クェーサー厨が行かされる難易度ちょっとハードモード 作:TFRS
「うわぁ遅刻だ!? ばあちゃん、行ってきまーす!」
黒髪をツンツンに立てた少年、九十九遊馬は祖母に挨拶をして家を出る。目的地は学校だ。
遊馬は友達の小鳥や鉄男と決闘の約束をしており、ちょっと寝過ごしたために約束の時間から少し遅れて通っている通学路を走っていた。
その後ろを半透明の少年のような姿が追う。
その姿はまるで遊馬に憑りついている亡霊のように一定の距離から離れない。
「アストラル、起こしてくれてもいいじゃねえか!」
「遅くまでデッキ調整をしていた君が悪い」
「だってしょうがないだろ、昨日すげえカードが拾ったんだぜ! WDCも近いしデッキ調整をするしかないじゃんか」
遊馬はアストラルと言い合いながらも足を動かす。
その表情には笑みが浮かんでおり、新しく作ったデッキで友達と決闘をする事を待ちきれないという感情がある。
そして思うのは友達、そしてアストラルの記憶の欠片であるナンバーズを賭けて決闘してきた決闘者達だ。
「小鳥達達が凄え強くなってきてるし、カイトやシャーク達やまだ戦ったことのない決闘者と決闘するためにも俺はもっと強くならないとな!」
今までのナンバーズを巡る戦いの日々での勝ちや負け、そこから得た物を遊馬は思い返し、そして足を止める。
走っていた遊馬の目の前に、派手な格好をした男が手を広げて立ちはだかったからだ。
その高校生ぐらいの年の男は、遊馬をじっと見つめ、手元のDパッドと見比べる。
―――こいつはもしかして、またナンバーズを狙う敵か!?
先日、ナンバーズを狙うイビルーダーという男がナンバーズを操り毛等を仕掛けてきた事を思い出し、遊馬はいつでも決闘ができるように身構える。
だが遊馬がやる気になった瞬間、眼の前の男は、まるで頼みごとを頼むように頭を下げる。
「俺は隣町に住んでるエヴァ。俺のダチになる予定の奴がナンバーズっていう変なカードに取り憑かれたらしい、頼む、お前なら何とかできるって聞いてきたんだ。力を貸してはもらえくれ!」
頭を勢いよく下げたままの男を前にアストラルは遊馬の耳元に近寄り、
「遊馬、これは」
「行くぜ、アストラル、よく分かんねえけど助けてくれって頼まれたんだ、行くしかねえ!」
遊馬の返事にエヴァはがばっと頭を上げ、遊馬の手を握り嬉しそうに何度も振りながらお礼を言う。
「すまねえ、恩に着る!」
●
遊馬がエヴァに連れてこられたのは中心街から少し離れ、隣町に近い工場地域だ。
そこには大きな乗用車が止まっており、中には縄でぐるぐる巻きにされた少年が寝転がっていた。
―――あれ、こいつどっかで……?
遊馬は何時か何処かでこの少年を見かけたような気がし、思いだそうと努力するも思い出せない。悩んでいるうちに、
「遊馬、彼からナンバーズを感じる」
「お前ならどうにかできるんだろ、頼む」
エヴァは再び頭を下げ、アストラルは少年へと手を伸ばし、彼の体に触れるか触れないか、の場所まで来て、
「う……な」
少年がうめき声をあげ、眼を開いた。
「なっ!?」
「俺か、奪うなぁっ!!」
バチバチと火花が散り、少年を簀巻きにしていた縄が破裂する様に千切れ飛ぶ。
こちらを見ているようで見ていないようなぼんやりとした、だが確実に敵意のある目で遊馬を見、決闘盤を展開する。
「俺から、奪う奴は全員叩き潰してやる、決闘だ」
声が響き、少年の激情と共に放電が向上へとばら撒かれる。
遊馬は自分の腕に静電気をうけたように立ち上がる毛を見て、アストラルへと焦り目を向ける。
「まずいな、彼をこのままにしておくと何が起こるか分からない。遊馬」
「おう、決闘盤、セット!」
遊馬は決闘盤を構える。
半強制的に決闘の申請が通り、作り出されリンクするARビジョンの光を受けながら2人は叫ぶ。
「「決闘!」」
●
「先攻は俺だ、俺のターン、ドロー!」
―――へへ、さっそく来たな!
