学園祭から数ヶ月。
もう自重なしにロボやその他いろいろを
分身があるからEP注入も捗ったしね。
実は分身すると最大EPも下がるんだけど、シスターズやレーティアたちの歌を聞きながらがんばったんだ。
いやー、作りまくったよ。ネタ的なものも含めて。
おかげで学園のテストはさんざんだったけどさ。
「これが完成した結婚指輪?」
「うん。オリハルコンで金ちゃんが作ってくれた指輪を、さらに成現してある」
結婚指輪もやっとできた。
サイコフレームの再現に苦労したらしく時間がかかったけど、すごいのができたらしい。金属粒子レベルで鋳込んでるのはコンピューターチップじゃなくて魔法陣。
この技術で今までとは比較にならない性能のマジックアイテムが作れるようになったと嬉しそうだった。その後に「手間は何十倍だけどな。指輪サイズでもこんなに時間がかかってしまった」とため息をついていたとこを見るとかなり大変そうだ。
あ、金ちゃんってのはヴェルンド工房によくいるドワーフのフライターク。名前の意味はドイツ語で金曜日だというから、金ちゃん。金さんだとうちの朱金とまぎらわしいからね。
「私がつけるには少々、地味じゃありませんこと?」
ちらりと覗いた麗羽が眉を顰める。
たしかに、オリハルコンの金色は美しいが、ただそれだけのシンプルなリングに見える。
「普段ずっとつけているならこれぐらいの方がいい。引っかかるとこもないから邪魔にもなりにくい」
「わかってるね冥琳。だけどそれだけじゃない」
指輪を手にして軽く念じると、シャッと指輪が変形する。はみ出るほど大きな赤い宝石を爪で固定している指輪に。リング自体も華美な彫刻がされた物になった。
「ほっそい指輪なのにどやってこん大きさの宝石を格納してたんや?」
「それは俺も知りたい」
首を傾げる真桜に同意する。
たぶん魔法なんだろうけど、変形自体にはMPを消費しないし、いったいどんな構造になっているんだか。
「これなら私が使うに相応しいですわ。おーっほっほっほ!」
「綺麗な宝石なのー」
「ふむ。
すごいな光姫ちゃん、見ただけでそんなのわかるのか。
「これはドンさんから貰った真紅の珊瑚のメドゥーサ・ブラッドをさらに成現する時に超世界共振水晶体にした物」
そのままでも綺麗だったんだけどね、スパロボ世界って強制転移とか多そうではぐれたりしそうだから、ビニフォン以上の連絡手段が必要不可欠かなってさ。
「超世界共振水晶体?」
「ぶっちゃけ、
「たしかにバジュラはフォールド鉱石を集めてクイーンがフォールドクォーツに精製するようだが……やつらがいるかのーせいがあるのか?」
さすがにクランは詳しいね。表情がちょっと怖いのは、TV版ミシェルはバジュラに殺されたせいかな。
「わからない。スパロボJにはマクロスシリーズは出てこなかったけど、用心するにこしたことはないからね」
「それで煌一さん、この宝石はメドゥーサ・ブラッドでいいの?」
「別物になっちゃってるし、そもそもメドゥーサ・ブラッドじゃ縁起が悪いからね、もちろん名前を変えたよ」
桃香の質問に悩みぬいた答えを発表する。
「その石の名はプシュケー・ハート!」
「ぷちけーきはーふ? ずいぶん甘そうな名前だな。しかも小さそうだ」
「いや春蘭、プチケーキじゃないから。プシュケーな」
それ、飴玉じゃないから鈴々ちゃんも舐めないで。
「プシューケーとは古代ギリシア語で心、魂といった意味よね。ハートで名前がダブってんじゃない」
得意そうに俺のネーミングにケチをつける桂花。つか、古代ギリシア語までマスターしてるのか、軍師パネェな。
「強調的な使い方だよ。ほらフィーリング重視で。ついでにいうと蝶っていう意味も持ってる」
古代ギリシアじゃ精神や霊魂は蝶扱いだったのかね。
そしてプシュケ(Psyche)ってサイコ(Psycho)の語源らしいからね。サイコフレーム使ってる指輪の石には相応しい名前でしょ。
「なんと! 蝶の心とは素晴らしい名前ですな。主のネーミングセンスを見直しましたぞ」
星、見直したってもしかして俺のセンス、あまり良くないイメージだったの?
