クェーサー厨が行かされる難易度ちょっとハードモード   作:TFRS

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無と無限の輝き

 リペントの前、見上げた先にあるのはいずれも強大な力を秘めしナンバーズが立ち並んでいる。

 そして遊馬は1枚のカードを抜く。

 この場に集った仲間達と戦う力を求め、横に居る友を助ける為に更なる可能性を求めていく。

 

「魔法カード、エクシーズ・トレジャーを発動、場には4体のモンスターエクシーズ、よって4枚ドロー!」

 

 ドローし、

 

「更にサイクロンを発動! クリフォート・ツールを破壊する! そしてショック・ルーラーのモンスター効果を発動する! 俺は魔法カードを選択するぜ!」

 

 相手の行動を縛りにかかる。

 この効果を通してしまうと次のターン、プラネタリーは魔法カードを使えず、クリフォートモンスターしか特殊召喚出来ない状況になる。

 クリフォートは2枚、リペントのエクストラデッキに収納されているとはいえどもこの効果を通すのはさすがにまずいとリペントは温存していたカードを発動させる。

 

「そこだけは止めさせてもらう、私は手札よりエフェクト・ヴェーラーのモンスター効果を発動する、ショック・ルーラーの効果は無効だ!」

 

 遊馬は止められたことに口惜しそうな表情を浮かべるも、すぐさま気持ちを切り替えたのだろう、手を大きく振り、

 

「オーバーレイユニットを使いヌメロン・ドラゴンの効果発動、そしてバトルだ! Darkknightでクリフォート・シェルを攻撃!」

 

 始まりの始祖龍の口へとオーバーレイユニットが飛び込んでいき、それと同時に暗黒騎士が巻貝型の機殻へと槍を携え突進する。 

 巻貝型の機殻より黒の砲撃が放たれたれ暗黒騎士を砕くのと、暗黒騎士が大槍を投じ機殻をぶち抜いたのはほぼ同時だ。

 爆散していく暗黒騎士へと申し訳なさそうな表情を見せるも、遊馬は顔を上げ、

 

「カオスオーバーレイユニットを持ち破壊されたDarkknightの効果発動、リターン・フロム・リンボ!」

 

 自身が何度砕かれようとも立ち上がり仲間を守る暗黒騎士が墓地より復活し遊馬達へと槍を掲げる。

 その眼には恨みの感情ではなく別の優しげな感情が混ざっているように見え、リペントの口元は緩む。

 

「そして光子竜皇で直接攻撃! この瞬間、光子竜皇の効果発動。オーバーレイユニットを使い場のランクの合計から×200ポイント攻撃力をアップさせる! 場のランクの合計は18! よって攻撃力は7600だ! エタニティ・フォトン・ストリーム!」

 

 オーバーレイユニットを取りこんだ光子竜皇の閃撃がリペント達へと迫る。

 それをリペントは前に出て受け止める。

 プラネタリーへと直打しないように手を翳し、閃撃を受け、笑う。

 

「更にヌメロン・ドラゴンで攻撃! この瞬間、ヌメロン・。ドラゴンの効果発動! 場のランクの合計×1000ポイント攻撃力をアップさせせる! 場のランクの合計は18、それを1000倍にして攻撃力18000だ!」

 

 普通の決闘ならばこの攻撃を受けただけで敗北が確定する。

 それほどの凄まじい光線が始祖龍の口より放たれ、リペントは体で受ける。

 その口には楽しくって仕方ないと言う様に満面の笑みが浮かんでいて、肩は震えている。

 

「更にニトロ・ウォリアーとショック・ルーラーで直接攻撃!」

 

 拳、そして光線をリペントは体で受けとめるも足の力が一瞬だけ緩んでしまう。

 

―――流石にダメージを受け過ぎたか。まあしょうがない。普通ならばこんなダメージを受けるなんて事無いのだからな!

