フルメタルWパニック!!   作:K-15

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更新はかなり遅くなると思いますが応援していただければ幸いです。
フルメタは知識が疎いのでこのあたりも変な箇所があれば報告、アドバイスしてくれると感動の極みです。


第1話 燃え尽きない流星

「この地域で流星が観測出来るのは実に195年ぶりです。専門家の方によりますと―――」

 

テレビで放送されるニュースには必ずと言っていいほどこのことが報道される。

連日に亘って流星について専門家が語ったり街角で取材をしている映像が流れていた。

毎日見ていればイヤになる人も出てくるだろうが大多数の人間は歓喜に沸いていた。

都立陣代高校に通う彼女、千鳥かなめもその大多数の中の1人である。

規定の制服に着替えた彼女は同じ高校の友人である常盤恭子と最近になって転校してきた相良宗介と共に駅から学校へと歩いてる。

 

「今日は良い天気ね。夜の流星も綺麗に見れそう」

 

「でも見れるのは夜の2時ぐらいだってテレビで言ってたよ?」

 

「195年ぶりなのよ、こんなチャンスを逃してたまるもんですかって」

 

「かなちゃんはすごいね。ねぇ、相良くんは今日の流星見るの?」

 

2人楽しく会話をしながら歩いている中でぶっきらぼうで表情を変えない相良にも話題が振られた。

彼は表情をそのままにその質問に答える。

 

「流星は小天体が地球の大気で燃えているだけだ。わざわざ生活リズムをずらしてまで見る必要性はない」

 

「あはは、相変わらずだね」

 

「まったく、ロマンの欠片もない男ね。195年ぶりに見れる流星を見て感動を味わいたいとか思わないわけ?」

 

「ない」

 

「はぁ~、はいはい。アンタに聞いた私が悪かった」

 

相良宗介は日ごろから日常で生きていく上で必要の無い物にはまったくと言っていいほど無頓着で今回もそうだった。

そんな彼にかなめは呆れていた。

だが流星で賑わう学生が知る余地もない所で事態は進んでいた。

 

///

 

対テロ傭兵組織ミスリルが所有する強襲揚陸潜水艦トゥアハー・デ・ダナン、そのブリッジで艦長である少女テレサ・テスタロッサと副長のリチャード・ヘンリー・マデューカス、陸戦コマンド指揮官アンドレイ・セルゲイヴィッチ・カリーニンはこれからの作戦行動について話している。

 

「南アメリカ前線基地に非公式なルートで大量のレアメタルが流れていると情報がありました。恐らく大型の電磁兵器の開発に使用するのではないかと」

 

「電磁兵器、俗に言うレールガンですね。兵器として実用出来るレベルとなるとかなりの大型でしょうね」

 

「物理的手段による破壊が適切かと思われます」

 

「確かに今からでは工作員を潜入させるにしても遅すぎます。クラッキングで制御システムを掌握するにしても完成していたのでは難しそうですね」

 

「巡航ミサイルを使用しピンポイントで破壊するのが適切かと」

 

艦長席に座りながらテッサはカリーニンの報告をじっと聞いていた。

艦長として隊員を無事に帰還させるように作戦を組み立てなくてはならない。

巡航ミサイルによる攻撃は現地に隊員を送る必要がないので安全ではある。

けれどもミサイルによる被害の計算や目標に着弾させるために正確な情報が必要になってくる。

どちらを取るべきかを彼女は自身の右隣にいるマデューカスにも聞いた。

 

「マデューカスさんはどう思いますか?」

 

「私も巡航ミサイルによる破壊が適切かと思います」

 

「そうですか。……分かりました、監視衛星で正確な位置を割り出して電磁兵器以外の被害は最小限になるようにしてください。カリーニンさん、お願いします」

 

「了解です。次に新型アームスレイブの進捗状況です」

 

テッサに作戦決行の了解を得ると次の議題に進めようとカリーニンは手に持っていたファイルのページをめくった。

そのページには今開発中の新型アームスレイブの図面が書き出されていた。

 

「現在60パーセントほどまで完成しております。機体そのものはこのまま順調に進むでしょうが例のシステムが」

 

「あれを完成させるには専任のパイロットも必要になってきます。その事も考慮してこれからも進めてください。そういえば……」

 

突然彼女は話の流れを断ち切ると天井を見上げた。

上を見たところで硬い金属で作られた鉄板しか見えはしない。

 

「どうしました大佐?」

 

