真・恋姫†有双……になるはずが(仮)   作:生甘蕉

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49話 消滅したりもしたけれど、私はげんきです。

 柳宮十兵衛から準備が整ったとの連絡がきた。

 開発部の連中に準備をしなければいけないので、と断る。

「大江戸学園に行くようになっても、ここにはこまめに顔を出すよ」

 今度くる時は差し入れを用意するかな?

「ビニフォンはまあ、しばらくかかりそうだが、開発が終わったら次はアレだな」

「おお、アレか!」

 頷き合うドワーフとエルフ。

 アレってやっぱりアレか。

 

「男の浪漫だな」

「俺なんてアレのある世界に行きたくて、まだ担当世界を決めてないんだぜ!」

 ヘンビット(アゴルフ)はまだ自分の担当が決まってなかったのか。

 担当世界は使徒(プレイヤー)の能力に合わせて決まる。能力が高いやつは難易度の高い世界に回されるらしい。

 アレがある世界を目指して、能力を磨いているのか。

 

「アレとはなんでゲソ?」

 可愛らしく首を捻るイカちゃんに俺たちは声を揃えて答えた。

「巨大ロボット!」

 うん。やっぱりそうだよね。

 カミナやミシェルというそれがある世界の人間の話を聞いてたら、ほしくもなるよね。

 スマホの次がロボってのはレベルアップしすぎな気もするけどさ。

 

「このチームならできそうな気がする」

「うむ。なにしろ、煌一の能力でロボを実体化させ、現代ドワーフの力でコピーすればいいのだからな」

「操作システムは現代エルフに任せてくれ!」

 現代っていうか、近未来レベルだろう。レーティアもいるし。

 俺の固有(ユニーク)スキルは実体化っていうか、元から実体はあるプラモ等を本物にするから、ちょっと違うんじゃないかと。

 ……でも、おかげで思いついた。俺の成現はリアライズって読み方にしよう。

 あとさ、俺のスキル、巨大ロボにはまだまだMPが足りないかもしれない。

 スキャンする時間次第か。

 

「小さいのなら……スコタコとか、モスピーダあたりならいけるかな?」

「マジンガーはまだ無理か。超合金Zの組成が気になったのだが」

 実際に作るとなると、材料の金属も用意しなきゃいけないんだよなあ。

 生体素材の多いオーラ・マシンの方が実現しやすいのかな?

「ザクは駄目なのか。……プチ・モビルスーツはどうだ?」

 サイズ的にはできそうだけど、プラモがないでしょ。ヘンビットはジオン派だったのね。

 

「巨大ロボか。深海にも対応させてほしいものだ」

 髭を触りながら要求するドンさん。

「深海に対応か。……ポセイドン? 人が乗らない自立型だけど強かったよね」

 そういや、あっちも『こういち』だったよなあ。俺も『3つのしもべ』を用意しようかな?

「っと、盛り上がってる場合じゃなかった。俺はもう行くから」

 みんなに別れを告げて開発部を出発した。

 

 車両扱いのレイバーならそんなにコストもかからないかもしれないな。……いや、今はもっと他に考えることがあるか。

 4面本拠地(アパート)に戻っても誰もいなかったので、みんなにメール。

 その後、合鍵を使って204号室に入った。

 誰もいない時にここに侵入するなんてのは、若くなったせいかね? なんか前より考えなしになってきてる気がする。

 女の子の部屋の匂いを思いっきり吸ってから、ぬいぐるみを自室に運び出す。

 明日、元に戻すからって教えてあげないとね。

 ……204号室で寝ればいいって?

 無理だって。あそこに長くいると、みんなの下着チェックとかしそうで怖かったらね。今の俺ならやりかねないでしょ。

 

 ベッド脇にテーブルを出してぬいぐるみを並べて眠る。

 うん、置き忘れはないな。

「誰だ、貴様は?」

 契約空間もどきに入ってすぐにぬいぐるみたちに問われた。

 そうだった。この姿から説明しないといけないのか。

「天井だよ。この前説明した大江戸学園にいくために……色々あって若くなった」

「華琳さまがそんなことを話していたわね」

「そうだったか? 証拠はあるのか?」

 荀彧の補足も、夏侯惇は覚えていないらしい。

 