「プシューケーはエロースの妻の名でもありますね。はわわ……煌一さんに宿ってるエロ神の奥様」
「エロ神言うな。まあ、それもあるけどね。メドゥーサもプシュケも3姉妹の末っ子だってのもある。うちは義理も入れれば3姉妹多いし」
プシュケの姉2人は美人だけど性格には問題ありなのは言わないでおこう。
「プシュケはあちらの物語にはしては珍しく、最後に幸せになった女性だから縁起もよさそうですね」
雛里ちゃんの言う通り、ちょっと調べただけでもギリシアローマ神話系物語の女性って不幸になってること多すぎ。まあだいたい神様が悪いんだけどね。
「プシュケってエロースと別れることになっちゃうんだけど、苦労しながらもまたエロースと結ばれたんだ。だから、はぐれた時に威力を発揮する設定のこの指輪の石にピッタリでしょ」
「いろいろ考えているのね」
「そりゃ大切な嫁さんたちとの結婚指輪だから悩みまくったよ」
婚約指輪をはるかに凌ぐ性能。必要な機能もたくさん盛り込んだ。おかげで
「本当は結婚式の時にちゃんと指輪交換したかったんだけどね」
みんなが俺の嫁さんだってことを世間に証明したい。
知らしめたい。
見せつけたい。
「この人数じゃ交換にならないわ。誰が煌一さんの指にはめるかで、もめるわ」
蓮華、指輪交換のやり方知ってるってことは、君もこっちの結婚式を調べたんだね。
「わ、私は煌一殿がはめてくれるのならばそれだけで!」
真っ赤な顔でやけに力んで大声の愛紗。結婚式を想像したのかな?
「結婚式……大きなケーキを切るんだよね。ボク楽しみ!」
「1個じゃ足りないのだ! お嫁さんの数だけ並べるのだ!」
この人数の分、ウェデングケーキを並べろと? なんか切るだけで時間がかかりそうだ。
「花嫁衣裳の華琳さま……っ!」
慌てて鼻をおさえる稟。なんとか抑制スキルが間に合ったか。
というかなに花嫁衣裳で興奮してるのさ。
「ねえ、煌一が分身した時は装備品は増えなかったわよね。だから分身の指にみんなではめればいいんじゃなあい?」
「そこに気づいたか雪蓮。でもそんな数に分身できないって。できたとしても能力低くて動けるかどうか……。それにこの指輪は俺の分身にも対応できるように成現してあるんだ」
分身に結婚の証がなかったら悲しいじゃないか! 俺が分身すると分身の方にもちゃんと結婚指輪が装着されているはずだよ。
いろいろ詰め込んだせいで成現コストはとんでもないMPになってるけどね。
「あと、指輪だけじゃなくてみんなのGXギアも完成したよ。データ移行と調整しておいてね」
結婚指輪と同じくサイコフレームなオリハルコンを使用したFXギアである。見た目は金色に輝くFXギア。……操縦中落ち着かないって場合は色を塗った方がいいかもしれない。
指輪とこれの代金払ったら、がんばって貯めたGPがほとんど残らなかった。工房の方も身内料金でやってくれたけど数が多かったし、スキルにもGP使用したからなあ。またケチケチ貯めないといかんか。
「注文通り、サウンドエナジーシステムを内蔵するように成現したよ。あとナノマシンもつけておいた」
ナノマシンは∀ガンダムのように機体を修理する極小の機械。スパロボでも強化パーツで出てくる作品があるよね。
みんなのロボにも搭載済だ。残念ながら戦闘中にみるみる直っていくほどじゃないけどさ。
修理関係だと次元連結システムも凄いけどロボ子を用意しなくちゃいけないし変形も怖いので断念。
漫画版の次元ジョイントもちょっと嫌だ。異物なんかよりも俺のを入れたいよね。
「自己修復するのか?」
「うん。ただし大きな破損の修復は時間がかかるから、その時は近くに素材を置いたりMPをあげたりして。修復速度が早くなるから」
「
紫がみんなに渡すパイスーは対魔忍スーツほど薄くも露出も高くない。ヘルメットをしっかりつければ宇宙服にもなる代物だからね。
「着替えは大変だからスワップ機能を使え」
俺も試着してみたけど1人じゃ着れそうになかった。ビニフォンのスワップアプリ前提で動きやすさと強度を優先したからだろう。
顎に手をあてながら操縦服のみんなを眺める華琳。
「やはりもっと肌色がほしいわね」
