真・恋姫†有双……になるはずが(仮)   作:生甘蕉

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95話 シティ

 シャンハイ。

 俺たちが生活しているこの、あっぱれ対魔忍世界でも有数の世界都市だった。そのためかトウキョウと同じく異世界魔族に狙われ、ゾンビタウンと化している。

 

「で、どうだったの?」

「興奮した煌一が珍しく強引に、よ」

「マジか?」

 

 ペキンもゾンビタウン化しているので中国――この世界での正式名称忘れた――には2つのゾンビタウンがあるらしい。

 中国政府が他に隠してなければ、だが。

 

「煌一が青カンなんて信じられないわね」

「ええ。そこは煌一だもの。スタッシュから仮設トイレを出して連れ込まれたわ」

 

 俺が干吉にさらわれた時、救出のために嫁さんたちが対魔忍とともに中国に緊急入国、戦闘を行ったことでむこうの政府に借りができ、次のゾンビタウン解放は中国と決まった。

 恋姫出身の嫁さんたちに縁の地なので、異論はない。

 

「ああ、なるほど。あれなら覗かれないよね」

「煌一らしいでしょう」

 

 ゾンビタウンっていえばさ、トウキョウやシャンハイみたいな都会はタウンじゃなくてシティじゃね?

 いや、今さらだけどさ。

 

「ねえ、そこまでして見せたくないもんなの?」

 

 ……俺は現在、シリアス思考中なんです!

 って言っても無駄ですか。そうですか。そうですね。

 俺にはシリアスなんて無理ですよね。

「当たり前でしょ。ここでの普段の姿は子供(これ)なんだから。もしも本当の姿が見られたら、華琳が浮気してるってことにされちゃうじゃないか! いや、万が一にもあんなとこ他人に見せるつもりなんてないけどさ!」

「そのままですればよかったじゃない。試したんでしょ? 2点同時の荷重攻撃。余計に小さい方がむいているでしょ」

 なにその1人ユニゾン。俺は汎用人型決戦兵器じゃないっての。使徒だよ、使徒。どっちかっていうと倒される方だよ。

 ……むむ。小さい姿の方が主砲も小さくなっているから同時に使っても華琳の負担も小さかったか。

 でもさ、両方使ったのもばれているのね……。

 

「そっか。ちっちゃい方なら見られても平気だよねぇ」

「平気じゃないっ! 見せてたまるか。だから仮設トイレ使ったの!」

「そうね。あれなら覗かれる心配はないわね。防音もしっかりしてるし」

 覗きや盗撮防止だけでなく、重装備のやつでも使えるように中のスペースもそれなりに広いのだ。自動で消臭、殺菌、当然温水洗浄付き。さらには腸洗浄まで可能。そりゃうちの開発部のヒット商品にもなるよね。

 

「最初からそのつもりの設計だったのではないかしら? どうせだったら、仮設ベッドルームがほしいわね。もちろんバスルーム付属で」

「それもう仮設住宅だよね? 持ち運べる住居なんて劇場版青狸の定番アイテムだよね? それだったら拠点か本拠地に戻ればいいよね? ……じゃなくて! 雪蓮! 孫策がシャンハイに現れたっていうのに、気になるのはそれなの?」

 対魔忍からシャンハイに孫策が現れたとの情報が入った。

 校庭でキャンプ中だったがここではまずい、と急いで屋敷に帰宅。詳しい話はこれからだったのに、なぜか話題は昨夜の華琳とのプレイになっていた。

 

「そんなの今さらよ。前にも話したでしょ」

「話したって」

「剣を頼んだじゃない」

 たしかに雪蓮たちとの初夜で虎錠刀頼まれたけどさあ。

 勘ってやつだろうか。雪蓮は確信していたのかもしれない。だから動揺が見れないのかね。

 

「そんなちっちぇのに、本当の煌一の両方使うなんてすっからまだ辛いんだろ?」

「ふっ。悔しいのね梓。煌一の同時の初めてが奪われて」

「ちっ。油断してた……」

 華琳が鼻で笑い、梓は舌打ちする。

 いや、そんなに悔しがるほどのもんじゃないと思うんですが。

 

「や、やっぱりそれって両方使うってことよね、前と後ろで……」

 詠美ちゃんまで。

 昨日のメタルおしから、今日はムッツ……そういうことに興味があるモードなのね。

 

