗いリビングから玄関に向かって歩き出す宗介にかなめも付いて行こうとするが、不意に立ち止まりイスに座るドクターJへ振り向いた。

 

「ねぇ、おじいさん」

 

「ん、なんじゃ? こう見えてワシは何かと忙しくての。用が済んだなら帰ってくれんか」

 

「どうしてヒイロ君を学校に入れたの? こんな事をするくらいなら、始めから入学なんてしないと思うんだけど」

 

「あぁ、そんな事か」

 

「そんな事?」

 

ヒイロを育てたと語ったドクターJだが、かなめにはその態度と言葉から誠意を感じられなかった。

ドクターJは聞かれた事に素直に答えてはいるが、全ての真実を話している訳ではない。

嘘を語ってはいないが本当の事でもなかった。

心の中に奇妙な違和感として残るだけで、ただの学生であるかなめにその事を悟るのは難しい。

パソコンの電源を落とし、イスから立ち上がったドクターJは義手のアームをカチャカチャ動かしながらかなめの傍に寄る。

ニンマリと笑みを浮かべ、目のゴーグルを光らせた。

 

「身分証明は必要じゃろ。その為だけに入学させた」

 

「本当にそれだけなんですか?」

 

「嘘は付かんよ」

 

考えてもかなめに真理はわからなかった。

それよりも今は目の前の状況を何とかする方が先と思い、踵を返し玄関へと向かう。

何も言葉を残さず立ち去るかなめの後ろ姿をドクターJは眺めるだけ。

残されたリビングで誰も居なくなったのがわかると、奥の寝室へと戻って行く。

引き戸を開け、壁のスイッチを押して部屋に明かりを付ける。

天井の蛍光灯が光り真っ暗な視界から部屋中を見渡せるようになると、そこはもう寝室と呼べるモノではなくなっていた。

パソコン、実験に使用する橋台、バラバラに解体された機体のパーツたちが散乱している。

 

「年寄りの道楽ぐらいは静かにさせて欲しいものじゃ」

 

橋台まで歩いて行くドクターJ、そこには作りかけの機械が置かれていた。

全身が銀色の、まだ塗装すらされていない未完成品。

この部屋に住むようになってから始めた実験である。

手足と頭部も離れてバラバラのまま、接合部からはケーブルが伸びていた。

それはまだ形にはなっていないがネコ型のロボットに見える。

頭部のケーブルはパソコンへと伸びており、プログラミング作業の途中で止まっていた。

 

「さて、完成にこぎつけるとするかの」

 

丸イスに座りパソコンのキーボードを叩き、プログラミングを再開させる。

黒い背景に緑色のアルファベットが次々に打ち込まれて行った。

専門知識が必要なプログラミングは素人が見てわかるようなモノではなく、記号として新しい情報を登録させていきネコ型ロボットの頭脳を構築させていく。

研究室の部屋の中にはその音が聞こえるだけだった。

 

///

 

ドクターJのマンションの部屋から出た宗介のかなめ。

目的ははっきりしており、ヒイロ・ユイによるガンダム破壊の為の核兵器使用を止める事だ。

ミスリルの仲間へ連絡と報告をしなくてはならず、宗介は早歩きで自分の部屋に向かって進む。

その後ろから付いて行くかなめは歩きながらこれからの事を話した。

 

「ねぇ、どうするの?」

 

「核が使われれば汚染で人が住めなくなる。世界情勢も大きく乱れる。何としても止めなくては」

 

「どうやって?」

 

「今のままでは移動手段も武器すらない。1度味方と連絡を取る」

 

歩きながら会話を進め、エレベーターの扉の前まで到着する。

ボタンを押しオレンジ色に光ると降りてくるのを待った。

7階建てのマンションのエレベーターは最上階から数秒に1階下って5階までやって来る。

到着すると扉が開かれ、2人はすかさずその中へと入り宗介は3階のボタンを押す。

扉はまたすぐに閉じられるとワイヤーに引っ張られ下っていく。

横並びに立つ宗介とかなめ。

かなめは横目でチラリと宗介の表情を伺うといつも以上に鋭い表情で前だけを向いていた。

余計な言葉を話しかける雰囲気ではあらず、黙って3階に到着するのを待つ。

モーターが駆動する静かな音だけが耳に入る。

 