「我慢してよ。対G、防弾防刃、酸素供給、体温調整その他もろもろの機能つけたらセクシーなのはちょっと無理だった」
だって俺担当世界の拠点ってば月なんだもん。これぐらいないと安心できん。
不満でつまらそうな彼女に「似合ってるよ」とも言いづらいな。魏嫁とヨーコ、俺のにはドクロのワンポイントがあってかっこいいのに。
「一刀君は本当にいらないの?」
「俺には魔弾スーツがあるから。リュウケンドーなら巨大ロボとだって戦える」
前に渡したマダンキーだけで十分なのか、ロボもFXギアも遠慮している一刀君。
そりゃリュウケンドーもサンダーリュウケンドーになれば飛行可能だし、ゴッドの方は大気圏突入までしてたけどさあ。
『慣れない巨大ロボットよりも魔弾スーツで戦った方がいいだろう』
「GPで操縦スキル入手すればいいんじゃないか? 高いけどワルテナはかなり持ってるんだからさ」
「でも、スキルは自分で鍛えて身につけたいんだよ」
『一刀は私が鍛えてみせる』
ううっ、耳が痛い。GP使ってスキル手に入れるのはやっぱりチート行為みたいで気が引けるとこもあるんだよな……。
そんなこともいってられない状況だから使っちゃったけどさ。
「他の準備はできてるのかしら?」
「……一応、着替えや食料は多めにスタッシュに入れてきた。あと、仮設トイレも渡されたんでそれも」
一刀君のスタッシュは今どれぐらいなのかな?
うちのみんなはGPでスキルを強化、スタッシュの収納量も上がってるからロボや仮設トイレも余裕で入るようになっている。
覚えてもらったスタッシュエリア(大)のスキルってなんか大型のドラゴンとかそんなのをしまうためのものらしくて、いくらでも入る感じだ。つい、さらに上位スキルも買っちゃったよ。
スパロボでは母艦に何機もの巨大ロボを格納してるけど、こんなスキルでも持ってるのかな。スパロボアストナージなら持っててもおかしくないか。……でもやつはユニット廃棄しやがるしなあ。
「スタッシュに入れておくと傷まないし冷めないから、ラーメンや寿司も入れておけるのは助かる」
「寿司まで入れてるのか。さすがワルテナんとこの子だね」
「愛妻弁当たくさん入れてるやつに言われたくないって」
ふふん、いいだろう。
嫁さんたちの手料理を弁当箱やお重に入れて、たくさん収納してるのだ。タッパーや皿、丼などそのまま収納してるのもある。スタッシュって便利すぎる。
「殺菌の魔法があるからって、オシボリと箸も忘れんなよ。念のためにウェットティッシュと割り箸も多めに持っていくか」
「お鍋や調味料もですね」
「ゴミ袋も必要でしょうか?」
登校前にハンカチとティッシュの有無を聞いてくる母親のような梓、流琉ちゃん、月ちゃん。
彼女たちのためにキッチンカーも用意してたりする。
「恋殿の入らない分はねねが運ぶです。たくさん入れたのです!」
恋は自分の分だけじゃなくて、むこうで動物にあげる餌も持っていきたいようだ。……次元獣とか拾ってこなきゃいいけど。スパロボJだとラダム獣が心配か。アンチボディもなついたりして。
「スタッシュから出してもしばらく保つように缶詰も入れてるわよ」
両手に缶詰を持っている雪蓮。
「……焼き鳥や鯖の味噌煮、貝……酒の肴ばっかりじゃない?」
「もちろんお酒もね。キンキンに冷えたビールがいつでも飲めるんだからスタッシュって便利よねー」
ええと、俺たち救済に行くんだよね? 花見や宴会じゃなくてさ。
……まあ俺も冷えた発泡酒やハイボールを収納してるんでツッコミは入れないけどね。
「メンマも忘れてはいけませんな」
「蜂蜜もじゃ!」
君たちも通常運転ね。
「オヤツは300エンまでじゃねえのかよ?」
「今時300エンじゃ少なすぎますよ遠山様」
そうなのか。今の子はいくらぐらいが相場なのかな? ってそうじゃなくてさ。
「バナナはオヤツに入らないのだ!」
叩き売りにでもしそうな、10本以上が1つの房になっているバナナを手にしてる鈴々ちゃん。定番ネタだけどよく知ってるな。
でも実際に遠足にバナナを持っていくやつなんているのかね。
「わしは煌一の甘蕉を持ってゆこうぞ」
「桔梗さま?」
「いや、俺のバナナは取り外しきかないから!」
