クェーサー厨が行かされる難易度ちょっとハードモード 作:TFRS
メラグ場 CNo.103 神葬零嬢ラグナ・インフィニティ ATK2800 (ORU2)
LP4000 ダーク・アームド・ドラゴン ATK2800
手札5
ベクター場 iCNo.101 S・H・Dark Knight ATK2800 (ORU0)
LP0
手札2
氷の微細な粒が。冷たい風が黒紫の空間を吹き荒れる。
それは殺意のこもった命を刈り取る一撃だ。それは確かに直撃しベクターの命を刈り取ったはずだ。
だがメラグは油断しない。それは自分の予想していた展開と違うからだ。
―――諦めた? いえベクターがこのまま何もなく終わるわけがない、だけど、
メラグはそう考えるも決闘盤に表示されているベクターのライフは0だ。
「やったか?」
ボロボロになりながらもドルベはメラグへと近づき聞く。
確かに手応えはあったしライフは0だ、それはドルベも分かっている、だが不安が拭えないのだ。
「いえ、何かがおかしい、私の予想ではライフが50残るはず、それなのにそれをしなかったという事は」
「あーあ、折角、人がちょっとしたパフォーマンスをしたって言うのにリアクション薄いなぁ」
氷の煙がはれるとそこにはボロボロのベクターが立っていた、敗者必滅の理に従い消滅することなく立っている。
「バカな、ライフは0になったはずでは!?」
ドルベは大きく声を上げる、それは当然だ。
決闘でライフが0になるという事は敗北と終わりを意味する筈だった、それなのにまだ決闘は続いている。その矛盾をベクターへと問う。
「じゃんじゃーん、今明かされる衝撃もしんじツー! 2人ともぉー、ナッシュの方を振り返ってみろよ!!」
二人が振り返った先に見えるのはナッシュが喘ぎ苦しんでいる姿だ、まるで命でも吸い取られているように長々と続くは断末魔のような苦悶の表情だ。
ナッシュの体を拘束している触手、そこより青色のエネルギーが吸い取られ、そして触手はベクターの背後へと繋がっている。
そして青のエネルギーがベクターの体に取り込まれるたびにベクターの体の傷が少しずつ無くなっていくのだ。
「まさかあの触手でナッシュからエネルギーを吸い取っているというの!?」
メラグはベクターがわざわざ傷を得るためにライフを0にした事に気付く。
そして目の前でナッシュのエネルギーを吸収し傷を回復させ、お前らの攻撃でナッシュがこうなっちまったんだよ、と言葉を使わずにこちらを煽ってくるベクターの作意を。
拳を握り過ぎて指からは血が流れ、涙の代わりに恨みや憎しみの感情の籠った血涙が流れ落ちる。
「そうだぜ、ナッシュから搾り取ったこれで俺の体はピカピカ新品、お前らボロボロ地獄行きー、ひゃっはははっは!!」
「だがそれではライフが0になっても決闘を続けられる理由と関係はないはず」
「鈍いなぁ、おれの場を見てみろよ」
メラグが見るのはdarkknightの背後、隠れるように浮かぶトーテムポールのような守備表示のモンスターだ。
メラグが決闘盤で名前を確認する。
インフェルニティ・ゼロ。
メラグもドルベも見たことも聞いたこともないモンスターだ。
「それは?」
「これは俺のライフが効果ダメージで0になるとき手札のこのカード以外のカード全てを墓地に送ることで特殊召喚出来るモンスターだ、そしてこいつが俺の場にいる限り俺のライフは0になっても決闘に敗北しない!」
「なんですって!?」
決闘における常識外れの敗北しないというカード、効果発動条件は厳しいが手札誘発でありそれを予測することは困難である。
「だが俺が500ダメージを受けるごとにデスカウンターが1つ置かれる、それが3つたまるとこのカードは破壊され俺の負けだ」
「だったら」
メラグはすぐさまダムドの効果を使って破壊しようとする、だがベクターの墓地にあるスキル・プリズナーを思いだし、唇を噛む。