 

 姿勢を崩し後ろへと滑るも、リペントはそれでも膝はつかない。

 全ての攻撃を終え、暗黒騎士の頭上に大きな銀河の渦が発生する。

 

「メイン2、俺はDarkknightをエクシーズ素材としランクアップ・カオスエクシーズチェンジ! 混沌の具現たる軍神よ。切なる望みを我が元へ。集え、七皇の力!」

 

 渦の底より構築されていくのは倒れた仲間の力を持ちいて戦う軍神、七皇の持つオーバーハンドレットカオスナンバーズのパーツが散りばめられた皇がとどめと言わんばかりに大きな盾と槍を手にし、地響きを立てながら赤黒の大地に降り立つ。

 

「CX冀望皇バリアン!! そして冀望皇バリアンの効果発動、俺の墓地のNo.と名の付いたカード効果を得る! 俺がコピーするのはNo.39希望皇ホープだ!」

 

 冀望皇バリアンの掲げる大盾に39の刻印が刻まれ盾へと墓地より飛び立ったホープの翼が合致する。

 これによって冀望皇バリアンはナンバーズとの戦闘でしか破壊されず、攻撃を1度だけ無効にできる能力を得る。

 

「俺はカードを1枚伏せてターンエンドだ」

 

遊馬・裕場   ニトロ・ウォリアー ATK6800

LP4800    No.100ヌメロン・ドラゴン ATK0 (ORU1)

手札2・2    No.64銀河眼の光子竜皇 ATK4000 (ORU1)

        CX冀望皇バリアン DEF1000 (ORU1)

        No.16色の支配者ショック・ルーラー ATK2600 (ORU2)

        天輪鐘楼

        団結の力

        伏せ1

 

リペント・プラネタリー場 連撃の帝王 

LP60200         冥界の宝札

手札2・2         錬成する振動

             伏せ1

             機殻の要塞

クリフォート・アセンブラ(スケール1) 

 

 遊馬の場は強力なナンバーズ達、それに対しリペント達の場には効果を無効にされ行動を阻害するカードばかりがありモンスターも居ない。

 リペントの手札の1枚はスケール5の慧眼の魔術師でありこの状況でペンデュラムスケールをセッティングできない。

 

―――場合によっては最後の伏せカードを開くしかないな。

 

 デメリットが強烈過ぎてあまり発動させたくはないカードなのだがこの状況で出し惜しみなどできる訳が無い。

 たった1ターンでリペントの場は更地になり、ライフを36000も減らしたのだ。

 次のリペントのドロー次第では流れが相手に持っていかれてしまうだろう。

 だからこそ、

 

「流石は君達だ、今、私は決闘を心の底より楽しく思うぞ。これが決闘だ!」

 

リペントは笑うのだ。

 

―――これほど面白いことは無い!

 

 声を挙げ、心の底から大きく笑い声を張り上げる。

 

「伏せカードが無ければ即死級の攻撃を叩き込まれる、伏せカードがあっても相手が良いカードを持っていれば逆転される。素晴らしい!」

 

 一瞬で36000を削り取る、だからどうした。

 まだ自分達のライフは0になっていない。

 それだけなのか、それが君達の全力なのか、そうではない筈だ。君達の全力がこんなものの筈が無い。

 期待に胸躍らせリペントはまだ見ぬ遊馬達の全力を期待する。

 

「まだだ、私たちのライフはまだ半分以上も残っている! 君達の今の全力は素晴らしい。だが、しかしまだだろう。未来に希望を持つ君達の力がこんな者の筈が無い、そんなちっぽけな夢で私達が浸れるものかぁっ!」

 

 願いを、それにこたえるデッキの力を見せろ、そうリペントは吠え、その期待を代行する様にプラネタリーがカードをドローする。

 そして来てくれたか、そう呟き、手札に持って居たカードを発動させる。

 

「儂は手札より速攻魔法、月の書を発動。冀望皇バリアンを裏側守備に変更じゃ」

 

「なっ!?」

 

 遊馬はたじろぐも動かない。

 動けないのか、それとも動けないのか、それの判断に一瞬だけ悩むもプラネタリーは今、デッキがくれたカードを手にし、無を作り出す。

 

「まずは無をここに、永続罠、虚無械アインを発動じゃ!」

 

「そのカードは!」

 

