真・恋姫†有双……になるはずが(仮)   作:生甘蕉

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126話 合成

「ちょっと冥琳、待ち軍人はずるくない?」

「それを言うなら、人形の(こんな)私に格闘ゲーム(こんなこと)をさせている雪蓮の方だろう。この身体では難しい操作はできん」

 ぬいぐるみ周瑜の戦法に文句を言っている孫策だけど、1発の爽快感を求めてか『赤きサイクロン』を使ってるんだからそりゃ勝てないよね。

 

「待ち軍人にはインド人でしょって」

 ダルシムいいよね。

「……大陸のぞんびたうんを解放したんだから、次は天竺よね。ちょっと楽しみ」

「いや、インドにもゾンビタウンあるみたいだけどさ、次はアメリカいっとかないとやばいって」

 あっちだとアメリカでもインドでもないけどね。

 

「ええー」

「高い軍事力を持った大国なのだろう。仕方あるまい」

「それにインド人だってこのゲームみたいに手足伸びたり火吹いたりしないから」

「うそっ?」

 そんなに驚かなんでも。

 火を吹くぐらいならいるかもしれないけどさ、いくら『あっぱれ』と『対魔忍』がいっしょくたになった世界だからってさすがに手足が伸びる人間はねえ。

 ……波紋法をマスターすればズームパンチぐらいはいけるか?

 

「ぶら汁人は『びりびり』出せるよな?」

「それもないから」

 ブランカ使いだからって華雄まで……。

 あんな獣っぽいの、南蛮にもいなかったでしょ。

 

「次はウチの番やな」

 って張遼ぬいぐるみは本田使い?

 ぬいぐるみの手だとタメ系や連打コマンドじゃないと使えないのかもしれないけどさ、春麗でいいじゃん。張遼の髪飾りと春麗の腕輪のトゲトゲわっかってよく似てるんだしさ。

 

「きんぐぼんびー、伯珪さまとこっすねー」

「また俺かよ?」

「伯珪さんにはそのブサイクさんがふさわしいのですわ。おーっほっほっほ!」

 公孫賛、袁紹、顔良、文醜のぬいぐるみ4人は桃鉄中。

 無印白蓮でも不憫なのね。

 

「恋はよく寝てるわね」

「あっちじゃ眠ることもできないから……」

 呂布ぬいぐるみは寝ているいるらしい。ぬいぐるみなんで目蓋がなくて目は開いたままだけど、董卓と賈駆の2人のぬいぐるみが目蓋のかわりに手でふさいであげている。

 

 ……なんでマーケット時に保護できたのって、周瑜以外はその他組なんだろう?

 董卓、賈駆、呂布、張遼もいるから北郷一刀とエロシーンなかったって理由じゃあなさそうだ。

 

「眠れないってのもつらいよね。華琳ちゃんと孫策は寝れるの?」

「ほう。(しとね)を共にしたいのかしら?」

「なに? わたしたちまで狙ってるの?」

 みんなとのゲームには混じらず、1人エロゲープレイ中だった華琳ちゃんが質問を質問で返してくる。孫策までそれに乗った。

 

「カードから元に戻すのを条件にされたら断ることができないわね」

「なんて卑劣な。その時は冥琳もいっしょよ」

「いまの私は人形なのだが……それでもいいという変態ならば仕方があるまい」

 周瑜までもか。

 ぬいぐるみ相手になんて、俺そんな上級者じゃありませんから!

 

「違うから」

「あら、私たちでは不満と言いたいようよ雪蓮」

「華琳、さんざんあっちのわたしたちを弄んでいるから目新しさがないんでしょ。やっぱりもう飽きちゃったのね」

 いつの間にこっちの2人も真名で呼び合うようになっていたのかな。俺をイジる時は息も合ってるし。

 

「やっぱりってなんだ、やっぱりって! 俺が嫁さんたちに飽きるなんてことはないから! そうじゃなくて、2人がこの契約空間もどきで寝てるかって聞いてるの」

「私と雪蓮が? ……それもアリね」

 って、まだそっちの意味?

