クェーサー厨が行かされる難易度ちょっとハードモード   作:TFRS

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燃え滾る思い 中

 紅蓮の波はアリトへと襲い掛かる。

 2体分のエネルギーを含んだ強烈な熱波、それはアリトが遊馬に敗北した最後の一撃を思い出させる物だ。

 

―――だがな、遊馬。俺が対策を立ててこないとでも思ったのか!

 

「効果ダメージは受けないぜ、俺は永続罠ダメージ・オルトレーションを発動、このカードは相手が発動した効果ダメージを無効にする、さらにその効果ダメージと同じ攻撃力のモンスターをデッキから特殊召喚できる! 俺はデッキから攻撃力2000のBKグラスジョーを特殊召喚する!」

 

 アリトの開いた罠、それにより遊馬達の戦略からガガガガンマン、ヴォルカザウルスやコーン号、ホープレイVの再利用という戦略は消える。

 アリトの場に現れた緑色のボクサーを見、遊馬は少しだけ悩み、

 

「くっ、俺はカードを2枚伏せてターンエンドだ」

 

遊馬場   No.39希望皇ホープ DEF2000 (ORU0)

LP4000  CNo.39希望皇ホープレイV ATK2600 (ORU0)

手札3   Vサラマンダー(装備カード)

      伏せ2

 

アリト場  BKグラスジョー ATK2000

LP3600  

手札3   ダメージ・オルトレーション

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 引き抜かれた手札、そして今できる最高の攻撃をアリトは頭の中で組み立てる。

 そして遊馬が伏せたカードの正体を考える。

 基本、遊馬のデッキはホープを中心に組み立てられている。エクシーズ・リボーン等の蘇生カードでホープを蘇生し続けナンバーズの持つ戦闘破壊耐性で相手の攻撃を凌ぐ物だ。むろん、蘇生、ホープを守るカードではなく相手のカードを除去する妨害カード、サイクロンという可能性もある、そこまで考えアリトはまず伏せカードを除去する事を決めた。

 

「そして俺はBKヘッドギアを召喚、召喚時効果でデッキからBKカウンターブローを墓地に送る、そして俺はレベル4のモンスター、2体でオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚!」

 

 80の刻印が鈍く赤黒のに光を放ち金と灰色のモニュメントが変形していく。

 四つの円柱は手足を作り上げ、中央より頭が伸び肩よりはためくマントが覇王の様な力強さと恐れを与える。

 

「現れろ、No.80! 猛りし魂にとりつく、呪縛の鎧! 狂装覇王ラプソディ・イン・バーサーク!」

 

「ナンバーズ……!」

 

 現れたナンバーズの攻撃力0、遊馬が知る限りそれは何か凄まじい性能を持ったカードか、何らかの条件によって攻撃力が跳ね上がる物ばかりだ。

 油断なく遊馬は決闘盤に目を落とすもカード情報は表示されない。

 

「気をつけろ、遊馬、あのカードからはドン・サウザンドの強い怨念を感じる、そしてあの手札にあるのはおそらく!」

 

 アリトの手札から発せられるカオスの波動、それをアストラルは感じ取り遊馬へと警告する。

 それを受けた遊馬は伏せていたカードを一瞥、そしてアリトへと向き直る。

 

「このカードも確かに強力だ、だが俺は更にこのカードを強化する、俺は手札からRUM―バリアンズ・フォースを発動! 俺の場のレクイエム・イン・バーサークでオーバーレイネットワークを再構築、カオス・エクシーズチェンジ!」

 

 ラプソディは空のエネルギーを吸い込みつつ作り上げられた門の内側、赤黒の渦に吸い込まれていく。

 そしてそこに飛び込む黒紫の光、邪悪なる意思がレクイエムの持つナンバーズの特性を再構築しドン・サウザンドの与える影響をさらに強めていく。

 白銀の体、赤のマントを翻し呪縛と滅殺の力を与える覇王は君臨する。

 

「現れろ、CNo.80! 魂を鎮める旋律が、十全たる神の世界を修復する!我にすがれ、葬装覇王レクイエム・イン・バーサーク!」

 

