クェーサー厨が行かされる難易度ちょっとハードモード   作:TFRS

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究極の銀河決戦 中

 爆散していく時空龍とその体に秘められたら膨大な力が光となって周囲に降り注ぐなか、ミザエルは激しく混乱していた。

 ドン・サウザンドによって洗脳された民によって人という生き物を信じられなくなるほど恨みを抱いてバリアン世界に堕ちて来たという本来の記憶を思い出したから、ではない。

 そんな事、自分とカイトの神聖な決闘に何も意味をなさないものだ。

 では何がミザエルの感情をみだしているか、それは今まで自分の記憶を封印する鍵となってたのが自分の愛する時空竜だったからだ。

 バリアン世界でこの龍に心奪われ何度も戦いを挑み負け続けようやく仲間に出来たときの嬉しさ、真に心を通わせともにカオス・エクシーズチェンジができるようになったときの達成感も全てドン・サウザンドが仕組んだ事だとミザエルは知ってしまったのだ。

 

「こんな事、嘘だ、私の時空竜がこんな事」

 

 墓地へと送るために手に取った時空龍を見てミザエルは身を切るような思いで叫ぶ、だがいつもの時空竜の声は聞こえない。

 カードに描かれる龍はこちらを見定める様に眺めるだけだ。

 

「私はこれで、ターンエンドだ…………」

 

ミザエル場  蒼眼の銀龍 ATK2500

LP1000    セイクリッド・トレミスM7 ATK2700 (ORU1)

手札1    伏せ1

       竜魂の城

 

カイト場  No.46神影龍ドラッグルーオン ATK3000(ORU0)

LP3300   

手札0   リビングデットの呼び声

 

 カイトは何か声をかけようか迷うような素振りを見せるも何かに急かされるようにデッキよりカードをドローする。

 

「俺のターン、ドロー、俺はエクシーズ・トレジャーを発動、場には2体のモンスターエクシーズ、よって2枚ドロー! フォトン・リザードを召喚、そしてフォトン・リザードをリリースしデッキよりフォトンと名の付くモンスターカードを手札に加える、俺が加えるのはフォトン・スペクターだ」

 

 手札に加えたカード、召喚県は使い切っているカイトがなにをするのかをミザエルがじっと見る。

 

―――混乱している場合ではない、この決闘は気持ちが迷っていたら負ける戦いだ。全ての決闘に繋がる動きを見逃すわけにはいかない!

 

 そう頭では理解しつつも気持ちは迷う。

 感情とはそういう物だ。頭で理解しながらも簡単に切り替えられるものではない。

 

「そしてフォトン・スペクターを墓地に送りフォトン・トレードを発動、デッキより2枚ドローする」

 

 この瞬間が勝負の分かれ道だ、チェーン2以降に何らかの手段で竜魂の城を除去するカードを引かれた場合ただでさえまずい状況はカイトの物となる。

 固唾を飲み、ミザエルが見守る中、カイトはカードをドローし、

 

「くっ、ドラッグルーオンを守備表示に変更、そして俺はターンエンドだ」

 

 苦渋とも焦りとも取れる表情の中、エンド宣言を行った。

 

カイト場  No.46 神影龍ドラッグルーオン DEF3000(ORU0)

LP3300   

手札2   リビングデットの呼び声

 

ミザエル場  蒼眼の銀龍 ATK2500

LP1000   セイクリッド・トレミスM7 ATK2700 (ORU1)

手札1    伏せ1

       竜魂の城

 

「私のターン、ドロー!」

 

 ギリギリの場所を切り抜けたミザエルは止めていた息を吐き、カードをドローする。

 

「スタンバイフェイズ、私は蒼眼の銀龍の効果発動、墓地より通常モンスター、青眼の白龍を特殊召」

 

「チェーン、増殖するGを発動、お前が特殊召喚するたびにデッキからドローする!」

 

 またしても手札誘発が放たれた。

 ミザエルは自分の手札を見、思案する。

 

―――そのカードさえなければ私の勝ちだったのだが、それともドローされるのを覚悟で動くか? いや、相手はカイトだ。私の手札が少ないこの状況でこれ以上のドローはさせる訳にいかない。

 

「くっ、私はおろかな埋葬を発動、デッキよりエクリプス・ワイバーンを墓地に送る、そしてエクリプス・ドラゴンの効果だ、デッキよりレッドアイズ・ダークネスメタル・ドラゴンを除外する、そしてトレミスの効果だ、貴様のドラッグルーオンを手札に戻せ!」