 裕は驚愕と焦りの表情を受けべ、声を挙げる。

 永続罠より放出された光が形作られるはシンクロ召喚に似た金色の輪。

 その輪へとリペントは今、ドローしたカードを投げ入れる。

 

「このカードが存在する限り儂の場のモンスターの攻撃力が0になる。じゃが儂の場にモンスターが存在しない場合、リリース無しでレベル10のモンスターをアドバンス召喚出来る、儂は時戒神ラツィオンをアドバンス召喚!」

 

「やべっ!?」

 

 裕の表情が一気に青ざめ、遊馬を見るも、遊馬の手はカードを発動させない。

 そうしていくうちに紅い鎧がカードより構築されていく。

 肩の部位に焔を宿し青白い翼を動かし1体の天使が裏側守備になっている冀望皇バリアンへと突進する。

 

「おぬしらのデッキにモンスターの攻撃を止めるカードは入っておるまい、そしてモンスターゾーンは全てモンスターで埋まっておる。エクシーズ・リボーンを使いホープは特殊召喚出来ないじゃろう。バトルじゃ、時戒神ラツィオンで冀望皇バリアンを攻撃!」

 

 焔が肩より溢れ出し、裏側になっているバリアンへと襲い掛かるも遊馬の手は動かない。

 溢れだした焔は波となり遊馬の場、そして墓地を焼き尽くしていく。

 

「そしてバトル終了時、ラツィオンの効果発動、場の全てのモンスターと墓地の全てのカードをデッキへと戻すのじゃ!」

 

「なぁっ!?」

 

 放たれた焔の波によって全てが一掃された場を見、遊馬は言葉を失い、裕も絶句し立ち尽くしている。

 2人の心にあるのはあれだけの布陣が一瞬で覆された衝撃、そして相手のライフがまだ6万もあるという事実だ。

 それが遊馬と裕の心を折り抜かかる。

 どれだけ攻撃力を挙げようとも、どれだけ盤面を整えようとも時戒神の持つ効果はそれを軽々と飲み込み、打ち払う。

 それはある意味、いつものデュエルと言えるかもしれないのだが、それでもこの状況でそんな簡単に口に出来る状況ではない。

 

「儂はこれでターンエンドじゃ」

 

リペント・プラネタリー場 時戒神ラツィオン ATK0

LP60200         連撃の帝王

手札2・1         冥界の宝札

             錬成する振動

             虚無戒アイン

             機殻の要塞

クリフォート・アセンブラ(スケール1) 

 

遊馬・裕場    天輪鐘楼

LP4800     伏せ1

手札2・2    

 

 そして裕はふとこれと似たような状況が何回もあった事を思い出す。

 

―――お前は俺と同じような刹那しか考えを巡らせらんねえ馬鹿だろ、だったら前しか見れねえんだ、後ほかを見ようとすんな、前しか見んな、俺らプロが大切にするのはカードと信念と勝つ事を信じる心だ、お前にはそれが足りねえ。

 

 除去ガジェを使ってきた藤田プロの言葉に賭けられた言葉を思い出し、まだだ、そう裕は口にする。

 

―――俺と同じように奪われて、勝って奪い返した人間がいるなんて、俺が自分が許せなくなるだけじゃねえか、俺はどうしてあの時負けたんだよ! お前みたいにデッキを信じて願っても叶えられなかったことがどうしてお前が出来るんだよ! 終われよ、終わっちまえよ。過去を変えなくっちゃ俺は変わらねえ、勝った人間が何を言おうとも俺の考えを変えることなんてできるもんか!