「いえ、相良軍曹は今日本に居るのでしたよね?日本でならもうすぐ流星が見れますから」

 

「流星、ですか」

 

自分より年上の大人達からこの艦の艦長として、上官として責任ある立場を取っているがこの瞬間だけは年頃の乙女に見えた。

少女の瞳は輝いて見える。

 

///

 

日本時間で午前1時55分、かなめは自宅のマンションのベランダから夜空を見上げていた。

肌寒い夜風を気にもせず次第に重たくなる目蓋を手で擦る。

今朝から天気は快晴で雲1つない夜空には綺麗な星が輝いている。

 

「まだかな流星、明日も学校だからあんまり長くは見てられないんだけど」

 

首には紐を付けた双眼鏡、手にはデジタルカメラを握って今か今かとその時を待った。

深夜だというのに街中にはまだ明かりが点々と見える。

すると一筋の光が彼女の視界を横切って行った。

それを皮切りに眩いばかりの流星が次々と流れ始めた。

 

「お~!!綺麗」

 

ベランダに居た彼女と同じように外で見ていた人達の歓声がわずかに聞こえる。

放物線を描くようにして流れる流星は1秒もすると地球の大気で燃え尽きて消えてしまう。

途絶える事無く流れ続ける流星の中で燃え尽きる事なくこの地上に降りてきた事に気付けた者は誰もいない。

光り輝く流星は夜空を照らす。

 

南アメリカ前線基地、ここでは完成を目前とした電磁兵器のテストを行なっている。

秘密裏に作成を進めている関係で発射テストは夜にしか出来ない。

今夜は発射テストの為に基地に設置させている。

大型のレールガンは威力も凄まじいが発射の際の反動、照準のブレ等も計算に入れなくては当てることは出来ない。

 

「レールガン、設置完了。電力供給率100%、照準ロックオン、準備OKです」

 

「テストは1時間、各員持ち場には着いたな?」

 

司令塔から指揮官の声が響き渡る。

基地内は完全防備状態でアームスレイブも出動しておりこの周囲に人が立ち入る事は不可能である。

 

「こんなに防御を固める必要があるのですか?」

 

「この兵器が完成すれば核兵器に継ぐ強力な武器になる」

 

「それは、そうですが」

 

「そうすれば国でも組織でもなくこの私に決定権がある。だから失敗は許されん」

 

「ですがこれだけの戦力で攻め込んでくる者など居るのでしょうか?」

 

「もし来るのならただの馬鹿だよ」

 

普通に考えたならここに攻め込むには相当な戦力が必要になってくる。

万一攻撃を受けたにしても返り討ちにするだけの自信が彼にはあった。

それにもしもの為に想定はしているが攻撃を受けるなど本気で考えてはいない。

けれどもたった1機でこの基地に攻撃を仕掛けてくる馬鹿は居た。

 

「第1射装填完了、発射のカウントダウンを始めます。10、9、8」

 

下士官がレールガンのテスト試射のカウントダウンを始めた。

刻一刻と刻まれるカウントダウンの真っ最中に突如として爆発が起こった。

 

「カウント中止、何が起こった!」

 

「第2、第3ブロックが壊滅!損害は不明、敵の位置も特定出来ておりません!」

 

「壊滅だと!?」

 

一瞬にして壊滅したブロック、それも状況すら把握出来ていない。

数分前まではこんな事になる訳がないと笑っていたのに今現実に起こっている。

瞬く間に基地全域に警報が鳴り響き戦闘員は全員駆り出される。

すぐに被害のあった第2ブレックへ隊員が集まってきた。

砕け散った瓦礫に燃えさかる炎、その先に見えるのは人型の巨大な機械。

 

「何なんだ、アイツは!?」

 

アームスレイブよりも遥かに大きいその姿、背中には羽のような物が付いていた。

炎の中で立ち尽くしたまま動く気配は感じられない。

 

「こちらガルム6、攻撃を仕掛けてきたと思われる敵機を発見、増援を求む」

 

通信機で司令部に情報を送ると装備したサブマシンガンを抱え可能な限り敵に近づこうと移動を始める。

破壊の衝撃でアスファルトは完全に割れており瓦礫により移動しにくい足場、燃える鉄の熱が空気を焼きじわじわと体力を削っていく。

距離を詰めるにつれてその姿は巨大に見えてくる。

 

「新型のアームスレイブか?それにしてはサイズが大きすぎる。増援が来たな」

 