 

「……風呂やトイレは持ってきたけどベッドはまだだからさ、持ってきた方がいいのかなって」

 仮設トイレや試作してもらった風呂や、今みんなが使用しているテレビやゲーム機の他、本や冷蔵庫も持ち込んでいたりする。ここにくるのは俺が寝ている時なんで逆に寝具が必要なことには気づかなかったけどさ。

 

「カードになっているせいか、睡眠は必ずしもとらなければいけないというわけではないわ。食事も同じ」

「あ、お酒は必要よ。追加お願いね」

 孫策の言葉に冷蔵庫の横のダンボール箱を覗く。飲むだろうと思って箱で買ってきた缶ビールだ。

「空……だと?」

「ちょーっと飲みすぎちゃったかしら?」

 持ってきたのは昨日だったり。

 1箱には24本。冷蔵庫には食材も入ってるから全部冷やせなかったよね。まさか冷えてないのも飲んじゃったの?

 

「すまんな。煌一殿が目覚めると私たち人形はこの契約空間もどきには留まれぬ。雪蓮を見張ることができんのだ」

「いや、周瑜が謝ることじゃないから」

 みんな1度人間に戻ってもらって、カードになってもらえば指輪に収納できるから昼寝じゃなくてもぬいぐるみたちを華琳ちゃんと周瑜にあわせることができる。()()にぬいぐるみを持ってくるのは気まずいからね……。

 

 でもそれだと俺の日常を監視してる人間が増えるな。

 ぬいぐるみたちを眺めながら悩む。

 ファミリア候補の同じ存在どうしが接触すると弱い方がカードになってしまう。

 カードからなら復活できるけど、それにはGPがかかってしまう。……カードには戻らずに本拠地で暮らしてもらうか?

 

「中国のゾンビタウンを解放したことだし、そろそろ」

「やった! 勝負ね!」

 俺の言葉を遮って孫策が抱きついてきた。感極まってってことなんだろうけど、周瑜を抱きしめるんじゃないのか。

 ……前にやって、ぬいぐるみを締め付けすぎて怒られたんだっけ。

 

「その前に私同士で話をつけるのだろう」

「そんな話もあったわね」

 冥琳と周瑜でまず話し合って合成を試すってことだったんだけど、合成は思いとどまってほしいなあ。

 

 

 

 

 シャンハイ、ペキンの2つのゾンビタウン解放は予想以上にスムーズに進んだ。

 軍師たちは聖鐘が複数届くパターンも考慮済みだったらしく、設置場所や部隊分けもすぐに決まり、作戦内容が説明されると即座に実行することに。

 中国政府には、スパイを警戒して作戦開始の通知のみで内容は知らせず、軍にも邪魔はするなと警告をしておいた。

 

 マスコミさんはどうしようかと迷ったが、聖鐘のことはもっと知名度が上がった方が力も増すと撮影を許可。ただし、敵が見ているかもしれないのでリアルタイムでの放送だけは避けてもらった。

 

 さらに、蚩尤や刑天が出てきてもいいように実戦データ収集も兼ねてUHも展開して作戦開始。

 剣士や他面からの救援は今回は無し。UHのおかげで戦力が揃ってるし、剣士をマスコミに見せたくはないからね。

 

 予想通り、ゾンビやキョンシーはUHの敵ではなかった。戦闘と呼ぶよりは虐殺って感じのアレだ。……動く死体相手に虐殺って言葉が使えるのかな?

 

 あまりにも余裕なので、「UHを使えば使徒やファミリアでなくても戦えるのでは?」という質問が当然のように記者から上がったが、UHを動かせるのは俺たちだけだし、動力も通常のものではないと説明しておいた。

 操作に必要なFXギアは専用になってるから他のやつには使えないし、MPを電力に変換するバッテリーで動いているから嘘じゃない。まあ、普通に充電もできるんだけどね。

 

「結局、蚩尤もその眷属も出てこなかったわね」

「他の国のゾンビタウンに出張でもしてたのかな?」

 シャンハイ、ペキンともにあっさりと聖鐘の設置が済み、浄化が完了してしまった。

 ……完全に浄化しきるまではこれから1年かかるんだったか。

 

 次はアメリカ、いやアメリアなんだけどここは大変そうだ。

 ゾンビタウンとなったニューヨークは爆撃や砲撃をかなり行ったみたいなんだけど、それを生き残ったゾンビがスケルトンに進化したやつらがけっこういる。

 スケルトンは武器使えるんだよね。運転まではできないだろうって剣士は言ってたけど、銃火器は使ってくる。

 国が国だから銃持ってる固体が多くてやっかいらしい。

 

 現在では航空機も攻撃されるらしく、爆撃や無人機の偵察もあまり行われてないようだ。

 バンシーがまた出てくる可能性があるのか。

 それともがしゃどくろや刑天のような現地産の異世界魔族かな?