「くっ、私はダーク・アームド・ドラゴンの効果発動、墓地のブラストを除外しDarkknightを破壊する、更にブラストを除外しインフェルニティ・ゼロを破壊する!」
「おっと、俺は墓地のスキルプリズナーの効果発動、このカードを除外しインフェルニティ・ゼロを破壊から守る」
黒い鎧竜の放った斬撃は暗黒騎士を切り裂くもトーテムポールの前に発生した膜の上を滑るのみだ。
「ならば戦闘破壊をするだけ、行きなさいラグナ・インフィニティ!」
大鎌を振り上げる令嬢、その一撃が直撃すればトーテムポールは砕け散る筈だった。
「甘いなぁインフェルニティ・ゼロは戦闘じゃ破壊されねえんだよ!」
だが実際は空を切った。
虚無によって体を構成されているインフェルニティ・ゼロを砕くことは出来ず葬ることは出来ないのだ。
そしてメラグの手札は0であり、戦闘では破壊されないインフェルニティ・ゼロがいる状況では追撃した所でどうする事も出来ない。
「くっ、私はこれでターンエンドよ」
メラグ場 CNo.103 神葬零嬢ラグナ・インフィニティ ATK2800 (ORU2)
LP4000 ダーク・アームド・ドラゴン ATK2800
手札0
ベクター場 インフェルニティ・ゼロ DEF0
LP0
手札0
●
「俺のターン、ん?」
ベクターは得意げな顔をし、デッキトップへと手を伸ばす。
だがメラグの顔は勝ったという笑みが浮かんでいるのを見て手を止める。
「なんでそんな勝ち誇った顔をしてるんだ?」
「ふっ、あなたの墓地は全て見せてもらった。手札が無い状況、そして墓地にRUM-七皇の剣が1枚足りないのを私は知っている、あなたは最後の最後まで汚い男ね、七皇の絆を否定し力を求め自爆し、そして最後に頼るのがあなたが否定した七皇の絆の証だなんて」
「さあ俺が手にするのは何だろうなぁ、俺も自分のデッキに何枚魔法カードを入れたかなんて覚えてないしなぁ」
その言葉は嘘である。
最後のカードはメラグの言うとおりRUM-七皇の剣だ、だが今さらそんなカードを引いたとしても意味はないのだ。
ジャイアント・ハンド・レッドや超銀河眼ではインフェルニティ・ゼロの効果を無効にし敗北確定、他のモンスターにしても全て対象をとりメラグのスキルプリズナーに防がれる。
実際ベクターは詰んでいる状況だ。
そんなときドン・サウザンドが声をかけてきた。まるで九十九遊馬に助言するアストラルのように。
「ベクター、我と力を合わせる時だ」
「ああん? ……そうだな、やるとするか」
ベクターとドン・サウザンドは互いに信頼している訳ではない。心を許し合った仲でもなければ背中を預け合えるものですらない。
共に利用し利用され、隙を伺うだけの共食いの蛇だ。
それでも、勝つためならばなんだってする。それがこの二人の唯一共通する思いだ。
その思いは絡み合い共に混じり合い、塗り潰し、塗り替える力へと変わっていく。
「確かこうだったなぁ、最強決闘者のドローは全て必然、ドローカードさえも決闘者が創造できる、リ・コントラクト・ユニバースゥウ!!」
それはベクターが九十九遊馬とアストラルに敗北した状況と似通っていた。
ベクターの持つ全てを砕く力を望む渇望とこの現状を打開し勝利を求める心、ドン・サウザンドの持つ絶対なる意思と全てを塗り潰す力。その二つが合わさり強大な力は更なる領域へと達する。
「カオス・ドロー!」
七皇の使ったバリアンズ・カオス・ドローさえも上回る黒の力がベクターの手の中を荒れ狂う。
デッキから引き抜かれた最後のカードは元よりドン・サウザンドによって作り上げられたカードだ、内包する偽物のランクアップさせる力、それを新しい物へと昇華、再構成させてく。
「俺はRUM-
「七皇の剣じゃないですって!?」
「おやおや、お前は俺のデッキを知ってないだろう? それとも俺様のデッキをどこかで盗み見たんでちゅかー?」
