クェーサー厨が行かされる難易度ちょっとハードモード   作:TFRS

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足掻く者達

 プラネタリーはリペントが楽しそうに笑う姿を後ろから眺めていた。

 

―――彼がここまでで楽しそうに笑うのはいつごろ以来かのう。

 

 最期に彼の笑みを見たのはまだ彼女がリペントの隣に居た時間だ。

 彼女が喪われる前、ただひたすらに決闘を愉しんでいた日々だ。

 そして彼女が身を投げ、リペントは笑わなくなった。

 その後、ひたすらに憑りつかれたように決闘を続け、楽しくもなんともない表情で手札と睨めっこしていたリペントの変わり果てた姿しか思い出せない。

 

―――だが彼は今、笑っている。楽しそうに。もうすでに目標と呼べるものは無くなっている。リペントが現れ遊馬へと問いかけた時点で終わっているのだ。

 

 リペントは遊馬に勝てば今までの歴史を無かった事に書き換える。そして終わらない日々を続けるだけだ。

 そしてリペントが負けたとしても遊馬が喪われた人々を救おうと努力するだろう。

 遊馬へと感情論を訴えかけ、彼へと重い選択を取らせたのは遊馬の心にまだ理不尽に不幸になった者がいる事を刻みたかっただけなのだ。

 故にリペントは全力でこの決闘を愉しんでいる。

 全ての重圧、責任、託された願い、後悔、全てをしがらみを捨てたリペントの顔はプラネタリーが今まで見た中で一番明るい。

 目が爛々と輝き、相手がこれからどうするかを本気で考え、それをどう対処するかを考える事に酔っている。

 そう友人と周囲の事に考えを巡らせていると、プラネタリーの決闘盤が点灯する。

 

「さて、儂のターン」

 

 リペントはカードをドローした。

 手札を見、そして今の場を見渡し、

 

「儂はスケール7のエキセントリック・デーモンをペンデュラムゾーンにセッティングしようかのう」

 

「スケール7だと?」

 

 アストラルはプラネタリーのセッティングしたペンデュラムカードを見、いぶかしげにつぶやく。

 それはそうだろう、すでにスケール12のPSブラック・サンがセッティングされている状況でスケール7なんて展開した所でレベル8から11までのモンスターしか特殊召喚できない。

 それを行う時は、手札に時械神を貯め込んでいる場合のみだろう。

 リペントはすぐに疑問を口にするアストラルをなだめすかすように優しげな言葉をかける。

 

「急くでない、と前にも言ったんじゃがのう。エキセントリック・デーモンのペンデュラム効果を発動じゃ、このカードと場の魔法罠カードを選択しその2つをカードを破壊するのじゃ!」

 

 柱に閉じ込められた奇抜な格好の悪魔が手より稲妻を発生させ遊馬の伏せへと放つ。

 それを受けた遊馬は即座にその対象とされている伏せカードを開き、声を挙げる。

 

「罠カード、ディメンションUターン! このカードは除外されているモンスターを特殊召喚できる。俺は除外されているジェット・シンクロンだ!」

 

 次の裕のターンのためだろう、有能なチューナーを特殊召喚する。

 

―――あのチューナーは残すとまずいのう。

 

 プラネタリーは口元に手を当て、僅かに考え、そしてリペントが残したモンスターを見る。

 

「ほう、これは良いカードじゃな。まずは儂は貪欲な壺を発動じゃ、墓地のアポクリフォート・カーネル、グスタフマックス、クイーン・ドラグーン、エルシャドール・ネフィリム、シャドール・ビーストをデッキへと戻し2枚ドローじゃ」

 

 これによりプラネタリーはリペントが残すカードをある程度、使用できるようになった。

 ドローしたカードへと目を落とし、ふむ。と一息を吐き、

 

「儂はスケール4のEMトランプ・ウィッチでペンデュラムスケールをセッティング! これで儂はレベル5から11までのモンスターを同時に特殊召喚可能となったわけじゃ」

 

