真・恋姫†有双……になるはずが(仮)   作:生甘蕉

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42話 ごめん

 女神ワルテナのお礼は結局、英霊召喚に。

 ダークプリキュアの時に悩んだ娘を復活させてもらった。

 

「大尉!」

 クランを抱きしめているのは復活させてもらった少女だ。

 尖った耳はエルフではなく、ゼントラーディの証。

 

「ララミア?」

 そう。

 クランの率いていたピクシー小隊の隊員で高機動バトルスーツ、クァドラン・レアの乗り手。

 そして、戦死者。

 

「ララミアぁ!」

 クランがララミアのスレンダーな胸に頭をよせて泣いている。

 部下ではあったがプライベートでも仲がよかったようだもんな。

「大尉……」

 しばらくの間、ララミアがクランの頭をなでることになるのだった。

 

「ララミアは私と同じゼントラーディなのだ!」

「ララミア・レレニアです」

 うん。嬉しそうにララミアを紹介してくれるクランを見ると、復活してもらってよかったな。

 

 他に迷った候補は、グレンラガンのニア。彼女も助けたいと思ったからね。

 ただ、シモンはいないし、戦死したわけでもないのでワルテナでは復活できないとのことで諦めた。……戦死だからってロージェノムを復活させる気にもならなかったしね。

 む。流麗のアディーネって手もあったか。……ヨーコが嫌がるか?

 戦死じゃないという同じ理由でレーティアの妹も無理だ。

 彼女は病死。そもそも名前がわからないし、外見も不明なので俺の固有スキルでも無理そう。レーティアも喜ばせたいのに。

 

「……よろしく」

 口数が少ないのは、緊張してるからか、それともTV版で台詞が少なかったからか?

 劇場版では死んでないらしいから、うちのクランやここのミシェルと同じくTV版準拠のララミアなんだろう。

 もしくは小説版。あれだと、もうすぐ結婚するという死亡フラグをキッチリ作っていたな。

「あとはネネがいればピクシー小隊が再結成できるのだ!」

 ネネか。陳宮で代用してもらう?

 あ、……ララミアって褐色の肌で赤い髪。口数も少ない。クランを可愛いと感じたりするらしいから、貧乳なことをのぞけば、呂布っぽいかもしれないな。会わせてみたいかも。

 

 その後は、やっと精神防壁のスキルを伝授してもらう。

「やはり心の壁のイメージですか?」

「ふふふ。似てるようでちょっと違いますわ」

 むう。使徒だからATフィールドって思ってたけど違うのかな。

 ……2人目の綾波レイを復活させてもらうってのも、よかったかもしれない。

 

「覚えやすいように、少し攻撃しますわ。耐えるんですのよ」

 え? 攻撃?

 悩んでる間にそれが到達する。

 

『気持ち悪い』

 この声はワルテナ?

 でも、彼女の口は動いていない。他のみんなも気づいてないみたいだ。

 俺だけが聞こえているって……これが念話か?

『いい歳して童貞とか』

 ワルテナはにこにこと微笑んでいる。その裏でこんなことを考えているの?

『フィギュアを嫁にしてるなんて、変態も極まれりね』

 ぐっ。これって精神攻撃?

 ただの悪口な気もするけど……。

 

『親は泣いてるでしょうね』

 親は関係ねえだろ、親は!

『能力を使って心まで弄るなんて』

 そ、それは……。

『恋人や父親に成り代るなんて』

 気にしてることを……。

 

「どうしたんだ煌一? 顔色が悪いぞ」

 心配そうに梓が俺の顔を覗き込んでくる。

 なのに、『耕一への想いを返せよ!』と、梓の声で幻聴まで聞こえてきた。

 

「う、うう……」

「だいじょうぶか?」

 知らぬ間にいた一刀君まで心配してくれる。

『よくも俺のものを奪ったな。華琳は返してもらうから!』

 これも幻聴?

『精神操作? 熟女? あんたのババアはJKからだっけ?』

 くっ。もっと具体的に年齢で決めておけばよかったか。

 

「ごめんなさい」

 耐え切れずに蹲って顔を隠す俺。

 止めてくれ。こんな俺を見ないでくれ。

「ごめんなさいごめんなさい……」

 

「煌一?」

 華琳までも俺を気遣って近づいてくる。

 ……止めてくれ、華琳は止めてくれ!

 両手で耳をおさえるが、幻聴(こえ)は聴こえてきてしまう。

 華琳の声が。

『早く皆を元に戻しなさい。それまでは妻でいてあげるから』

 も、戻したら?