(宗介の言う事が当たってた。ヒイロ君も普通の高校生じゃない)

 

ウィスパードのかなめと同じく、分野が違うだけでヒイロも普通の学生ではない。

それがわかってしまうと異質な存在として色眼鏡で見てしまう。

その事がわかっているのはまだまだ極少数ではあるが、これからどのように接すればいいのか疑問が生まれる。

 

「アタシ、何にも気付いてあげられなかった」

 

「ヒイロ・ユイは訓練されている兵士だ。一般人が気付くと言うのが難しい」

 

「でも――」

 

言葉を遮るようにエレベーターにブレーキが掛かり3階へと到着した。

扉が開かれると共に宗介はまたすぐに歩き出してしまう。

 

「行こう。あまり悠長にしている暇はない」

 

「うん……」

 

自分でもどうしたらいいのかわからない状況で、かなめは押し黙るしか出来ない。

どうしようもない無力さが彼女を支配する。

コンクリートで出来た通路を歩き自分の部屋まで来た宗介は上着の胸ポケットからカギを取り出しドアノブのカギ穴に奥まで差し込んだ。

カギを捻り施錠を降ろさせ、またカギを引き抜き胸ポケットへ戻す。

ドアノブを掴みドアを開けて室内へと入って行くのをかなめも続いて行く。

急いでいても履いていた革靴だけは玄関で脱ぎ、リビングへ上がる。

宗介の部屋もドクターJと同じく生活感の欠片も見られない。

唯一違うのはきちんと整理整頓されている所だが、それでもおおよそ一般家庭とは思えないものばかりが置かれている。

名前もわからない銃火器に長いアンテナの伸びた通信装置。

軍用に使用するものばかりで、テレビどころか冷蔵庫すら置かれておらず生活必需品がすぐには見つけられない。

宗介はその中の通信装置に真っ直ぐに進み、電源を入れると丸いツマミを操作し通信回線を合わせる。

ヘッドフォンとインカムが一体になったものを頭に付け、耳から聞こえる砂嵐の雑音が消えるのを待った。

 

「味方ってテッサが乗ってたあの潜水艦?」

 

「そうだ。トゥアハー・デ・ダナンは移動出来る拠点に等しい。それに今のままではアイツを止められない」

 

「ねぇ、ヒイロ君本気なのかな? 本当にあのガンダムってのに乗ってて、本当に死ぬ為だけに戦ってるのかな?」

 

「俺の経験から思うに、ヤツは本気だ」

 

宗介は通信装置を見つめたまま、振り返りもせずにかなめに答える。

不安に感じているかなめとは違い宗介は既に戦う覚悟を決めていた。

戦場で敵として相まみえた場合、それは例え誰であろうと倒すべき相手だ。

互いにその事を心得ている。

故に、取るべき行動もわかっていた。

 

「こちらウルズ7。緊急の報告がある。大至急、大佐殿に報告を願いたい」

 

///

 

トゥアハー・デ・ダナンへ通信が繋がると、宗介は通信兵に事の経緯を説明する。

時間は1秒でも惜しいが、重要な事であるが故に正確に内容を伝えなければこれからの作戦行動にも支障が出るかもしれない。

 

『ダナン通信室です。要件を』

 

「例の羽付きが朝鮮半島へ向かっている。目的は貯蔵してある核兵器だ。今すぐに大佐殿に繋げて欲しい」

 

『わかりました』

 

トゥアハー・デ・ダナンの通信室から艦長の座るブリッジに回線が繋がれる。

女性の通信兵の声が回線を通してテッサにまで届き、シートに座っていたテッサは突然の報告に気を引き締めた。

 

「何事です」

 

『相良軍曹より緊急通信です』

 

「相良軍曹から? すぐに繋げて下さい」

 