 そこにいるだけびりびりと強い力を感じ、遊馬は奮い立つようにアストラルと目を合わせ頷き、

 

「お前のモンスターエクシーズのエクシーズ召喚成功時、俺は罠カードオーバーレイ・プッシングを発動! お前のモンスターエクシーズのオーバーレイユニットは3つ、よって3枚ドローできる!」

 

「ほう、だがレクイエム・イン・バーサークの効果だ! カオス・オーバーレイユニットを使い場のカードを除外できる! まず俺はカオス・オーバーレイユニットを1つ使いお前の伏せカードを除外する!」

 

「罠発動、ガードロー! ホープレイVを守備表示にし俺は1枚ドローする!」

 

 遊馬が伏せていたカードはレクイエムが地面を殴りつけた衝撃で飛び上がる。ガードローが表側になり、飛び掛かって来たレクイエムの拳によって除外された。

 

「ちっ、だがラプソディがオーバーレイユニットにあればレクイエムは何度でも効果を発動できる!」

 

「なんだと!?」

 

「レクイエムの効果だ、ホープを除外しろ!」

 

 カオス・オーバーレイユニットを吸収したレクイエムの拳がホープへと迫る、それを止めるのは墓地から発生する膜だ。

 

「俺はホープを対象に墓地から罠カード、スキル・プリズナーの効果を発動、そのカードの効果は無効にする!」

 

「ならばホープレイVを除外してもらう!」

 

 ホープの前に発生した膜に拳は受け止められる、そして最後のオーバーレイユニットを吸収したレクイエムはホープの隣、何にも守られていないホープレイVへと殴りかかる。

 ホープレイVも受け止めようとするが連打される苛烈な拳に真紅の拳を打ち砕かれ除外された。

 

「さてここでフィールドの絶対王者の登場だ! 俺は死者蘇生を発動、墓地のカエストスを復活させる! そしてレクイエム・イン・バーサークのもう一つの効果発動! このカードをモンスターエクシーズの装備カードになり攻撃力を2000ポイントアップする! レクイエム・クロス!」

 

 腕を組み墓地よりせり上がってくるカエストス、その体にレクイエム・イン・バーサークの体のパーツが分解、絡みついていく。

 白銀の覇王を身に纏いBKの王者は更なる意思に取り込まれる。 

 それと同時にアリトは更に精神の高ぶりを感じた。燃えるような勝ちへの執念は更に燃え上がり、遊馬への憎悪は強く深くなっていく。

 

「ナンバーズによって彼の呪縛は更に強まった様に感じる、なんだあのカードは!?」

 

「だとしても俺達ゃ自分の道を行くしかねえ! ドン・サウザンドの呪いが強いか、それとも俺達との絆が強いか! そして俺達にはあのカードがある!」

 

 遊馬の目からはそれは鬼気迫る何かが強くなってきた様に見えた。

 アストラルはそれをドン・サウザンドの呪いだと言う。装備されたあのカードがアリトに何らかの悪影響を及ぼしているのだろうと言う予測は遊馬でも容易にできる。

 

「バトルだ、バーサーク・カエストスでホープを攻撃! レクイエム・エクスプロージョン!!」

 

CNo.105BK彗星のカエストス ATK4800 VS No.39希望皇ホープ DEF2000

破壊→No39希望皇ホープ

 

 叩き砕かれたホープの残骸、それへとバーサーク・カエストスは拳を打ち付ける。

 黒紫の炎に包まれた残骸は空気を切り裂き音を立て遊馬へと叩き込まれる。

 

「戦闘で破壊したとき、カエストスの効果発動だ、半分のダメージを相手に与える!」

 

「くっ!」

 

遊馬LP4000→2750

 

「俺はカードを2枚伏せてターンエンドだ」

 

アリト場  CNo.105BK彗星のカエストス ATK4800 (ORU0)

LP3600  CNo.80葬送覇王レクイエム・イン・バーサーク(装備カード)

手札1   ダメージ・オルトレーション

      伏せ1

 

遊馬場   

LP2750

手札7

 

「俺のターン、ドロー! よし、サイクロンを発動、お前の伏せカードを破壊する!」

 

破壊→バイ=マーセの癇癪

 