「証拠か。あることはあるけど。ほら?」

 俺が指差した方向には、かなり離れた場所でこちらに背を向けている袁紹が。

 この場では俺の他の唯一の人間状態なので、離れていても発見は容易い。まわりにはなんにもない空間だしね。

「麗羽さま?」

「珍しくおとなしいと思ったらあんなとこに」

 顔良と文醜が麗羽の元に行こうとするのを止める。

 

「ちょっと待って。大事な話があるから。……で、袁紹にかかった俺の呪いの効果が証拠になると思うけど」

「ええ。言われて見れば煌一殿の面影があります」

「若返るなんて羨ましいですわね」

 黄忠の呟きに頷いたのは厳顔と黄蓋か。これは調度いいな。

「熟女の人たちは若くなってもらうよ。たぶん、みんなと同じくらいに」

「なんじゃと?」

 この顔は驚いているのかな? ぬいぐるみなのでイマイチわからん。

 たぶんと言ったのはどれぐらいになるかは、俺も成現(リアライズ)するまではどんな姿になるかは予想できないから。

 予想というかイメージしちゃうと確実にロリになりそうなんだよね。

「元に戻ったら学校ってとこに行ってもらうって言ったでしょ。学校はね、若い子が通うもんだからさ」

 子供と言うと嫌がりそうなのもいるので、若い子ってしておこう。

「それならば仕方ないのう」

「元の年齢に戻りたかったら、薬ができるはずだからそれを待ってね」

 ファミリアになれば、たぶん変身のスキルで戻れるはずだけど、これは契約してくれてからでいいか。

 

「ということは、大事な話というのは、元に戻れるということでしゅか?」

 鳳統ちゃんはぬいぐるみでも噛んじゃうか。

「うん。明日、元に戻してあげる予定だから」

 途端にぬいぐるみたちがざわつき出した。

 

「やっと元に戻れるんだね!」

「やっとご飯が食べられるのだ!」

 劉備と張飛ちゃんが抱き合って喜んでいる。

 愛紗はといえば、両手をついて頭を下げていた。ぬいぐるみなので、腕立てふせをしているようにも見える。

「このご恩、必ずや報いてみせます」

「それってやっぱ、嫁入りするんか!?」

 これは張遼か。

 関西弁キャラってことでうちの智子と仲良くなってくれればいいなあ。

 

「そ、それは……」

「もちろん、うちの蓮華もよね?」

「あれ? 孫策は蓮華の嫁入りに反対してたんじゃないの?」

 つい、ツッコんでしまった。

「よかったわね、蓮華。この男にはそのつもりがあるようよ」

 罠だったか。

 ツッコミ入れる前に否定しなきゃ駄目だったとは。

 

「愛紗ちゃんいいなあ」

「桃香さま?」

「……そうだ! お礼ならわたしの方がしなきゃいけない立場なんだし、わたしがお嫁さんになればいいんだよね」

 いきなりなに言い出すの、このぬいぐるみ(ヒト)は。

「ふむ。それだと私が嫁に行かなきゃならないわね」

「ね、姉様?」

 なんでそうなるのさ。

 孫策、面白そうだから言ってるだけでしょ。

 

「あのね、俺は恩や打算みたいなので結婚してもらうのは嫌なの」

「貴様、華琳さまとの結婚を嫌だと言っているのか?」

 眼帯ぬいぐるみが俺を睨む。

 そりゃ華琳たちとの結婚は打算あってのものだろうけどさ。

「俺の嫁さんたちとの結婚は嫌じゃないよ。不満はあるけど」

 俺のことを好きになってほしい。

 愛してほしい。

 それと、本番させてほしい!

「華琳さまに不満? これだから男は! ……だいたい、不満があるなら別れなさいよ!」

「断る!」

 猫耳ぬいぐるみにデコピンしたい衝動をなんとか我慢する。

 以前ならこのぐらい気にならなかったのになあ。

 

「お礼ならファミリアになってくれると助かる。ただ、これは人間を止めることなんでよく考えてね」

 せっかく人間になれるんだから、無理矢理ファミリアにするのは気がひける。

「華琳さまはすでに、ふぇらみあなのだろう。ならば、同じになるのになんの問題がある!」

 ファミリアね。変にえちく聞こえる間違いしないでほしい。それに全然悩まないで答えられると困るんですけど。

 まあ、夏侯惇はちょうどいいかな。

 

「夏侯惇と楽進はファミリアになってほしいかな」

「私もですか?」

 縫い目で傷跡も再現された楽進ぬいぐるみが前に出てくる。

「嫌なら無理にとは言わないよ」

「いえ、恩を感じているのは私も同様です。お受けいたします」

 こっちも悩まないか。

 話が早くて助かるけど、恩って人間止めるより大事なことなの? そういう時代だったの?