桔梗の定番ネタはおっさんレベルか。
「ならウチはお菊ちゃんと隊長のお宝やな」
「お宝って……俺の積みプラモをお菊ちゃんと同じ扱いにしないでくれ」
みんなのロボに回したりしてかなり減ったけど、それ以上にプラモや超合金等を買っちゃったからなあ。本拠地の俺の部屋が大きくなってなかったら溢れてたとこだ。
もちろん、なにがおこるかわからないので俺もスタッシュに入れて持っていく。どれを持っていくかで悩んでかなり時間をとられた。嫁さんたちからは遊んでいるようにしか見えなかったらしいけどさ。
「私もぉ、どの本を持っていくかで悩んでしまってぇ。電子書籍は場所をとらないのでとても助かりますぅ」
「みんなのビニフォンにも辞書類以外に漫画、アニメ、ゲーム、攻略本等もインストールした。料理本やファッション雑誌もだ」
ビニフォンもまた新しくした。スキャンやデコードしたデータをそのまま記録できるようにもなっているので、記憶容量は無茶苦茶増やしている。電子書籍程度では何万冊入れようが余裕だ。
外見もただのスマホもどきではなく各自の好みに合わせて成現している。俺のは長年親しんだ愛機と同じ2つ折の携帯電話型だ。オズマの印籠型にしようかと迷ったけどそっちは光姫ちゃんにあげた。
「ちぃたちの歌も入ってるから、つらい時はそれを聞きなさい!」
生歌ほどじゃないけど、録音でも少しはEPを回復できる。成現しまくっている時もよくお世話になったよ。
「儂は演歌が好きなんじゃがのう」
「ぬかりはないわ。それも入れておいた」
シスターズ、こっちの歌を勉強するっていろいろと歌っていたからね。俺はもちろんアニソンを歌ってもらったよ。楽器も試すっていくつか買ったけど高かったっけ。
「剣魂の発生装置もこれに統合したのじゃったな」
「立体映像投影機能を使えば、実体化しなくても話すこともできるし」
剣魂を用意した恋姫嫁さんもいるから新型ビニフォンにそっちの機能もつけてみた。立体映像だけなら粒子も使わないからバッテリーの消耗も少ない。
なぜこんなにも出発前に所持品を確認するかといえば、なにか忘れてもすぐに取りに戻れるか心配だからだ。
俺の担当世界の拠点、いつまであるか怪しい。ゲートがなくなってしまい、別の拠点を見つけるまで本拠地に戻ってこれなくなる可能性がある。
新たな拠点は購入するのにGPがかなりかかるみたいなので、できれば避けたい。
追加の
「オレたちも強くなったからだいじょーぶッス!」
「せやな。お父さんは安心してお仕事に行ってくるんや」
なんか単身赴任する世のお父さんたちの気持ちがわかった気がする。ここは「いかないで」とか「寂しいから早く帰ってきてね」って言われたかったよ……。
あ、娘や義妹、その仲間たちにもプシュケー・ハートのアイテムは渡してあるよ。もちろん指輪じゃないけどね。
「いってらっしゃい、お父さん」
璃々ちゃんはさすがに留守番。でも、ポロりんの予言が気になるので嫁さんはみんな連れていきたい。……璃々ちゃんは心残りってのはないよね?
「はじめちゃん、娘たちを頼む」
俺が卒業した後でって話だったはじめちゃんに事情を説明して契約しファミリアになってもらった。猫のコタロウに会いやすくなるってはじめちゃんもすぐに了承してくれたよ。
「指輪は渡しておくけど、煌一の妻になるのは戻ってからになるわ」
結婚指輪も予備として余計に頼んだんだけど、婚約指輪の時と同じ100個のはずだったのに華琳がいつのまにか追加注文していて、その内の1つをはじめちゃんに渡していた。
「うん」
コタロウを抱いたはじめちゃんが頷く。
なかなか信じられなかったけど嬉しいことにはじめちゃんは俺のことを嫌いじゃないらしい。……嫌いなやつとファミリア契約なんかしないか。
俺たちは娘と妹たちに見送られながらゲートを使用し、担当世界の拠点、月へと跳んだ。
ちなみに華琳が追加注文した指輪の数は8。
合計で108か。なにか意味があるんだろうか。
煩悩の数ってわけじゃないよね?
本編嘘予告
「華琳、まさかとは思ったけど君が経験値泥棒だったなんて……」
「愛紗(のロボ)と合体するのはこの私(のロボ)よ!」
華琳の愛機、その名も