 

 次に思い出すのは裕を本気で殺そうとし、そして最後の力を裕に託したクェーサー厨だ。

 彼の願いを裕は自分のために砕いた。だからこそ、彼に全てを取り戻させる手伝いをする。そう決めたのだ

 その結果、たとえ自分がどのようになろうとも後悔はしない。その為に今できる事をするべきだ。

 そう歯を食いしばり裕はまず、時械神がどれだけ召喚、特殊召喚されたのか確認する。

 

―――時戒神は4体、まだ究極時械神は出てこれねえ、んでもって俺が使えそうなカードは鐘楼とジェット・シンクロンか。

 

 レベル・スティーラーはヌメロン・ドラゴンの効果を発動する際に墓地に送られてしまい今は遊馬のデッキの中だ。

 ついでにいえばフォーミュラ・シンクロンもジャンク・デストロイアーもだ。

 ライブラリアンだけが墓地にあるも今の裕の手札には蘇生させるカードは無い。

 

―――今、俺がすべきことは次の遊馬のターンに回す事、ついでに欲を出すならばなんか、こう、一発逆転できそうなカードか、大嵐!

 

 大嵐来い、大嵐来い、大嵐来い、大嵐来い!! 眼を閉じ、必死で念じながららドロー、眼を恐る恐る開け、

 

「相手がドローフェイズにカードをドローしたこの瞬間、時械神ラツィオンのモンスター効果発動、相手に1000ポイントのダメージを与える」

 

 焔がぶち込まれた。

 裕の視界を埋め尽くす焔の波が裕の体に絡みつく。

 

「熱っ!?」

 

 体を焦がす焔を裕は地面に転がり消化を試み、なんとか火が消えた事を確認すると裕は今、ドローしたカードを見る。

 

「あー、まあしょうがねえな! 次、頼むぜ……カードを1枚伏せてターンエンドだ」

 

 僅かに肩を落とすも、いつもの事だ。と呟きターンを終える。

 

遊馬・裕場   

LP3800     伏せ2

手札2・2    天輪鐘楼

 

リペント・プラネタリー場 時戒神ラツィオン ATK0

LP60200         連撃の帝王

手札2・1         冥界の宝札

             錬成する振動

             虚無戒アイン

             機殻の要塞

クリフォート・アセンブラ(スケール1) 

 

「私のターン、時戒神ラツィオンはスタンバイフェイズにデッキへと戻る」

 

 紅い鎧の天使が焔の塊となりリペントのデッキへと戻っていき、リペントは流れるような手つきで手札のカードを発動させる。

 

「私は金欲な壺を発動、私の墓地に存在するクリフォート・ゲノム、アーカイブ2体をデッキに戻し2枚ドローする」

 

 ドローしたカードを見て眼を細めたリペント、それを見て裕は身構える。

 今まで裕の対戦してきた相手はこういう状況でドローしたカードがどのような結果を作るかなど裕の骨の髄まで沁みこんでいる。

 ぶん回しだ。

 

「私はスケール9のクリフォート・ツールをペンデュラムゾーンにセッティング。これで私はレベル2から8までのクリフォート達を同時に特殊召喚可能となった」

 

「増殖するGを発動!」

 

 行動を阻害するカードを放つも、

 

「ライフを800支払いツールのペンデュラム効果を発動、アポクリフォート・キラーを手札へと加える」

 

「来るか、アポクリフォート!」

 

 クリフォートの最上位に位置するアポクリフォート、その他の神よりも遥かに強烈な耐性を裕は良く知っている。

 そしてプラネタリーのデッキには未だ効果も知らないアポクリフォートが眠っている事を思い出すも、それを気にする余裕は裕には無い。

 

「醜悪と不安定の狭間で揺れ動く振り子よ、再びあちらとこちらを結ぶ門を描き、開き給え、ペンデュラム召喚! 現れろ。クリフォート・アセンブラ、クリフォート・エイリアス、クリフォート・シェル2体、クリフォート・アクセス」

 

「くっ」

 

 現れた機殻の群れは全て守備表示だ。

 虚無械アインが表側で存在する限りリペントの場に現れるモンスター達は全て攻撃力が0になってしまう為、当然と言えば当然の行動である。

 そして今より姿を見せるモンスターは魔法罠カードの効果を受けない最高レベルの耐性を持つ機殻だ。

 

「機殻の要塞の効果で3体のクリフォートモンスター、アセンブラ、エイリアス、アクセスを生贄に捧げ、物質主義の悪徳担いて現れ給え」

 