 展開された2つの柱、それらの中央に振り子が構築され揺れ始める。

 空に描かれ始める陣を目にし遊馬は手札を1枚、抜き、

 

「俺は手札より増殖するGのモンスター効果を発動する!」

 

「構わん、いくら手札を展開しようともこのライフ差と物量で押し切るのみじゃ、融け合わせの力持ちし魔女と黒き輝きを放つ陽光の元、揺れよ、魂のペンデュラム」

 

 遊馬の妨害の動きは無い。

 元より遊馬はドローやモンスターエクシーズを蘇生させるカードを多めに入れている事はプラネタリーもリペントも理解している。

 遊馬のなんとしても未来に繋げようと努力していくスタイルはしぶといとも諦めが悪いとも言えるものだ。

 だが、

 

―――だが、それが良い。このターンを凌ぎ切り儂らのライフを削り取れるのならばやってみるがよい。手札はいくらでも与えよう!

 

「ペンデュラム召喚、現れよ、相克の魔術師、竜穴の魔術師、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン、そして手札より賤竜の魔術師。そしてここで特殊召喚された賤竜の魔術師の効果発動じゃ、このカードが特殊召喚に成功した時、墓地より魔術師またはオッドアイズペンデュラムカードを手札に加えることが出来る、儂が加えるのはオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンじゃ」

 

 手札、エクストラデッキより特殊召喚された多量のモンスター達、それらは除外やバウンスを行わなければ何度でも立ち上がって来る不死身の軍勢だ。

 そしてレベル7が3体というこの状況を見、先程の連続エクシーズが思い出されたのだろう。

 アストラルが遊馬へと注意を促す。

 

「レベル7が3体、遊馬、来るぞ!」

 

―――残念ながら違うのじゃがな。

 

「儂はEMトランプ・ウィッチのペンデュラム効果発動。儂は1ターンに1度、場のモンスターで融合召喚を行うことが出来るのじゃ!」

 

 柱の中より少女がデフォルメされたドクロのステッキを振る。

 そこよりは呼び出されるは赤黒のトランプの絵柄達、色鮮やかに空を舞い、場の2体のモンスターへと降り注ぐ。

 

「オッドアイズモンスター、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンとペンデュラムモンスター、竜穴の魔術師で融合召喚を行う!」

 

 赤黒の渦の中、オッドアイズの中へとペンデュラムモンスターの力が吸収されていく。

 光り輝く渦によって融け合わさった2つの力は雷と暴風を纏う黄緑の色鮮やかな竜を生み落す。

 

「雷と暴風纏いて渦の中より戦場へと馳せ参じよ、オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン!」

 

 渦より生まれ落ちたその竜は4つの羽を展開し、遊馬達へと唸りをあげる。

 そして翼をはためかせ暴風を作り出した。

 

「ボルテックス・ドラゴンの効果発動、このカードが特殊召喚に成功したとき、相手の特殊召喚されたモンスターを手札へとバウンスする!」

 

「ホープレイVが!」

 

 オッドアイズの発生させた暴風がホープレイVを巻き上げ遊馬へと突き落とす。

 

「そしてエフェクト・ヴェーラーを召喚」

 

「チューナー!」

 

「やべえ、アーカナイト・マジシャンだ!」

 

 裕はレベル6の魔法使い族が居て、レベル1のチューナーが召喚された瞬間、真っ先に出てきそうなカードを叫ぶ。

 実際それが出て来ても大打撃は必須だろう。

 だがプラネタリーあはそれよりももっと酷いシンクロモンスターを呼び出そうとしていた。

 

「儂はレベル6の賤竜の魔術師にレベル1の光族チューナー、エフェクト・ヴェーラーをチューニング!」

 

 空へと上りる6つの星、そして明るい黄色の光を放ちながら空へと昇っていく1つの輪、その輪の中をくぐり抜け、異なるレベルのモンスター達が手を取り合い新しき力を構築していく。

 