 アメリカの妖怪って……バックベアード(このロリコンどもめ!)ぐらいしか思いつかない。

 あっ、リトルグレイやチュパカブラってのもありえるか。グレイなら航空機もなんとかできそう。

 

 それとも中国で遭遇できなかった蚩尤が出てくるか。

 中国にいなかったのってもしかして、蚩尤は牛系統っぽいからグレイにキャトルミューティレーションされたのかもしれん。グレイ怖い。牛乳(うしちち)さんのディフェンスを固めないと!

 

 あ、グレムリンってのもいたっけ。

 

 

 

「というわけで周瑜を元に戻そうと思う」

 昼寝終了後、夕食には早い時間だったので事情を説明するために冥琳を連れて雪蓮の部屋に。そこには祭もいた。

 

「やっとなのね」

「……まさか私と区別するためといって祭殿たちのように幼女で復活させたりはせぬよな?」

「え?」

 冥琳、なんでそんなこと聞くのさ?

 そりゃ萌将伝の回想シーンの冥琳と雪蓮も可愛かったけどさ。うん。可愛かったな。

 

「……それもアリか?」

「うん。すっごく見たい! 煌一、絶対そうして!」

「あの頃の冥琳か。儂も見たいぞ」

 雪蓮だけじゃなく祭までも乗り気になっちゃったんだけど、冥琳。

 

「だから、しないように注意しているのだが」

「そう言うけど冥琳、雪蓮ってほら、大喬ちゃんたちや美羽ちゃんみたいにちっちゃい子が大好きだからさ、きっと喜ぶと思うんだ」

「それは貴様だろう」

「否定はしない」

 ロリ最高!

 ビバ幼女!!

 紳士たるもの、ロリ冥琳が見たいのは当然だよね。

 

「ほれ、夫もそう言っておるじゃろ? それともあれか、儂のような姿では夫を満足させられぬと、そう申すのじゃな?」

「なぜそうなるのです! ……この話の通じなさ、酔ってるのか」

「ビールなんて飲んだうちに入らないわよ。満足させられるかどうか、見せてもらおうじゃない」

 やおら脱ぎだす雪蓮と祭。止める間もなく全裸になるのを見ると、冥琳もため息をついてから脱ぎだした。

 

「いいの冥琳?」

「雪蓮とお前に()を刻みつけておくよ」

「そうこなくっちゃ」

 思えばこの時彼女は既に覚悟を決めていたのかもしれない。

 

 ……だからって2本同時はがんばりすぎです冥琳。すごくよかったけどさ。

 

 

 

 

 学園祭が近い。

 俺たちの活躍のおかげか監査の一條三真がくることがなくなったけど、外部の人間が大量に入ってくることは間違いない。

 護衛として対魔忍のかなりの数が紛れ込むらしい。対魔忍の潜入任務は不安になるので、嫁さん用じゃない方のチョーカーを量産して渡しておいた。

 さらには昔の特撮の悪役を参考にして、極秘裏に学園島の水道水に聖水を混ぜていたりもする。

 結界のお札も重要な施設には増量して貼ってあるし、魔族対策でできることはしたはずだ。

 

 不安なのは人間。

 一応、学園ではプライベートってことでマスコミや政治家の相手はしないことにしてるけど、それでもやってくるだろう。気が重い。

 大江戸学園祭は1週間。長いけど、俺と回りたいって嫁さんたちが予定を組んだんでスケジュールはびっしり埋まっている。

 

 と、忙しくなりそうなので今のうちに冥琳と周瑜の話し合いを済ませることになった。

「いくよ、周瑜」

 ぬいぐるみに語りかけてから成現(リアライズ)する。

 もちろん、病の治療と空きソケットも追加して。

 大喬の身体の記憶の改竄は迷ったけどしなかった。……本当に迷ったけどね。

 

 ぬいぐるみから人間に戻った周瑜は軽く身体を動かし、そして手足を眺める。

「……自由に動けるのは嬉しいが、煌一、どこか元の身体と違うようだが?」

「俺は……雪蓮と祭に幼女化を強いられているんだ!」

 思わず背後に集中線が現れそうな勢いでいいわけしてしまった。

 ロリ周瑜可愛いです、はい。案の定雪蓮が抱きしめて頬ずりしてるし。

 

「いいじゃない冥琳。小さい冥琳も素敵よ」

「雪蓮……ならばこちらの雪蓮も子供の姿で復活でいいな? 私だけ子供の姿にするつもりではないのだろう?」

 眼鏡を光らせるロリ軍師。

「そうじゃな。策殿も小さい方がよかろう」

 さんざん雪蓮に子供扱いされてからかわれることの多い祭がにやけている。

 