 3体の機殻達が大地に突き刺さり潜り、姿を消していく。

 そして地中深くより錆びついた歯車を動かす音が響き始める。

 聞く者の不安を掻き立てるその響きは強く鋭く、地響きと共に強くなっていく。

 

「アポクリフォート・キラー!」

 

 大地が4つに隆起しその内より姿を現すは4つの白黒の脚、そしてその4つの脚を結んだ中心が噴火したように膨れ上がり、砂と土砂をまき散らしながら要塞機殻が姿を現した。

 緒戦的な笑みをうかべるリペントは裕の手札を指差し、

 

「アポクリフォート・キラーの効果発動、相手は手札または場よりモンスターカードを墓地に送らなければならない!」

 

 今裕の手札にあるのは2枚、先程引いたカードは色は緑、よって裕が墓地に送るのは、

 

「ぐっ、俺が墓地に送るのはクイック・シンクロンだ」

 

「私は更にクリフォート・シェルをリリースし光帝クライスをアドバンス召喚」

 

 攻撃力が0にならないアポクリフォート・キラー、そして更に出現した帝の姿に裕はうげ、と声を漏らす。

 

「アドバンス召喚に成功したクライスの効果発動、場の冥界の宝札と錬成する振動を破壊し2枚ドロー」

 

 カード効果が無効になり邪魔物と化していたカード達を処理し手札を増やしたリペント。

 だが虚無械アインを破壊すれば攻撃力は元に戻る。

 先ほどのペンデュラム召喚の際に攻撃表示で特殊召喚しなかった理由を裕は考えようとし、要塞機殻の腹にエネルギーが溜まっていくのを見る。

 

「バトルだ、アポクリフォート・キラーで直接攻撃!」

 

 先程セットしたカードを発動指せようかと悩むも、モンスターを特殊召喚しライフが残るのと今、自分がライフを削ってでも遊馬がここで欲しいと思うモンスターを特殊召喚するのとどちらがいいかを考え、攻撃を受ける。

 

「ぐぅっ、ああああ!」

 

 砲撃が裕へとぶち込まれ、裕は吹っ飛ばされてしまう。

 固い地面に何回かリバウンドし転がる裕を見ながらリペントは、

 

「私はカードを3枚伏せてターンエンド。そしてクリフォート・アセンブラのペンデュラム効果を発動、リリースしたクリフォートモンスターは4体。よって4枚ドローする」

 

リペント・プラネタリー場 アポクリフォート・キラー ATK3000

LP60200         クリフォート・ディスク DEF1000

手札5・1         光帝クライス ATK0

             虚無戒アイン

             連撃の帝王

             伏せ3

             機殻の要塞

クリフォート・アセンブラ(スケール1)    クリフォート・ツール(スケール9)

 

遊馬・裕場   

LP800     天輪鐘楼

手札2・1    伏せ2

 

 咳き込み、口に入った砂を唾と一緒に吐き出しながら立ち上がった裕を見て遊馬は安堵の息を吐き、デッキへと手を置く。

 時戒神ラツィオンの効果のせいでいつもよりも厚みを増したデッキからキーカードをドローできるのか不安になる。

 手は僅かに強張るも、いつも心の中に輝くかっとビング精神を唱え、

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 ドローしたカードを手札に加え、

 

「オノマト連携を発動、手札のレベル・スティーラーを墓地に送りデッキよりガガガシスターとゴゴゴゴーレムを手札に加える。そして永続罠、リビングデットの呼び声を発動、俺は墓地からクイック・シンクロンを特殊召喚するぜ!」

 

 墓地に送ったカード、今、特殊召喚したチューナー、そしてエクストラデッキにあるシンクロモンスターを確認し、遊馬は裕を見る。

 何分初めての行動の為に失敗しない様に効果をよく確認しながら、シンクロ召喚を連打する裕を真似て声を挙げる。

 

「行くぜ裕! 俺は墓地からレベル・スティーラーの効果発動、クイック・シンクロンのレベルを1つ下げてこのカードを特殊召喚、そしてレベル1のレベル・スティーラーにレベル4となったクイック・シンクロンをチューニング!」

 