「シンクロ召喚、現れよ。命見定めし太古の翼竜よ、今こそその翼を広げこの世界を席巻せよ、シンクロ召喚、レベル7、エンシェント・ホーリー・ワイバーン!」

 

「は?」

 

 シンクロ召喚されたモンスターを見、裕は口を大きく開けたまま動きを止める。

 輪の中より解き放たれた翼竜は宙を優雅に泳ぎ、そして徐々に近づいてくる。

 その巨体はヌメロニアス・ヌメロニアをも凌ぐほどに巨大であり、一目で危険だと思わせる迫力がある。

 

「エンシェント・ホーリー・ワイバーンは儂らのライフが相手よりも上の場合、儂らと相手とのライフの差分、攻撃力をアップさせる。よって攻撃力は11万2100じゃ」

 

 ヌメロニアス・ヌメロニアを超える攻撃力を持つ白き翼竜がゆっくりと地面に足を降ろした。

 だがたかが攻撃力11万越えのモンスターを出した所で誇る事ではない。

 故に更にもう一手を叩きつける。

 

「そしてセットされていたモンスターを反転召喚、現れよ、時戒神カミオン」

 

 セットされていたカードが開き、中より茶色の鎧が出現する。

 雄雄しさを感じさせる鎧、その背後に茶と黒と白の翼が展開し鎧の中央に厳つい男性のような顔が浮かび上がる。

 

――-ヴィクトリーをカミオンで除去してエンシェントで直接攻撃を仕掛けてもよいが、ガガガガードナー等のカードで防がれても困るしのう。

 

「バトルじゃ、エンシェント・ホーリー・ワイバーンで希望皇ホープレイ・ヴィクトリーを攻撃!」

 

 ホープレイ・ヴィクトリーのオーバーレイユニットにホープがある。

 つまりエクシーズ・リボーンなどで防御の要となるホープを特殊召喚することは出来ない。

 そして、

 

「させるか! 俺は和睦の使者を発動! 俺はこのターン」

 

 開く防御用のカード、

 だがそれはプラネタリーも予想していた事だ。

 

「こちらこそさせぬ、儂はオッドアイズ・ボルテックス・ドラゴンの効果発動、儂のエクストラデッキに表側で存在するペンデュラムカード、貫竜の魔術師をデッキに戻し発動された効果を無効にし破壊する!」

 

 元よりレベル3のモンスターはこのデッキではペンデュラム召喚しにくい部類に入る。そしてこのカードは手札か墓地にあってこそ真価を発揮する物でありエクストラデッキにあった所であまり意味は無い。

 

「罠カード、ガードローを発動! ホープレイ・ヴィクトリーを守備表示にして1枚ドローする!」

 

 ここで相克の魔術師のモンスター効果を使えば確実にホープレイヴィクトリーは破壊できる、だが相手の墓地にはまだディメンションUターンがある。

 プラネタリーはそこまで考え、バーンダメージを取る。

 

「ならば時戒神カミオンで攻撃!」

 

 手の中より巨岩が発生しホープレイ・ヴィクトリーへと叩き込まれる。

 それは攻撃力が0とは思えないほどの轟音を立て、ヴィクトリーを直撃した。

 

「時戒神カミオンの効果発動、このカードが戦闘を行ったバトル終了時、相手の場のモンスターカードを全て、デッキへと戻す!」

 

「だったら俺は墓地よりディメンションUターンのもう一つの効果発動、このカードを除外して場のモンスター1体をこのターン終了時までゲームから除外できる! 俺が除外するのはジェット・シンクロンだ!」

 

 裕の為に遊馬は相棒ではなく裕の仲間を除外する。

 裕の場にオーバーレイユニットの無いホープレイ・ヴィクトリーを残した所でただの壁にしかならない以上、それが一番の選択と言える。

 

「更にデッキへと戻した枚数分×500ポイントのダメージを相手に与える! 戻した枚数は1体、よって500ポイントのダメージじゃ!」

 

「更にバトルじゃ、オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴンで直接攻撃!」

 

