クェーサー厨が行かされる難易度ちょっとハードモード 作:TFRS
「私のターン」
上空より見おろす恒星龍と火花を散らすナンバーズを前にリペントは笑みを浮かべながらカードをドローした。
「スタンバイフェイズ、時械神サディオンはデッキに戻る。そして私のメインフェイズ、リベリオンの効果発動、デッキよりペンデュラムモンスターを私のペンデュラムゾーンへとセッティングできる。さて、止めるかね?」
リペントは裕に問う。
裕は何度も首を捻り、墓地を見、そしてこちらの手札の枚数を数える。
リペントの手札は先ほどのドローと合わせ8枚ある。更に言えばクェーサーの効果をもしも使われたとしても錬成する振動の効果でオッドアイズを破壊してしまえば厄介な効果を使わせたという利点が出る。
そこまでを考えたのだろう。裕は、
「止めない!」
「私はスケール12のPSブラック・サンをセッティング!」
「えっ!? スケール12!?」
通った所でクリフォート・ツール辺りだろうとでも予測していたのか裕は驚愕の声を挙げるも、リペントはそれを無視し、
「そして永続罠カード、錬成する振動の効果発動、覇王黒龍を破壊しドローする。スケール4のオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンをペンデュラム・スケールにセッティグ」
手札の枚数は先ほどよりも増え9枚、ここで止める訳が無い。
裕の表情を見れば、リペントには裕が何を考えているのか予想が着いてしまう。
―――本当に読みやすいな。おそらく墓地のスキル・プリズナーをいつ発動させるのか迷っているようだな。ああ、まったく。
「最初のころの私にそっくりだ! ゆくぞ、黒く輝く陽光と赤緑の眼持ちし竜の庇護の元、再び揺れよペンデュラム! その軌跡で異なる次元の門を開け! ペンデュラム召喚!」
中に描かれた巨大な陣、そのうちより4体の機殻と1頭の黒龍が姿を現す。
「クリフォート・アーカイブ2体、クリフォート・ゲノム2体、そして覇王黒龍オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン!」
特殊召喚されたモンスターを見ても、裕は動かない。
―――おそらくはカード効果の対象にしてから発動させて他のモンスターを守ろうとしているのだろうが、甘いぞ。
「そして機殻の要塞の効果によりクリフォート・ゲノムとアーカイブをリリースし愚鈍を司りし機殻、クリフォート・エイリアスをアドバンス召喚!」
要塞の内部より灰色の球が射出される。
その球にまとわりつく様にアーカイブとゲノムのパーツが分解され空気のように透明な機殻を構成していく。
そして、エイリアスの召喚と同時に効果が同時に炸裂した。
「冥界の宝札、君の一番右の伏せカードを対象にゲノム、レベル・スティーラーを対象にアーカイブ、クェーサーを対象にエイリアスの効果発動」
「させるか、俺は!」
エイリアスの効果を知らなかったのだろう、裕は墓地に手を伸ばす。
「エイリアスの効果に、相手はカード効果を発動できない。よって君の場はほぼ壊滅する」
エイリアスの召喚と同時に裕の伏せが破壊され、レベル・スティーラーが手札へとバウンスされ、そして相棒たる恒星龍がなすすべなく消えていく。
「クェーサーが…………っ!」
裕の顔に己の判断ミスを責める色が浮かぶ。
「影依融合を発動、君の場にエクストラデッキより特殊召喚されたモンスターが存在するためデッキ融合が可能となる」