『用済みよ。だって一刀がいるもの』

 そんな……。

 怖くて考えないようにしているのに。

『お前などにお尻を許してあげてるだけでも信じられないほどの奇跡でしょう? でも、お前には初めてはやらないわ。一刀のものよ』

 う、うううぅぅ……。

 聞きたくない。そんな言葉は聞きたくない!

 

『カミナのところへいきたい』

『ミシェルの方がいいのだ!』

 止めてくれぇっ!!

 もう、聞いていられない。

 逃げ出そう。逃げるしかない……。

 

 

「ごめんなさい。効き過ぎてしまいましたわ」

 すまなさそうに女神が謝っている。

 けれど、俺には返事する気力は残っていない。

 だって謝ってるのも表面上だけなんだろう? 心ではあんなことを考えて、俺を嘲っているんだろう?

 

「今はお眠りなさい」

 女神の言葉とともに急激な眠気が襲ってくる。

 これも魔法かな。今度は夢で俺を責めたてるつもりか。

 眠ってたまるかと抵抗したが、睡魔には勝てなかった……。

 

 いつのまにか、俺はベッドで寝ていた。

「ここは?」

「起きたのか? ここは2面の病院だよ」

 心配そうに嫁さんたちが俺を覗き込んでいる。

 ……もう俺を責める幻聴は聴こえない。

 

「煌一がEP低下でやばい状況だってんで、女神が運んでくれたんだよ」

 ああ、精神攻撃でEPがなくなっていたのか。

 たしかにあれはキツい攻撃だった。

「煌一君はメンタル面をもっと鍛える必要がありますわね」

「悪かったな、豆腐メンタルで」

 ヒキコモリやってたから、人間付き合いは苦手なんだよ!

 やっと少し改善されたかな、って自己分析してたのに。対人恐怖症になったらどうするつもりだ!

 

「ふふふふ。辛い思いをしたおかげで精神防壁のスキルを習得できているはずですわ」

 ワルテナに言われてビニフォンで確認する。あんな辛い思いをして手に入ってなかったら……よかった。入手できてた!

「1レベルで入手できてる」

 ゼロレベルじゃなくて本当によかった。

「それはよかったですわ」

 なんか素直に喜べない。

 ワルテナって実はドS? 戦女神だし、そうかもしれないな。

 ……開発・言葉責めのスキルは覚えてない。ちょっとほっとした。

 

「煌一、だいじょうぶなの?」

「……回復ベッドのおかげかな、もう平気だよ」

 さっきは自殺するしかないぐらいに落ち込んでいたけどね。今は平気だ。EPももう少しで満タン。

 ベッド脇に立った華琳が俺の頭を抱きしめてくれた。

「捨てられたくなかったら、しっかりなさい」

「……俺、なんか言ってた?」

「捨てないで、捨てないでとうなされていたわ。みんなはそれを聞くどころではなかったけれど」

 え? それどころじゃないって……。

 

「煌一のことを抗議しようとしたら、みんなも精神攻撃をくらったのだ!」

「スキル習得のためですわ。あれが一番手っ取り早いんですわ」

 ……荒っぽいなあ。さすが戦神。

「だ、だいじょうぶなの?」

「そこまで精神的にダメージを受けたのはあんただけよ」

 よかった。みんなはあんなに辛い思いをしなくてすんだのか。

 ……そりゃそうか。みんな困難や修羅場を乗り越えてきた娘たちばかり。俺とは違うもんな……。

 回復ベッドじゃなきゃ、また落ち込みそうだ。

 

 

 治療代はワルテナが出してくれた。

 最大MPだけはべらぼうに高い俺の治療費ってどれぐらいかかるか気になったんだけど、交流戦で入手した無料券で治してくれたらしい。

 そうか。無料券があれば俺も回復ベッドを使えるのか。……でも、別に回復ベッドを使用したい娘もいるしなあ。

 

 俺の回復を待って、工房へ移動する。

 工房は2面本拠地とは別の建物らしい。エルフやドワーフたちは先に行っているようだ。

 病院から工房へはすぐだった。

 大きな工場のような建物。またも資本の差を見せ付けられたな。

「こんな大きいのに全然使ってなかったんですの。聖衣がないんでムウ君もあまりここにはきてくれませんわ。ですから、ちょうどよかったのですわ。自由に使っていただいてかまいませんわ」