「俺は速攻のかかしのモンスター効果を使う、このカードを手札より捨て、バトルフェイズを終了させる!」

 

 遊馬の手札より発射されたかかしがオッドアイズの作り出した雷と風の渦へと着弾、対消滅を引き起こす。

 決めきれない事を予想していた、プラネタリーは頷き、

 

「儂はこれでターンエンドじゃ」

 

リペント・プラネタリー場  オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン ATK2500

LP116000         相克の魔術師 ATK2500

手札7・2         エンシェント・ホーリー・ワイバーン ATK115000

              時戒神カミオン ATK0

              連撃の帝王 

              冥界の宝札

              錬成する振動

              機殻の要塞

PSブラック・サン(スケール12)       EMトランプ・ウィッチ(スケール4)

 

遊馬・裕場     ジェット・シンクロン DEF100

LP6000       

手札4・2      伏せ1

 

「俺のターン!」

 

 裕は叫び、力いっぱい、ドローする。

 相手のライフは11万、相手の場には攻撃力が11万越えのモンスターと一回こちらのカード効果を無効にしてくる竜と光属性モンスターの効果を無効にしてくる魔術師がいる。

 並大抵の決闘者ならば膝を折る所なのだろう。

 ライフ11万といえば普通に攻撃力3000のモンスターで37回攻撃しないといけない、そして相手のターンには時械神とペンデュラム、そしてNo.達が襲ってくるのだ、どう考えても勝てる見込みがない。

 だが裕は違う。

 

―――つまりはクェーサーで28回攻撃すればいいんだろ、欲を出して言えば団結の力を装備させて5体並べて攻撃すれば14回で済む、行ける、行ける! 追い詰められるなんていつもの事だし妨害札が少ない分、楽勝だな!

 

 裕はとことん前向きである。

 前を向き、とりあえず地雷原を駆け抜けやる事をやるだけだ、と言わんばかりに今ある手札でまず、邪魔なモンスターを蹴散らしにかかる。

 

「俺は墓地の輝白竜を除外して暗黒竜を特殊召喚! そしてレベル4の暗黒竜にレベル1のジェット・シンクロンをチューニング! シンクロ召喚、レベル5、ジェット・ウォリアー! ジェット・ウォリアー、そして墓地に送られた暗黒竜の効果発動!」

 

 裕は知っている。

 クェーサーと同じく効果の発動を無効にするというカード効果は直前の効果しか無効にできない事を。

 

「なるほどのう、ならばボルテックスの効果発動、儂のエクストラデッキ、エキセントリック・デーモンをデッキに戻し、暗黒竜コラプワイバーの効果を無効にし破壊する!」

 

「貪欲な壺を発動。墓地のライブラリアン、フォーミュラ、アクセル・シンクロン、ロード、クイック・シンクロンをデッキに戻して2枚ドロー!」

 

 2枚ドローしたカードを見て、裕は困ったように頭を掻く。

 もうちょっと早くに来てよう、と恨みがましく呟き、

 

「手札のレベル・スティーラーを墓地に送り墓地よりジェット・シンクロンを特殊召喚! 更に機械複製術を発動! ジェット・シンクロンをもう1体、デッキより特殊召喚する!」

 

 連打されてる低レベルのモンスター達、それらの連打をプラネタリーは止めるすべを持って居ない。

 

「ジェット・ウォリアーのレベルを下げてスティーラーを特殊召喚、そしてレベル4となっているジェット・ウォリアーにレベル1のジェット・シンクロンをチューニング、現れろ、TGハイパーライブラリアン!」

 

 シンクロ召喚を主軸とするデッキならば確実に入るであろうドローソースモンスターが現れる。

 そして裕の場にはまだレベル1のチューナーと非チューナーが1体ずついて、まだ裕は召喚権を使ってない。

 

「更にレベル1のレベル・スティーラーにレベル1のジェット・シンクロンをチューニング、レベル2、フォーミュラ・シンクロン! ライブラリアン、フォーミュラの効果発動、合わせて」

 