場に居るサンダー・スパークへと黒紫の糸の群れが襲い掛かる。
エクストラデッキより特殊召喚されたモンスターの力を吸収、利用した糸達はリペントのデッキの中より2体のモンスターを引っ張り出した。
それはリペントが長年使ってきたカード達、長い時間を共に戦ってきた仲間達だ。
「私が融合するのは光属性の超電磁タートルとシャドール・リザードだ。全てを操り夢の底へと沈めよ。現れ給え、エルシャドール・ネフィリム」
登場した融合モンスター、その効果を知っている裕は顔色を悪くする。
ネフィリムの効果をもってすればナンバーズの持つ戦闘耐性など意味を成さない事を十分に理解しているからだ。
「融合素材となったリザード、更にネフィリムの効果発動、デッキよりシャドール・ヘッジホッグ、影依の原核を墓地へ、更にヘッジホッグの効果でシャドール・ドラゴンをサーチし墓地の影依融合を手札へと戻す」
たった1枚の融合カードより生まれた莫大なアドバンテージ、リペントはそれをさらに生かすべく、カード効果を連打してく。
「私は更にアーカイブとゲノムをリリースし時械神ガブリオンをアドバンス召喚! リリースされたゲノムとアーカイブの効果発動、君の伏せカードを破壊しサンダー・スパークを手札へと戻してもらう!」
猛威を振るうクリフォート、そして場に現れた時械神の名を持つモンスター、その深蒼の鎧を前に裕は頬を叩き気合を入れ直す。
真っ直ぐにこちらを見る裕の眼には怯えはある。だがクェーサーを除去されたときの後悔の色はそこにはない。
―――単純だな、自らの失敗を悩まずに前を向くか。
微笑ましいその姿にリペントは更に笑みを深め、効果を連打する。
叩き込まれた破壊とバウンス、それに抗うように裕もカード効果を連打し返していく。
「和睦の使者、更にエフェクト・ヴェーラーを発動、時械神ガブリオンの効果を無効にする!」
時械神ガブリオンにはバトル終了時、相手の場のカード全てをデッキに戻すという凶悪なカード効果がある。
和睦の使者で戦闘ダメージは与えられないがそれでもあの伏せカードをモンスター効果の対象にせずに無力化できるのだが、裕はそれを防いだ。
それがどのような事を意味しているのかをリペントは考え、そして、
「ほう。ならば私は神の写し身との接触を発動、私は手札の2枚、シャドール・ドラゴンと地属性、アポクリフォート・カーネルを融合!」
時械神にはこのカードが存在する限りモンスターを召喚、特殊召喚、反転召喚できないという重い制約が課せられるのだが、エフェクト・ヴェーラーによってそれは無効になっている。
その為にこの融合召喚が行えるのだ。
裕とリペントの間に生まれた黒紫の陣、その内部へと無神論を司る機殻が堕ちていく。
そして膨れ上がる黒紫の糸の中、腹に響く機殻の稼働音と軽く、だが膨大な数の糸が蠢く音が周囲に鳴り響いていく。
音は徐々に強く、強く響き渡っていき、陣の中より白黒のラインの走る脚が見え始めた。
「全てを封殺するために現れ給え、レベル10、エルシャドール・シェキナーガ!」
修道女像と機殻の玉座に座す修道女像、更に傅く様に力を喪い翼がしなびた蒼い鎧の天使がある。
それらが並ぶだけで凄まじい威圧感を相手に与えるのだが、リペントは更に動く。
「融合素材となったシャドール・ドラゴンの効果で伏せカードを破壊する」
「墓地からスキル・プリズナーの効果発動、このカードを除外して破壊を免れる!」
―――やはり守るか、するとあのカードは妨害かドローカード!