 

「夏侯惇もいい?」

「かまわん」

「2人は先に元に戻すけど、華琳の夫が憎いからって、俺を殺そうとしないでね。他のみんなが戻せなくなっちゃうからね」

 夏侯惇はこれが一番心配。

 チッ。今、舌打ちが聞こえた。ぬいぐるみなのにどうやって鳴らしたんだろうねえ、荀彧?

 

 

 セットした目覚まし時計の音で目覚めた俺は、夏侯惇と楽進を残し、ぬいぐるみたちを204号室に戻した。

 まだみんなは帰ってないか。

 俺はぬいぐるみ2体を持って病院へとポータルで移動する。

「それじゃ元に戻すからね。暴れないでくれよ」

 2人のぬいぐるみを成現。

 音もなく人間が2人現れた。……最近、セラヴィーの魔法みたいに煙や効果音がほしいかもしれないと思うようになってる。なんとなく地味というか、味気ないのよ。

 

「戻った?」

「本当に?」

 自分たちの身体を見回し、動かして確認する2人。

「どこも異常はないはずだけど、違和感があったら言ってほしい」

「ふん。早く華琳さまに会わせろ!」

「だいじょうぶです。ちゃんと動きます。ありがとうございますっ!」

 態度が悪い夏侯惇に礼儀正しい楽進。

 念をおしておいてこれとは。楽進がいなかったら俺は殺されていたんじゃなかろうか?

 隻眼でずっと睨んでいるし。

 

「まずは契約が先。そしたら声を聞かせてあげるよ」

「本当だな」

「はいはい」

 適当に答えながら2人に同時に触れる。

 一瞬で変わる景色。

 

「ここは?」

「まさかまた人形に……人のまま?」

 驚く2人に説明する。

「ここが本当の契約空間だよ」

 もどきじゃない方で2人同時は初めてだけどうまくいったみたい。説明の2度手間を避けるためなんで成功してよかった。

 うん。ファミリアシートもしっかり2枚ある。

「この用紙に名前を書いてね。それでファミリアの契約になるから」

「ここですか?」

 楽進はすぐに名前を書いてくれた。素直でいい子だなあ。

 

「……まさか長い間、ぬいぐるみになっていたからって、自分の名前書けなくなっちゃったわけじゃないよね? もしそうなら……」

「馬鹿にするな!」

 挑発にあっさり乗って夏侯惇も記名した。

 得意気にファミシーをかざす。

「見ろ! ちゃんと書けるだろうが!」

 うん。これで契約完了。

 

 元の病室に戻った俺たち。夏侯惇は驚いていたがしばらくして俺の襟首を掴んで持ち上げる。

「貴様、騙したな」

 鋭い眼光で俺を睨む。

 俺の方は首が絞まって苦しい。

「春蘭さまっ」

 慌てて夏侯惇を止める楽進。

 解放された俺は咳き込んでから一言言うのがやっと。

「襟元が伸びちゃったじゃないか」

 

「貴様!」

「さっき聞いたよね、ファミリアになるかって。了承してたのになんで怒るのさ。ああ、忘れちゃったのか」

「くっ」

 おっ。今度は堪えたか。

 ……いかんな。やっぱり若くなった、いや、幼くなったことで怖いもの知らずな気分になっているのかもしれない。自重しないと。

 

「ちょっと待ってね。約束だから華琳の声を聞かせるから」

 ビニフォンで華琳に電話する。すぐに出てくれた。

「今だいじょうぶ?」

 事情を話して、夏侯惇にビニフォンを渡した。

 怪訝な顔の眼帯少女。

「なんだ、これは?」

『春蘭?』

 ビニフォンから華琳の声が聞こえ、慌てる夏侯惇。

「華琳さま! ……いったいどこに?」

「渡した物を耳にあてて」

 よかった。今度は素直にいう事を聞いてくれた。

「華琳さま? ……は、はい!」

 涙しながらビニフォンと会話する夏侯惇。

 

