真・恋姫†有双……になるはずが(仮)   作:生甘蕉

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55話 部屋割り

 掃除の終わった部屋を占領させてもらい、EP注入を行った。

 まずは加護(のろい)封じの眼鏡の作成。

 素材はそれっぽい眼鏡を昨日、梓が確保していてくれた。

 籠める想いは前回のと同じ。それに、俺の意思以外では外れない、破壊不能、の2つをプラスする。これでもう、さっきのような失態は起きないはずだ。

 

「ふう」

 EP注入をおえてすぐに成現(リアライズ)。デザインはほとんど同じながら、サイズ調整機能のついたニュー眼鏡を装着して大きく息を吐いた。

 やっと人心地がついた気がする。

 屋敷から出てからはずっと眼鏡が外れないように気を使っていたからね。

 

 EPもかなり消耗してるし、次の作業が終わったら少し寝させてもらおうかな?

 チョーカーを作ればもう、すぐに必要なアイテムはないはずだし。

 いや、機能限定版のチョーカーは既に用意してあるけどさ、嫁さんとなったからには『貞操のチョーカー』じゃないといけない。

 今度は異性以外でも、攻撃対象にした方がいいかも。俺の嫁さん同士なら除外にしておけば問題はないだろう。

 

 完成! ……疲れた。

 以前に作ったのの改良なのと若返ってるおかげかネガティブゾーンへの突入はなかったけど、かなり精神的に疲労している。

 徹夜明けなせいもあってやたらに眠い。

 少しだけ休憩しよう。

 

 

「そろそろ起きな」

 揺さぶられて目が覚めた。

 窓の外は真っ暗。ほんの少しだけ仮眠をとるつもりがしっかり寝てしまったらしい。

「おはよ」

「寝ぼけてないでしゃっきりしな。晩飯できてるよ」

 もうそんな時間か。

 みんな帰ってきてるのかな?

 

「……こんな部屋あったっけ?」

 案内された部屋は大きな卓袱台(ローテーブル)がいくつもならんだ大きな部屋でさながら宴会場といった感じだ。

 そこに全員――俺の嫁さんが全員と一部の部外者、が勢ぞろいしていた。

 もしかして俺が寝てる間に改装したんだろうか?

 

「やっと起きたわね」

「俺が起きるの、待っててくれたの?」

 テーブルの上には中華と思わしき料理たち。どれも美味そうだ。

 だがそれには誰も手をつけていなかった。

「家長不在で食事を始めるわけにもいくまいよ」

「うむ。はやく席につくがよい」

 十兵衛と光姫ちゃんもいるのか。

 見れば、子住姉妹と真留ちゃんもいる。

 

「料理や買い物を手伝ってもらったからね」

 なるほど。

 子住姉妹は慣れないキッチンや食材の説明、そしてこの人数分の料理を手伝ってくれたらしい。

 真留ちゃんの方は掃除が一段落して、買い物にでかけた子たちが数名迷子になってしまったので、連れてきてくれたそうだ。

「これも仕事なのです」

「変な街並みだから迷ったのだ」

 ごめん鈴々ちゃん、先にビニフォンを渡しておけばよかったね。

 

「待たせちゃってごめんね。それじゃ、ご飯にしよう。……いただきます」

 みんなの視線が俺に集まってかなり緊張したけど、なんとか開始の合図ができた。

 ……まさか、これを毎日やるんじゃないよね?

 

「酒はないんか?」

「この国じゃ未成年者はお酒飲んじゃ駄目なんだ。で、君たちも未成年ってことになっているから」

 俺の返答に絶望的な表情を見せる数名の美少女たち。

「それは本当か?」

「なんとつまらん国じゃ」

「この国はってことはさ、あっちに行けば飲めるってことよね?」

 あっちってサイコロ世界のことだろうな。

「雪蓮、あっちにはファミリアにならないともう行けないよ」

 人形に戻るつもりはないでしょ?