この決闘はタッグ決闘であり、仲間に自分のカードを渡すために魔法カードを伏せたりもする。
おそらくは裕が伏せたのは手札が0の遊馬をなんらかの形で補助するカードなのだろう。
「更にレベル10の時械神ガブリオンとエルシャドール・シェキナーガでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚」
だからこそリペントは普段とは違う方法を使う。
作り上げられた巨大な渦へと修道女と天使が吸い込まれていく。
「レベル10って事は」
裕の脳裏にあるのはドン・サウザンド連打してきた巨大な機械列車だ。
そしてその予想は的中する。
「グスタフマックス! オーバーレイユニットを使い君達に2000ポイントのダメージだ!」
「くっ!」
叩き込まれた爆音と衝撃に裕はよろめくも、倒れない。
こちらを睨み付ける裕にますますリペントは若い自分を重ねてしまう。
何も知らず、決闘が楽しかった自分を。
間違いを恐れずに突き進むその無謀とも馬鹿ともいうべき微笑ましい姿を。
「さらに墓地に送られたシェキナーガの効果発動、墓地より影依の原核を回収する。そして!」
リペントが抜くカードより放たれるは黄金の輝きだ。
それを見たアストラルが拳を握りしめ、こちらを見つめて叫ぶ。
「リペント、君もそのカードを使うか!」
「そうだ、過去も未来も、何もかもを私は私の夢に取り込んでいく。ランクアップも、シンクロも、エクシーズも、ペンデュラムも、全てを取り込んで私は楽しく無限に続く夢に浸るのだよ! RUM-アストラル・フォースを発動!」
天上に開く黄金の渦、その中へとグスタフマックスが吸い込まれていく。
吸い込まれ、そして黄金の門はより光の放流が放たれ、その光の内より現れるは白の躰、黒き翼で宙を強く撃ち、渦の中より生まれ落ちる。
「ランク10のグスタフマックスでオーバーレイネットワークを構築、ランクアップ・カオスエクシーズチェンジ! 1人の男が作り上げし虚ろなる神よ、光も混沌も全てを飲み込み、今こそ現れ給え!」
それはまるで遊馬達が目指す未来を暗示するかのごとく、遥か上空より半神半鳥の異形が再び遊馬達の前に出現する。
遊馬達が3人がかりで立ち向かい、打ち倒すのにどれだけの痛手を負ったかを思い出され遊馬は拳を握りその神を睨み付ける。
「ランク12、CNo.1000 夢幻虚神ヌメロニアス!」
「うっそだろ、おい!」
裕が驚愕に目を見開き、そしてカードテキストを見てその量と凶悪すぎる効果に声を漏らす。
そして、神が動く。
「バトルだ、ヌメロニアスで輝白竜ワイバースターを攻撃!」
ヌメロニアスの翼より放たれた黒の爆撃が大地を穴だらけにしていく。
だが輝白竜は光の壁によって守られ破壊されない。
「く、またあの効果が!」
「ヌメロニアスの効果発動、バトル終了時、相手モンスター全てを破壊する!」
ヌメロニアスの体より放出された衝撃波が輝白竜を破壊していく。
だが、輝白竜はただでは死なない。
破壊された輝白竜の躰より溢れ出した暗黒、それが形となり裕の手に収まる。
「破壊された輝白竜の効果発動、デッキより暗黒竜コラプサーペントを手札へと加える!」
「そしてこのターン、墓地に送られたモンスターを特殊召喚する、蘇り給え、エルシャドール・シェキナーガ!」
再び姿を現した機殻の玉座に座したる修道女像、この決闘で発揮されていないがシェキナーガには特殊召喚されたモンスターの効果が発動したとき、その効果を無効にして手札のシャドールカードを捨てるという効果を持っている。
そしてリペントの手には影依の原核が存在しており特殊召喚したモンスターの効果は一度、無効にされてしまう。
「私はカードを2枚伏せてターンエンドだ」
リペント&プラネタリー場 エルシャドール・ネフィリム ATK2800
LP6000 CNo.1000 夢幻虚神ヌメロニアス ATK10000(ORU2)
手札6・3 クリフォート・エイリアス ATK2800
覇王黒龍オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン ATK3000
エルシャドール・シェキナーガ DEF3000
伏せ2
連撃の帝王