 空へと上る輪と星。それらは遊馬の初となるシンクロ召喚の光だ。

 

「シンクロ召喚、現れろ、ジェット・ウォリアー!」

 

 輪の中より背中のバーナーを噴出させながら飛び出すのは黒い機械戦士、そして初のシンクロ召喚を祝福する鐘が鳴り響いていく。

 

「天輪鐘楼、ジェット・ウォリアーのモンスター効果! このカードがシンクロ召喚に成功した時、相手の場のカードを1枚手札に戻す、俺が戻すのはペンデュラムカード、クリフォート・ツールだ!」

 

「伏せカードオープン、速攻魔法、揺れる眼差し。場のセッティングされているペンデュラムカードを全て破壊し、破壊した枚数分の効果を適応させる。破壊したペンデュラムカードは2枚、よって相手に500ポイントのダメージを与えデッキよりペンデュラムカードを手札に加える」

 

 これによってリペントは特殊召喚が可能となった。

 それを理解し裕はま、さか、と呟き、そして遊馬は不安を振り切る様に裕の如く加速を行う。

 

「俺はジェット・ウォリアーのレベルを下げてレベル・スティーラーを特殊召喚、そしてガガガシスターを召喚、デッキよりガガガリベンジを手札に加える!」

 

 遊馬の墓地にはショック・ルーラーのオーバーレイユニットとなっていたガガガマジシャンが存在する。

 そして今、遊馬の場にはレベル4となっているジェット・ウォリアーが存在する。先ほどの流れを知る者がこの場を見れば次にエクシーズ召喚されるモンスターがなんなのか想像できるだろう。

 

「そしてガガガリベンジを発動、墓地より甦れガガガマジシャン! ガガガマジシャンの効果発動、レベルを2に変更しガガガシスターの効果でガガガシスターとガガガマジシャンのレベルを4にする!」

 

 リペントは動かない。

 リペントが伏せた3枚のカード、その中には墓地より回収した神の写し身との接触と影依の原核のどちらか、またはその2つが伏せられているはずなのだ。

 あるかもしれない不明の伏せ1枚、それがなんなのかが遊馬は気になるところだが、リペントが開かない以上、わかる訳が無い

 

「俺はレベル4となっているジェット・ウォリアー、ガガガシスター、ガガガマジシャンでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚! 再び現れろ、No.16色の支配者ショック・ルーラー!」

 

 再び現れた異形の天使、それを見てもリペントの笑みは深まるばかりだ。

 

「更に手札を1枚墓地に送る事で墓地よりジェット・シンクロンを特殊召喚する! そして機械複製術を発動、デッキより2体目のジェット・シンクロンを特殊召喚だ!」

 

 特殊召喚されるレベル1のモンスター群、そして遊馬は厚くなったエクストラデッキより白い枠のカードを手に取る。

 

「レベル1のレベル・スティーラーにレベル1のジェット・シンクロンをチューニング、シンクロ召喚、フォーミュラ・シンクロン!」

 

 鐘の音、そしてフォーミュラの巻き起こす風が遊馬の手札を増やしていく。

 遊馬はドローした手札を見、場を見、そしてエクシーズ素材となっているモンスターの効果発動かを見て次の行動へと移る。

 

「そしてショック・ルーラーの効果発動、オーバーレイユニットを使い相手のターン終了まで魔法カードを発動できなくさせる!」

 

「運が悪いね、私は手札よりエフェクト・ヴェーラーのモンスター効果だ!」

 

 この効果が通れば流れをこちらに引き寄せることが出来たのだが止められた。

 だが止められたものはしょうがないと気を取り直し、

 

「だったら俺は速攻魔法、銀河再誕を発動、墓地より甦れ銀河眼の光子竜!」

 

「また光子竜皇かな?」

 

 銀河再誕は墓地のギャラクシーモンスターを特殊召喚しそのモンスターの装備カードとなりエクシーズ素材とする時、そのモンスターと同じレベルとして扱う事の出来るカードだ。

 今の銀河眼のレベルは8、火力が求められるこの状況でそのカードを出すのは在りうる話だが、

 