「あれはいったい?」

「遠くの人と会話できる絡繰かな」

「なんと。友が喜びそうです」

 李典のことかな? 彼女には期待してるんだよ。

 こっちの知識や技術を手に入れたらどんなものを作ってくれるんだろうね。

 

「おい、華琳さまの声が聞こえなくなったぞ。壊れてしまったのではないか?」

「返して。……これはむこうが電話を切っただけだよ」

 表示も本体にもおかしいところはない。壊れてはいない。

「電話? どういうことだ? どこも切れてなどいないではないか」

「華琳が話を終えたってこと。華琳はなんて言ってた?」

「すぐにこちらへ来てくださるそうだ!」

 大きな胸をはって誇らしげな夏侯惇。

 ええと、その内容でなんでそんなに偉そうなんですか?

 

「俺の言う事を聞けってのは言ってなかった?」

「……たしかに、貴様に従えとおっしゃられた。仕方ない、聞いてやろう」

 だから偉そうなんだってば。まあいいか。

「じゃあ、2人ともこの券を持って、そことそこのベッド……寝台で寝てね」

「ま、まさか華琳さまだけではなく、我らの身体まで要求するつもりなのか!」

「違うから! だいたい俺は今、こんななりだよ。どうするって言うのさ。この助平女」

 嫌味を言うと彼女は真っ赤になってしまった。

 2人の手に1枚ずつ病院大部屋1人無料券(1日)を渡して、ベッドに寝かせる。無料(タダ)券の使用は事前にみんなに相談し、納得してもらってるので問題はない。

 

「華琳がくるまでおとなしく寝ているんだよ」

「ふん。こんな明るいうちから寝ていられるか」

 寝てた方がいいと思うけどなあ。回復中は熱いというか痒いというか、変な感じがするし。

 そう考えていたら、もう夏侯惇のベッドから寝息が聞こえてきた。

「あの、ここで寝ることになにか意味があるのでしょうか?」

「たぶん、起きたらわかるよ。ゆっくりおやすみ」

 楽進の頭を優しくなでる。

 歌が上手かったら子守唄でも歌ってあげるんだけどなあ。

 

 

 2人が眠って10分ぐらいで華琳と梓が病院へとやってきた。

「どう? 治りそうかしら?」

「俺の時から考えると、夜には治ってるんじゃないかな」

 そう。この2人は眼と傷跡の治療目的で先に元に戻ってもらった。

 ファミリアになってもらったのはゲートを使用するため。ファミリアになるのが嫌だって言われてたら、成現時間の調整に悩んでいたと思う。

 ファミリアになってないなら、ぬいぐるみ状態時のアイテム扱いじゃないとゲートを使えないからね。

 成現の設定改変でやらなかったのは、大喬や熟女のことで後回しにしていて忘れていたから。……無料券があったから問題ないでしょ。

 

「凪は喜ぶわね。傷跡を気にしていたから」

「あれはあれでいいとも思うんだけどね。触りたくもなるしさ」

 楽進は気の使い方に詳しいから、技や気のことを教えてくれるかもしれない。

 それもあってファミリアになってほしかったんだよね。契約してくれてよかった。

「春蘭はどうかしら? 十兵衛の眼帯に対抗意識を持ちそうではあるわ」

 十兵衛もファミリアになってくれるんなら、その目を治してもらいたいなあ。

 俺の回復魔法(中)では大きな欠損部分は治らないっぽいし。スキルレベルを上げて上級のスキルを覚えようにも、怪我してる相手に使用しないと熟練度が上がらないので、習得には手間取ってる。

「治るんだから、治した方がいいって」

「そうね。秋蘭が喜ぶわ」

「なに言ってんだ。華琳もだろ」

 梓のツッコミに一瞬、驚いた顔を見せてから覇王様が微笑んだ。

「そうね。ありがとう、煌一」

 可愛いなあ。華琳をニヤニヤ見ている梓も可愛い。

 身体がこんなじゃなきゃ、我慢できなかったかも。

 