 

「俺は墓地のスキル・プリズナーの効果発動、このカードを除外しトレミスの効果を無効にする!」

 

「だが厄介な罠カードは使い切ったな。私は、サイクロンを発動、リビングデットの呼び声を破壊する! バトルだ! 青目の白龍で直接攻撃!」

 

 白龍の口より漏れるは滅びの光弾だ。それは真っ直ぐにカイトへと叩き込まれ、ない。

 

「直接攻撃宣言時、俺は手札よりクリフォトンの効果発動、2000ポイントのライフを払いこのカードを捨てる事俺が受けるダメージを0にする!」

 

「くっ、トレミスM7を守備表示に変更、そして私はこれでターンエンドだ」

 

ミザエル場  セイクリッド・トレミスM7 DEF2000 (ORU0)

LP1000    蒼眼の銀龍DEF3000

手札0     青眼の白龍 ATK3000

       竜魂の城

       伏せ1

 

カイト場 

LP1300    

手札1 

 

「俺のターンドロー! 俺は速攻魔法、銀河再誕を発動、俺の墓地のギャラクシーと名の付いたカードの攻撃力を半分にし特殊召喚する! 更に貪欲な壺を発動、俺の墓地のフォトン・リザード、増殖するG2枚、銀河眼の篭竜、ドラッグルーオンを戻して2枚ドロー!」

 

 銀河再臨のカードはミザエルも知っているカードだ。

 速攻魔法であり追撃にも使え、そしてギャラクシーモンスターの蘇生効果、そしてもう一つミザエルは使わない効果がある。

 それを知っている故にミザエルは身構える。

 次に来るカードは墓地の時空龍の警戒を呼びかける声で予想がついた。

 

「そして俺は銀河魔導師を召喚、そして銀河魔導師の効果発動、銀河魔導師のレベルを8にする!」

 

 銀河魔導師は宇宙の光を束ね、徐々に巨大化していく。

 それが銀河眼と同じ大きさになった時、渦が膨れ上がる。

 真紅に輝く渦は膨張し、周囲の石柱はそれに負けない光量を発していく。

 

「銀河再誕のもう一つの効果、装備モンスターをエクシーズ召喚の素材とする場合、装備カード扱いとして装備されたこのカードを装備モンスターと同じレベルの素材にできる。俺はレベル8、銀河眼の光子竜に装備カードの銀河再誕、レベル8となった銀河魔導師でオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚!」

 

 赤黒の光より構築された巨大な音叉の様な剣、カイトはそれを銀河眼達を飲み込んだ渦へと投擲する。

 その瞬間、赤黒の光が膨れ上がりカオスと僅かなアストラルエネルギーをまき散らしながら光子竜の体を再構築していく。

 青く輝く光は真紅の輝きを、体の各所には黒の強靭な皮膚を、三頭に増えた頭には兜が、それぞれ構築され最後にバリアンの紋章に似た物が刻み込まれその光子龍の産声が銀河に轟いていく。

 

「逆巻く銀河よ、今こそ、怒涛の光となりてその姿を現すがいい! 降臨せよ、我が魂! 超銀河眼の光子龍! 超銀河眼の効果発動、光子竜をエクシーズ素材としているとき表側表示の全てのカード効果を無効にする、フォトン・ハウリング!」

 

 カイトの超銀河眼より放たれる方向、それは全ての敵を委縮させる方向だ。

 城はもちろん、伝説の力を持つ白龍も不可侵の力を持つ銀龍も星座を集結させた機械竜も全てがその方向に委縮する。

 だがその大咆哮の中、一体だけ戦意を示す龍がいる。

 ミザエルの墓地より時空龍が負けじと咆哮するのをミザエルは確かに聞いた。

 

―――お前も決着をつけたいのか…………そうだな、つかみ取ったはずの物が与えられた物だとしても私と銀河眼が紡いだ絆は偽物ではない。銀河眼が私と私のドラゴンを死へと追いやった怨敵の呪縛の象徴だとしてもドン・サウザンド、私は貴様にたった一つだけ感謝しよう。

 

 ミザエルは心の中に宿る黄金の三頭龍を思い返し、迷っていた気持ちを消し飛ばす。

 

―――この美しく至高の龍の星とめぐり合わせてくれたことを!

