クェーサー厨が行かされる難易度ちょっとハードモード   作:TFRS

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決戦、ドン・サウザンドVS三勇士

「ドロー!」

 

 荒れ果てた山頂、いやもはや山などという物はなく更地が広がっている場所に三つの声が響き重なる。

 その後にくるのは3つの光だ。

 小鳥はその光より逃れるために僅かに残った壁の残骸の裏に身を隠していた。

 まず来るのは光、そして衝撃波が地表を舐め、そして超高温の風が全てを破砕し、消滅していく。

 その中で小鳥は今なお絶望的な状況で戦い続ける想い人の無事を祈っていた。

 自分はあの場所に立つ事など出来ないがために、祈る事しかできないがために。自分は無力でも祈ることぐらいは出来ると信じるがために。

 

「みんな、無事でいて!」

 

 この場に居た所で何もできない、そして居たら決闘の余波で命を失うかもしれないというこの場所、常人ならば逃げ出すだろう。だが小鳥はその場にとどまり遊馬達の決闘を見続けていた。

 そしてただ仲間達の無事を願う彼女を嘲笑うように彼女を守っていた壁の残骸に小さな罅が入った。

 まるで祈ったところで何もできない事を小鳥に知らしめるように罅は壁に万遍なく、ゆっくりと進行していく。

 その罅が広がっていく僅かな時間、その時間は彼女の心に絶望をもたらすには十分だった。

 

「い、いや……」

 

 いくら心が強かろうとも決闘者である前に小鳥はまだ中学生だ。死が目の前に迫ることに恐怖を抱かない筈が無い。

 口から漏れるのは認めたくない現実の否定だ。そして次に遊馬、助けて、と言葉を発するよりも先に、壁が砕けた。

 

「…………っ!」

 

 小鳥に出来たのは来るであろう痛みに怯え目を瞑る事だけだ。

 瞼で目を覆っても分かるほどの爆光、それを感じ取り、小鳥は自分の体を抱きしめるように両手をクロスさせる。

 怯え震える体を抱きしめ待つ。

 だがいくら待とうとも衝撃は来ない、それを疑問に思った小鳥は恐る恐る目を開け、見た。

 

「壁?」

 

 それを見た彼女が抱いたのは巨大な壁だ。だがそれは真実ではない。

 地面に突き刺さり光を食らうは巨大な剣だ。

 白銀に輝く大剣が光を食らい自らの糧にしていく、そしてその剣に巻き付くは覚醒していない半透明の竜だ。

 それらに食われいつもよりも早く光が弱くなり止んだ。

 餌が無くなった大剣と竜は役目を終えたようにカードへと戻り小鳥の前にゆっくりと落ちてきた。

 小鳥が命の恩人であるカードを手に取ろうとし、それより先に小鳥の後ろから延びた手が2枚のカードを掴んだ

 呆けたように白紙のカードを眺めていた小鳥は後ろを振り返る。そして彼女の顔に笑みが浮かんだ。

 遊馬達が戦うこの戦場に天城カイトがたどり着いたのだ。

 

                 ●

 

 熱波に舐められまだ熱を持つ大地を踏み、後ろより吹き抜ける風に煽られた長い髪を掻き分け最上は眼下に広がる光景を見た。

 餌に群がる蟻の様に赤い光が点々と見える。それは数々の妨害を潜り抜けた希望を磨り潰そうとする神の尖兵だ。

 ため息を吐き、恨みがましげに後ろを見れば地面に寝転がっている裕を見る。

 できるだけ裕に休息を取らせてやろうとしカイトは先に仲間たちの元へと向かっていった。

 最上がここに居るのは裕を守るためだ。

 

―――ヌメロン・ドラゴンだけでいいんじゃないか、でも効果的なカードを使わずにもしも負けでもしたらアホらしいか。

 

 自分が生き残るために、自分が楽して勝ち続け楽しむ未来へたどり着くために、最上は寝ている裕の頬を叩く。

 

「おい、起きろ」

 

 いくら叩こうとも起きないので最上は更に頬を叩く。

 だが起きない。まるで死んだように寝ているので最上はほんのちょっぴりだけ不安になり心臓に手を当ててみる。

 動いてはいる。

 ふむ、と最上は呟き、態々座り込んで裕の耳元に口を寄せる。

 

「起きないと全部終わっちゃうぞ」

 