 そう言われてもね……。

 俺はせいぜいがビルの1室をイメージしてたんだけどなあ。

 守衛さんがチェックしている正門を通って工場内へ入った。あの人はモブかな。

 またくることを考えて、門の辺りにマーキングしておこう。

 

「今度こそエルフだろ!」

 設計室に案内された俺たち。

 ヘンビットがいきなりララミアを指差したが、お前の方がよっぽどゼントラーディっぽい。

「違うでしょ」

 スパーンといい音をさせてチ子ちゃんがアゴルフをはたく。

 あのハリセン、昨夜智子が渡してたような……。

「エルフは相変わらず騒がしいのう」

 十三もいたか。

 

「また女神に復活させてもらったの? お前らばっかりいいなあ。俺だって復活させてほしいのいるのに」

「ワシもだ」

 2人で頷き合うヘンビットと十三、仲がいいのか悪いのかわからんな。

「等価交換だよ」

 等価じゃないって?

 主人公キャラと台詞が断末魔のみだったという不遇キャラじゃ割に合わない?

 そんなことはない。ボーイッシュで可愛い女の子だし、胸も俺好みの貧乳。なにより、クランが喜んでいる。こっちが得しているぐらいだろう。

 

「ちなみに、誰を復活させてほしいんだ?」

「むろん、ドワーフ界の超メジャー、ギムしかおるまい」

「俺はピロテースさん!」

 どっちもロードス島戦記からか。懐かしいな。

 2人の前世はその頃に死んだのだろうか?

 ピロテースって戦死してたっけ? というか、ダークエルフじゃん。そんなのは気にしないのかな。

 

「戦死はしてないけど、ディードリットじゃないの?」

 エルフの第一人者じゃないか。ハイエルフだしさ。

「巨乳の方がいいだろ?」

 アゴルフ、今お前は設計室内のかなりの女性を敵に回した気がする。

 うちの嫁さんやお前の姉が怒って……って、チ子ちゃんの後ろにあるそのマシンは!

 

「マンハッタンシェイプ!?」

 入力機器として用意されていたこのスリムな筐体は!

「気に入りまして?」

「ええと、懐かしくてテンション上がっちゃったけど、工場向きじゃないんじゃ?」

 ゲーム機な印象があるのは上上下下……で有名なシューティングゲームが同梱されていたせいかもしれない。

「そうだな。なんでマッキンじゃない」

 エルフは林檎派か。

 

「使えないことはないと思うんだけどちょっと規格が古いかも。USB端子もないし」

「USB?」

 ああ、やっぱりここはバブル期っぽい時代設定なんだな。

 エルフも首を傾げているから、むこうも機器は古いのかもしれない。

「スマホとかを接続できる端子なんだけど」

 見本として持ってきたスマホと充電ケーブルをスタッシュから取り出して説明する。

 まだビニフォンに成現前の物だ。

 

「これをベースにビニフォンに変身させるのか」

「見た目はほとんどかわらんのう」

 ビニフォンの時と同じ様にまた魔法で調べだしたエルフとドワーフ。

 

「ほらこのコネクタでね、パソコンとスマホを繋げる」

 ノートパソコンも出して、繋げてみせる。

「なるほど」

「こりゃ、ビニフォンを売りたい相手が使ってる機器に合わせてケーブルも用意しなきゃいけないかも」

 サイコロ世界の標準機ってなんだろう?

 持ってない方が多いのかな?

 

「それとも、繋げられない方がいいか。余計なことされなくて」

 充電はMPでできるようにすればいい。それはもうビニフォンでできてるしさ。

「ふむ。いじるやつはいじるでしょうけど、そこは自己責任ということね」

 スマホよりもノートパソコンに興味が移ったらしいチ子ちゃん。林檎のやつを持ってくればよかったかな?

「それならまずは機能限定版で作った方がいいだろう。まあ、完全再現は大変そうだしな」

 十三の言うことももっともな気がする。

 それならいきなりスマホじゃなくて、ガラケーからの方がいいのかな?