「なら、私はふぁみりあになるわ!」

「私もなりましょうぞ」

「ウチもや!」

 酒飲みが次々と契約すると宣言する。

 そんなことで決めないでほしい。

 

「それは明日聞くって言ったでしょ、もっとよく考えて。学園卒業すれば飲めるようになるんだしさ」

「儂は今、飲みたいんじゃ!」

 桔梗と祭は特に我慢してよ。若くなったんだからさ。

「未成年者の飲酒は危険なんです。身体によくないんですよ」

 真面目な真留ちゃんが黙っていられずに発言した。

 

「身体といえば煌一殿、私の体質が治ってないのですが……」

「わたしもです~」

「えっ?」

 稟と穏が泣きそうな顔でこっちを睨んでいる。

 期待していたのに、ってそんなとこだろうか。

 

「でも、ちゃんと改変……あっ!」

 そうだった。彼女たちの体質改善にはMPを消費するように設定していた。それはつまり……。

「ごめん、稟、穏、それに詠。君たちの体質改善はファミリアになってもらわないと使えない」

 俺は頭を下げて謝った。

 元から魔力を使ったことのある者ならともかく、そうでないのならMPを使うにはファミリアじゃないといけないはずだ。

 なんでこんな簡単なことに気づかなかったんだろう……。

 セットしておいた熟女や南蛮への変身も同様にファミリアにならないと無理なわけで。

 

「そうですか。それが本当なら問題はありませんね」

「そうですね~。ふふふっ」

 稟と穏はほっとした表情になって食事を再開。

 詠は微妙な表情のままだ。

「詠ちゃん。あとでお話しようね」

「月? ……うん」

 月ちゃんがフォローしてくれた。

 可愛いな月ちゃん。彼女も俺の嫁になってくれたんだよね。

 

「おかわり」

「ボクも!」

「おかわりなのだ!」

 食欲三魔神と公式でいわれている恋、季衣ちゃん、鈴々ちゃんの食欲は凄まじい。

 茶碗もドンブリなんだけど、すぐに空にしておかわりを要求している。

「……吉音が3人いるようだのう」

 光姫ちゃんの呟きが聞こえた。

 まだ会ったことはないけど、あっぱれのメインヒロインの1人、徳河吉音(とくがわよしね)も大食いキャラだったっけ。

 たぶんルート的に彼女か詠美ちゃんのどっちかが、十兵衛の弟で主人公の秋月八雲(あきづきやくも)と恋仲になってるはずなんだけど、どっちかな?

 

「それで、部屋割りは決まったの?」

「ええ。魏、蜀、呉で別れて屋敷を使用することにするわ」

 まあ、思った通りの分割だな。ほとんど萌将伝と同じか。

 ……あれ? 麗羽たちは蜀屋敷でいいとして……。

「美羽ちゃんと七乃はどこに住むの?」

「もちろん、うちよ!」

「そっ、孫策!?」

 雪蓮の宣言に美羽ちゃんがガタガタブルブルと震えだした。

 

「どうやらお前に怯えているようだな」

「うん。冥琳の言う通り、怯えているみたいだから呉屋敷は無理なんじゃない? 呉の娘もまだ、わだかまりはあるだろうし」

 美羽ちゃんの下で苦労していたのだから当然だろう。で、美羽ちゃんは呉が独立した際の雪蓮の脅しがトラウマになっている、と。

「やーねぇ。あんな昔のことで」

 された側は忘れないってのは、自分もよくわかっているでしょうに。

「雪蓮さま、そんな女がいなくてもお姉ちゃんとあたしがいますっ!」

 立ち上がって雪蓮を止めようとする小喬ちゃん。隣で大喬ちゃんが慌てている。

「大喬ちゃんたちも可愛いけど、美羽も可愛いのよねえ」

 む。ロリ双子にハチミツ姫か。もしかして雪蓮て俺と同じ趣味(ロリコン)

 

「そんなに怯えているんだ。彼女はうちで預かろう」

「レーティア?」

 予想外のところから保護案が。

「少し話したのだがな、美羽と七乃を見ていると、なんとなく私とゲッベルスを思い出すんだ」

「……なるほど」

 たしかにゲッベルスは七乃に似ているかもしれない。

 優秀な美羽ちゃんと毒のない七乃、それがレーティアとゲッベルスか。

 