 

「バトルだ、超銀河眼で青眼の白龍を攻撃!」

 

「まだだ、まだ終わってない、カイトに、貴様の銀河眼に私の銀河眼はまだ勝っていない! 私は速攻魔法、神秘の中華鍋を発動、青眼の白龍をリリースしその攻撃力分私のライフを回復させる!」

 

ミザエルLP1000→4000

 

 カイトはどちらへと攻撃を放とうか考え指を2体の間で往復させ、決めた。

 

「トレミスを攻撃、アルティメット・フォトン・ストリーム!」

 

超銀河眼の光子龍 ATK4500 VS セイクリッド・トレミスM7 DEF2000

破壊→セイクリッド・トレミスM7

 

                   ●

 

 爆発した機械竜の余波はロケットにも降りかかっていく。

 その中で体の制御を奪われ指一本動かすことができないハルトが食い入るように見ているの兄が戦っている戦場だ。

 その激闘を見、ハルトは1人、自分を攻め続ける。

 

―――兄さん、ごめんなさい、ごめんなさいっ!

 

「無駄だ、貴様では何も出来ん」

 

 口は勝手に動きハルトの中に潜む別の意志の言葉を喋る。

 

「ふん、だがそうだな。このままつまらない決闘を見るのも面白くない、カイトへの発破の意味もかねて貴様の声を届けてやろう」

 

 ハルトの体は独りでに動き始める、それを何とか阻止しようとオービタルが変形し体を拘束する、だがそれは時間稼ぎにしかならない。

 ハルトの体に障壁が展開、オービタルを弾き飛ばした。

 その上でカイトの耳に取り付けられた通信機のマイクへと近づき、指を伸ばす。

 

「良い悲鳴をあげろ、それが兄を強くし覚醒を早めるだろう」

 

                     ●

 

 突然、弾かれたようにカイトはロケットを見て誰かの名を叫ぶ。

 ミザエルはカイトの見る方向とロケットを見、いったい何がカイトを急かすのかを推測する。

 

―――確かカイトはハルトと叫んだ。人名だとしればあのロケットに人がいるのか?

 

 バカなと切り捨てたくなる、だが彼に眼は今もロケットに向けられているのだ。

 

―――神聖な戦いの場に他の者をつれてきただと、この戦いをバカにしているのか…………それともつれてこなければいけない理由があったのか、どちらにせよカイトの意志を完全にこちらへとむけねばならん!

 

 ミザエルは怒鳴り胸倉を掴んででも他者をつれてきただと理由を問いただしたかったが互いに最高の決闘をするためにその気持ちを抑えカイトへと声をかける。

 

「カイト、あの中に誰かいるのか?」

 

 びくり、と問われたくない事を聞かれたようにこちらへとカイトは視線を向けてくる。

 

「安心しろ、私が勝っても負けても貴様らを地球に送り届けてやろう、なんならロケットには影響を与えないように守ってやろう」

 

 ミザエルは自分の言葉を証明するためロケットを拘束するためではなく守るためにスフィア・フィールドの一部を切り離しロケットを覆ってみせる。

 

「だからカイト、私と真剣に決闘しろ!」

 

 感情を吐き出すたびにミザエルは自分を抑えきれず徐々に語尾が強く、荒々しくなっていく。

 

「なんだ先ほどからの貴様の態度は、まるでノルマがあるように行動を急ぎ苛立っているではないか、貴様は自分の後ろに立つ龍の姿が、声が聞こえないのか!!」

 

 カイトは後ろを見、銀河眼をみる。時空龍には負けるが、それでも美しく純粋な三頭龍の姿を。

 ミザエルにはカイトの銀河眼の声は分からない、だが何らかの意志を持ち何かを訴えかけようとしているのは分かる。

 

「なんだカイト?、何を急いているんだ!?」

 

 ミザエルの渾身のさけび、それにカイトは振り向く。

 何かとても大事な一大イベントを汚してしまったような、口には出せないが必死で謝り続けているそんな見る者の胸を締め付ける表情を浮かべ、

 

「ミザエル、貴様の心遣いは確かにうれしい。これで俺の心残りが1つ消えた、だからここからは本気でいく」

 

 嘘だ! ミザエルは心の中で叫ぶ。

 

―――だったらなぜ、貴様はそのような表情のままなのだ、私が見たかったのは憑き物が落ち心の底から決闘に集中する顔だ、そのような表情ではない!