遊馬がドローしたのは昨日、学校の帰りに見つけたトレジャー・シリーズ、それも遊馬のデッキにぴったりのカード達だ。
「俺は手札のゴゴゴゴーレムを墓地に送り、魔法カード、オノマト
墓地肥しとサーチの両方を行う優れたカードは遊馬のデッキを滑らかに回していく。
これにより次のターンも強力なモンスターエクシーズを召喚する準備は整いつつある。
「俺はゴゴゴジャイアントを召喚! このモンスターが召喚に成功したとき墓地のゴゴゴと名のつくモンスターを特殊召喚できる、蘇れゴゴゴゴーレム!」
茶色の煉瓦を積み上げた一つ目ゴーレムが拳を地面にたたき付け、地中より自身より丸く青い煉瓦が多めなゴーレムを引き吊りあげた。
そして2体のゴーレムの前に銀河の渦が開き始める。
全てを飲み込み、同じレベルのモンスター達を重ね合わせ新たなランクを与える渦、それにゴーレムたちは跳びこんで行く。
「レベル4のゴゴゴジャイアントとゴゴゴゴーレムでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚! 現れろNo.39希望皇ホープ!」
翼を閉じた装飾の盾のようなモニュメントが光の渦から出現し変形を始める。翼が開き大きく伸び、腕や足が黄色い光から作り上げられ月のような角を生やし、顔が現れ腰に一刀を携えた戦士は眼の前の相対する少年へと身構える。
「このまま俺はターンエンドだ!」
遊馬場 No.39希望皇ホープ ATK2500 (ORU2)
LP4000
手札5
少年場
LP4000
手札5
静かに少年はカードをドローし、手札を2枚取り出す。
「レベル・スティーラーをコストにクイック・シンクロンを特殊召喚」
「確かクイック・シンクロンってチューナーモンスターだったよな、ていう事はシンクロ召喚か!」
遊馬の友達である小鳥が決闘の時、レベルのバラバラのモンスターで強力なシンクロモンスターを出して来るから遊馬はシンクロ召喚はエクシーズ召喚に負けず劣らずの強力な召喚だということまでは知っている。
「墓地のレベル・スティーラーをクイック・シンクロンのレベルを下げ特殊召喚、レベル1のレベル・スティーラーにレベル4となっているクイック・シンクロンをチューニング、シンクロ召喚」
1つの星と4つの輪が空へと昇っていく様子をアストラルは興味深げに眺めている。
アストラルは遊馬よりも遥か決闘についてよく知っている。
当然、シンクロ召喚についても知っているのだろうと思い、遊馬が聞いてみるとアストラルも知らない召喚方法だという。
それはアストラルが飛び散った記憶の中にあり今は思い出せないだけなのか、それともアストラル世界にシンクロ召喚は存在しないという事になるのかは遊馬にも、誰にもまだ分からない。
「シンクロ召喚、レベル5、ジャンク・ウォリアー。そしてシンクロン・エクスプローラーを召喚、効果発動」
墓地から鉄砲水のように湧き出るモンスター達に遊馬は眼をとられていると、
「エクスプローラーの召喚時効果でクイック・シンクロンを墓地より特殊召喚、ジャンク・ウォリアーのレベルを下げレベル・スティーラーを特殊召喚」
「これで場のレベルの合計は8、遊馬、気を付けろ!」
アストラルは知っている。
小鳥がシンクロ召喚してくるシンクロモンスターは光属性以外のモンスターを問答無用に破壊して来たり、シンクロ召喚に成功するだけで場の全てのカードを破壊する等のシンクロモンスターの性能を。
それらでさえ、レベルは5と7なのだ。これから特殊召喚されようとするのはレベル8、どれほどの性能が来るのかと警戒の声を挙げる。
「レベル2のシンクロン・エクスプローラーとレベル1のレベル・スティーラーにレベル5のクイック・シンクロンをチューニング、シンクロ召喚、レベル8、ロードウォリアー」
―――攻撃力3000! ってこの効果は!?