冥界の宝札
錬成する振動
機殻の要塞
オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン(スケール4) PSブラック・サン(スケール12)
遊馬&裕場
LP6000
手札0・2 伏せ1
遊馬達の眼前に居並ぶは特殊召喚されたモンスターを問答無用に破壊するネフィリム。
特殊召喚されたモンスター効果を無効にし破壊するシェキナーガ。
バトル終了時に相手のモンスター全てを破壊しこのターン墓地に送られたモンスターを特殊召喚し、更にオーバーレイユニットを使い相手のモンスターを破壊し相手のエクストラデッキよりカオスと名のつくモンスターを特殊召喚するヌメロニアス。
そして相手によって破壊された場合ペンデュラムゾーンに行き、プラネタリーのターンになればデッキよりペンデュラムカードを発動させる凶悪なペンデュラムエクシーズモンスター、オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン。
ランク、レベル7以下の効果を受け付けないクリフォート・エイリアスという凄まじい布陣だ。
普通ならば冷や汗の一つでもかくものなのだが、バリアン七皇やバリアン兵、ナンバーズを狙う強敵との決闘で鍛えられた遊馬はそんな事、いつもの事だとでも言うように、前向きな表情でカードをドローする。
「俺のターン、ドロー!」
遊馬はドローしたカードを見て目を輝かせる。
この場において一番引きたかったカード、それをドローできた事に喜びを隠せずにいた。
「俺は大嵐を発動!」
「私はクリフォート・エイリアスをリリースし帝王の轟毅を発動。相手の場にある表側カードの効果をターン終了まで無効にし、1枚ドローする!」
止められた。
通るかは半信半疑だったが通ってほしかったと遊馬は思うも、手札は0、どうする事も出来ない。
そんな時だ、裕が肩を叩いたのは。
「遊馬、遠慮すんな、俺の判断ミスとはいえクェーサーまで除去されて、場は空っぽになってまでこれをお前に残したんだぜ、絶対に決めろよ!」
裕はそう言うと自分が伏せていたカードを開く。
「俺は罠カード、裁きの天秤を発動、このカードは相手の場に存在しているカードの枚数が俺の場と手札の合計よりも多い場合に発動できる。俺は手札は0、場には1枚のカードのみ。そしてリペントの場には11枚カードが存在する。よって遊馬は10枚ドローだ!」
ドヤ顔をする裕だったが、言い放った後に微妙に表情を暗くし呟いた
「本当は俺が使ってもよかったんだがなぁ」
一度に10枚もドローできる機会などそうはないだろう、それを一瞬だけ羨むも、
「まあ、決めちまえ!」
「おう! 俺は墓地よりブレイクスルー・スキルの効果発動、このカードを除外しヌメロニアスの効果を無効にする!」
裕がクェーサーをバウンスされた際にクリフォート・アーカイブによって破壊されたカードが墓地より効果を発揮する。
これによって厄介なヌメロニアスの効果が無効になる。
「俺の場にモンスターが存在しないこの瞬間、俺はフォトン・スラッシャーを特殊召喚する!」
大量にある手札より先陣を切るのはカイトのデッキより借りてきたカードだ。
「更にゴブリンド・バーグを召喚! そしてゴブリンドバーグのモンスター効果を発動、更にレベル4のモンスターが召喚された事により手札よりカゲトカゲを特殊召喚する!」
ゴブリンド・バーグが空より颯爽と現れる。
その飛行機の下にある箱が落下し中よりゴゴゴゴーレムが現れる。
これにより遊馬の場にはレベル4のモンスターが4体揃った。
「まずは厄介なカード効果を無効化させる! 行くぞ、遊馬!」
「おう! 俺はゴゴゴゴーレムとゴブリンド・バーグでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚! 現れろ、No.39希望皇ホープ!」
雄叫びとともに現れたのは希望皇ホープだ。
それを見たリペントはこちらがしようとする意図を読んだのだろう、即座に動く。
「ならば私は連撃の帝王の効果発動、エルシャドール・ネフィリムとオッドアイズ・リベリオン・ドラゴンをリリースしモンスターをアドバンスセットする。そして冥界の宝札の効果で2枚ドローし、更に墓地に送られたネフィリムの効果で墓地より神の写し身との接触を手札へと加える」