 その後、病室に残るという華琳を残し、俺と梓は百貨店でお買い物。

 人数が2人も増えるし、明日っからは大江戸学園での暮らしが始まる。今日の夕食は豪華にしたいね。準備があるのとこの身体じゃとで、お酒は無理そうだけどさ。

 アパートに戻ると、剣士のチーム以外は戻っていた。

 俺からのメールで、明日の準備をすることに決めたらしい。

「準備って服や筆記用具等をスタッシュに入れておくぐらいじゃない?」

「バカモノ。女性にはそれ以外の準備があるのだ!」

 怒られちゃった。

 詳しく聞いたら、髪を切るとのこと。今も風呂場でレーティアの髪をヨーコが整えているらしい。

 

 アパート前の道路では、ゆり子とララミアが飛行魔法の訓練中。俺も翼での飛行訓練しようかな?

「やっぱり、こういうのは来栖川先輩向きなんやけどなあ」

「なにを言ってるんスか智子ちゃん。ゆり子ちゃんにはピッタリのこれがあるッスよ!」

 柔志郎が取り出したのはデッキブラシ。

 おお、わかってるな義妹よ。

「そうなると黒猫が必要じゃないか?」

「アニキ、さすがッスね!」

「……なんでこっちを見るのだ!」

 いや、中の人ネタなんだけどね。

 むむ、閃いた!

 ゆり子の変身アイテムといっしょに作ってしまおう。飛行訓練を諦め、俺は自室で成現の準備を進めることにした。

 

 まずは、みんながあっぱれ世界で集めてきてくれた何十ものスマホをビニフォンに成現。

 第3ロットとなるとEP籠めももう慣れたもので、それほど時間もかからない。

 一応、むこうの電話回線やネットも使用できる機能を追加しておこう。この機能はあとでみんなの今使ってるビニフォンの空きスロットに追加しないと。

 ……面倒だな。成現時間の延長も考えたら第3ロットのを使ってもらう方がいいか。数も足りてるし。

 

 ビニフォンの成現が終わると、続いて機能制限版のチョーカーを成現。これがないと時間延長が面倒だからね。

 そして最後に変身アイテムの準備。

 ココロパフュームは物から作らなきゃいけない。さすがに玩具は持ってないからね。

 インターネットでデータを集めて、ノートに形状やギミックを書き出していく。

 あと、さっき思いついた方も資料集めを行い、製作に取りかかる。

「実物大で作る必要はないか」

 成現コストがちょっと余計にかかるけど、まだMPには余裕がある。

 製作時間を考えたら、フィギュアサイズで作る方が早い。1/6サイズぐらいかな。

 

 念のために少し余計に作って、EP籠め。

 フルスクラッチだと、後からEPを注入する必要もほとんどいらなかったようで、今回もまたネガティブ突入なし。

 ……別に残念なんかじゃないんだからね。

 成現して気づけば、もう外は暗くなっていて夕飯もできあがっていた。

 

「うん。いいんじゃないかな?」

 あまり変わってない気もするけど、髪を切った女の子たちを褒めておく。

「まあ、ちょっと切って形を整えただけだしね」

 ヨーコはニアの髪を整えたこともあったっけ。

 2面に行けば美容院あるんじゃない? とは言わないでおこう。

 

「夏侯惇と楽進よ。煌一のファミリアになったわ」

 華琳は治療を終えた2人を連れてきていた。

「煌一さま、ありがとうございます!」

 身体中の傷跡が綺麗に消えてしまった楽進が俺の腕を取って両手で握って感謝を伝える。

「凪です。真名を受け取って下さい」

「いいの? 俺には返す真名がないんだけど」

「かまいません。この恩は絶対に返します!」

 また恩か。ここまで喜んでくれるんだもん、治ってよかったよね。

 

「春蘭は?」

 華琳に促され、夏侯惇が嫌々ながら名乗る。

「春蘭。わたしの真名だ」

「目の具合はどう? ちゃんと見えてる?」

 両目がちゃんと華琳を追っているので大丈夫っぽいけど。

 ……睨むだけで答えてくれない。

 