遊馬が顔を挙げるのと、それが発動するのは同時だ。
「ロードの効果でデッキからアンノウン・シンクロンを特殊召喚、ロードのレベルを下げレベル・スティーラーを特殊召喚、レベル1のレベル・スティーラーにレベル1のアンノウン・シンクロンをチューニング」
ぐるぐると墓地を行き来し、連続する光、そして巻き起こる風、それらの中より駆け抜けるのは、
「シンクロ召喚、レベル2、フォーミュラ・シンクロン、効果で1枚ドロー、そしてロードのレベルを下げスティーラーを特殊召喚する」
これで場に揃うのはレベル6となったロード・ウォリアー、レベル4となっているジャンク・ウォリアー、レベル2のシンクロチューナーのフォーミュラ・シンクロン。
レベルの合計は最大レベルたる12、それに気づいた遊馬は少年がエクストラデッキより取り出したカードを見て、背筋に嫌な悪寒が走った。
そのカードを握る少年の手はゆっくりと上へと、天へと突き上げられ、そして2体のモンスターが10の強く輝く星となり天へと駆け上っていく。
「レベル6となっているロード・ウォリアーとレベル4となっているジャンク・ウォリアーにレベル2のシンクロチューナー、フォーミュラ・シンクロンをチューニング、レベルマックス、最も輝く星の龍をここに、来い、シューティング・クェーサー・ドラゴン」
上空へと上った三体が光の輪となり、その輪の中から巨大な龍の立体映像が上空を遮るように現れる。
その龍は掌を空へと突き上げる。その拳から光が滝のように放出され、まるで光の大剣のようになっていく。
「バトルだ、クェーサーでホープを攻撃!」
遊馬の持つ必殺の切り札であるホープレイの1撃と同じぐらいかそれ以上の光剣がホープと遊馬へと上空より太陽を割る様に一直線にぶち込まれる。
「遊馬、ホープの効果を!」
攻撃力4000に僅かに怯み、アストラルは声を挙げ、クェーサーのテキストを確認した遊馬は首を横に振った。
「俺はホープの効果は使わない、そしてナンバーズはナンバーズの攻撃でしか戦闘破壊されない!」
クェーサーの光線をホープは耐え忍び、その余波で生まれた爆風が遊馬を吹き飛ばした。
だが、それでは恒星龍の攻撃は終わらない。
片手に作り出した光剣と同じものをもう片方の手に作りだし、叩き込んでくる。
「2回目の攻撃だ」
「うわぁあああっ!」
跳ね飛ばされる様に巻き起こる衝撃が遊馬を噴き飛ばし、遊馬は固い地面を滑る。
それを見ても、何も感じていない様に、ただ敵を排除するロボットのように無表情で少年はカードを伏せる。
「1枚伏せ、ターンエンド」
少年場 シューティング・クェーサー・ドラゴン ATK4000
LP4000 レベル・スティラー DEF0
手札3 伏せ1
遊馬場 No.39希望皇ホープ ATK2500 (ORU2)
LP1000
手札5
●
最上や黒原達はこっそりとバンの裏側に隠れ決闘を観戦していた。
巻き起こる風は乗用車を揺らすも、まだ本命のナンバーズは姿を現していない。
「はいはいホープホープ、はいはいクェーサークェーサー、ワンパターンすぎだろ。しかもワンキル狙えたのになんであの馬鹿は狙わなかったんだ?」
最上が理解できないと声を出し、
「護封剣⋯⋯はまだかもしれないけどガガガガードナーとかで守れるし、相手の動きを妨害できるクェーサーを出せるから出しておこうって感じじゃないかな。まあそれかクェーサーを出したいっていう理屈抜きの感情で出したのかもよ、そういうロマンは僕的には嫌いじゃない」
黒原は一応の理解を示す。
それを最上は首を捻りながらも、本当に、心の底から理解できないという感情を吐く。
「そういう切り札っていうもんに拘る気持ちは本当に訳がわからんなぁ。どれでもいいから出して勝てばいいのに、なんでそんなのに拘るんだ?」
●
アストラルと遊馬は立ち上がり、こちらを見おろす恒星龍を見返す。
仰ぎ見なければ全体像が見ることの出来ないぐらいに巨大な光り輝く龍の姿に遊馬は目を輝かせ、アストラルも興味深げに見る。