デッキを確認しておらずそれが入っていなかったと言い切れないメラグは黙るしかない、それを心地よく思いながらベクターはカードを見せつけるようにカードの効果を発動させる。
ベクターの手に握られるカードより発生するは黒紫の波動だ。
それは他人をも飲み込む強烈な意志によって構成された物、他者の全てを利用する純粋で邪悪な力だ。
「俺は俺の墓地のランク5、カエストス、ジャイアント・ハンド・レッド、Dark knight、アンブラル、そしてドルベの墓地のノーブル・デーモンでオーバーレイ・ネットワークを再構築、ダイレクト・カオス・エクシーズチェンジ!」
カオスの渦巻く黒の扉へと2つの魂と3つの偽物の魂が堕天していく。魂達はカオスによって塗り潰され1つの龍と成る。
それは紫色の球を中心に十字型に赤球が3つと黄球が点灯、そして肩に蒼に点滅する球と赤球が光を灯し、獣毛を体の各所に生やした赤の龍が赤黒の獄より現世へと上り出る。
「現れろ、CNo.5! 混沌なる世界の亡者ども! 今、その魂をひとつに溶かし、混濁とした世界に降臨せよ! 亡朧龍カオス・キマイラ・ドラゴン!」
その攻撃力は0、猛烈なカオスをまき散らす龍の姿にメラグは驚愕を隠せない。
「攻撃力0ですって?」
「これが俺様とドン・サウザンドが作り上げたカオスナンバーズだ、七皇全ての力を取り込んで強くなる俺様にぴったりのドラゴンだぜ」
「ええ、確かにそうね、カオスに振り回され与えられたら強いカードを片っ端から取り込んで元のデッキの原型をとどめていないあなたにはお似合いの龍だわ」
勝つためならばなんだって取り込む、野心を隠さない
そうメラグは嘲笑い、
「はっ! なんとでも言えよ、お前らはどうせ俺様に取り込まれるんだ、カオス・キマイラ・ドラゴンはカオス・オーバーレイユニットの数×1000ポイントも攻撃力となる、つまり」
CNo.5亡朧龍カオス・キマイラ・ドラゴン ATK0→5000
「この瞬間、私はラグナ・インフィニティの効果発動、カオス・オーバーレイユニットを1つ使い」
「馬ぁ鹿かてめえ、俺様の墓地のブレイクスルー・スキルを忘れてもらっちゃあ困るぜ、墓地のこのカードを除外しラグナ・インフィニティの効果を無効にする!」
「くっ、でもその攻撃力で私のライフをゼロには出来ない!」
「そう焦るなって、さらにおれは墓地のオーバーレイ・イーターの効果発動、メラグのラグナ・インフィニティのオーバーレイユニット、ラグナ・ゼロを奪いカオス・キマイラのオーバーレイユニットにする、そして攻撃力は更にアップする!」
CNo.5亡朧龍カオス・キマイラ・ドラゴン ATK5000→6000
墓地より現れたカメレオン、その舌がラグナ・インフィニティのカオス・オーバーレイユニットを奪いキマイラへと送る。
それをうけた亡朧龍の肩の赤かった球を水色に染める、それはまるでベクターに取り込まれるバリアン七皇の行く末を示すようである。
そして亡朧龍は胸と肩の球より抽出したカオスを虹色のエネルギーに変換し闇色の龍へと叩き込む。
「バトルだ、カオス・キマイラでダーク・アームド・ドラゴンを攻撃!」
CNo.5亡朧龍カオス・キマイラ・ドラゴン ATK6000 VSダーク・アームド・ドラゴン ATK 2800
破壊→ダーク・アームド・ドラゴン
メラグLP4000→800
「ぐぅううううう!?」
破壊、そして爆散した衝撃に吹き飛ばされ黒紫の壁へと叩きつけられるメラグ、体あちこちに火傷を負うその姿にナッシュは体が引きちぎれてでも彼女の元へと行こうとする、だがどれだけカオスを放出しようとも触手は砕けることは無い。
ボロボロになりながらもメラグは体勢を建て直し、
「でも、これで……!」
「この瞬間、カオス・キマイラ・ドラゴンの効果発動、カオス・オーバーレイユニットを1つ使うことで相手モンスターに攻撃する事が出来る!」