「春蘭、いい加減に納得なさい」

「しかし華琳さま」

 俺と華琳の結婚、そう簡単には納得いかないんだろうなあ。

 明日、荀彧を戻すのが気が重くなるなあ。あと、呪いが発動しちゃった袁紹も。

「私に恥をかかせると言うのね」

「なにを納得できないのだ?」

「私と煌一の結婚が不満だと言うのよ、クラン姉様」

 今度はクランを睨む春蘭。真名もらったからもうそう呼んでもいいんだよね。

 

「くらん……姉様?」

「うむ。私と華琳とヨーコは義姉妹の契りを結んだのだ! ちなみに私が長女で華琳が次女、ヨーコが三女だ」

 クラン、華琳、ヨーコと見比べて首を捻る春蘭。

「逆じゃないか?」

「逆ではない! 年の順なのだ!」

 まあ、クランは怒ったけど普通はそう思っちゃうよねえ。

 

「本当ですか華琳さま?」

「ええ。クラン姉様は私が姉と認めた女性よ」

「なんと羨ましい……私だって華琳さまから……」

 春蘭はギリギリと歯軋りしながらクランを睨み続けた。

 

 夕食のメインはトンカツやエビフライ等の揚げ物。

 エビフライよりエビ天が好きな俺のためにそっちもちゃんと用意してある、さすがの梓。サメ肉も渡しておけばよかったな。あれのフライもきっと美味しいだろう。

 ビールや日本酒が飲めないのが残念でならない。

「みんなが学校に行ったらさみしくなるのう」

 エビフライを尻尾までバリバリといきながら、暗い顔の剣士。

「ちょくちょく顔を出すようにするからさ」

「ワシの食事はどうすればいいんじゃあ!」

 それも悩むところではあるけどさ。

「サンダル世界の救済が済んだって認められたんだろ? GPが振り込まれたら、本拠地をグレードアップして食堂を用意しろよ」

 あと、おばちゃんでもいいから食堂で働いてくれるモブも導入して。

 

「ああ、セラヴィーも料理が上手かったぜよ」

「もしかして、昼飯ご馳走になってきた?」

「美味かったぜよ」

「そういうことはもっと早く言いなさい!」

 ああ、この姿になっても俺はオカンポジション?

 ……もうこの際、剣士たちの食事はセラヴィーを頼っちゃおうかな……。

 

 

 食後、今夜は夜の当番はお休みの日。

 華琳を誘って、『あっぱれ! 天下御免』をプレイすることにした。

 他の娘にエロゲーがばれるのはちょっと恥ずかしいので秘密にしていたら梓もついてきた。

 なんか怒ってる?

「今日は華琳の当番の日じゃないだろ」

「そういう目的じゃないんだけどなあ。この身体じゃ無理でしょ?」

 仕方ないので梓ならいいかと事情を話すと、彼女もいっしょにということになってしまった。

 春蘭もきたがったが、伸びていたこの服で俺への暴力行為がばれてしまい、今夜は204号室での就寝となった。凪も同じく。そう考えると寝場所の都合から梓もこっちというのは間違ってはいないかな。

 別にまだ無料券の効果が残ってるだろうから、春蘭と凪は病院で寝てもらってもよかったんだけど、それよりは俺の嫁さんたちとガールズトークしてもらうのも悪くないだろう。ヨーコとクランは華琳の義姉妹になったんだしさ。

 

「こんな学校、本当にあるのか?」

「たぶん明日見れるはずだよ」

 3人でパソコンの画面を見ながら会話する。

 今回のルートはメインヒロインの吉音、詠美ルート。むこうが完全にこの通りになっているかはわからないけど、少しは近いはずだと思う。

 途中、ロリっ娘ルートへの誘惑に迷いながらも選択肢を選んでいった。

 

「ちょっと、肝心の所がわからなくなっているわよ!」

「モザイクっていって、見えないようになっているんだよ」

「なんて無粋な」

 その気持ちはよくわかる。

 遅くまでプレイしていたせいで俺と華琳と梓は変なテンションになっていた。

 おっさんの時だったらムラムラしてゲーム中断して、トイレに駆け込むか2人に手を出していたかもしれない。

 

 結局、クリアまでプレイして、対策を話し合っていたら翌朝になってしまった。

 完徹か。若いから今日もなんとかなるかな?

 ……でも、眠いなあ。

 

 


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