動きを止め、こちらの動きを待つリペント。
残り最後の伏せがなんなのかは遊馬にも予想がつかないが、それでも十分に動ける潤沢な手札がある今がチャンスなのだ、と自分に言い聞かせ、
「俺は希望皇ホープを対象に魔法カード、RUM―ヌメロン・フォースを発動!俺の場のホープをカオスエクシーズにランクアップさせる!」
遊馬が手にしたカードより莫大な書き換えの力がほとばしる。
光と圧を叩きつけながらその力が希望皇ホープを取り囲み、強化していく。
「錬成する振動の効果発動、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンを破壊し1枚ドローする」
無効かされる前にと、最後のアドバンテージを稼ぐリペント、そしてそれに構わず遊馬は叫ぶ。
「ランク4の希望皇ホープでオーバーレイネットワークを再構築、カオスエクシーズ・チェンジ! 混沌を統べる赤き覇王。悠久の戒め解き放ち、赫焉となりて絶望を打ち払え! 降臨せよ! CNo.39希望皇ホープレイV」
ホープレイVの出現と共にヌメロンの力が場の全てのカードへと万遍なく叩きつけられていく。
全ての表側表示のカード効果を無効化させるヌメロン・フォースの光を浴びたホープレイ・ヴィクトリー以外の表側で存在するカードのテキストが白に書き換えられていく。
「ホープレイVの効果発動、カオスオーバーレイユニットを使いヌメロニアスを破壊する! Vブレード・シュート!」
この効果が通るとリペント達に1万のバーンダメージが発生する。
場の全てのカードの効果は無効化され残るは1枚の伏せカードのみ、そのカードを使い凌ぐのだろうかと予想していたアストラルだが、
「まだだ、私はエフェクト・ヴェーラーを発動、その効果を無効にする!」
手札から発動されたモンスター効果によって邪魔される。
「だったら、フォトン・スラッシャーとカゲトカゲでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚!」
遊馬がエクストラデッキより引き抜くはドン・サウザンドの呪いがこもっていたカード、そのカードの持つ強力な効果は今の状況に必要不可欠だ。
「現れろNo.80狂装覇王ラプソディ・イン・バーサーク!」
拳を打ち鳴らし現れた狂装覇王の姿にリペントは目を丸くし、そして口元に笑みを浮かべる。
楽しげなその表情に一瞬、遊馬は目を奪われるも、頭を振って目の前に集中する。
「ラプソディ・イン・バーサ-クのモンスター効果発動、オーバーレイユニットを使い相手の墓地のカードを除外できる! 俺は2つのオーバーレイユニットを使い墓地の超電磁タートルとRUM―アストラル・フォースを除外する!」
「やるじゃないか」
リペントの心からの賞賛の声に遊馬は一瞬だけ、説得できるんじゃないかと思ってしまう。
裕の様に、堺の様に、決闘を楽しく思い、命がかかっている今でも決闘を愉しむ決闘好き、ならばこんな悲しい決闘なんてしなくていいじゃないか、そう言いたくなる。
だが、それと同時に遊馬はそれを言った所で目の前の男が止まらない事を理解している。
リペントは悲しげに、それとも笑いながら、首を横に振るのだろう。
バリアン兵との決闘を潜り抜け、リペントの旨の内に秘めた感情を知り、そして今、互いに向かい合って決闘し遊馬はリペントがどういう決闘者なのかを理解しかけていた。
「更にエクシーズ・リベンジを発動、墓地よりホープを特殊召喚しヌメロニアスのオーバーレイユニットを奪う! そしてRUM―バリアンズ・フォースを発動、ホープをエクシーズ素材としてカオスエクシーズ・チェンジ!」
ホープレイVの効果コストとして墓地に送られたホープが再び場に現れ、そしてシャークのデッキにあった混沌の力に飲まれていく。
荒れ狂う混沌の力の中、構築されていくのは明るい白と黄色、そして赤の鎧だ。
それらがホープへと火花を散らしながら合致し、吹き荒れる混沌の渦を切り裂き勝鬨を挙げる。
「CNo.39希望皇ホープレイ・ヴィクトリー!」
荒れ狂うバリアンの力がヌメロニアスのオーバーレイユニットを更に奪い力と変える。