謎の機体を囲むように駆けつけたM6が40㎜ライフルや無反動砲を構えて目標を視認する。

10機以上のM6が武器を突きつけているにも関わらす敵は一向に動こうとはしなかった。

 

「全機、照準完了」

 

「よし、撃て!!!」

 

一斉放射が始まると凄まじい爆音と薬莢が飛び交う。

見る見る内に煙に包まれている敵機、それでも尚動く気配は感じられない。

不審に感じつつも銃撃の手は緩めずに砲撃を続行する。

 

「何で敵は動かないんだ?」

 

「無反動砲セット完了、発射!!」

 

無反動砲を肩に抱えたM6がトリガーを引くと巨大な砲弾が一直線に向かう。

軌道を変える事無く進むと敵機に直撃し大きな爆発が起こる。

 

「やったか!?」

 

「何か、呆気ないな」

 

「敵機破壊完了、これより……」

 

爆発の起こった炎の中から一筋の光が見えた。

次の瞬間にはM6が3機爆発した。

 

「何だ、何が!?」

 

「敵機が行動を始めた!」

 

今まで全く動かなかった敵がものすごい加速でM6に迫る。

そのスピードは時速100㎞以上で移動出来るアームスレイブを遥かに凌駕しており気が付いた時にはすでに目の前に立っていた。

次の瞬間にはパイロットの意識はなくなった。

 

「第2ブロックから通達、現場に向かった15機のM6は全滅。敵は行動を始めておりこちらに向かっております」

 

「全滅だと!?第5小隊は何をやっていた!」

 

こうしている間にもレーダーに映る自軍のアームスレイブが次々に破壊され消えていく。

司令官の焦りは募るばかり、このまま進攻を許しては基地の壊滅にも繋がりかねない。

 

「レールガン、レールガンだ!アレを使うんだ!」

 

「しかしアレの実用にはまだ」

 

「口答えをするな!部隊を集結させて射程範囲内に追い込むんだ!」

 

「了解しました」

 

司令官の指示に従い残っている全ての戦力を総動員させる。

たった1機の敵を誘い込むだけの簡単な作戦でも現場では死に物狂いで行なわれていた。

いや、実際に死者も出ており訓練された兵士でも悲鳴を揚げて銃を手に取り攻撃を続ける。

 

「弾がなくなった、うわぁ!!」

 

「当たっているのに、弾は命中しているのに何で!」

 

「敵機は以前として健在、損傷した様子も見られません。予定通りに作戦は進行しておりますがこのままではぜ」

 

絶える事無く送られてくる通信はパイロットの悲鳴、それだけで現場がどれだけ絶望的な状況なのかが分かる。

基地にある全てのアームスレイブで100機は軽く超えているはずなのに敵に傷1つとして与えられていない。

脅え竦む者、武器の残弾がなくなった者から光る閃光に断ち切られていく。

たとえ逃げても先はなく背中を向けて数秒後にパイロットは絶命する。

甚大な被害を出しながらもそれでも何とか敵をテストの為に設置したレールガンの射程範囲に誘い込んだ。

 

「アレが敵?本当にアームスレイブなのか?」

 

「レールガンの射程範囲内です。ですがこのままでは味方も」

 

「構わん、撃て!!このままやられたいのか!」

 

「カウントを省略、レールガン発射!」

 

膨大な電力が供給されレールガンに装填された砲弾が加速する。

爆音を上げ空気を引き裂き目標に飛んで行く。

何百メートルという距離も一瞬にして詰めると目の前が光に包まれた。

 

「爆発により目標を視認出来ません」

 

「試作品とはいえコレだけの威力があれば生きているはずがない。ふふふははははぁ!!」

 

「映像出ます」

 

「ふん、残念だが跡形もなく消えて……」

 

だが司令官の見ている画面にはその姿は消えてなどいない。

真っ赤に燃える炎の中をゆっくりと歩いてくる。

 

「敵機健在です!」

 

「ば、化物だ……」

 

その言葉を最後に司令塔は光に包まれた。

 

///

 

「う~ん!!退院したし勉強も追いつかないとね」

 

「せっかくの修学旅行もなくなっちゃったしね。でもかなちゃんも相良くんも無事で本当によかった」

 

「マジで死ぬかと思ったわよ」

 

「問題ない。あの程度の事なら日常茶飯事だ」

 

「あんな事が何回もあってたまるか!!!」

 