艦長の許可を受けて通信兵は回線をブリッジに通す。

ブリッジの大型ディスプレイに『SOUND ONLY』と表示され、宗介の声がブリッジにまで聞こえて来る。

表情を引き締めた彼女の視線はいつもより鋭い。

 

「相良軍曹、事態の説明を」

 

『はっ!! 例の羽付きが朝鮮半島に向かっています」

 

「朝鮮半島、そんな所に何故?」

 

『目的は貯蔵してある核兵器です。ヤツはそれを使って自爆するつもりです』

 

「核兵器……自爆……」

 

テッサは顎に手を当てて頭の中で思考する。

副艦長のマデューカスはいつものように彼女の隣に微動だにせず立ち、テッサが導き出す答えを待つ。

核兵器使用による被害がどれだけ広がるのかを頭の中で計算するテッサ。

人的、環境被害、それに伴う世界情勢の変化。

宗介と考える事は職業柄で似ており、人員の配置や時間配分も瞬時に考えていく。

 

(あの未確認機体と対峙する日が来たようですね。これは止めなくてはなりません。何としてでも!!)

 

世界の表舞台の影に隠れて動いてきたミスリル。

この状況下でも他国に要請を求めたりなどせずに、自分達だけで解決しようとする。

以前の戦闘で十二分に体感したガンダムの強さ。

普通に戦えば勝ち目は見えてこないが、兵士はそれでも戦わなくてはならない。

テッサはダナンに搭乗している仲間を1人足りとも戦死などさせたくはないので、その為にはどうするのが適切なのかを考えた。

 

「相良軍曹。現在ダナンは日本近海に待機しています。これから朝鮮半島に向かって移動を始めます。幸いにも日本を巡航しているヘリが居ますので、600秒で軍曹のマンションへ向かわせます。合流後は先行して現地へ向かうように」

 

『了解しました』

 

「お願いします」

 

指示を伝えると通信が切断されディスプレイに映っていた『SOUND ONLY』の文字も消えた。

テッサは背もたれに体重を乗せて一息付く。

マデューカスは落ち着いたのを横目で確認し彼女へ声を掛ける。

 

「艦長、あの羽付きに対して何か有効な手段はお考えで?」

 

「現状では有効な手段はありません。アーバレストのラムダドライバが正常に稼動すれば、少なからず可能性は生まれるでしょうが」

 

「厳しい選択ですな。辛い戦いになるやもしれません」

 

「えぇ、だから皆さんには私が可能な限り支援するしかありません。それが艦長の役目です」

 

今はマデューカスはテッサの補佐として副艦長の位置に居るが、昔は自らの指揮で艦を動かしていた。

危険な戦地を幾度もくぐり抜けてきたし、部下を死地に送り出しもして来た彼には彼女の気持ちがよくわかる。

例え戦いの中で戦死したとしても、書類やデータ上では数字の1としてしか表示されない。

死んでいった兵士がどんな人物だったのかなんて上層部は知ろうともしなかった。

兵士は記録として残されるだけだ。

その虚しさを痛いほどに実感してきたマデューカスには、無謀と理解していながらも戦いを挑もうとするテッサの姿に共感を覚える。

同時にトゥアハー・デ・ダナンの艦長に彼女以上の逸材はいないと再認識した。

 

「同感です、艦長」

 

「マデューカスさん、進路変更を。速度は12ノットで」

 

「イエス、マム!!」

 

マデューカスの声がブリッジに響き各員に反復して指示が伝えられる。

可変ピッチスクリューが回転し水中で推進力を生む。

トゥアハー・デ・ダナンは深海を進み、海流の中へ消えて行く。




以前にも感想で書いてありましたが、ヒイロが戦う理由は機密保持の為にガンダムを破壊する事です。2度目のミスリルとの戦闘はどのようになるのか、乞うご期待!!
話は変わって、ガンダム00の外伝なのですが余り声もないのでこのままではオクラ入りに……
それとは違って新しい企画も進めてはいます。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。