「なるほど、このモンスターは相手の発動した効果を無効にして破壊する効果を持っている、つまり今の状況では攻撃を受けるしかないというわけか、だが」
「これでライフは1000ポイント、行くぜアストラル!」
「ああ!」
2人は共に手を取り、ナンバーズを狙う強敵との決闘で手に入れた新しき力を解き放つ。
「俺のターン、ドロー! 俺は希望皇ホープ1体でオーバーレイネットワークを再構築、カオスエクシーズチェンジ、現れろ、CNo.39希望皇ホープレイ!」
白いモニュメントへと回帰し再び発生する黒い渦へと戻っていく、代わりに上って来るのは黒い剣のようなモニュメントだ。ホープと同じく変形し始め、ホープに比べると体つきは筋肉質で鋭角的なフォルムとなり、黒を基調とし黄色を僅かに取り入れた黒の大剣を背負う剣士となった。
「そして俺はガガガシスターを召喚、そして召喚時効果でデッキからガガガと名の付く魔法罠カードを手札へと加える。俺はガガガボルトを加え、そのまま発動!」
ガガガモンスターが場に存在する場合にのみ、相手の場のカードを破壊するガガガボルトの稲妻が恒星龍へと放たれる。
それを恒星龍は見逃すはずがなく、
「クェーサーの効果、その魔法の効果は無効だ」
恒星龍の手より光が漏れ出し、稲妻を払い砕く。
だがそれは遊馬の狙い通りだ。
「へへっ、そうくるよな、CNo.39希望皇ホープレイの効果発動! 俺のライフが1000以下の時、オーバーレイユニットを使う事でエンドフェイズまで相手モンスターの攻撃力を1000ポイントダウンさせ、ホープレイの攻撃力を500ポイントアップさせる! 俺はオーバーレイユニットを3つ使い、シューティング・クェーサー・ドラゴンの攻撃力を3000ポイントダウンさせ、ホープレイの攻撃力を1500ポイントアップさせる! オーバーレイ・チャージ!」
背中に装備された大剣を肩に着いた副腕で握り、抜き放つ。
その大剣へとオーバーレイユニットが跳びこんで行き、恒星龍へと弱体化の光が放たれる。
そのそぎ落としの光は恒星龍の体か溢れ出る光を削り、希望皇の大剣は更に光を強化、先程の恒星龍が放った光剣と同じ大きさへと変える。
「さらに手札から
大剣を握る片手が離れ、後方から飛来する一角獣の槍を握る。
この装備カードによりホープレイは攻撃力が1900アップし、攻撃するモンスターの効果を無効にする力を得る。
―――これで、攻撃すれば!
「リバースカード、サイクロンを発動、一角獣王槍は破壊だ」
抜き放たれる様に吹いた突風がホープレイの持つ槍を砕く。
攻撃力は下がってしまうが、まだホープレイの攻撃力の方が上であり、
「ホープレイでクェーサーを攻撃、ホープ剣・カオススラッシュ!」
光剣は先ほどのお返しとばかりに空高くより恒星龍へと振り下ろされる。
恒星龍も両掌より光剣を抜き、抗おうとするも、そぎ落とされた現状では耐えきる事はできず、両断された。
その様子に見ていた少年は一瞬だけ、眼に排除しようとする感情以外の色をうかべ、すぐさま消え去った。
そして爆発が晴れた場所、少年のがら空きのはずの場にはクェーサーを小型にし流線型になった龍がいた。
「何!?」
「なんだこのモンスターは!?」
「クェーサーの効果、このカードが場を離れたときエクストラデッキからシューティング・スター・ドラゴンを特殊召喚する」
恒星龍が残していった流星龍、その攻撃力は3300とかなりのものだ。
遊馬は次のターンに備え出来るだけの事をする。
「くっ、俺はガガガシスターでレベルスティーラーを攻撃、そしてメイン2、俺はガガガシスターにワンダー・ワンドを装備、そしてワンダー・ワンドの効果でガガガシスターとワンダーワンドを墓地に送り2枚ドロー」
祈るようにデッキからドローし、
「俺はカードを2枚伏せてターンエンドだ」
遊馬場 CNo.39希望皇ホープレイ ATK2500 (ORU0)
LP1000 伏せ2
手札3
少年場 シューティング・スター・ドラゴン ATK3300
LP1000
手札3