カオス・オーバーレイユニットの偽物の溶岩の掌を噛み砕き、亡朧龍は再び動き始める。
胸の球は1つ減るも収束するエネルギーはメラグのライフを削り取るのに十分な量だ。
「なんですって!?」
「終わりだぁ、メラグ、今度こそ地獄に送ってやるよ、カオス・キマイラ・ドラゴンでラグナ・インフィニティを攻撃!」
亡朧龍が口腔よりエネルギーを集束、虹色の砲撃をラグナ・インフィニティとその背後にいるメラグへとぶち込んだ。
CNo.5亡朧龍カオス・キマイラ・ドラゴン ATK5000 VS CNo.103神葬零嬢ラグナ・インフィニティ ATK 2800
破壊→CNo.103神葬零嬢ラグナ・インフィニティ
メラグLP800→0
勝者ベクター
●
ラグナ・インフィニティが爆散した衝撃波はメラグへと襲い掛かる。
魂なんてけしとばされ跡形も残らないほどのエネルギー波、それを消え掛けのドルベが代わりに受けた。
消えかけのドルベの体で必死にメラグの盾になり耐えるも、ドン・サウザンドの作り出した力の前には僅かな時を稼ぐだけだ。
2人はそのまま黒紫の壁へと叩きつけられた。
それを見ているしかなかったナッシュは気が狂わんばかりに暴れ狂うも触手は一向に弱まる気配はない。
「メラグ、ドルベ! 許さねえ、ぜってえてめぇだけはこの手で地獄に送ってやるっ!!」
「はっ! 無駄だ無駄だ、それはドン・サウザンドが作り上げたカオスを吸収する触手だ、お前がいくら力を放出させようが全部俺様に流れ込むんだよ、繋がってるおかげで手前の考えが分かっちまう、良いぜ、もっと俺を憎めよ、この最強の力の前に気に食わねえナッシュをひれ伏させる時をずっと待ってたんだ!」
「ベクターッ!!」
どう叫ぼうともどうする事も出来ない。このままではナッシュもベクターに地取り込まれてしまう状況、
「そう、それは、良い事を聞いたわ」
その中で声が響く。
それはベクターに吸収され始めたメラグの声だ。
「はぁ?」
すでに逃げる足も無くなっている状況での発言にベクターは首を傾げ、そしてメラグの手に握られる力を見て驚愕の表情を作る。
「そ、それは!?」
「ドン・サウザンドの力で作られた触手というのならばナンバーズの力で砕くことが出来るはず、私の最後の力を、ナッシュ、あなたに託します」
「させるか!」
ベクターは急に焦りだしエネルギー状の手を作り出したメラグを掴もうとする、だがそれにすでに下半身が消え始めたドルベが割り込む。
残った力を注ぎ込み白く輝く盾を作り上げベクターの伸ばす手を妨害、そしてメラグの手を取り、
「メラグ、私の力も一緒に託そう、あの男にこの力を渡すぐらいならばナッシュの力になった方がいい」
そしてナッシュへと笑いかける。
それは希望を託す敗れし者が浮かべる表情だ。
「ナッシュ、我が友であり我が王よ、どうかバリアン世界を頼みます」
騎士は王へと告げる、未来と世界を頼むと。
自分は力が足りずここで敗れ、だからあなたが最後の希望だと。
「お兄様に私の記憶と力を与えます、だからここは一旦引き、再び相見えるとき全てを奪う簒奪者と全てを汚す邪神を討ってください」
巫女は王へと神託を告げる、敵を討てと。
一旦傷を治し、そして自分達の敵を討ちこの戦いを終わりへと導けと。
「行きなさい、クリスタル・ゼロ!!」
メラグは最後の力を振り絞り自分の記憶を保持していたナンバーズと自分が神代璃緒だったころの決闘盤を投げ飛ばす。
ナンバーズは実体を得て黒紫の壁に衝突するも壁は砕けない。
だが後ろより飛来した黄色と水色の一撃で粉々に砕けナッシュを拘束していた触手を切り裂き、力を失ってナッシュの手に落ちる。
「メラグ、ドルベ…………すまねえ」
自分がベクターから吸い取られた力は大きい、この状況で戦おうにも力がたりず負けてしまうだろう。