 弱々しくうめき声が上がり、僅かに首が横に振られ、裕の眼が開く。

 最上はその裕の瞳にいつもは見えないおかしな色を見る。

 最上の前に立った決闘者が敗北したときに浮かべる恐れ、不安の感情が裕の眼には見える。

 いつもならば浮かべる筈が無い色に疑問を持ち、少しだけ思案、そうして最上はどうしてこの決闘バカが恐れを抱いているか理解した。

 

「ああ、なるほど。お前は実際あの場所で一瞬諦めたもんな。私があの場所で寝返らなければお前は敗北してたんだからなぁ」

 

 裕はあの瞬間まで驕っていたのだ。

 どんな敵が現れようとも自分とクェーサーが勝つと、自分達は負けない。今までどれだけ頭のおかしい敵が現れようとも勝ってきたんだからなんとかなる。そう思っていた。

 そう思うのも無理は無い。

 征竜やクリフォート、魔導に甲虫装機にチェーンバーン、その他諸々の凄まじいカードパワーを持ち、更に優秀なアニメオリジナルカードを使う的に勝ち続けてこれたのだ、驕るのも無理は無い。

 だがあの場所で一度、裕は諦めかけた。心の柱と共に自信も砕かれしまった。

 

「所詮は紙切れを使った異能力ゲーを能力なんてない普通のカードを使った運ゲーにするだけ、あとは相手と運任せ。それがお前の生き様だもんな」

 

 要するに自分が死ぬ事をようやく思い知ったのだ、自分は最強のヒーローなんかじゃなく軽く死ぬただ願い叫ぶだけの運が良いクェーサー厨だと。

 

「立てよ、お前の持っている願いが、私に勝った願いで神様の思惑をぶっ壊してこいよ。神様よりも自分の願いの方が強いって証明しろよ。そして私がお前のその願いに勝ってその上を行くんだ。私が気持ちよくなるためにも勝てよ」

 

 最上はドン・サウザンドをぶっ倒したいと思っている。誰よりも最も上の存在である自分の意思を怪我し汚した敵を生かしておく事など言語道断だ。

 それでも自分では勝てない事を冷静に理解している。

 一番最初、最上と裕を引き合わせた原因である黒原の時と同じく、勝てる人間に倒させ溜飲を下げる為に裕を励ます。

 最上の行為は表だけ見れば挫けた主人公を励ますヒロインのようである。だがその裏側にあるのは自己愛と嫌いな奴は不幸になれという醜い欲望のみがある。

 

「しょうがないな、私がお前にお願いをしよう」

 

「お願い?」

 

「そうだ、これが全て終わったら私が直々にお前の役に立つことをしてやろう。一回だけだが、光栄に思え。なんでもしてやろう、性能が素晴らしいカードだの収入の半分をあげるだのお前が役に立つことを一つだけしてろう」

 

 だから、と最上は呟く。

 それはまるで最上と裕が初めて敵対したあの体育館での会話のようだ。

 得をさせてやるから自分の為になる事をしろ。私じゃ面倒だし勝てないからお前が勝ってこい、と言っているのだ。

 

「私が雑魚を叩きつぶすからお前は、私の為に勝ってこい」

 

 裕から顔を放し、笑みを浮かべ最上は立つ。

 下から見上げる裕にパンツが見えるかもしれないがそんな事は気にしない。

 堂々と立ち、風になびく黒髪を掻き揚げるその様子はまるで普通の、別れを惜しむ少女のようである。

 その少女の中身を知っていれば誰だお前はと言いたくなるほど清純な笑みを浮かべ、最上はバリアン兵を迎撃すべく歩きだし、止まる。

 

―――1つ、言い残したことが在ったな。

 

「お前にこれを言うのは生涯で最後だろう、だから心して聞け」

 

 最上は振り返る。

 最上の眼に映る裕は最上を見て大きく口を開けた表情だ。

 まるで何か信じられない化け物か、奇跡でもみたような阿保な顔をする裕をガン無視し最上は口を開き、一瞬だけ止まる。

 全力で口を閉じようとする自分のプライドをねじ伏せ、漏れ出しそうな決意を吐き出させないために息を吸い、

 

「お前が居なかったら私が私を取り戻せなかった…………ありがとう、助かった」

 

 言い切り最上は一歩を踏み出した。

 

                   ●

 

 裕は最上が去った後、数秒ほど硬直していた。何も考えず動かずにいた。

 あの自己愛全力で他人を自分の欲求を解消するだけの玩具程度にしか考えていない最上が自分にありがとうと言う言葉を口にしたのだ。

 それがどれほどまでに珍しいか、天変地異の前触れか世界崩壊の前触れじゃないかと思うも、

 