修学旅行で沖縄に行く予定が行きの飛行機がテロリストにジャックされてしまった。

全員怪我もなく無事に救出されたがそのお陰で旅行は潰れて念の為かなめは数日病院に入院するはめになる。

けれどもそれも終わりいつものように同級生の恭子と宗介と一緒に学校へ歩いて向かう。

教室にたどり着くとクラスメイトがガヤガヤと騒いでいた。

 

「おはよー、何々どうしたの?」

 

「知ってる?今日転校生が来るんだって」

 

「転校生?こんな時期に来るなんて珍しいわね」

 

「イケメンだといいなぁ」

 

「はは……コイツよりまともなら何でもいいわ」

 

かなめは横目でちらりと彼を見るとカバンを席に掛けてすでに座っていた。

見られている事に気が付いた彼だが表情は変わらない。

 

「どうした千鳥」

 

「別に、何でもないわよ」

 

「そうか」

 

そうしていると教室の扉が開かれて担任の神楽坂がやって来た。

しゃべってばかりいた生徒は皆自分の席へ戻り教室は平穏を取り戻した。

教卓に立つ先生の姿はスーツ姿の似合う大人の女性、張りのある声が教室に響く。

 

「は~い、みんな席に付いて。今からホームルームを始めます。その前に突然ではありますが今日からこのクラスに転校生が来ます」

 

転校生のワードを聞いてまた教室がざわめいた。

小さな声でヒソヒソと喋っているつもりでも生徒全員が話しているせいで効果は無かった。

 

「どんな人だろ?イケメンがいいなぁ」

 

「絶対長髪の似合う美少女に決まってる」

 

「ただのいじめられっ子かもよ。こんな時期に来るんだし」

 

各々が思い思いの事を口走るが神楽坂の大声でそれも消し飛んだ。

 

「静かに!では新しいクラスメイトを紹介するから。入ってきて」

 

そう呼びかけると教室の扉が開かれて転校生は現れた。

黒い長袖、長ズボンを着ておりどこからどう見ても男子である。

 

「可愛い女子じゃないの~?」

 

「結構かっこいいじゃん!私タイプかも」

 

「アイツも相良みたいだったりしてな」

 

転校生を見て教室はより一層ざわめいた。

宗介はその様子をじっと観察すると近くの席に居るかなめに話しかけた。

 

「千鳥、アイツは危険だ」

 

「ん、いきなり何を言ってんのよ?」

 

「アイツは恐らく工作員かもしれん、危険だ」

 

「そんな訳ないでしょ。アンタより危険な人なんて居ません」

 

かなめはいつもの事だと軽くあしらった。

 

「それでは自己紹介をお願い出来るかしら?」

 

転校生は無表情のまま真っ直ぐな眼差しで言葉を発した。

 

「ヒイロ・ユイです。よろしく」

 

一言だけ喋るとまた口を閉ざした。

 

(短か!)

 

かなめは心の中で叫んだ。

そう感じたのはかなめだけではなく他の人間もそうだった。

凍りつく空気を何とかしようと神楽坂はもう1度話しかけた。

 

「ヒイロくんはここに来る前はアメリカに居たのよね?」

 

「はい」

 

「え、え~と、前の学校では部活動はやっていたの?」

 

「いいえ」

 

「特技や好きな事はある?共通の趣味があればみんなともすぐに仲良く」

 

「ありません」

 

「……何か質問のある人!」

 

どうにもならないと考えた神楽坂が生徒達に投げやりに繋げた。

けれども他人を寄せ付けない雰囲気を出す転校生に誰も質問をしようとはしない。

風の音が聞こえそうなほど静まり返った空間、相良宗介よりはマシだと神楽坂は無理やり納得した。

 

「そ、それじゃあ千鳥さんの隣の席が空いてるからそこに行ってちょうだい」

 

「わかった」

 

まともに会話が続く事もなくヒイロは黙って指定された席へと歩いて行く。

自分の隣に座るヒイロにかなめは軽く話し掛けてみた。

 

「よろしく、ヒイロくん。わからない事があれば何でも聞いてね」

 

「必要ない、自分で出来る」

 

「うははは、そうなんだ……」

 

乾いた笑い声を出すとそのまま会話は途切れてしまう。

まるで打ち溶け合おうとしない彼の態度にかなめは少し心配になった。

 

///

 