ライフポイントだけを見れば互角であるが、場を見れば遊馬が押され気味な状況だ。
少年は静かにドロー、その動きに合わせる様に空気中に静電気が飛び散り始める。
静かに、静かに、ジジジという音が遊馬の周囲を取り囲むように広がり、アストラルと遊馬は何かが来ると身構える。
「俺のターンドロー。ギアギアングラーを召喚、そして機械複製術を発動、デッキから同名モンスターを2体まで特殊召喚する」
「レベル4のモンスターが3体、来るぞ、遊馬!」
「おう!」
「レベル4のギアギアングラー、3体でオーバーレイ、エクシーズ召喚。俺から奪おうとするものを全て壊せ雷光の化身よ、来い、No.91サンダー・スパーク・ドラゴン!」
空中を泳ぐ巨大な魚の頭部をした竜、少年の腕に現れた91の刻印。
ナンバーズの出現に呼応するように周囲には電撃が走り、あちこちで小規模な火花が噴き出していく。
オーバーレイユニットを3つ体内に飲み込んだ雷電竜は咆哮する。
「サンダー・スパークの効果発動、オーバーレイユニットを3つ取り除きフィールドのモンスター全てを破壊する。更にその効果に速攻魔法、禁じられた聖衣をシューティング・スターに発動、これでシューティング・スターの攻撃力は600下がるがカード効果では破壊されない」
「ホープが!?」
強力な雷がサンダー・スパーク・ドラゴンより放たれ聖衣に守られたシューティング・スター以外のモンスターを焼き払っていく。
ホープレイも例外ではない、雷が終わった後にあるのはがら空きの遊馬の場だ。、
「これで終わりだ、サンダー・スパークで直接攻撃!」
「罠カード、和睦の使者を発動、これで俺のライフは0にならねえ!」
僅かに悔しげな表情を見せ、少年はこのターンで仕留める事を諦める。
「……メイン2、カードを1枚伏せて、ターンエンド」
少年場 シューティング・スター・ドラゴン ATK3300
LP1000 No.91サンダー・スパーク・ドラゴン ATK2400 (ORU0)
手札0 伏せ1
遊馬場
LP1000 伏せ1
手札3
「俺のターン、ドロー!よし、ガガガマジシャンを墓地に送りオノマト連携を発動! デッキからガガガシスターとゴゴゴジャイアントを加え、俺はガガガシスターを召喚!」
「遊馬、あのドラゴンには破壊する効果を無効にし破壊する効果がある。ここはビッグアイで対抗だ!」
「分かったぜ、ガガガシスターの効果でデッキから装備魔法、ガガガリベンジを加え、発動!」
ピンク色の甘ロり風の服を着た幼女がトテトテと歩き、遊馬のデッキから棺桶を引き摺りだし、遊馬の前に置く。
「このカードは自分の墓地のガガガと名のついたモンスターを1体を特殊召喚し、このカードを装備する。甦れガガガマジシャン!」
その箱を開き、現れるのは長い学ランを来た不良魔法使いだ。
幼女は満面の笑みを浮かべ棺から出たばかりの不良の手を取ると、発生した渦の中へ飛び込んでいく。
「俺はガガガマジシャンのモンスター効果発動、ガガガマジシャンのレベルを5に変更する。そしてガガガシスターのモンスター効果でガガガシスターとガガガマジシャンは2体のレベルを合計した数値となる。レベル7となっているガガガシスターとガガガマジシャンでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚、現れろ、No.11ビッグアイ!」
最初に現れたのは目玉だ。ぎょろりとした目玉から伸びる神経のような白い筋が膨れ白いヌルリとした光沢を放つ体となる。そして幼女の残した柩から僅かに光が漏れビッグアイを包む。
ガガガリベンジの効果は2つ、墓地のガガガモンスターを特殊召喚する効果ともう1つ、装備モンスターがエクシーズ素材になる事によってこのカードが墓地へ送られた時、自分フィールド上の全てのモンスターエクシーズの攻撃力を300ポイントアップするという効果を持つ。
ビッグアイの攻撃力は2900となり並のモンスターでは戦闘破壊できない様な数値となる。
そしてそのモンスターの登場した瞬間、今まで無表情だった少年の目つきが変わる。