―――いや今の状況がまさにそれか。

 

 人間世界とバリアン世界が融合してドン・サウザンドとやらがヌメロン・コードを使って何かをしようとしている事を思いだし立ち上がる。目的の場所はドン・サウザンドと遊馬達が戦っている場所だ。

 傷ついて全身が酷く痛いのを無視してゆっくりと歩き、裕は宙より金色に輝く男と遊馬とナッシュが空に浮かんでいる戦場へとたどり着いた。

 もはや何故それに浮かんでまで決闘しているのか? コスプレ衣装を何で着ているのかなど疑問には思わない。ただ小鳥の傍に立つカイトの傍に歩き、空を見上げる。

 そして手を遊馬へと伸ばした。

 

「遊馬、使いそうなナンバーズ以外、全部俺に貸してくれ」

 

 裕が願うのは自分がナンバーズと関わる羽目になった出来事の再演だ。一枚のナンバーズで黒原の持つ能力を完全に封じ込める事が出来た。

 むろんそれだけではヌメロンコードを掌握しかけ膨大な力を持つドン・サウザンドの能力を抑えることは出来ないだろう。

 ならば欲望を増幅、能力を強化するナンバーズを複数持てばどうなるのか、100%勝てない絶体絶命の状況を勝てる可能性がある戦場に塗り替えることが出来る。

 

「裕、その体でナンバーズを使う気か!?」

 

 だがギラグとの決闘を見ていた遊馬は止めようとする、ナンバーズを一枚手に持っただけであれだけの大怪我を負ったのだ、今の裕の状態でほぼ全てのナンバーズを持てばどうなるのか、最悪の場合裕の命は喪われてしまうだろう。

 それでも裕の意思は変わらない。

 死に対する恐怖はある。

 もう痛みなんて受けたくもないしこのまま平穏にギャラリーにでも徹することが出来るのならばそうする。

 だが天よりこちらを見おろす神の力は裕がこの場に現れた程度では弱まる様子を見せない、そしてカイトの手に握られるまだ覚醒していないヌメロン・ドラゴンの力だけではドン・サウザンドの初手エクゾディアを封じることは出来ないのだ。

 

「そうだ、ヌメロン・ドラゴンだけじゃ状況は変わらないかもしれないんだろ、だったら俺も本気で行くしかねえ、この願いの為に命ぐらい賭けてやる」

 

 決意し、カイトの持つリペントより渡されたカードを手にする。

 空っぽのナンバーズですらも持とうとするだけで反発が発生し裕を傷つけていく、それでもカードを握る。

 全ては自分が目指す命がけだの金をかけるだの、オカルトじみた能力も何も無い普通の決闘の為に。 

 

「あ、早めに勝てよ。俺、今は根性だけで立ってるから」

 

 強がって笑みを遊馬に向けると、遊馬は困ったような表情を見せる。だが隣にいるであろうアストラルとやらと何回か言葉を交わし諦めたように肩を落とした。

 

「頼んだぜ」

 

「おう!」

 

 地上に降り立った遊馬、ナッシュよりナンバーズを受けとろうと裕は手を伸ばす。

 指が触れるか触れないかの瞬間、来るのは強烈な痛みだ。

 裕の体より発生した黒赤と何十枚かのナンバーズの放つ青白のエネルギーが反発し光とユニットの体を裂いていく。

 裕はもう一人の自分に勝ちそれを吸収し相手の能力を封じるという力は強くなっている。

 だがそれは同時に体の中にバリアンの力が更に溜まったと言う事でもあり、アストラル世界の力を持つナンバーズとの更に強い反発を招く事にも繋がる。

 

「うぉおおおおおおっ!」

 

 だからなんだと裕はナンバーズの束を握り祈る様に両手で包み込む。

 最上や堺達プロ組、バリアン七皇にバリアン兵に敗れ消滅していった名前も知らない決闘者達、皆の思いを集わせ、奇跡を照らし出すべくより強固な願いへと昇華させる。

 そして裕は集った願いを周囲へとぶちまけた。

 オカルト能力などあり得ない、不可思議な減少など必要ない。そこにあるのは来るか分からないけど祈り願いドローし手札と相手の場をにらめっこするだけの、普通の決闘を強制する少年の願いが周囲を包み込み無効化していく。