 2枚ドローしたようとする裕、そしてそれを見ていたリペントはドローする枚数を抑えさせるべく、声を挙げた。

 

「此処で使っておくかのう、儂は相克の魔術師の効果発動、相手の場の光属性モンスターの効果を無効にする!」

 

「だったらライブラリアンのレベルを下げてスティーラーを特殊召喚、そしてレベル1のレベル・スティーラーにレベル2のフォーミュラ・シンクロンをチューニング、現れろ霞鳥クラウソラス!」

 

 ドローできないならばと更にシンクロ召喚が連打する。

 光も輪も全てが暴風を伴い荒れ狂う中、リペントはそれを笑みで見送るだけだ。

 ああ、と嬉しそうに笑みを浮かべるそれは、自分が今まで行ってきたシンクロ召喚が誰かの役に立っている事を喜ぶ物だ。

 

「クラウソラスの効果発動、時械神カミオンの効果を無効にする!」

 

「召喚権を使わずにこの展開力、流石じゃのう」

 

 ほれぼれすると言わんばかりにプラネタリーは両手を広げ笑う。

 それを見、その上で裕は今しがたドローしたカードを手にし、

 

「俺は永続魔法、天輪鐘楼を発動!」

 

 もう1人の自分との決闘で互いに莫大な利益を齎したその永続魔法が美しい鐘の音を響かせながら出現する。

 

「ジャンク・シンクロンを召喚! ジャンク・シンクロンの効果で墓地より増殖するGを特殊召喚する。レベル3の霞鳥クラウソラスとレベル2の増殖するGにレベル3のジャンク・シンクロンをチューニング!」

 

 レベルは8、今この場で特殊召喚されるモンスターは1体しかいない。

 

「全部、ここで破壊する! シンクロ召喚! ジャンク・デストロイヤー! デストロイヤーの効果発動、エンシェント・ホーリー・ワイバーンとEMトランプ・ウィッチを破壊する!」

 

 ライブラリアンの恩寵と鐘楼の音色が祝福するがごとく謳いをBGMに破壊の一撃がばら撒かれていく。

 それは片方の柱と巨大な白い翼竜を薙ぎ払っていく。

 だがこれで終わらない。

 

「更に調律を発動! デッキよりクイックを手札に加えデッキトップを墓地へ送る」

 

 墓地に送られたのはカード・ガンナー、中々に良い落ちだと裕はデッキへと感謝し動く。

 

「ボルト・ヘッジホッグを墓地に送りクイック・シンクロンを特殊召喚、そして俺の場にチューナーが存在しているためボルト・ヘッジホッグを墓地より特殊召喚する! レベル2のボルト・ヘッジホッグにレベル5のクイック・シンクロンをチューニング! レベル7、ニトロ・ウォリアー!」

 

 鐘の音、そして連打される星と輪は風を海、全てを巻き込む暴風の渦と化す。

 こんなものではまだ、終わらないと裕はデッキよりカードをドローし、

 

「シンクロキャンセルを発動! ジャンク・デストロイヤーをエクストラデッキに戻しクラウソラス、増殖するG、ジャンク・シンクロンを特殊召喚する!」

 

 特殊召喚される3体のモンスター、それは先ほどの光景の再現だ。

 霞鳥の羽が魔術師へと突き刺さりその力と力を奪い、3体のモンスターが星と輪へと化していく。

 

「クラウソラスで相克の魔術師の効果を無効にし攻撃力を0にし、再びチューニング、シンクロ召喚、ジャンク・デストロイヤー! PSブラック・サンとオッドアイズ・ボルテックス・ドラゴンを破壊する!」

 

―――自壊しやすくなるけど、まあその方が本命を上手く使えそうだしなぁ。

 

 裕は手札を見、その上で墓地を見て、あとは相手次第だと覚悟を決める。

 

「墓地よりニトロ・ウォリアーのレベルを下げてレベル・スティーラーを特殊召喚し、ニトロ・ウォリアーに装備魔法、団結の力を装備させ、バトルだ。ニトロ・ウォリアーで時械神カミオンを攻撃!」

