真・恋姫†有双……になるはずが(仮)   作:生甘蕉

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89話 双頭竜

「ナニがどうなってこんなことに……」

 華琳の改造コード(ねがい)によって新たに手に入れたスキル『双頭竜』を使用した結果、俺の身体がとんでもないことになってしまった。

 例えていうなら、股間の主砲が2門に増加。……バスターやサテライトじゃないんだからさあ。

 なお、弾数は2のまま。ある意味、逆東方定助だ。

 

「兄ちゃんのお●ん●んが増えちゃった!」

「前と形もちがうのだ!」

 そりゃやっと火星を脱出したからね。あとロリたちよ、せっかくボカしてるんだからはっきりと言わないでくれ。俺は過酷な現実を直視したくないんだから。

 

「異世界の華琳(わたし)に聞いたのと同じ……のはずよね? さすがにこれは写真を見せてもらってないのだけれど」

「これであってるの!?」

 マジですか。

 成現(リアライズ)の失敗や双頭竜の誤作動じゃなくて、これが華琳の望んだカタチ?

 

「ええ。それが双頭竜よ。異世界の私の夫の最強の武器」

「異世界の俺なにやってるの!?」

 これが最強の武器って……いや待て。恋姫†無双はエロゲで、主人公である一刀君はち●こさんって愛称でファンに親しまれていたから、アプローチとしては間違ってないのか? 異世界の華琳を妻にできたのもこれのおかげかもしれないのか。

 ……でもなあ、いくらなんでもこれはないでしょ! 異世界の華琳の夫って、本当に平行世界の俺? 別人なのかもしれない。

 

「……あ、よかった。OFFにできるみたいだ」

 ビニフォンで俺の状態を確認し、双頭竜スキルをOFFにすると主砲が1門に戻ってくれた。

 本当によかった。これでトイレで苦労しないで済みそうだ。

「どうやらアクティブスキルのようだな。MP消費で増えるらしい。まあ、もう増やすこともないだろうけど」

「駄目よ。ずっと使っていなさい」

「なんでさ!」

 華琳の命令に思わず即座に反応してしまった。そういやこの口癖の使い手も二刀流だったっけ。あんまり関係ないけどさ。

 ああ、アーチャーは撮影が忙しいらしくてトウキョウ解放作戦以来会ってないんだよな。話もしたいのにな。

 

「……双頭竜のままなら、私も煌一の初めてに参加できる」

「もしかして、そのために?」

 お、華琳の頬が赤くなった。

 本当にそんな理由なんだろうか。他にもっと別な理由が……なさそう。俺の主砲を2門にする必要性が感じられることなんてない。

 

「煌一がいけないのよ。私に断りもなく梓に予約なんかさせて!」

「あ、うん。ごめんなさい」

 俺が悪いんだろうか? よくわからないけど、いつもの癖ですぐさま謝ってしまった。

「わかればいいのよ。さあ、早く双頭竜を使いなさい」

「ええっ? し、使用する時に使用すればいいんじゃないかな?」

 普段から使っていると不便だよね、これ。

 スキルの使用を確認されるのを避けるために下着や服を着る。ずっと全裸でいたら露出性癖に目覚めそうだったし。

 

「……煌一、そのスキルにレベルはあるのだろう?」

 冥琳に問われてビニフォンを見る。

 スキルもだいぶ増えたけど、思念操作の検索によりすぐに目的の箇所にいけるのは便利だ。

「うん。レベルは1。さっき試した他のスキルも1レベルだ」

「ふむ。ならばレベルを上げれば効果も変わるのではないか?」

 なるほど。その可能性もあるのか。

 スキルにはレベルがあって、レベルが上がれば強く、使いやすくなるもんな。スタッシュだったら収納量が増えるし、照明魔法だったら光球が増える。このスキルだったら……。

 

「ま、まさか、さらに本数が増えるのか?」

 それはちょっと、いやかなり勘弁してほしい。

「いや、それでは『双』頭竜ではないだろう。私の予想では『それ』だけではなく、煌一全体が2つになるのではないか?」

「分身? ダブルドラゴンだと最後仲間割れしそうなんだけど」

 って、2人協力プレイなはずなのにラスボス倒したら対戦プレイになる古いゲームなんて、ここにいる誰も知るわけないか。

 けど、分身ねえ。本当に使えるようになるならいいかもしれない。でも、全身が増えるんなら双『頭』竜じゃないよね? そもそも竜でもないし。

 

「煌一さんが増えるなら大賛成!」

「桃香さま?」

「愛紗ちゃん、順番が回ってくるのが早くなるんだよ!」

 困惑した愛紗の手をとって桃香がはしゃいでいる。今にもくるくると回りだしそうだ。

 

「冥琳がそれの使用を勧めるのはそれだけではあるまい。策殿といっしょに楽しみたいのじゃろう」

「祭殿!」

「図星のようじゃな」

 今度は冥琳が赤くなってしまった。かなりレアな表情だがこれもいいな。

 くっくっくとロリ祭が楽しそうに笑っている。

 