「自業自得だ雪蓮」

 冥琳が雪蓮から開放された周瑜と向き合った。

「なるほど。たしかに私だ」

 冥琳と周瑜が頷きあう。年の差はあれど本当にそっくりだ。姉妹といわれれば信じるだろう。

 

「では煌一、合成してくれ」

 2人の冥琳が綺麗に声を揃えて言ってきた。

「え?」

「そのために私を戻したのだろう。早くしろ」

「いや、もっと話し合うとか」

「自分相手に話し合うこともあるまい」

 うわ、これってもう、最初から結論が出てたっぽいな。2人とも合成するつもりだったみたいだ。

 

 

「雪蓮はいいの?」

「だいじょーぶよ。北郷だってそうだったじゃない」

「たしかにそうだけどさ、どっちかの冥琳がいなくなるってことなんだよ?」

 俺としてはそんなのは嫌なわけで。なんとしても避けたい。

 

「いなくなるわけではない。どちらも残るよ」

「でも……」

「その不安を消すためにまず私が試すのだ」

 ぽん、と彼女が俺の頭に手を置いてなで始めた。

 それも小さい方の周瑜がだ。

 

「夫ならば妻を信じてくれ」

「冥琳……」

「煌一、それ以上ゴネると冥琳に嫌われるわよ」

 嫌われたくはない。冥琳と周瑜を失いたくもない。

 どうすれば……。

 

「……わかった。周瑜、ちょっといい?」

 俺の姿を元に戻してから周瑜を抱きしめ、EPを籠める。

「な、なにを?」

 赤面して動揺するロリ周瑜に構わず、たった今追加しておいた空きスロットの1つを埋める再成現。

 続いて冥琳にも同じことをする。

 

「もしも、合成に不満なら元の2人に戻れるように、ってスキルを追加させてもらった」

 MPはかなり消費したけど、これならきっと2人を取り戻せるだろう。

 

「過保護というか執念深いというか……」

「ヤンデレってやつでしょ」

 だからなんで俺がヤンデレ扱いされるのさ。

「そうだ、合成前に今の私のステータスを記録しておかないとな。合成後の物と比較したい」

 自分が実験台になるっていうのに冷静すぎでしょ。

 

 ともかく、保険をかけたので本拠地から高天屋(デパート)に移動。サービスセンターにて合成を行った。

 ビニフォンでもできるだろうけど、細かい注意事項を確認したかったからね。

 といっても用紙を裏までよく読んで確認し、『基礎』欄に冥琳、『素材』欄に周瑜の名前を書いただけだ。

 必要事項を記入し終えるとGPが表示される。あ、GP取られるのね。しかもけっこう高価だ。それだけ強くなるってことなんだろうか?

 消費GPを確認したら用紙を提出用の箱のスリットに挿入すると2人の冥琳が輝いて、光が収まると消えてしまった。慌てて見回せばサービスセンターの奥から現れる冥琳。

 見た目は今までの冥琳と変わっていない。

 

「どうやらうまくいったようね」

「それはしばらく様子を見ないとわからないだろう」

 いや、俺にはわかる。

 この冥琳はあの冥琳だ。俺の嫁さんの冥琳だ!

「よかった。よかったよぉ……」

 溢れる涙を堪えながら冥琳を抱きしめようとしたら、雪蓮の叫びに邪魔をされた。

 

「あぁぁぁっ!」

「ど、どうした? ……冥琳にどこか違和感があるのか?」

「違うの! さっきの可愛い冥琳、写真撮っておくの、忘れてるじゃない!」

 その内容にがくっと脱力する俺と冥琳。

 もっとも、俺が崩れ落ちたのは雪蓮と同じ理由の不覚を悔やんでだけど。

 

「雪蓮、そんなに嘆くことでもなかろう」

「さっき、合成やり直せるって言ってたわよね。やり直すわよ!」

「……合成にはGPもかかっている。失敗ならともかくそうじゃないなら無駄使いはできない……」

「そんなぁ……」

 俺だって悔しいのはいっしょだ雪蓮!

 GPさえかからないのならやり直したのに……。

 

 

 ロリ冥琳カムバーック!!

 

 




もうちょい(?)で『有双……になるはずが(仮)』は終わる予定

本編タイトル はたぶん『大有双』

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