まだリペントは動かない。
「さらにエクシーズ・トレジャーを発動。場には4体のモンスターエクシーズ、よって4枚ドローする」
遊馬は手札を見るも、リペントの場の最期の伏せカードを破壊するカードが来ない。
その事を残念に思いつつも、必殺の一撃を放つ遊馬はカードを発動させる。
「俺は手札よりZW―阿修羅副腕のモンスター効果を発動! ホープレイ・ヴィクトリーに装備する。更にラプソディ・イン・バーサークのモンスター効果を発動するぜ! このカードをモンスターエクシーズの装備カードとして装備させる、バーサーク・チャージ!」
遊馬の手札より黒い副腕が放たれヴィクトリーの背中に合致した。更にその上よりレクイエムの体がバラバラにパージされまとわりつく様にビクトリーの躰と副腕に黒と金の装飾を付け足していく。
これらの装備カードによってホープレイ・ヴィクトリーは攻撃力5000、そしてモンスターに全体攻撃ができ、その際に相手は魔法罠カードを発動指せることが出来ず、オーバーレイユニットを使えば相手モンスターの効果は無効にされそのモンスターの持つ攻撃力分、ヴィクトリーの攻撃力がアップするという殺意丸出しのモンスターエクシーズへと変貌を遂げる。
「これで終わりだ! バトルだ! ホープレイ・ヴィクトリーでヌメロニアスを攻撃!」
ヌメロニアスは向かい来るヴィクトリーへと咆哮し、その翼をはためかせ黒い羽根で絨毯爆撃を行う。
ヴィクトリーは絨毯爆撃を背の副腕で弾き、払いのけ、ヌメロニアスを肉薄、その巨体の懐へと飛び込んだ。
その上でヴィクトリーはもとより備わっていた副腕を構築し、レクイエムの力で強化された4刀を抜き、ヌメロニアスの翼の関節、脚の関節へと4刀をまるで虫を射止める針のようにぶち込んだ。
「この瞬間、ヴィクトリーのモンスター効果が発動! 攻撃したモンスターの攻撃力分、このカードに加える、ヴィクトリー・チャージ!」
関節を縫いとめる4刀を4つ副腕で抑えヴィクトリーは背後へと手を伸ばした。
その手に吸い込まれる様に収まるのは赤と黒の大きな曲刀だ。
それは背後よりホープレイVが投げ渡した物である。
「ホープ剣・ヴィクトリー・スラッシュ!」
ヴィクトリーはその2刀を振るい、ヌメロニアスの体にVの字を刻み込み、更に翼の関節と脚の関節を抑えていた4刀で更なるVを重ね描いた。
CNo.39希望皇ホープレイ・ヴィクトリー ATK5000→15000 VS CNo.1000 夢幻虚神ヌメロニアス ATK10000
破壊→CNo.1000 夢幻虚神ヌメロニアス
リペント・プラネタリーLP6000→1000
ヌメロニアスが破壊された事による超巨大な爆風が周囲を舐めていく。
その中で遊馬は表情を緩めない。
次に来るモンスターエクシーズこそが自分達が倒さないといけない敵なのだから。
「ぐぅ! くっ、ふふふ、はははは! 良いぞ、もっと来い。君達の本気の希望、夢はこんなものではないはずだ! 私にその輝きを見せろ! 私に君達の夢を魅せつけてくれ! ヌメロニアスが破壊された事で墓地のヌメロニアスをエクシーズ素材として、エクスターミネーショォオオオオオオオオンッ!」
その本来の持ち主が乗り移ったかのように笑い声をあげ、髪を振り乱しながらリペントは叫ぶ。
爆風の中より花開くはカオスによって構築された一輪の蓮だ。
「勝利を渇望する男が作り出しし欲望の結晶よ、今こそ私の夢の生贄となれ! 現れ給え! CiNo1000 夢幻虚光神ヌメロニアス・ヌメロニア!」
華より浮かび上がる黒紫色の巨大なモニュメント。
機械的で何の感情も抱かないその巨大で凶悪極まりない効果を内包するモンスターエクシーズが遊馬達の前に立ち塞がった。
「だったらそれごと、倒すだけだ! いっけぇホープレイ・ヴィクトリー」
4刀を煌めかせ宙を賭けるヴィクトリー、だが遊馬にもアストラルにも知らない事がある。
ヌメロニアス・ヌメロニアの持つもう一つの効果、それがなんであるか、だ。
「この瞬間、ホープレイ・ヴィクトリーのモンスター効果を発動、ヌメロニアス・ヌメロニアの攻撃力をヴィクトリーに加える。フルヴィクトリーチャージ!」