トゥアハー・デ・ダナンの作戦司令部にSRTの隊員が集合させられた。

並べられたパイプイスに座ると隊長が来るまで待つばかり。

数日前にかなめの乗っている飛行機をテロリストから救出する為に大規模な作戦を行なったばかりだ。

今度は何をするんだと、皆が口々に呟いた。

 

「全員集まったな」

 

指揮官であるカリーニンが来ると私語を止め真っ直ぐに彼の方を見る。

彼は手に持ったファイルを軽く見ると全員に聞こえる声で概要を話し始めた。

 

「今回集まって貰ったのは南アメリカ戦線基地についてだ。ここには非公式なルートで大量のレアメタルが流れていると情報があった。作られているのは電磁兵器、我々はこの兵器を破壊する……はずだった」

 

最後の一言に首を傾げる隊員、カリーニンは構わずに続けた。

 

「諸君がテロリストから民間人を救出していたその日、基地は何者かに襲撃された。現在は調査班が向かって情報を集めている。これが現地の映像だ」

 

大型のディスプレイに調査班が撮影してきた映像が流れる。

そこは一面瓦礫の山で元は基地だった面影など全くない。

建造物だけでなくアスファルトまで溶けてなくなっている所もある。

一番目立つのがクレーターのように穴の開いた箇所がある。

 

「見てわかるように基地は完全に壊滅、生存者も居ない」

 

「大部隊による襲撃でしょうか?」

 

「わからん、調査を待つしかない。基地に配備されていたASは全機撃破されていた。残された残骸からブラックボックスを取り出そうにもほとんどの機体はボックスすら残っていない。残骸とすら呼べない状態だ。その中でも数少なく回収出来た物にパイロットの音声が録音されていた。これを聞いてもらい諸君らの意見を聞きたい」

 

カリーニンが喋り終えると言っていた音声が流れ始める。

爆音と銃声が響き渡る中でパイロットの激しい息づかいが聞こえた。

部屋に集まった隊員は物音を立てずにじっと音声を聞いた。

 

「何なんだアイツは!?キムリ隊長もみんなやられちまった。はぁはぁはぁ、とにかく目標地点に……嘘だ、早すぎる!くっ、この!このぉ!!当たっているのに、弾は命中しているのに何で!うわああぁぁぁ!!!」

 

音声は叫び声を最後に途切れた。

SRT隊員のメリッサ・マオは今までの資料を統合して自分の意見を述べる。

 

「この破壊力などを察するに敵は新型のASを投入してきたのでは?」

 

「その線については私も考えた。だが断定は出来ない」

 

「いるじゃねぇか、こんな事が出来るASが1機」

 

カリーニンの返答にマオの部下であるクルツ・ウェーバーは意義を唱えた。

彼は1度そのASと戦闘を経験している。

どんな攻撃も効果がなく、武器を使わなくても攻撃出来る。

 

「あの時に戦った銀色のAS、アイツしかいねぇよ。こんな事が出来るのは」

 

「今は何とも言えん。可能性としては限りなく高いが断定は出来ない。我々はいずれこの襲撃犯とも戦闘になるかもしれん。その為に少ない情報ではあるが諸君らに伝えておいた。話は以上だ」

 

カリーニンはファイルを閉じると部屋から出て行く。

それを確認した下士官も次々にパイプイスから立ち上がり部屋から出て行った。

クルツも立ち上がるとマオに近寄り話を続けた。

 

「あのASはマジでヤバイ。普通の機体じゃ勝てねぇぞ」

 

「アタシは実際に戦ってないからわからないけど。アンタが戦闘になった時はどうしたの?」

 

「あの時は宗介の乗った新型がやってくれたがよ。正直ぎりぎりだったぜ」

 

「根拠はあるの?」

 

「録音された音声に弾は当たってるのにって言ってただろ。あのASは摩訶不思議な装置でどんな攻撃でも防いじまうのさ」

 

「仮にアンタの言うとおりだとして、どうしてあの基地に襲撃を?」

 

「さぁね、そんな事俺が知る訳ないでしょ」

 

「威張るな。となると今ソイツに対抗出来るのはあの新型、アーバレストだけって事ね」

 

ミスリルにはラムダドライバ搭載機は宗介の搭乗するアーバレストしかない。

敵はこの装置を使いこなしているが宗介はかなめの助言もあってやっと使用出来るレベルでしかない。

 

「そうなったらまたかなめちゃんに助けて貰わないとな」

 

「冗談言ってんじゃないよ。ほら、仕事に戻るよ」

 

「へいへい」




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