「なあ秋蘭、煌一の双頭竜とは結局、なんなのだ? 煌一のが増えるのはわかったのだが、それになんの意味がある?」

「姉者、つまりだな……あれを使えば煌一ごしに姉者と私が繋がれるのだ」

 俺ごしって、その説明だとなんか俺がフィルターみたいなんですが。

「なんと! ……も、もしや、華琳さまとも繋がれるのか?」

「無論だ」

 秋蘭のその説明を聞いていたのか、稟が鼻血を噴き出した。見事なアーチだ。

「久しぶりだなオイ」

「興奮抑制のスキルを使うことを忘れるほどに欲情しちゃったんですねー」

 宝譿に返事しつつ稟の首をとんとんする風。

 血の汚れって落ちにくいから早く洗濯と掃除したい。

 

 桂花が俺を睨んでいる。

「華琳もいっしょに初夜をすることになって怒っているのはわかるけどさ、そんなに怒らないでよ」

「男なんかに華琳さまの初めてを奪われるなんて……そんな異形の力を使ってまで!」

 異形って……たしかにそうだけど。できれば俺も使いたくない。ここは桂花に賛同すれば使わないですむかも?

 

「やっぱり、気持ち悪いよね?」

「当たり前よ! いくらそれを使えば華琳さまと……ひ、卑怯よ!」

 あれ? 気持ち悪いじゃなくて、卑怯ってどういう意味さ。

「まあ、気持ちはわかるぜ」

「まったくなのです」

 猪々子とねねちゃんがうんうんと頷いていた。

 ええと、男は嫌だけど華琳とは繋がりたいってとこなんだろうか?

 

「とにかく、普段から使って熟練度を貯めておいて下さいね。MPは足りてるんでしょうから」

「せやな。ばっちし鍛えておかんかい」

 七乃と霞までもか。

 さっき成現後に時間延長で使い切ったけど、最大値が天文学的な数値だからMPはすごい勢いで回復中だけど。ずっと使っていても、回復の方が早いだろう。

 

 むう、やはり使用を封印することはできないっぽい。

 みんなが嫌がらないんなら、使うしかなさそうだ。

「わかったよ。このスキルも使うから。……確認はもういいよね、俺ちょっと出かけてくるから」

「お供します」

 凪たち三羽烏が護衛にと立ち上がるが、それは困る。できれば1人で行きたいのだ。

 

「い、いや1人でいいよ。ほらもう遅いしさ」

「ならばなおのこと護衛が必要です」

「そりゃ昨日は守りきれんかったけど、今度はきっちり隊長を護衛するで!」

「まかせてほしいの!」

 いつもと違い、真桜と沙和までもがやる気を見せている。昨日の護衛中に目の前で俺を干吉に襲われ、拉致されたことを気にしているのか。

 

「3人だけでは不安なら、私もついていきましょう」

「影から護衛するのです!」

 愛紗と明命まで立候補。このままだともっと増えそうで怖い。そんなに連れていきたくないんだってば。

 

「あのね、ちょっと買い物に行ってくるだけだからさ、俺1人でいいんだって」

「なんだよ煌一ぃ、1人で行きたいってエロ本でも買いにいくつもりかあ。そんならオレがいっしょに行ってやらあ」

「ご、ご禁制の品に手を出すつもりですか、煌一さん! それはいけませんよ!」

 朱金の勘繰りで、俺に十手を向ける真留。

 

「はいっ、本屋さんにいくのでしたら私もご一緒します」

 興奮はスキルで抑えられるようになってはいるが、図書館や本屋に行くと帰ってこなくなるため、1人で行くことを禁じられている穏が便乗しようとし。

「そ、そうよね。私も行きます。エッチな本を買うのでなければいいでしょう?」

「わ、わたしもお供させてください!」

「あわわわ、朱里ちゃんが気合を入れています」

 口ではそう言いながらも俺がエロ本を買うんだと確信してるだろう詠美ちゃんと朱里ちゃんまでもが同行すると言い出す。

 

「だ、だからね、エロ本なんて買わないってば!」

「あの、お買い物なら私がかわりに行ってきます」

「い、いや、女の子に買いに行かせるようなもんじゃないから」

「ちょっと! 月になにを買わせるつもりよ?」

 月ちゃんをかばうようにして詠が前に出てきた。

 こうなっては、正直に言うしかないか。すごく恥ずかしいけど。

 

「……俺が買いに行こうとしてるのはね、避妊具なんだ。だから、かわりに買ってきてもらうわけにはいかないでしょ?」

「ひにん……へぅ」

 月ちゃんが真っ赤になっちゃった。たぶん俺の顔も同じくらいに赤いはずだ。エロ本を買う方が恥ずかしくない。だって慣れてるからね。

 他の娘たちも静かになって赤い顔で俺から視線をそらす。

 

「あ、あのね、今夜の初夜のことを期待して準備万端にしようってわけじゃなくて、いや期待はしてるんだけどそうじゃなくてね、本数増えて使うことになるから倍は買ってこないといけないわけでね、でもどれぐらい使うかわからなくて、できれば自動販売機があればいいんだけどこの島では見たことがなくて店舗で購入しなきゃいけないから俺1人じゃないともっと恥ずかし……」