「そんなことをするなんて信じられないわね」

 いやいや、ゆきかぜちゃん、対魔忍シリーズだとよくやっていたような……。

 

「ずるい! いくら嫁レンジャーだからって。初夜がまだの人だって多いんだから!」

「そうです! 順番は守っていただきたい」

 頬を膨らませて抗議するシャオちゃんに愛紗が追随。さらには春蘭と桂花が今にも噛み付きそうな表情でこっちを睨んでいるし。

 

「昨日は真初夜の予定がなかったのだから問題はないはずよ」

「屁理屈を!」

 むう。愛紗がこんなに怒っているってことは少しは俺との初夜を楽しみにしてくれていると思っていいんだろうか? ……委員長気質で真面目な愛紗だから、学校行事っぽくなってしまったイベント中にあんなことをしたのを怒っているだけかも。

 

「機を見るに敏、ですか。それならばわたしたちも……」

 朱里ちゃん? 小声で呟いたそれをひろったのは俺だけではなかった。

「朱里の言うとおりなのだ! ちゃんすがあったら鈴々もお兄ちゃんとにゃんにゃんするのだ!」

「鈴々!」

 愛紗が驚き、そのすぐ後に怖い顔になって鈴々ちゃんを睨むも、ロリ武将は気にしないで続ける。

 

「鈴々はお兄ちゃんならいつだっておっけーの3連呼なのだ!」

「ボクだって!」

 鈴々ちゃんに張り合うように季衣ちゃんまでもが名乗りを上げる。それでさらに春蘭が俺を睨むんだから勘弁してほしい。

 

「主はもてますなあ」

「だと嬉しいんだけどね……」

 エッチなことに興味津々なお年頃なだけかもしれない。楽しそうに笑う星に苦笑しながらそう返すしかできない。

 

「お前ら落ち着くのだ! 煌一にはちゃんと順番を守らせるから安心しろ!」

 混乱を沈めてくれたのはクランだった。いっしょになって騒ぎそうかとも思ったが初夜を済ませていて余裕があるのだろう。

「そうだぞ。煌一はデリケートだからな。気になることが残っていたら初夜は後回しにされるぞ」

 レーティア、俺ってそんなイメージだったの? デリケートって……神経質って言いたいんじゃないよね?

 みんながそれに納得しちゃったのか、静かになった。でもなんか俺に注目している。なに? なんか言わなきゃいけないの?

 

「え、えっと……シャンハイに出たっていう孫策って性別はどっちだったの?」

 なぜかみんなからため息。正解はなんだったのさ?

 やっぱり露骨に誤魔化しすぎたか。いやでもさ、本来はこれが本題だったよね?

 

「私は女に決まってるじゃない」

「いや、こっちでは男だったはずだ。煌一が知りたいのはどの孫策が現れた、ということだろう」

 呆れ顔の雪蓮に冥琳が補足してくれた。

 そう。俺が気になったのはそこ。もしかしたらサイサリスな孫策が出たかもしれないじゃないか。

 

「シャンハイに現れたのは雪蓮、お前そっくりの孫策らしい」

 教えてくれるのは紫。中国にいる対魔忍からの情報を受け取ったのも彼女だ。

 無印恋姫の孫策だろうか? 雪蓮の勘が当たったか?

「だけどさ、シャンハイもゾンビタウンなんだろ? まさかゾンビなのか?」

 梓が疑問をぶつける。

 無印雪蓮はゲーム開始前にすでに故人となっている。可能性はないわけじゃないだろうけど。

 

「ゾンビタウン解放の下調べとしてシャンハイに潜入した対魔忍たちは、地形や魔族の情報収集、むこうでの聖水や結界符の効果の確認を行っていた」

 ビニフォンをテレビに繋いで数枚の画像を表示させる紫。メールで送られてきたのかな。きっと暗号化されてたり、別の画像に偽装されてたりするのだろう。

「そして、ゾンビたちと戦っている1人の女性を発見した」

 切り替わった画面には雪蓮と瓜二つの女性が写っていた。

「雪蓮さま……」

 大喬ちゃんをはじめとして、ほとんどみんなが画面と雪蓮を見比べる。

 わからん。だいたい、無印の雪蓮ってほとんど画像がないんだし。

 

「彼女は名乗りを上げながらゾンビを切り伏せ、そして消えた」

「消えた?」

「目撃した者の証言ではそうらしい。付近を捜索したが彼女は見つからなかった」

 んー、まさかゾンビに負けてカードになったってわけじゃないだろう。

 消えたってことはポータルだろうか?