まるで諸悪の根源や殺したいほど憎んでいるような決闘に向けてはいけない様な感情を浮かべた少年はナンバーズの刻印の入った手ごと砕くように握りしめる。
その異常な様子に気圧された遊馬だったが、気を取り直し、
「俺はビッグアイの効果発動、オーバーレイユニットを使いシューティング・スター。ドラゴンのコントロールを得る!」
「奪わせない、罠発動、スキルプリズナー。シューティング・スターを対象にするモンスター効果を無効となる!」
上手く行けばこの危険な状況を打破できたのに、と遊馬は悔しく思うも今できることをする。
「くっ、俺は魔法カード、エクシーズ・トレジャーを発動、このカードは場のモンスターエクシーズの数だけデッキからドローできる。場には2体のモンスターエクシーズ、よって2枚ドローし、ターンエンド」
少年から発せられる妙な気迫に押されつつ伏せれるカードがないため遊馬はターンを終了する。
遊馬場 No.11ビッグアイ ATK2900 (ORU1)
LP1000 伏せ1
手札4
少年場 シューティング・スター・ドラゴン ATK3300
LP1000 No.91サンダー・スパーク・ドラゴン ATK2400 (ORU0)
手札0
「奪われるものか、俺のものを奪うんじゃない、ただ俺は普通の楽しい決闘が出来ればそれで良いのに。能力だのアンティ決闘だの意味の分からない。楽しくないことばかり言いやがって、全部ぶっ壊してやる」
少年の抱いている執着心、好きなものを普通に楽しみたいだけという願いは、様々な出来事により歪められ、ナンバーズによって強化される。
弱い人間が何を願っても強い人間が踏み潰す、伸ばした手も、叫ぶ声も誰にも届かない、そのようなクソったれな状況、それを押し付ける者を全て壊したい。
そのような感情は破裂寸前まで膨れ上がり、その衝動に突き動かされるまま、少年はドローする。
「ジャンク・シンクロンを召喚、召喚時効果で墓地よりフォーミュラ・シンクロンを特殊召喚。シューティング・スターのレベルを下げレベル・スティーラーを特殊召喚し、レベル1のレベル・スティーラーにレベル2のフォーミュラ・シンクロンをチューニング、シンクロ召喚、レベル3、霞鳥クラウソラス」
少年の願いは手に宿り、カードへと宿り全てを打ちく抱くような風を生む。
墓地より特殊召喚される天道虫は星になり、空へと上り続ける。
その光に中、姿を現した緑の体色を持つ巨大な鳥が翼を広げ、ビッグアイへと迫る。
「クラウソラスの効果発動、ビッグアイの効果を無効にし攻撃力を0にする」
巨大な怪鳥より放たれた羽に刺されビッグアイはその目玉をしばしばと瞬きを繰り返し円錐の体を地面に落としていく。
「まずいぞ、遊馬!」
「再びシューティング・スターのレベルを下げレベル・スティーラーを特殊召喚し、レベル3のジャンク・シンクロンとレベル1のレベル・スティーラをチューニング、シンクロ召喚、レベル4、シンクロチューナー、波動竜フォノン・ドラゴン」
光の中より唸り声を挙げ乍ら飛び出る波4つの球を持つ小型竜だ。
その体の球は色鮮やかに輝き、フォノン・ドラゴンの全身を覆っていく。
「フォノン・ドラゴンのシンクロ召喚時、このカードのレベルを1から3に変更できる。俺はレベル1を選択する」
シューティング・スター・ドラゴンのレベルは8、霞鳥クラウソラスのレベルは3、そして波動竜フォノン・ドラゴンのレベルは1、合計レベルは、
「遊馬、またあの龍が来る。今のうちにトラップを!」
アストラルは即座に反応し遊馬へ注意を呼びかける。
「おう、トラップ発動、和睦の使者!!」
「レベル8となっているシューティング・スター・ドラゴンとレベル3のクラウソラスにレベル1となったフォノン・ドラゴンでチューニング、レベル・マックス。恒星は砕け、彗星を産みまた最も輝く龍の星へと返る、来やがれ、シンクロ召喚、シューティング・クェーサー・ドラゴン」
爆光が倉庫を白い絵の具をぶちまけたかのように染め上げ、その中より恒星龍が再び姿を現した。