「あまい! 私はこの瞬間、ヌメロニアス・ヌメロニアのもう一つの効果発動、相手モンスターの攻撃を無効にし!その分、ライフを回復する」
リペント&プラネタリーLP1000→16000
「そんな効果を!?」
菱形のカオスオーバーレイユニットがヴィクトリーの攻撃を防ぎ、ヴィクトリーの体より力を抜き取りリペント達へと渡していく。
「だったら、ヴィクトリーでエルシャドール・シェキナーガを攻撃!」
弾かれた勢いでヴィクトリーは宙を飛び、シェキナーガを肉薄する。
修道女像の座する機殻より紫色の砲撃が空を染め上げていくも、ヴィクトリーの脚を止めることは出来ない。
ホープレイVより渡された2刀と副腕が持つ4刀がそれぞれ煌めき、シェキナーガへと3つのVを刻み込んだ。
「そしてヴィクトリーで!」
「待て、遊馬!」
攻撃しようとしていた遊馬はアストラルの声に止められる。
「ホープレイ・ヴィクトリーではセットモンスターのカード効果を無効にできない。それにもしもあのセットモンスターが時戒神だった場合、私達は一転して窮地に陥ってしまう」
このままモンスターを全滅まで持っていきたい遊馬はアストラルを見るも、アストラルはたしなめるように首を横に振る。
そこに裕が遊馬の肩に手を置き、
「落ち着け、遊馬。俺がソリティアしてクェーサー達で殴れば1万6千のライフなんて全部を削ってやるから、安心しろ」
いつも通りの裕の言葉に遊馬は大きく頷く。
それを見ていたアストラルは一息つき、そしてリペントを見る。
―――ここまでの事が彼が予測していたからこそ、連撃の帝王で攻撃表示のオッドアイズ・リベリオン・ドラゴンとエルシャドール・ネフィリムをリリースしたのだとしたら彼の本当の狙いは何だ?
「…………分かった、俺はカードを3枚伏せてターンエンドだ」
ヌメロニアス・ヌメロニアへの攻撃宣言自体はされておりヌメロニアス・ヌメロニアの効果によって敗北することは無い。
よって安心してターンを終了させようとする。
「そうか、来ないか。ならば私の夢を始めようではないか」
リペントの場に在って今の今まで伏せられていたカード、それが今開く。
それを目にし、遊馬も、アストラルも、裕も時間を止められたように凍り付いた。
皆が動きを止める中、リペントの嬉々とした声が呪文のように響き渡っていく。
「全ては幸せな夢に遊び呆けるために、広がれ。広がれ! 広がり給えっ! 無限に広がる夢の陣。今、この瞬間より私の夢は開始される!」
リペントは叫び、そして開かれていたカードの効果が発動した。
広がるのは温かみのある光、始まるのは男が抱いていた夢だ。
友たちと永遠に決闘したい、ひたすらに楽しく続く日々を願う夢に遊馬達は強制的に引きずり込まれていく。
「さあ、君達を私の夢に招待しよう。君達の未来を望む力が、君達の夢が私の夢を砕けるというのならばやってみるがいい! 思う存分、全力を振るいこの素晴らしい決闘を愉しもうではないか!」
開かれたカードの縁は緑、稲妻のマークのある速攻魔法だ。
「リバースカード、オープン! 神秘の中華鍋! ヌメロニアス・ヌメロニアをリリースしそのモンスターの攻撃力分、私のライフを回復させる。よって私のライフは11万6千だ」
攻撃力10万のヌメロニアス・ヌメロニアが白い蓮の花に分解され周辺に飛び散っていく。
そしてリペント達のライフが急激に上昇していく。
これより広がるのは心が折れない限り永遠に決闘が続いていく。
ひたすらにシンクロ、エクシーズ、ペンデュラム、アドバンス召喚が連打されていく夢。
クリフォート、シャドール、魔術師、オッドアイズ、時戒神、No.達が遊馬と裕のライフを削り落としにかかり、遊馬達はそれら全てを払いのけライフ11万を全て削り取らなければいけない。
遊馬・裕場 CNo.39希望皇ホープレイ・ヴィクトリー ATK5000 (ORU1)
LP6000 CNo.39希望皇ホープレイV ATK2600 (ORU3)
手札2・2 伏せ3
ZW―阿修羅副腕 (装備魔法)
No.80狂装覇王ラプソディ・イン・バーサーク(装備魔法)
リペント・プラネタリー場 セットモンスター
LP116000 連撃の帝王
手札9・3 冥界の宝札
錬成する振動
機殻の要塞
PSブラック・サン(スケール12)