 

「こっちの方からやってみる?」

 愛用の折りたたみ式のガラケーを出してみせたが、あまり評判はよくなかった。

「ボタンが小さすぎる。指の太い種族には操作し辛い。第一、コンカの思念操作を使うならボタンはいらん。可動部が少ない方が長持ちするはず」

「画面も大きい方がいいわ」

 ううっ、俺の長年の相棒なのに。電話するだけならこれで充分なのに。

 悲しい気持ちで俺は愛機をスタッシュにしまった。

 

「……機能限定版ってことだけど、必要な機能をまとめてみよう。それを元に成現するからさ」

 EPもMPもフル回復してるから、ビニフォン程度なら余裕だ。

 もしかしたら、今の愛機ショックでEPが減ってるかもしれないけど。

「電話機能は絶対として、メールとチャットはコンカにもあるから外せないよね」

「え? コンカにそんな機能あったの?」

 あれ? エルフでさえ知らないの?

 最近使ってない俺のコンカを取り出してチ子ちゃんにメールする。

 そういやみんなのダミーコンカもそろそろ時間切れになるのかな。ビニフォンがあるからいいか。

 

「チ子ちゃん、コンカ見てみて」

「なによその呼び方は……届いてる」

「試しに十三に送ってみて」

 チ子ちゃんが念じると、すぐに十三のコンカにメールが届いた。

「こんな機能があったなんて」

「MP消費するけどね」

 まあ、僅かな量だけど。

 もしかしたら隠し機能だったのかな。

 念話みたいに代用できるスキルがあって、この機能があまり必要とされてないのかも。

 

「次にチャット。今立ち上げるからね」

 お、会議室の名前が変わった。

「第666開闢の間開発部会議室でチャットしたいって念じてみて」

「……できたわ」

「できた」

「チャットがあったとは」

 コンカを見ながら唸るエルフやドワーフたち。

 

「これは便利ですわ」

 ワルテナさえも驚いている。

 念話で会議なんてしないのかな?

「チャットはチャットルームを用意したやつが一番MPの消費が大きいみたい」

「そのタイプなのね」

 やっぱり他にそんな魔法あるのか。集団魔法ってやつ?

 適当にチャットでやりとりをしてからチャットルームを閉じた。

 

「他にコンカでできることってあるか? まとめてみるのだ」

 ホワイトボードの前に立ち腕組みするクラン。この工場でついに入手した白衣を纏っていて、その姿はまさにクラン先生。

 俺たちは情報のすり合わせを始める。

 

「やはりマニュアルの閲覧もできたのか」

「文字色の変更は気づかなかった」

 役に立つ情報からどうでもいい情報まで、ホワイトボードに記入されていく。

 記入するのはクランにかわってレーティア。ちっこいクランががんばってホワイトボードの上の方に書こうとするのは可愛かったけどね。

 

「こんなもんか。なら、成現するから」

 コンカ機能と電話機能、それにカメラ他いくつかの機能と、MPバッテリー機能。

 それをスマホに籠めようと念じる。

 ……みんなが無言で俺を見ている。

「あの、そんなに見られてると恥ずかしいんで……」

 会議室を貸してもらった。

 ……大きな部屋に1人でいるのも寂しい。

 結局、トイレの個室にこっそり移動。妙に落ち着くなあ。

 でも、ウォシュレットはないのか。後で持ってくるかな?

 

 

「見た目はそんなに変わらないのね」

 試作型は間違えないようにパステルカラーになってるぐらいで、たしかに見た目はビニフォンと同じだ。

「ふむ。部品は少し減ってるようじゃな」

 スキャンしながら手元の紙にぐんぐん図面を引いていく十三。

 すげえ。製図台どころか定規もなしに直線や直角をきっちりと描いていく。

「現代ドワーフならこれぐらいは当然よの」

 初めて十三がかっこよく見えた。スキルでできるものなら俺もマスターしたい。

 

「回路が細かいのう。まあ、加工はなんとかなるが、材質の方が……」

 ブツブツ言いながら図面の枚数が増えていく。

 ……加工、なんとかできるのか? 現代ドワーフすごすぎ。

 

 別の試作型ビニフォンに魔法を使い、コーディングシートに書き込んでいくエルフ姉弟。

 解析したソースコードを書いているのだとしたら、あの魔法は復号(デコード)魔法かな。

 こっちもすごいスピードだ。

 

 エルフとドワーフたちはがんばっているけど、俺たちは手持ち無沙汰になってしまった。

 設計室に備え付けの業務用コーヒーメーカーでコーヒーを淹れて一服。

「解析の魔法は後で教えてもらいたいなあ」

「そうか? だいたいわかるだろ?」

「それはレーティアが天才だからだよ」

 この娘もすごいんだよな。機器は古いけど環境がそれなりに整ってるここでならその能力も有効活用できそうだ。

 

「ここのトイレにはあれがないから、付けたいのだ」

 ああ、レーティアもそう思ったか。

 さすがに洋式だったけど、やっぱりあった方がいいよね。

「それで、追加したい機能があるのだが、魔法の方が上手くできそうなのだ」

「追加したい機能?」

 なんだろう、魔法の方がいいって? 音楽が流れるとかじゃなさそうだし……。

 成分分析して健康管理?