 

「名乗ったということは知性があるわけですから、最低でもゾンビではないでしょう」

 雛里ちゃんの推察に軍師たちが頷く。

「まあどうせ、干吉たちのしわざだろう。問題は理由か」

「誘っているのでは? わざと対魔忍に姿を見せた可能性が高いです」

 冥琳と亞莎ちゃんの意見に俺も賛成だ。無印華琳を使って俺をさらった干吉、今度はなにをたくらんでいる?

 

「それが困ったことに目撃したのは、対魔忍だけではない。対魔忍の監視で現地の軍が付き添っていたのだ。まあ、足手まといだったらしいが」

 監視って。……こっちの装備とかを調べたかったのかな。たぶん協力っていってたのだろうね。

 

「ゾンビを剣で倒す孫策を中国政府は自国の使徒だと発表した」

「対魔忍とはいえ、あっさり撮影されてるってことは隠形使ってないんでしょ? 使徒じゃないと思うけど」

「それはまだ不明だが、中国の、というのもあやしい。対魔忍たちはシャンハイからの退去を求められた」

 画像はそれでおわりなのか、ビニフォンをしまいながらの紫。

 退去、ねえ。自分たち以外が孫策に会ってほしくないのがあからさまだな。

 発表だけ先にしちゃって、これからなんとかして孫策と接触、説得して取り込むつもりなのだろう。

 

「シャンハイを無人機が飛び回って孫策を探しているらしい」

「対魔忍がまだ残っているの?」

「詳しいことは言えん」

 さすが忍者。それとも監視衛星で無人機ぐらいはわかるのかな?

 

「兵が直接調査をしないということは、ゾンビ以外にもいるのね」

 ゾンビには通常攻撃が通用するので、軍人さんならなんとか対処できる。数が多くて大変なんだけどね。

 無人機による偵察ってことは、攻撃が通用しない存在がいるという証拠。つまり、いるのだ。異世界魔族が。

 中国ってことはキョンシーだろうか? でも、ニホンに出たのは首なし騎士(デュラハン)泣き女(バンシー)だったから、関係ないか。

 

「すぐにでも調査に行きたいとこだけど、そうすると面倒なことになりそうだよな」

「隠形を使うにしても、ゾンビたちを倒したらこちらの侵入はばれますねー」

 風の言うとおりだ。俺たちの姿はカメラにうつらなくても、ゾンビがいきなりやられたら、察知されてしまう。

 

「後回しにするしかなかろう。どうせ、聖鐘(ホーリーベル)もまだできておらんしの」

 光姫ちゃんはそう言うけど、せめてどんな異世界魔族がいるかぐらいは知りたいよ。

「拠点やマーキングもないし、仕方ないか」

「がしゃどくろのようにゾンビから進化した強敵もいるかもしれないわね。戦力の強化をはかりましょう」

 がしゃどくろはニホンのって感じだったけど、むこうだと中国妖怪に進化するのか? キョンシーに進化されたらゾンビやスケルトンより強そうだ。スピードもあるし、飛んだりできるんだよね。

 

「今までとあんまりかわらないか。俺は今日も開発部行ってEX-ギアの開発を急いだ方がよさそうかな」

「それなのだがな煌一。サウンドエナジーシステムも内蔵できないか?」

「サウンドエナジーシステムを?」

「うむ。デュラハン、リッチは聖鐘のおかげでカードにもならず、退治できた可能性が高いがバンシーはカードになって消えている。また現れるかもしれん。対策を怠ってはならんのだ」

 そうだった。バンシーはまた戦うことになるかもしれないんだった。あいつらの叫び対策は絶対に必要だ。

 ……あと似非アメリカン吸血鬼もいたな。あれ以来見てないけど、カードから復活させてもらえないんだろうか?

 

「わかった。開発部にはメールして、まずは成現(リアライズ)用に作品を作ることにするよ」

 EX-ギアのTOY、成現しちゃったのは痛かったな。他に持ってないから作るのけっこう手間だ。ベースはなんにしようかな?

 

「ふむ。さうんどえくすぎあ、だな」

「だから略称に困る名前は却下だって」

 俺の大好きなガンダムにならってEX-Sギアにでもしようかな。

 

 


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