「へっ、来るか!」

 

「俺は手札からガガガシスターを召喚、そしてシスターの効果でデッキからガガガリベンジを加える。そしておろかな埋葬でデッキからガガガガールを墓地に送る、そして装備魔法ガガガリベンジを発動、墓地からガガガガールを守備表示で特殊召喚する、そしてガガガシスターの効果で」

 

「ここだ! 俺は罠カード、ブレイクスルー・スキルを発動! ガガガシスターの効果を無効にする!」

 

「なっ!?」

 

 手札をある程度使わせた上での妨害、それは遊馬の立てた今のターンに出来る行動が大きく妨害された。

 遊馬は手札を見、今の強烈な妨害に純粋にやられたと驚愕し、だからこそアリトが自分に向けて憎悪の感情を持ち決闘をしているこの状況を惜しいと思う。

 これがもしも何も賭けない決闘ならばどれだけ心躍り血が湧き立つ決闘ができただろうと思いを馳せ、互いに戦い合い方を叩きあって笑いあう世界を取り戻すために闘うと再び強く誓う。

 

「遊馬!」

 

「おう、俺はワンダーワンドをガガガシスターに装備させる、そしてワンドの効果でシスターとこのカードを墓地に送って2枚ドローする! ……カードを4枚伏せてターンエンドだ」

 

遊馬場  ガガガガール DEF800 

LP2750  ガガガリベンジ

手札2   伏せ4

 

アリト場  CNo.105BK彗星のカエストス ATK4800 (ORU0)

LP3600  CNo.80葬送覇王レクイエム・イン・バーサーク(装備カード)

手札1   ダメージ・オルトレーション

 

「何かを待ってるな、だが俺のターン、ドロー!」

 

 アリトは遊馬がこんな簡単に諦める訳がない事を知っている。そして手札に来た親友のデッキから借りたカードを見、笑みを浮かべる。

 

「俺は大嵐を発動、お前の伏せカード全てを破壊する!」

 

「俺はライフを半分支払い、カウンター罠、神の宣告を発動する!」

 

遊馬LP2750→1375

 

「へっ、だったら運命の宝札を発動」

 

 投じられたサイコロ、宙を舞い地面を転がり澄んだ音を響かせる。何度もぶつかり鐘の音を響かせるのはまるで何かを祝福するような音だ。そして賽の目は止まる。

 そして、その現象を目撃できたのは3人のみだ。

 賽の目を直接見えるのはアリトと遊馬、そしてアストラルだけがその現象を目撃した。

 止まった賽の目は3の筈だった。だが黒紫の光がジワリと滲み6へと塗り潰したのだ。

 

「出目は6、よって6枚ドロー、更にデッキから6枚を墓地に送る!」

 

「今のは!?」

 

「こんな事が出来るのは……まさか、ドン・サウザンド!!」

 

 遊馬は決闘盤に目を向けるも正常にカード処理が行われるだけ、何も違法性が無いとでもいう様に正常に作用する決闘盤、そして塗りつぶされた賽の目を見て居る筈のアリトが何も反応しない事に遊馬は怒りを覚える。

 その遊馬の思いを知らず理解せずアリトは憎悪と情熱と第三者の意思に踊らされる。

 

「そしてカード効果で墓地に送られたグラスジョーの効果発動、このカード以外のBKモンスターを手札に加える、俺はBKスイッチヒッターを手札に加え、召喚、墓地からグラスジョーを特殊召喚する、そしてバーニングナックル・スピリッツを発動、墓地からBKグラスジョーを特殊召喚する、そして行くぜぇっ!」

 

 黒赤の渦の底、人間世界より集められたカオスが凝縮し、そこに邪悪な男の意思が宿り体を構築していく。

 青、黄色のカラーリングは赤黒に染まりあるはずの無い虚構の数字が刻まれる。

 

「レベル4、3体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚! 現れろ、iNo.105流星のセスタス!」

 

「なんだ、このナンバーから感じる波動、先程のカオス・オブ・アームズよりも強力で邪悪な力を感じる、いったいこれはなんだ!?」

 