 

 爆散した爆炎を突っ切りニトロ・ウォリアーが先陣を切る。

 向かう先に居るのは力を喪った2体のモンスター、筋骨隆々の太い腕に力を込めニトロ・ウォリアーは拳を振り上げる。

 その拳へと収束するは3体の仲間達の力、そして、

 

「ダメージステップ、俺は手札よりラッシュ・ウォリアーの効果発動。ウォリアーと名の付くシンクロモンスターが戦闘を行う時、このカードを墓地に送る事で攻撃力を2倍にする! そしてニトロ・ウォリアーの効果発動、このターン、俺が魔法カードを発動していたため攻撃力を1000ポイントアップさせる! ぶちかませ、ニトロ・ウォリアー!」

 

ニトロ・ウォリアー ATK7000→14000 VS 時戒神カミオン ATK0

破壊→時戒神カミオン

リペント・プラネタリー場LP116000→102000

 

 普段の決闘ならば一撃必殺ともいえる1万4千のダメージを孕む爆風がリペント達を飲み込もうともリペント達は膝を折ることは無い。

 それどころかこれぐらいが全力か、と言わんばかりに挑発の笑みを浮かべている。

 

「ジャンク・デストロイヤーで相克の魔術師を攻撃、そしてライブラリアンで直接攻撃だ!」

 

 ライブラリアンの放ったレーザーと相克の魔術師を穿ったデストロイヤーの拳が直撃しようともそれは同じだ。

 裕が遊馬へと宣言した通り1万ものライフを削り取ろうともまだ相手のライフは97000も残っている。

 

「メイン2、ラッシュ・ウォリアーの効果発動、墓地のこのカードを除外し墓地よりクイック・シンクロンを回収、そしてカードを2枚伏せてターンエンドだ!」

 

遊馬・裕場     ジャンク・デストロイヤー ATK2600 

LP6000      TGハイパーライブラリアン ATK2400 (レベル4)

手札4・2     ニトロ・ウォリアー ATK6000  (レベル6)

          レベル・スティーラー DEF0

          団結の力

          天輪鐘楼

          伏せ3

 

リペント・プラネタリー場 連撃の帝王 

LP97000         冥界の宝札

手札7・2         錬成する振動

             機殻の要塞

 

「私の、ターン!!」

 

 リペントは裕の場を見てまず、最初に思い出すのは裕が最上との決闘の決め手となった瞬間の事だ。

 

―――あれは凄かったなぁ。

 

 伏せカードが在り、そして墓地にフォーミュラ・シンクロンが居る状況、あの光景を知っている者がこの状況を見ればあの伏せはリビングデットの呼び声か強化蘇生ではないかと思ってしまう。

 だがあの伏せはミラクルシンクロフュージョンのような全く関係の無いカードかもしれないしミラーフォースの様な破壊カードかもしれない。

 だからリペントは悩まない。

 元よりプラネタリーのデッキに伏せカードを除去するカードのほぼ全ては詰め込まれてしまっている。

 

―――だがあまい、手札がこれだけある状況で君が何をするかは分からないけど、君はまだ青い。

 

 エルシャドール・アノマリリスを融合召喚しシャドール・ドラゴンを墓地に送るだけで裕が行おうとしている戦略は崩れてしまう。

 本当に蘇生系カードなのか、それとも違う物なのかを確かめるべく、リペントは手札より黒紫の塊となったカードを抜く。

 

「影依融合を発動。君の場にはエクストラデッキより特殊召喚されたモンスターが存在している。よって私はデッキより」

 

「させねえよ! 永続罠、虚無空間を発動!」

 

 裕の場へと迫る黒紫色の糸は1枚の永続罠より発生した波動によって力を失い地に落ちる。

 

「ならば私はスケール9のクリフォート・ツールをセッティング!」

 

 裕は残るカードを発動させない。

 それを見届け、

 