 そのぶちまけられた波動を逃げず受け止めたドン・サウザンドはデッキより5枚のカードを引く。

 そして、

 

「ほう、なるほど。初手エクゾディアが揃わないのは随分と久しぶりだな」

 

 眉を寄せ懐かしげに笑う。

 それを見た遊馬達の顔に笑みが浮かぶ。

 安堵し、勝てるかも、と言う希望が生まれていく。希望は伝播し疲れ果てた皆の顔に弱々しくも笑みが浮かぶ。

 

「いくぜ、シャーク!」

 

「ああ。今こそ過去の因縁全てを俺と仲間の絆で打ち砕いてやる!」

 

 2つ分の前世、神代凌牙としての人生に深く根を張ったドン・サウザンドの呪縛を砕くべくデッキを弄り新しくカードを入れて、遊馬の横に立つ。

 

「カイト!」

 

「分かっている。ハルトとオービタルに行った仕打ち、貴様の魂で償わせる! フォトン・チェンジ!」

 

 カイトは父の作り上げたナンバーズハンターとしてのコートを纏い遊馬の横に立つ。

 

「行くぜ! アストラル!

 

「ああ、ともに行くぞ遊馬!」

 

 一度は敵対し、目的がありバラバラになった仲間たちが一人の強大な敵を倒すために団結する姿に小鳥はいつかのフェイカーとの戦いを思い出す。

 遊馬と凌牙の顔に笑みが戻ったのを見てドン・サウザンドは鼻を鳴らす。

 

「貴様らはなぜ笑う? たかが能力を使えなくなった程度で我が弱くなったなどと本当に思っているのか、仲間と力を合わせなければ我と同じ極みに立てない様な半端物風情が!」

 

 ドン・サウザンドは遊馬達と同じ大地に降り立ち叫ぶ。

 半端者と一緒にされる憤慨の感情を、自分の勝利への渇望を下に見られたことを。

 

「我がベクターと同じように能力に頼って決闘をする決闘者だといつ言ったというのだ、我の渇望とこのデッキが貴様ら程度を葬るなど造作もない事を、貴様らに残っているのは絶望だけだという事を教えてやろう!」

 

 そして過去から今に繋がる全ての因縁に終止符を打つべく決闘が始まる。

 アストラル世界の意思を代行する少年とバリアン世界の王、そして人間世界の最新技術を身に着けた少年、3勇士が勝利への渇望に狂う荒神(アラガミ)との最終決闘が今、開かれる。

 神の渇望が全てを上回るのか、皆の希望と願いを乗せた一撃が絶望全てを打ち払うのか、それを知る者などこの場には居ない。

 5人の口は同時に開かれ、始まりの合図が荒野に響く。

 

「決闘!!」

 

 決闘のルールは裕と黒原、最上が行ったバトルロワイヤル、違うのはドン・サウザンドのライフが12000という事だけ、それ以外は裕が行った決闘と同じ方式だ。

 

「先攻は我か。我のターン、ドロー」

 

 ドローした瞬間より爆光は来ない。つまりは初手エクゾは完全に封じ込まれている。 それだけで遊馬と凌牙の顔には希望が踊り、そしてドン・サウザンドが動く。

 

「我は手札のレベル1、ミスティック・バイパーを墓地に送りビック・ワン・ウォリアーを特殊召喚する。さらに我の場にレベル1のモンスターが存在するこの時、魔法カード、ワンチャン!?を発動。デッキよりレベル1の金華猫を手札へ加える。我は金華猫を通常召喚し召喚時効果発動」

 

 金華猫には召喚成功時に墓地からレベル1のモンスターを特殊召喚すると言う効果がある。

 遊馬が一瞬だけ動こうとするも、カイトがそれを手で止める。

 

「この瞬間、俺は手札から増殖するGのカード効果を発動する、貴様がモンスターを特殊召喚するたびに俺はカードをドローできる!」

 

「ほう、なるほど。我は墓地からミスティック・バイパーを特殊召喚しミスティック・バイパーをリリースしミスティック・バイパーの効果発動、デッキよりドローする」 

 

 ミスティック・バイパーには自身をリリースしカードを一枚ドロー、そのカードを相手にも見せ、それがレベル1ならばもう一枚ドローするという効果がある。

 そしてドン・サウザンドはドローしたカードを見、笑みを浮かべ遊馬達へと見せつける。

 

「我がドローしたのはエフェクト・ヴェーラー、レベルは1、よって更にドローする。そして我は金華猫とビック・ワン・ウォリアーでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚」