 アストラルはそこに潜む何者かの意思を感じ困惑した声を上げる中、赤黒、赤紫の粒子が渦を染め上げカオスより生まれた虚数ナンバーズが遊馬へと拳を構える。

 

「くっ」

 

「まだだ、俺の本気はこんなもんじゃねえ! 俺は手札からBKシャドーの効果発動、セスタスのオーバーレイユニット使い特殊召喚する、そしてカード効果で墓地に送られたグラスジョーの効果だ! 墓地からBKスイッチヒッターを加える」

 

 ここまで遊馬は伏せカードは一切発動しない事から手札、伏せカードでこのターンを乗り切ろうとしているのだろう。

 アリトはそれを喜びの目で見る。全てを打ち砕き遊馬に勝つ。そのために自分はここにいるのだと。

 

「何を狙ってるか知らねえが、まずはジャブだ、カエストスでガガガガールを攻撃、レクイエム・エクスプロージョン!」

 

CNo.105BK彗星のカエストス ATK4800 VS ガガガガール DEF800

破壊→ガガガガール

 

 ガールを粉砕した拳に力が収束し遊馬へと一筋の光線となり遊馬の足元へと突き刺さり爆風を生む。

 

「カエストスの効果だ! ガガガガールの攻撃力の半分のダメージを相手に与える!」

 

「ぐぅああああ!」

 

遊馬LP1375→875

 

「まだ終わらねえよな! セスタスで直接攻撃!」

 

 爆炎を切り裂き赤黒のカラーリングとなったセスタスが遊馬へと拳をぶち込むべく腕を上げる。

 

「俺は手札から速攻のかかしを発動、このカードを墓地に送る事でバトルフェイズを終了させる!」

 

「甘いぜ、アストラル、俺はRUM―クイック・カオスを発動、iNo.105BK流星のセスタスをカオス化するッ!」

 

「これは!」

 

 かかしによって受け止められるはずの拳、そのセスタスの拳はアリトの放ったカードより伸びる鎖によって阻止、そしてセスタスの体に鎖が纏わりついていく。

 虚構のナンバーズの内側よりカオスが噴出しセスタスの体を塗りつぶし、再構築していく。

 より強固で強靭な鎧へと、遊馬とアストラルを倒すチャンスをものにするために。

 

「全てを飲み込む混沌を破壊の力と煮えたぎる思いをを以て貫け! カオス・エクシーズチェンジ! 現れろ、iCNo.105彗星のカエストス! バトル続行だ、カエストスで直接攻撃!」

 

「俺は手札から虹クリボーの効果発動! このカードを攻撃宣言したモンスターの装備カードにする!」

 

「だったらBKシャドーで直接攻撃!」

 

 虹色の光によって動きを止められたカエストスの横を黒い体色のボクサーが走り抜けていく。

 ライフを削り切る物ではないがそれでも遊馬を追い詰める一撃だ。

 遊馬の懐に潜り込んだシャドーはアッパー気味に斜め下より遊馬の顎を狙い、拳を放つ。

 

「罠発動、ディメンションUターン、除外されているモンスターを特殊召喚する! 現れろ、ホープレイV!」

 

 だがその拳は黒い時空の穴より現れた掌によって受け止められる。

 受け止められたアリトの攻撃、だがそれは全て体を温めるための準備でしかない。

 本命の拳はここからだ。

 

「シャドーは攻撃中止、そして行くぜギラグ! 俺は手札から速攻魔法時の女神の悪戯を発動、お前のターンをスキップしてもう一度俺のバトルフェイズだっ!! バーサーク・カエストスでホープレイVを砕け!」

 

 白銀の鎧を纏う王者の拳がホープレイVへと叩き込まれようとする。

 砕かれれば遊馬の敗北が確定する。

 アリトが終わるか? と一瞬だけ考え相手の伏せがまだ残っている事を思い出す。

 

「まだだ! 俺はカウンター罠、エクシーズ・ピースを発動、自分フィールド上のモンスターエクシーズ1体が相手モンスターの攻撃対象に選択された時にその攻撃を無効にする!」

 

 ホープレイVは虹色の光によって分解される。

 その光は王者の拳を止め、その光の中より2体のモンスターが姿を現す。 

 