「いいや、俺は銀河眼のレベルを1つ下げてレベル・スティーラーを特殊召喚する。そして俺はレベル7となった銀河眼の光子竜とエクシーズ素材として使う事の出来る銀河再誕でオーバーレイネットワークを構築! エクシーズ召喚!」

 

 現れるのは巨大な目玉、それより触手が伸び円錐型の体が構築される。

 そのモンスターを目にして、裕の顔は微妙に引きつるも、遊馬はそれに気づかず、

 

「現れろ、No.11ビッグアイ! レベル1のジェット・シンクロンとレベル1のレベル・スティーラーでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚! No.100ヌメロン・ドラゴン!」

 

 銀河が咲、そして爆発を連打していく。

 その内より生まれるのは遊馬の手にしてきた様々なランクのモンスターエクシーズ。

 それを目にしリペントの笑みは更に明るいものへと変わっていく。

 

「さあ次はどうする? まだだろう、まだこんなものではないはずだ!」

 

「ワンダーワンドをビッグアイに装備、そしてビッグアイのモンスター効果発動、オーバーレイユニットを使い相手のモンスターのコントロールを得る。俺が得るのはクリフォート・ディスクだ!」

 

「光帝ではなくディスク? となるとランク4が狙いか!」

 

 特殊召喚されたクリフォート・ディスクのレベルは4、だが遊馬がしたいのはそれではない。

 遊馬はワンダーワンドを装備させるためにビッグアイを出した、その上でランク4の素材となりそうなカードのコントロールを奪ったのだ。

 

「ワンダーワンドとビッグアイを墓地に送り2枚ドロー! 俺はインフィニティ・トゥースを発動、俺の場のオーバーレイユニットは4つ、よってデッキの上から4枚を墓地に送り1枚カードをドローっ!」

 

 これでめぼしい物が落ちなければ遊馬の動きはこれで終わってしまう。

 そうなればこの中途半端な状況では何もつなげられない。

 

―――だから、頼む、来い!

 

 遊馬は祈る様にデッキに手を当て、デッキの上から4枚のカードを抜き、墓地に送る。

 そしてそれを見て、遊馬の顔に安堵が浮かぶ。

 

「来たぁっ! 俺は装備魔法、ガガガリベンジを発動。墓地より甦れ、ガガガマジシャン! そして俺は墓地よりジェット・ウォリアーのモンスター効果を発動! 場のレベル2、フォーミュラ・シンクロンをリリースする事で墓地よりこのカードを特殊召喚する」

 

「シンクロからのエクシーズか!」

 

「俺はガガガマジシャンのレベルを5に変更、そしてレベル5のジェット・ウォリアーとレベル5となっているガガガマジシャンでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚!

 

 渦に吸い込まれた、出現するのは茶の岩肌を見せる卵型のモニュメント、その中より噴出するのは煮えたぎったマグマだ。

 赤い奔流は形を変え、恐竜の手足、体を構築していく。

 

「No.61ヴォルカザウルス!」

 

 更に動きはそれだけでは終わらない。

 遊馬の墓地より光が漏れだし、紋章の形を作り出していく。

 

「更に墓地に送られているRUM-アージェント・カオス・フォースの効果発動、俺の場にランク5以上のモンスターエクシーズがエクシーズ召喚された時、このカードを墓地より手札に加える。そして俺はヴォルカザウルスのモンスター効果発動、オーバーレイユニットを使い相手モンスターを破壊してその元々の攻撃力分のダメージを与える! 俺が破壊するのは光帝クライスだ! マグマックス!」

 

 紅蓮の熱線が光帝を貫き、爆散する。

 

「そしてRUM―アージェント・カオス・フォースを発動、俺の場のランク5以上のモンスターをカオス化させる! ランクアップ・カオスエクシーズチェンジ!」

 

 煮えたぎるマグマはカオスの渦によって分解、再構成されていく。

 紅蓮に煮えたぎる体は激流を纏う屈強な男の体へと、赤々と輝く瞳は錫杖へと姿を変え、カオスの渦の中より雄たけびを上げながら大地を踏み締める、

 