「落ち着きなさい」

 混乱と照れ隠しのために長々と喋る俺を華琳が遮った。

 

「なるほど。私たちを妊娠させたくないわけね?」

「俺もみんなの子供がいらないってわけじゃないよ。そうじゃないけど、学生のうちに妊娠させるわけにはいかないでしょ。学校に通うこともできなくなるし、子育ても大変だ。世間の目もあるし」

「こーんなに奥さんがいて、今さら世間の目とか言う?」

 ぐぁ、なんという的確な雪蓮のツッコミ。

 でも、せめて卒業してからじゃないと妊娠はまずいと思うのも俺の本心だ。

 この島以外に住居がないと育児もできないだろうしさ。せめて4面の本拠地がアパートじゃなくなれば……いや、あそこだと子供たちはファミリアにならないとサイコロ世界から出れない。それはかわいそうだ。

 

「わかったわ。煌一は私たちが妊娠しないように避妊具がほしい、と。ふふっ。その必要はないわ」

「え? ……まさかまたおあずけなの?」

 がっくりと膝をつく。ここまで期待させておいてそりゃないよ。

 俺はいつになったら魔法使いを卒業できるんだ!

 

「勘違いして泣かない。そんなことをしたら梓も可哀想でしょう?」

「あ、あたしは……」

 赤面しながらもごもごと小声で呟く梓。そういえば、エロ本の時ならいつもなら騒いだだろうに珍しくおとなしかった。梓も今夜のことで頭がいっぱいだったのかもしれない。

 

「煌一、マニュアルをよく読んでいないわね?」

「マニュアルって、A&Aの?」

「そう。あとで確認してもらうとして、結論からいえば私たちは妊娠できない」

 妊娠できない?

 A&Aのマニュアルにそれが書いてある?

 

「そんな……。煌一さんの子が産めない?」

「わたし、煌一さんの赤ちゃんほしいよぅ……」

 蓮華や桃香たちが悲しそうな表情になっている。

 俺だって、みんなの赤ちゃんはほしい。なんとかならないのだろうか?

 

「読んでない者も多そうだから詳しい説明がいるわね。……使徒やファミリアは修行のために子供が作れないのよ」

 すちゃっと眼鏡をかけてヨーコが説明を始める。

「子供ができたりなんかしたら修行どころではないでしょ? それが理由らしいわ」

「華琳さまの子を孕むことができないだと! ふぁみりあなんぞになるのではなかった……」

 いや春蘭、ファミリアにならなくてもそれは無理だから。

 

「最後まで聞きなさい。修行が終わればその制限は解除される。つまり、担当の世界の救済が完了すれば私たちは子供が産めるようになるわ」

「そうか。なら、一安心だな」

「ええ。あの世界を攻略すればいいのよ」

 攻略って、世界征服でもするつもりだろうか?

 ……拠点から脱出するのが先だよな。俺担当のとこは。

 

「だから煌一、避妊具はいらないわ。よかったわね」

「う、うん」

 どうしよう、学生のうちは担当の世界の救済なんてできそうにない気がしてきた。主に俺の性的な理由で。

 

 

 

 初夜は素晴らしかった。

 避妊具といっしょに探すつもりだったハウツー本が買えなくて、無茶苦茶に緊張してしまったが。

 場所だけは何度も視認してるし指先で確認したこともあったため、なんとか失敗せずに最後までできた。これで俺も魔法使い廃業である!

 

 華琳と梓も可愛くて、気持ちよくて、泣かせてしまって。やはり痛かったらしい。

「なのに煌一ときたら、何度も何度も求めてきて」

「壊れるんじゃないかって思ったよ」

 ごめんなさい。大人に戻ったせいか、以前よりも精力が盛んになっているみたいなんです。……一応、抑えたつもりだったんですが。

 

「次からの娘も1人では駄目ね」

「3人か4人は必要なんじゃないか?」

 そこまで?

 俺をはさんで責めたてる華琳と梓。事後の処理(ふきふき)をおえ、今は左右に腕枕の状態だ。小さかった頃と違って腕枕も安定するね。

 

「明日はクラン姉さんとヨーコね」

「レーティアもいっしょの方がいいんじゃないか?」

「彼女は美羽とでしょう。そうなると七乃もくるでしょうね」

 俺のいるとこで順番を決めないでほしい。俺が口を出すとろくなことにならないんだし。「閨の場で他の女のことを口にするのはマナー違反よ」っても怒られるしさ。

 

 なんだか最中よりも事後の方が疲れるような。

 賢者な俺は黙って眠ることにした。

 

 

「ずいぶんとお盛んだったわね」

 ……夢の中でも休憩はできないらしい。

 出迎えたのは無印華琳。そう、俺といっしょに干吉に閉じ込められていた彼女だ。

 

 原因はたぶんわかっている。

 初夜の前にSR曹操のカードを華琳から受け取って部屋に置いていたんだっけ。

 もしかして、見られていたのだろうか。

 

「私のはじめてはどうだったかしら?」

 もしかしなくても、しっかり見られていたらしい。

 どうしよう、ものすごくいたたまれないんですが。

 

 


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