 

「そう、あれね」

「たしかにあれはトイレにあった方が助かるけど……」

「まさか、あれなのか?」

「あ、あれって……」

 あれあれ言われても俺にはわからないんだけど。

 俺が男だからわからないのかなと思ったら、ララミアとワルテナも首を捻っている。

 ワルテナもわからないってことは、嫁さんたちが覚えた精神防壁スキルが効いているみたいだ。

 

「大尉、あれとは?」

「うむ。直腸洗浄機能なのだ」

 ぶっ。コーヒー飲み終わっていてよかった。ちょうど飲んでいる最中だったミシェルなんて(むせ)て咳き込んでいるし。

「く、クラン?」

「お風呂場でやるのは大変なのだぞ」

 クラン、その辺で止めてあげて。ミシェルが呼吸困難になってるから。

 

 一方、ワルテナは大喜び。

「素晴らしいですわ。是非、その機能も実装して下さいですわ。必要そうな魔法ならすぐに伝授いたしますわ!」

 女神もそっちも興味にあるの?

 俺の魔法使いみたいに、そっちなら処女神を維持できるってこと?

「機能のテストにはうちの子たちが全面的に協力いたしますわ。是非とも開発なさってですわ!」

 ああ、そっち?

 使うのは女神じゃなくてBL要員の方か。

 ……開発って、トイレの機能の方だよね? A感覚の方じゃないよね?

 深く考えるのはよそう……。

 

 それにしても、みんな、大変な準備をしてくれていたのか。

 俺のために。

 精神攻撃なんかで落ち込んでいる場合じゃないな、これは。

 捨てられないようにがんばろう!

 

 

 ……そう意気込んだのはいいけれど、すぐに俺ができることはそうなくて、所在なげな俺たちはレーティアを設計室に残し、工場見学をすることに。

「食堂はともかくとして、シャワー室や仮眠室まであるとはね」

「うちの本拠地よりすごいなあ」

「あれと比べちゃいかんよ」

 早く本拠地をグレードアップしたい。

 

「ここなら、皆を生活させられないかしら?」

 皆っていうのは、ぬいぐるみになっている恋姫†無双キャラたちだよね。

「どうだろう? ワルテナに頼んでみようか?」

 正直、彼女に借りをつくるのは怖い気もするけど。

 でも早いとこ、元に戻してあげたいしなあ。

 

 悩んでいたら、俺のビニフォンが鳴り出した。

 この音は電話か。

「智子? ……もしもし」

『お父さん? 今だいじょうぶ?』

「うん。ちょーど今、手が空いたとこ」

 いや、かなり前から暇してるけど、それはなんとなくかっこ悪いので忙しかったふりをする。

『よかった。こっち来てくれへん?』

「こっちってゾンビ世界?」

『せや。大変なんや!』

 なんか異常事態なのかな。智子の声も焦ってるように聞こえる。

 

「なにがあった?」

『柔志郎が捕まったんや!』

 捕まった?

「魔族にか?」

『いや、現地の人や』

 現地の人って。

 見つからないはずなんじゃ。

「隠形使ってなかったのか?」

『使うとったけど、見つかったんや。しかも強うて、私も変身しないと相手できそうにないんや』

 智子がそう言うなんて。

 基礎講習を受けているゆり子がいれば……まだ変身アイテム用意してなかったっけ。

 基礎講習2日目だと必要になるはずだから用意しないと。

 って、今はそれどころじゃないか。

 

「そいつホントに人間? 使徒やファミリアじゃなくて?」

「せやから現地の人や! 名前は……柳宮十兵衛言うとる。柳生やのうて柳宮やて。ごっつ強い女の人や」

 ……ああ、そうか。

 

 俺はゾンビ世界の、柔志郎担当の世界の正体がわかった。

 ニホンやトウキョウ。そして優秀な生徒を輩出する大きな学校。

 まさかと思ってたけどやっぱりそうか。

 

 あっちは、『あっぱれ! 天下御免』の世界だったのか。

 

 




やっと世界判明
狙っていたわけじゃないのに42番目な話数とは……

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