 

「カイト!」

 

「俺はカードを伏せてターンエンドだ」

 

カイト場  超銀河眼の光子龍 ATK4500 (ORU2)

LP1300 

手札0   伏せ1

 

ミザエル場  蒼眼の銀龍DEF3000

LP4000    

手札0     竜魂の城

 

 いくら声を上げても口を割らないカイト、その姿に苛立ちロケットに乗り込んでやろうかとミザエルは思ってしまう、だが守ってやると言った手間そのような行動を取る訳にいかず、

 

―――ならばもっと追い詰めてカイトを本気にさせる、純粋にこの決闘を楽しみ、全力をさらけ出させる、そのために!

 

「私のターン、ドロー! 私は蒼眼の銀龍をリリースし魔法、アドバンスドローを発動、デッキより2枚ドローする。そして召集の聖刻印を発動、デッキより聖刻龍―ドラゴンヌートを手札へ、そして召喚」

 

 陽光の中、場に降りて来るは黄色の体色の龍だ。レベルは低いが青き瞳の乙女と似た効果を持つミザエルのデッキの主軸の一体だ。

 

「さらに竜魂の城の効果発動、エクリプス・ワイバーンを除外しドラゴンヌートを対象に発動、更にカード効果の対象になったドラゴンヌートの効果を発動」

 

 竜魂の城が持つ攻撃力上昇効果は無効になっている。

 だが対象を取りカード効果を発動は出来る。この状況で対象を取るという事が新たな龍の呼び声となる。

 

「来るか」

 

「そう、ドラゴンヌートの効果でデッキ、墓地、手札より通常モンスター、アレキサンドライドラゴンを特殊召喚、更に私は除外されたエクリプス・ワイバーンの効果発動、このカード効果で除外したカード、レッドアイズ・ダークネス・メタルドラゴンを手札に加える」

 

 ミザエルの持つ青眼の白龍は勝利を与える、それと同じよう真紅眼の黒竜は可能性を与える龍が様々な可能性を取り込んだ結果の集大成、それがミザエルの手札に加えられる。

 

「レベル4のドラゴンヌート、アレキサンドライドラゴンでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚、現れろ、竜魔人クイーン・ドラグーン」

 

 2体の光り輝く龍が吸い込まれた渦の中、細い手が伸びる。

 白く魔神のように美しい手。そして黒い炎に抱かれた体が出現する。

 黒い竜を半身とする女皇が2つの球を従え優雅にミザエルの場を横切り自分の身を守る様に座り込んだ。

 竜魔人は戦う事が役割ではない、仲間の龍に力を与え場を強固なものにするのが役割だ。

 無造作に伸ばされた竜魔人の腕が自分の周りを旋回する球を一つ握り潰した。

 

「クイーン・ドラグーンの効果発動、オーバーレイユニットを使い墓地のレベル5以上のドラゴン族モンスターを特殊召喚する、私は墓地にシユウドラゴンを特殊召喚」

 

 球はエネルギーとなり黒い炎が生まれる。その中より現れるは光の竜だ、だがその竜は生け贄にすぎない。

 本命は次にくる。

 

「そしてシユウドラゴンを除外しレッドアイズ・ダークネス・メタルドラゴンを特殊召喚する」

 

 墓地より上って来たばかりの聖刻龍は黒真紅の炎に抱かれ新たな姿へと変貌する。

 黒い鋼の体躯は陽光を反射し鈍く輝き、紅い瞳はカイトをしっかりと見据え、闇鋼竜は咆哮する。

 叫び声に誘発されるように月の表面、クレーターに黒い門が構築される。

 そこより現れるは黄金の光。

 

「レッドアイズの効果発動! 私の墓地に眠る時空龍を特殊召喚する!」

 

 ようやく会いまみえた宿命の敵、本気で戦っても中断される事の無い場所、時空龍が求めた戦いの場がそこにある。

 勝ちたい。ただ目の前に輝く龍に勝ちたい。

 それだけを願う時空龍の咆哮に負けじと光子龍も咆哮する。

 銀河が揺れるほどの二つの叫びは銀河に居る全ての者へその存在を示していく。

 

「バトルだ、超銀河眼の時空龍でカイトの超銀河眼を攻撃、アルティメット・タキオン・スパイラル!」

 

「迎え撃て光子龍、アルティメット・フォトン・ストリーム!」

 

CNo.107 超銀河眼の時空龍 ATK4500 VS 超銀河眼の光子龍 ATK4500

 