 

 2体の最低レベルを持つモンスターが渦の中へと吸い込まれていく。

 ドン・サウザンドの放つ最初のエクシーズ召喚に遊馬達はどんな強大なモンスターが出るのかと警戒を強める中、現れるのは白い馬に跨った黒い甲冑を着込んだ首なし騎士だ。

 

「現れよ、ランク1、ゴーストリック・デュラハン」

 

「攻撃力1200のモンスター、何か凄まじい効果があるのか?」

 

 アストラルは警戒の声を挙げ、ドン・サウザンドはただ横に首を振る。

 

「いや無い、このカードはただの下敷きだ。我はゴーストリック・デュラハンをエクシーズ素材としてオーバーレイネットワークを再構築」

 

 首なし騎士が出現した渦が再構成される。その渦に吸い込まれ次に現れるのは桃色の髪をした堕天使だ。

 増殖するGが使われているのに特殊召喚を続けるドン・サウザンドの姿に何かあると遊馬達は確信している。

 

「エクシーズチェンジ、ランク4、ゴーストリックの堕天使。そして我はゴーストリックの堕天使をリリースし魔法カード、セブンストアを発動」

 

 ドン・サウザンドが発動したそのカードは遊馬達が知っている物だ。

 上手く使えば大量ドローできる代物であり、そしてドン・サウザンドがエクゾディアを揃えてしまうんじゃないかと緊張から遊馬は唾を飲み込んだ。

 

「デッキよりドローしリリースしたモンスターエクシーズの持っていたオーバーレイユニットの数だけ更に追加ドローできる。更に墓地に送られたゴーストリック・デュラハンの効果発動。ゴーストリックカードであるゴーストリックの堕天使をエクストラデッキへと戻す」

 

 ゴーストリックの堕天使が持っていたオーバーレイユニットは3つ、よって合計4枚ドローする。

 サーチにデッキ圧縮を行いドン・サウザンドはデッキを掘り進めていく。全ての自分のモンスターはエクゾディアを揃える為だけの捨てゴマである。それはまるで自分の勝利の為ならば全てを利用するドン・サウザンドを象徴するようである。

 

「我は墓地より闇属性、悪魔族モンスターのゴーストリック・デュラハンと光属性、戦士族のビック・ワン・ウォリアーを除外しこのカードを手札より特殊召喚する」

 

 光と闇を除外する事で現れるカオスモンスター、その中でも更に縛りの付いた召喚条件、それを聞き皆の脳裏に踊るのはあの凶悪なカードしかない。

 

「目覚めよ、開闢の時より終焉に向かう世界を見定める使者、この場に降り立ちて果て無き我が望みを叶えよ! 開闢と終焉の支配者、カオスエンド・ルーラー」

 

 その名を聞き遊馬達の間には驚愕が走る。

 光と闇がドン・サウザンドの背後より収束していく、そして境界線上が混じり合い混沌の渦の底よりまるで悪魔の様な姿をした屈強な戦士が姿を見せる。

 そのモンスターの出現はドン・サウザンドのデッキがただのドローし防御し続けるエクゾディアデッキではないという事を知らしめるには十分すぎるものだ。

 

「本当ならばやはり九十九遊馬を葬ろうと思ったが、まあいい。まずは1人目だ。我はライフを1000支払いカオスエンドルーラーの効果発動、相手の手札、墓地、場のカード全てを除外し除外したカードの枚数×500ポイントのダメージを与える。我は天城カイトを選択する」

 

 カイトの手札は8枚、この効果を使われてしまえばライフが一瞬で0になってしまう。それを計算に入れてドン・サウザンドは増殖するGが発動されてもワザとモンスターを特殊召喚し続けたのだと、皆が理解したときにはもう遅い。

 遊馬は焦り手札よりモンスターカードを放つ。

 

「俺は手札からエフェクト・ヴェーラーの効果発動! そのモンスター効果を」

 

「甘い、我は速攻魔法、エフェクト・シャットを発動、発動したモンスター効果を無効にし破壊する」

 

「なっ!?」

 

 遊馬の助けようとした手は打ち払われる。

 そしてカオスエンド・ルーラーの両手に黒と白のエネルギーが収束、両の手を合わせる事で巨大な白黒の球が出来る。

 終焉を操りし戦士は無慈悲にカイトへと球を放つ。

 遊馬が助けようとてを伸ばすよりも先に白黒球は直撃、白と黒に入り混じる光が連打された。


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