「私はライフを800支払いデッキより機殻の生贄を手札へと加える。そしてフィールド魔法、機殻の要塞を再び配置。そして機殻の要塞の効果で無感動を司りし機殻、クリフォート・アクセスを妥協召喚、そして装備魔法、機殻の生贄を装備する」

 

 要塞より発進した赤緑色の鮮やかな機殻、その横に浮かぶ10色の球達。は即座にエネルギーとなりクリフォートの体を構築していく。

 

「クリフォート・アクセスと装備魔法、機殻の生贄を生贄に捧げ、手札よりクリフォート・シェルをアドバンス召喚。更に墓地に送られた機殻の生贄の効果発動、デッキよりクリフォート・アセンブラを手札へと加えよう」

 

 手札にペンデュラムカードを加え、その上でリペントは支持を飛ばす。

 

「バトルだ。クリフォート・シェルでレベル・スティーラーを攻撃!」

 

 貫通効果を得たシェルの砲門がスティーラーへと向けられ、砲撃が叩き込まれた。

 

「まだだよ、俺は速攻魔法禁じられた聖槍をクリフォート・シェルに発動! クリフォート・シェルの攻撃力を800下げる!」

 

「だがダメージは受けてもらう!」

 

クリフォート・シェル ATK2800→2000 VS レベル・スティーラー DEF0

破壊→レベル・スティーラー

遊馬・裕LP6000→4000

 

 遊馬が伏せていたカードより槍が放たれシェルの砲撃の一部を削り取っていく。

 だがそれは一部だけだ。レベル・スティーラーをぶち抜いた砲撃は裕と遊馬達を直撃した。

 更に裕の場からカードが墓地に送られたために虚無空間が自壊する。

 

「この攻撃力では無理か、残念だな。メイン2、スケール1のクリフォート・アセンブラをペンデュラムゾーンにセッティング、これで私はレベル2から8までのクリフォートモンスターを同時に特殊召喚可能となった。揺れよ、機殻の間で蠢きし振子よ!」

 

 宙に描かれる陣の内、構築されていく門の中より4体の機殻達が姿を見せる。

 アーカイブ2体とゲノム2体だ。

 リペントのターンまで生き残れば優秀な除去として使え、そうでなくても遊馬に倒さないといけないという危機感を植え付けるには十分なカードとなる。

 

「ペンデュラム召喚!」

 

「カウンター罠、神の警告!」

 

 だがその陣は裕のカードより呼び出された白髪白鬚の老人によって打ち砕かれた。 

 陣の崩壊と共に巻き込まれていく機殻達を目を奪われるも、リペントは素早く立ち直り、手札を1枚抜き、

 

「私はカードを1枚伏せてターンエンド。そしてエンドフェイズにクリフォート・アセンブラのペンデュラム効果が発動する。リリースされたクリフォートモンスターは1体、よって1枚ドローする」

 

遊馬・裕場     ジャンク・デストロイヤー ATK2600

LP2000      TGハイパーライブラリアン ATK2400 (レベル4)

手札4・2     ニトロ・ウォリアー ATK6000  (レベル6)

          団結の力

          天輪鐘楼

 

リペント・プラネタリー場 クリフォート・シェル ATK2800

LP96200         連撃の帝王 

手札3・2         冥界の宝札

             錬成する振動

             伏せ1

             機殻の要塞

クリフォート・アセンブラ(スケール1)   クリフォート・ツール(スケール9)

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 空中で回転したのちに行ったドローカードを見て遊馬は僅かに考え、真剣な表情で裕に聞く。

 

「裕、お前のカード借りてもいいか?」

 

「ん? ああ。いいぜ」

 

 遊馬が何をしようとしているのかを把握し裕は軽く頷く。

 

「俺はガガガシスターを召喚! デッキよりガガガリベンジを手札に加え発動! 墓地よりガガガマジシャンを特殊召喚する! そしてガガガマジシャンの効果で自身のレベルを2に変更しガガガシスターの効果発動、このカードとガガガマジシャンのレベルを4にする!」

 