「そして攻撃対象に選択されたモンスターエクシーズ1体をリリースし俺のデッキからレベル1モンスター2体を自分フィールド上に表側攻撃表示で特殊召喚できる、現れろクリボルト、DZW―魔装鵺妖衣!」

 

「へっ、だったらBKシャドーでDZW―魔装鵺妖衣を攻撃!」

 

BKシャドー ATK1800 VS DZW―魔装鵺妖衣 DEF0

破壊→DZW―魔装鵺妖衣

 

「へぇ、メイン2、俺はBKスイッチヒッターを召喚、効果で墓地からグラスジョーを特殊召喚する、そしてスイッチヒッターとシャドーのBKモンスター、2体でオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚、現れろBK拘束番兵リードブロー!」

 

 再び現れるリードブロー、それはアリトの場を更に強固なものにする。

 戦闘、効果破壊を免れされる番兵、相対する者を砕き立ちふさがった者へ罰を与える偽物の王者、そして与えられた呪われた鎧により煮えたぎる感情に塗り潰され王者の姿。それは遊馬とアリトの決闘を見守る仲間達が遊馬を心配させるには十分な物だ。

 

「カエストスの効果だ、カオス・オーバーレイユニットを使い」

 

「遊馬!」

 

「おう! 墓地のディメンジョン・Uターンのもう一つの効果を発動、このカードを除外し俺の場のクリボルトをこのターンのエンドフェイズまで除外する!」

 

 偽物の王者の放つ砲撃を避けクリボルトは未来に希望を掴むために異次元へと跳ぶ。

 

「ちっ、逃したか、カードを1枚伏せてターンエンドだ」

 

「エンドフェイズ、クリボルトは俺の場に戻る!」

 

アリト場  CNo.105BK流星のカエストス ATK4800 (ORU0)

      iCNo.105BK流星のカエストス ATK2800 (ORU3)

      BK拘束番兵リードブロー DEF2000 (ORU2)

      BKグラスジョー DEF0

LP3600  CNo.80葬送覇王レクイエム・イン・バーサーク(装備カード)

手札1   ダメージ・オルトレーション

      伏せ1

 

遊馬場   クリボルト DEF200 

L875  

手札0   伏せ1

 

                   ●

 

 ベクターはドン・サウザンドが何故か体の中から抜け出した瞬間を見計らって彼を出し抜くために必要な細工をしていた。

 作業をするベクターの前の水晶には二人の人間が閉じ込められている。

 眼鏡をかけた青年、そして気の強そうな少女の眼は閉じられている。二人の目が開かれていれば目の前の男を殺そうと画策するだろう。

 作業を止めベクターはアリトがふとどうなっているかを見れば、遊馬達と決闘していた。

 状況を見ればアリトが優勢であるが相手が相手だ。アリトなンて軽々と倒しそしてこの城に乗り込んでくるだろうという事は予測できる。

 そう考えているとベクターは体の中にドン・サウザンドが戻ってくるのを感じた。

 

「今までどこにいっていた?」

 

「我にも策がある、あいつらを倒すために万全の準備をしていたのだ」

 

 帰ってくるドン・サウザンドのテンションはいつもより高く、まるで欲しかった玩具が手に入り遊んできた子供のような声だ。

 

「何か良い事でもあったのか?」

 

「ああ、そうだな。徐々に我の力が戻ってきている、この力さえあれば今度こそアストラルに邪魔などさせず我と貴様で3界と全ての時を統べる事が出来るぞ」

 

―――その力を俺様が頂くんだがな。細工は流々、あとは七皇全てを吸収すればドン・サウザンドだって倒せるはず。やってやる全てを出し抜いて俺様が王になる!

 

「さあ、ベクターよ、始めようか」

 

「ああ、人間世界の何処かにあるとされるヌメロンコード、100枚集めればその場所を示すナンバーズなんて集める必要はねえ、人間世界ごと人も物もヌメロン・コードも全て、吸収する!!」

 

 ベクターとドン・サウザンドの放ったカオス、それは赤黒紫と色を変える稲妻となりバリアン世界から繋がる穴を潜り抜け人間世界へと突き刺さった。


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