「髪型も似てるかも。先っちょの方でくるくるにしてるし。あ、2人とも歌が上手でハチミツ好きって共通点もあるか。うん。姉妹で通用するんじゃない?」

「むむ……言われて見れば妾に通じる美しさがあるかもしれんのう」

 ハチミツ好きと聞いたせいか美羽ちゃんの好感度は高いらしい。

「お嬢さまの方が美幼女ですよぅ」

「それはそうなのじゃ! 決めたぞ、妾はれーてぃあのところで世話になるのじゃ!」

 そりゃ、幼女って点では美羽ちゃんの方が上でしょ。

 レーティアといっしょってことは……。

 

「魏屋敷でいいのかな?」

「ええ。五嫁大将軍は魏屋敷よ。もちろん煌一も」

 ……その名称まだ健在だったのか。

「ええーっ! ご主人様はうちにもきてほしいよ!」

「そうね。美羽は諦めたんだから、うちもそれぐらいはねえ」

 蜀と呉の君主が揃って俺をほしがっている。

 あれ? もしかしてモテ期到来? んなわきゃないか。

 

「あんな、私らは雪蓮さんとこで暮らすことにしたわ」

「智子? ……もしかして嫁さん大増加怒ってる?」

「……そりゃま、ちいとばかしそれもある。けど、だけやのうて人数の問題や。屋敷の大きさはだいたい同じやから、人数も多少は調整した方がバランスええやろ?」

 そうか。

 呉屋敷だけが人数少なくなるもんなあ。

 でもやっぱり寂しい……。隣とはいえ、娘とはいっしょに暮らしたい。

 

「そう落ち込んだ顔せんの。直通の通路も完成しとるんやし」

「……聞いてないけど」

 いつの間にそんなもんまで……。

 結局は1つの屋敷で暮らしてるのと変わらないんじゃないの?

 

 

「そうだ、チョーカー完成したからみんなに渡さないと」

 食後、部屋にとりに戻ろうとしたところを華琳に止められた。

「待ちなさい。精神防壁が先よ」

「精神防壁?」

「ええ。これの効果で精神攻撃は弱くなるでしょう?」

 自分の首のチョーカーを指差す華琳。

 たしかに状態異常へのレジストや各種防御強化を付加しているけど。

 

「煌一はもう、精神攻撃の魔法は覚えているわね?」

「うん。ワルテナからくらった時にラーニングしている。レベルは1」

 精神防壁のスキルを入手するためにワルテナから受けたんだけど、あれは辛かったなあ。

 病院送りにされたし。

「ならばチョーカーを渡す前に皆に使いなさい」

「ええっ。……そりゃ、精神防壁は必要だろうけど、ファミリアになってからでも」

「またワルテナに頼むつもり?」

 うっ。たしかに彼女に借りは作りたくない。ワルテナの精神攻撃はしんどいから、嫁さんたちに受けてもらうのも気が引ける。

 

「チョーカーを装備した後では、レベルの低い精神攻撃は無効化される可能性があるでしょう」

 もしかして、俺だけが病院送りにされたのって、チョーカーが嫁さんたちを守ってくれたからなんだろうか。

「わかった。璃々ちゃんにはかけないからね」

「それは当然よ」

 さすがに璃々ちゃんに精神攻撃なんてできるわけがない。

 

 精神攻撃することを説明し、拒否した者にはかけないことにしたのだが、全員がチャレンジすることになってしまった。

 まだ帰ってなかった十兵衛と光姫ちゃん、子住姉妹と真留ちゃんまで。

「魔法でしょ。面白そう」

「唯ちゃん、これって辛いんだよ」

「私なら多少の辛さなど問題ないのです!」

「度胸試しじゃないんだけどなあ……」

 思い直すようにロリっ子たちを説得したけど、無駄でした。

 

 かかった相手が暴れたりしても対処できるよう、全員いっぺんではなく、3回に分けて精神防壁習得に挑戦することに。

「……貴様っ! あれは酷すぎるぞっ!」

「そうよっ! 華琳さまがあんなこと言うわけないでしょっ!」

 まずは魏のメンバーからだったんだけど、終わった途端に抗議を受けた。

「辛いからって説明したじゃないか。あと、内容に関しては俺のせいじゃないから」

 これをあと2回も?