「CNo.73! 渦巻く混沌の水流を突き破り、今、かの地へ浮上せよ! 激瀧瀑神アビス・スープラ! そして俺の場に水属性モンスターが存在するこの時、俺は手札よりサイレント・アングラーを特殊召喚する」

 

 紅蓮の熱波からの膨大な激流が生まれ、その波の中より1頭の鮫が姿を現す。

 並び揃うはレベル4のモンスター達、それを目にし、リペントは嬉々とした声を上げる。

 

「レベル4が2体、来るか!」

 

「俺はレベル4となっているクリフォート・ディスクとサイレント・アングラーでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚!現れろ、No.39希望皇ホープ! そしてエクシーズ・トレジャーを発動、場には4体のモンスターエクシーズ、よって4枚ドロー!」

 

 手札補充を終え、遊馬はヌメロン・ドラゴンの効果発動、その上で攻撃を仕掛ける。

 

「バトルだ! ヌメロン・ドラゴンでアポクリフォート・キラーを攻撃!」

 

 ヌメロン・ドラゴンの口に溜まったエネルギーはその輝きを増していく。

 狙うは巨大な要塞機殻だ。

 要塞機殻もその動きに対抗すべく砲撃をばら撒くも、それよりも先にエネルギーのチャージが完了する。

 そして、閃撃が放たれる瞬間、その射線上に飛び込むのはホープだ。

 

「この瞬間、希望皇ホープのモンスター効果発動、オーバーレイユニットを使い攻撃を無効にする!」

 

「このタイミングでそれを使うと言う事は!」

 

 このタイミングでのホープの効果、遊馬の必殺のコンボを知るものならばすぐさま思い浮かべるエースと速攻魔法が今、叩き込まれようとしている。

 

「そして速攻魔法、ダブルアップ・チャンスを発動! ヌメロン・ドラゴンで再びアポクリフォート・キラーを攻撃! この瞬間、アビス・スープラのモンスター効果発動、カオスオーバーレイユニットを使いバトルする相手モンスターの攻撃力分、攻撃力をアップする!」

 

 激瀧瀑神の掲げる錫杖より聖なる水がホープの体を覆っていく。

 そしてヌメロン・ドラゴンの閃撃を背中に受け、そのエネルギーを自分の持つ剣に集めていき、聖なる水はレンズの役割を果たし光を一切逃さず収束し要塞機殻の大きさを遙かに越える巨大な光剣を構築する。

 それを振りかぶりホープは今なお砲撃をばらまいていく機殻を肉薄し、

 

「いっけぇホープ、ホープ剣・ヌメロン・スープラ・スラッシュ!」

 

 光剣を振り上げ、要塞機殻の大砲撃もろとも両断した。

 

No.100ヌメロン・ドラゴン ATK15600→33700 VS アポクリフォート・キラー ATK3000

破壊→アポクリフォート・キラー

リペント・プラネタリー LP60200→29500

 

「そしてアビス・スープラ、ショック・ルーラー、ホープで直接攻撃!」

 

 水のメイスが、光線が、剣がリペントの体を焼いていく。

 全ての攻撃を終え、リペントのライフは21100まで減っていた。

 

「俺はカードを2枚伏せてターン」

 

 エンド宣言をしようとする遊馬、そしてリペントの場に浮いていた輪が爆光を放つ。

 

「無より形作られよ無限の力! 今こそ現れ、我が場に天の御使いを光臨させ給え! 私は永続罠、虚無戒アインを墓地に送り永続罠、無限械アインソフを発動! 私は手札よりレベル10のモンスターを特殊召喚出来る!」

 

 1つの輪は2つに分かたれそれぞれが渦のような力場を発生させながら光を生み出していく。

 

「私は手札より時戒神ザフィオンを特殊召喚する!」

 

 特殊召喚されるは5体目の時械神、その出現によりリペントの背後に5つと9つの玉が薄ぼんやりと輝き始める。

 あれだけの展開をし、あれだけの猛攻をしようともリペント達はまだ切り札を見せていない。

 ここまでが折り返し地点でありここからがリペント達の本番だ。


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