 発生した渦に飛び込むのは2体、ではなく3体。

 横に広がった渦の中より吐き出されるは四方形のモニュメントだ。

 次々に展開されていく四方形は裕の記憶に色濃く残っている。

 WDC補填大会で非常に苦しめられたカードだからだ。

 

「俺はレベル4となったガガガマジシャンとガガガシスター、そしてTGハイパーライブラリアンでオーバーレイネットワークを構築! エクシーズ召喚! 現れろ、No.16色の支配者ショック・ルーラー!」

 

 うわぁ、と呟いた裕だが、まだ遊馬の動きは収まらない。

 

「俺は墓地からジェット・シンクロンの効果発動、手札から銀河眼の光子竜を墓地に送りこのカードを墓地より特殊召喚する! 更にニトロ・ウォリアーのレベルを下げてレベル・スティーラーを特殊召喚!」

 

 居並ぶレベル1のモンスター達、裕ならばここでフォーミュラ・シンクロンと叫ぶのだが遊馬は違う。

 遊馬が引き抜くは黒のカード、とてつもない力をばら撒きながらそのカードが遊馬の手より離れ黄金の光を放つ。

 

「行くぜ! 俺はジェット・シンクロンとレベル・スティーラーでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚!」

 

 カードより発生した渦の中へと最小レベルのモンスター達が飛び込んでいく。

 DNA螺旋を描く様に渦の中を突き進み黄金に輝く体を構築していき、全ての始まりの龍が本当の目覚めの時を迎えた。

 

「宇宙創造の鍵、今こそ闇の扉を開き、未来を、その咆哮とともに導け! 降臨せよ、No.100 ヌメロン・ドラゴン!」

 

 目覚めた龍の咆哮は荒れ果てた荒野に強く響き渡っていく。

 それはまるでこんな世界は見たくないと嘆き悲しむように遠くまで響いていく。

 

「更に死者蘇生を発動、墓地の銀河眼を特殊召喚する! 俺はレベル8の銀河眼とジャンク・デストロイヤーでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚!」

 

 銀河眼がヌメロン・ドラゴンに呼応するように咆哮し発生した渦に身を躍らせる。

 銀河の様に眩き光が銀河眼の体へと浸透し新しき体と、新しき力を構築する。

 誰にも負けない強靭な肉体、未来へと飛ぶ能力を兼ね備えた龍が今、この地に爆誕する。

 

「行くぜ、カイト! 現れろ、銀河究極龍、No.62! 宇宙にさまよう光と闇。その狭間に眠りし哀しきドラゴン達よ。その力を集わせ、真実の扉を開け! 銀河眼の光子竜皇!」

 

 最後にと言わんばかりに遊馬の手より放たれるは混沌の力。それらが収束し遊馬の背後で7つの星を構成する。

 

「更にRUM―七皇の剣を発動! 現れろNo.101! S・H・Ark Knight!」

 

 7星の頂点より作り出された箱舟は遊馬の手にするRUMより作り出されたカオスに飲まれていく。

 内包していた騎士の体が射出され、箱舟のパーツがパージし暗黒騎士の装甲となっていく。

 仲間の為ならば自分が傷つくことを厭わない皇の覚悟、その結晶が今この場に現れる。

 

「ランクアップ・カオスエクシーズチェンジ! シャーク、今こそ俺に力を貸してくれ! 現れろ、CNo.101! 満たされぬ魂の守護者よ、暗黒の騎士となって光を砕け! S・H・Dark knight!」

 

 居並ぶはいずれも強力な効果を持つモンスターエクシーズ達、遊馬とアストラルが歩んできた道のりの中で敵であり、そして分かり合った仲間達の力が今ここに結集する。

 

「受けて見ろ、リペント! こっからが俺達の全力全開、渾身のかっとビングだ!」

 

 遊馬の場に居るモンスターエクシーズ達にオーバーレイユニットが飛び込んでいく。

 今、まさに遊馬が今出せる渾身の一撃が炸裂しようとしていた。


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