 黄金の三頭龍がその背に取り付けられたブースターより黄金の光をばらまきながら光子龍へと接近していく。

 光子龍も負けじと宇宙を駆け互いの銀河眼を煌めかせ激突する。

 2体の定められた激突。その余波だけで月は揺れ地表が割れ砕き空間すべてに等しく衝撃が叩き込まれていく。

 何度となく赤黒と黄金は衝突し黒い宇宙に2つの線を描いていく。

 無限にも思えるような激突の末、2頭は互いに3頭にエネルギーを収束、砲撃を放つ。

 2つのエネルギーは中間でぶつかり合い激しく光をもたらし、2頭の龍を包み込んだ。

 カイトとミザエルを等しく打撃し体にダメージを与えていく。その吹き飛ばされそうな衝撃の中、ミザエルは叫ぶ。

 

「ナンバーズ耐性も戦闘耐性を得ていないカイトの超銀河眼はこの戦闘で破壊される、そしてこれで終わりだ!」

 

 爆光を切り裂き、あちこち破損は見られるも抜け出した時空龍が勝ち鬨の声を上げる。

 光に飲まれ始めた中でカイトは刹那にも見たない時間の中、とある声を聞いていた。

 

                    ●

 

 光に飲み込まれたカイトが意識を取り戻したとき見たには漆黒よりも深い闇に底にいた。

 

「力が欲しいか?」

 

 狼狽するカイトへ唐突にかけられた声、それを聞きカイトが考えるのは己が負けてしまった時ハルトがどうなってしまうかだ。

 自分が負けてハルトは確実に自分を攻め続けるだろう、それはロケット内でハルトとオービタルの静止の声を無視しドン・サウザンドに膝を屈した時のハルトの表情からも見て取れる。

 

―――負けるわけにいかない、俺はハルトを必ず元に戻す、そのためならばなんだってする。

 

「ああ、俺は力が欲しい!」

 

「…………良いだろう、貴様のその欲望に相応しい力を2つ、解放しよう」

 

 叫んだカイトの元に一枚の白紙だったナンバーズが浮かび上がる、そこに記されている龍の名は、

 

                       ●

 

「俺は、俺は負けない、負ける訳にはいかないんだ!!」

 

 膨大な熱は光子龍の体を焼き体がぼろぼろになり、爆散しようとしたその時だ。

 カイトが開いたカードより影が噴出する。

 それは光を覆い尽くし砕かれようとしていた龍の体へと入り込み体を暗黒に染めていく。

 石柱より放たれた光はカイトの持つ白紙のカードへと直撃、そしてカードテキストが作られていく。

 

「俺は速攻魔法、王者の残像を発動!」

 

「なんだ、そのカードは」

 

 噴出する力に驚愕するミザエル、そしてひび割れた龍の叫ぶがこだまする。

 戦いの舞台になっている月は地響きを立て表面に罅を走らせ、カイトの開いたカードより亡者が蠢き始める。

 

「このカードはランク8以上のモンスターエクシーズが破壊されるとき、その破壊を無効にしランクの1つ上のモンスターエクシーズをエクシーズ召喚出来る!」

 

 光子龍の体は骸になりかけだ。だが勝利しなければいけないという感情に憑りつかれたカイトが生み出した感情より生み出された暗黒物質が入り込みナンバーズの刻印が煌めく。

 

「銀河に漲る力、その全身全霊が尽きるとき、王者の魂が世界を呪う! 現れろNo.95! ギャラクシーアイズ・ダークマター・ドラゴン!!」

 

「ダークマター、だと」

 

 ミザエルはその暗黒に魅入られたように見惚れる。

 

「ナンバーズ95、裕の持つクェーサーに並び劣らず美しい姿だ。私の時空龍の傍に並び立てば時空龍を更に輝かす存在になるだろう」

 

 ミザエルが想像するのは暗黒が支配する中、ひときわ輝く時空龍の姿だ。

 それは何よりも尊く素晴らしい光景だろう、そうミザエルは思いなんとしてもカイトに勝利し手に入れる事を望む。

 

「ふっ、私はこれでターンエンドだ」

 

ミザエル場   CNo.107 超銀河眼の時空龍 ATK4500 (ORU0)

LP4000    レッドアイズ・ダークネス・メタルドラゴン ATK2800

竜魔人クイーンドラグーン DEF1200 (ORU1)

手札1     竜魂の城

 