 俺の精神の方がダメージ大きいよ。

 

 

 なんとか全員に精神攻撃を終了し、部屋から持ってきたチョーカーとビニフォンを渡した。

 数は多めに用意していたので、子住姉妹と真留ちゃんにもビニフォンを渡しておく。

「すごいねコレ」

「いいんですか?」

「俺たちに用がある時はこれを使って」

 嫁さんたちと仲良くなっているみたいだから、連絡手段は必要だろう。

 俺たちはこっちの通信会社と契約してないからこれしかない。

 

「璃々ちゃんはこっちのだよ。みんな、ちゃんと着けてね。それがないと時間延長しにくいから」

 チョーカーは受け取り次第、装備してもらう。もちろん、ちゃんと効用は説明済みだ。

「のう婿殿、わしらにはないのか?」

「君たちには必要ないでしょ。時間切れしないんだから」

 チョーカーを装備していれば成現の時間延長をしやすいように設定している。たとえ離れていても俺の固有スキルが届くようになっているのだ。

 

「わしらも妻なのじゃからくれてもよかろう」

「そんなありがたいもんじゃないと思うけど……外せないってクレームは受け付けないからね」

 光姫ちゃんだけでなく、十兵衛、由真ちゃんにも渡しておいた。つけるかどうかは彼女たちの判断にまかせよう。

 

「いいなあ、由真姉」

「もうつけちゃったの?」

 由真ちゃんはつけそうにないって思ってたんだけど。

「便利そうだからつけただけよ。外せないっていうけど、これにも時間切れあるんでしょ? いらなくなったらそれを待つわ」

 ……ごめん、それの持続時間、けっこう長めです。みんなの生命線だからすぐ切れちゃまずいでしょ。

 

 それから、子住姉妹と真留ちゃんが帰るのを十兵衛が送って、……また戻ってきた。

「あれ? 帰らないでいいの?」

「夫婦別居はいかんだろう?」

「うむ。初夜はないようじゃが、新婚初日ぐらいはここに泊まるぞ」

 ……まあいいか。自分の屋敷には連絡がいっているのだろう。

 これ以上流されることもあるまい。

 もうめんどくさくなって、俺はそれを認めた。

 

 

 風呂は大きなものがあったが、嫁さんたちが順に入っているため、今日は諦めた。

 明日は銭湯にでもいくかな?

 ……4面本拠地(アパート)に帰ればいいか。

 さっきまで寝ていたけど、精神攻撃で妙に疲れてしまった。

 女の子たちの辛そうな顔や声が俺の方の精神力を猛烈に削ったんだよ。

 もう寝よう。

 みんなのチョーカーで成現時間の延長を行って、MPを全消費して本日の作業は終了。

 アパートではベッドだったから畳に布団を敷くのは久しぶりだな。

 

「煌一」

「レーティア? ああ、今日はレーティアの当番だっけ」

「それを忘れてはいけないぞ。……まあ、順番も変わるだろうが」

 レーティアの表情が曇る。

「ごめんね、あんなに奥さんが増えちゃって。決してレーティアを蔑ろにしてるわけじゃないからね」

「事情はわかっている。呪いを考慮すればしかたあるまい」

 俺が呪われていなけりゃなあ。

 ……レーティアと結婚もできなかったかもしれないか。

 

「レーティアへの想いを刻み付けてあげたいんだけど、この身体じゃなあ」

 さっき試したけどいまだに大人への変身魔法は上手くできないし。

「そうか。やはり違うのか?」

「うん。見る?」

 冗談めかして聞いてみたら、冗談ですまなかった。

 

「い、痛かったか?」

 ……剥かれるとは思わなかったよ。

 天才少女の探究心をなめてはいけないね。

 

 




魏屋敷
華琳、ヨーコ、クラン、レーティア、梓
春蘭、秋蘭、桂花、季衣、流琉、霞、稟、風、凪、真桜、沙和
天和、地和、人和
美羽、七乃

蜀屋敷
桃香、愛紗、鈴々、朱里、翠、星、紫苑、璃々、桔梗、焔耶、蒲公英、雛里
月、詠、恋、音々音、麗羽、猪々子、斗詩、白蓮、華雄
美以、ミケ、トラ、シャム

呉屋敷
雪蓮、蓮華、小蓮、冥琳、穏、思春、明命、祭、亞莎、大喬、小喬
柔志郎、智子、ゆり子、ララミア、カシオペア


蜀屋敷に偏りすぎ?

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