カイト場 No.95 ギャラクシーアイズ・ダークマター・ドラゴン ATK4500(ORU1)

LP1300 

手札0   

 

「俺のターン、ドロー! バトルだ、ダークマターでクイーンドラグーンを攻撃!」

 

No.95 ギャラクシーアイズ・ダークマター・ドラゴン ATK4500 VS 竜魔人クイーンドラグーン DEF1200 

破壊→竜魔人クイーンドラグーン  

 

 暗黒龍は体より暗黒物質を立ち上らせながら竜魔神へ見、3つ首より黒の光を溜め放出する。

 銀河の光、陽光を遮る光は竜魔神を消し飛ばしはるか後方の月の大地を穿ち縦穴を刻んでいく。

 だが暗黒龍の放つ光は止まらない。

 オーバーレイユニットを飲み込み更に威力の増した光は徐々に横に滑っていく。

 

「なんだ、何故その光は止まらない!?」

 

「ダークマターの効果発動、バトルフェイズ終了時、オーバーレイユニットを使いもう一度バトルフェイズを行うことが出来る、バトルだ、ダークマターでレッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンを攻撃!」

 

No.95 ギャラクシーアイズ・ダークマター・ドラゴン ATK4500 VS レッドアイズ・ダークネス・メタルドラゴン ATK2800

破壊→レッドアイズ・ダークネス・メタルドラゴン

ミザエルLP4000→2300

 

 横薙ぎにぶち込まれた光に闇鋼龍はの飲まれ発生した爆風はミザエルを取り込み月の表面を舐め砕いていく。

 

「ぐぅおおおおお!」

 

 そしてそれだけではカイトの動きは止まらない。

 エクストラデッキより新たに解放されたもう一体の銀河眼の力も解放する。

 

「メイン2、俺はギャラクシーモンスターエクシーズをエクシーズ素材としアーマーエクシーズチェンジ!!」

 

「なんだと、ダークマター、そして超銀河眼に続く新たな銀河眼だと!?」

 

「銀河の光の導く処、新たな世界が開かれる!! 天孫降臨! 現れろ、新たなる光の化身!! ギャラクシーアイズ・FA・フォトン・ドラゴン!!」

 

 何もかも砕けろ、そうカイトが渇望する感情を汲み取り暗黒龍の銀河に輝く光より青白の光が立ち延びる。

 その光に浄化されるように暗黒は徐々に消え光子龍、本来の姿が見えるようになる。

 度重なる激戦で3つ首は1つとなり翼は欠けている、その龍を労るように青白の光が前進を包み込み新たな力を授けていく。

 主の命を遂行する破壊の力、自分の欠けた箇所を補強する外装を新たに構築、装備していく。

 背に新たに装備した金属砲を2門、時空龍へと向けオーバーレイユニットを取り込んだ。

 

「ギャラクシーアイズ・FA・フォトンドラゴンの効果発動、オーバーレイユニットを使い相手モンスター、1体を破壊する、ギャラクシー・サイドワインダー!」

 

 カイトの渾身の叫び、感情を乗せた一撃が時空龍へと放たれる。

 青白の光は銀河を切り裂き時空龍へと突き刺さる。

 光より与えられる熱と衝撃は時空龍の内部を食い破り体の各所より噴出、時空龍の悔しげな声を残し火と衝撃波を撒き散らしながら爆発した。

 

「私の時空龍を、よくも!」

 

「俺はこれでターンエンド」

 

                      ●

 

 あの力は兄さんの求める物じゃない、ナンバーズの刻印が煌めかせる龍を見、ハルトはそう感じ取っていた。

 その理由は分からない。だが確かに確信を持てるのだ。

 それを後押しするように、

 

「それは違う力だ、ヌメロン・ドラゴンを解放する力はその龍ではない、まったく遊びに付き合わされる我の身にもなれと言う、もう一度煽らないとカードの一枚を覚醒させることも勝つことも出来ないのか? しょうがないやつだな」

 

 そう呟きハルトの体はもう一度、マイクへと近づいていく。

 もう一度、ハルトの苦悶の声をカイトへと聞かせるために、嫌がるハルト、だがその足取りは確実に進んでいく。

 床に倒れたままのオービタルは先ほどの一撃で大きな被害を受けており満足に動くことが出来ない。

 そのためそれを見ている事しかできず、だが最後の手段を取るべく床に取り付けられた非常用脱出装置の制御盤へとアームを慎重に伸ばした。


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