妹と友を見捨ててもいいのかと荒れ軋む感情をねじ伏せナッシュは振り向かず走りだす。
主の考えを読み取ってかアビス・スプラッシュが実体化、水のゲートを作り上げる。
主が輪の中へと入ったのを確認したアビスはメラグ達を見、一礼し消えた。
「てめえらっ、どこまで俺様の邪魔をする気だ、もう許さねえ、お前らを取り込んでやろうと思ったが簡単には取り込まねえ、苦しんで苦しんで苦しませてやる、簡単には殺さねえぞっ!!」
それ等を妨害しよとするもことごとくメラグとドルベの最後の力によって妨害されたベクターは殺意と害意と悪意の混じりあった感情を目に浮かべ2人を睨み付けた。
●
エナに連れられて遊馬達はエリファスのいる塔へとたどり着くことが出来た。
遊馬は意識を取り戻すもナッシュから受けたダメージが大きいのか体が思うように動かずずっとカイトに背負われたままだ。
クリスタルで彩られた階段を上りエリファスのいる最上階へとたどり着いた遊馬達は装置を触っているエリファスと合流した。
カイトの背から降り何とか自分の脚で立ち上がった遊馬はエリファスへと近寄り聞く。
「エリファス、それは?」
「これはアストラル世界と人間世界を繋ぐ装置だ、君の父が弄ったおかげで計画が頓挫したと思ったが、そうではなかったのだな」
しみじみと呟くエリファス、それを見ていた遊馬は自分のDパッドにメールが届いているのを見つけた。
開けてみようとするがDパッドは突然画面が歪み、開いたメールに記された文字が見えなくなってしまった。
カイトはそれを横から奪い触ってみるも状況は好転しない。
「ダメだな、全体のパーツにダメージが蓄積しすぎている。せめて同じDパッドがあればいいんだが」
「それならばあるぞ」
エリファスは遊馬と同じ型のDパッドを差し出してきた。
驚いたのは遊馬だ。
この世界に無い筈の決闘盤、そして遊馬と同じ型なのだ。
「どこでこれを?」
「これは君の父を閉じ込めるときに没収したものだ、これを君に渡そう」
「父ちゃんの決闘盤……」
手に取り取り付けてみるとまるで昔から付けてきたようにすんなりと手になじんだ。
父親と大冒険を共にした決闘盤、全体的に傷はあるそれを愛おしげに撫でる遊馬、その姿を見てカイトも町に残してきた大事な弟と父親を思い出した、大切な人が無事でいるだろうかと思いを馳せる2人を置き、エリファスは手をかざす。
光が手に集まり徐々に形を成していく。
「まず君達をこの世界から脱出させる、そしてカオスに汚染された地域を切り離す」
「なっ!? エリファス! 分かってくれたんじゃ」
エリファスの言葉、それはバリアン世界を生んだ原因となった事だ。
分かってくれたはずだったのに何故!? と遊馬とアストラルが近寄るとエリファスは首を横に振り、遊馬の言葉に否定の意思を見せ、
「違う、これは汚染さえた地域の者達が望んだことだ」
「えっ?」
「このままではアストラル世界がバリアンに飲み込まれる、そうなったら敵の力は更に強くなってしまう、だからバリアン七皇のいるこの区画ごと切り離してくれと、彼は全てを見捨てず救うと言った、ならば私達が出来る事をすべきだと言っていた、彼らは君に希望と可能性を託した、だから私はそれらをくみ取りこの地区を切り離す」
エリファスも変わってきているのだろう、苦しむ表情を作りながらも遊馬へと更に言葉を紡ぐ。
「君がバリアンの王との決闘は皆に見てもらった、あの場所で君はナッシュと何度もぶつかりながらも分かり合おうとしていた。あのときの言葉が嘘ではないと、アストラル世界の住人も君の言葉が本当だと分かってくれたようだ、君の意思と言葉はアストラル世界に受け入れられた。だから私も君に全てを託す」
装置より光が漏れ遊馬達が北極に置いてきた飛行船の形となった。
「さあ乗り込め、私達も闘う準備を整えドンサウザンドを討つ」
「……エリファス、父ちゃんと一緒に帰れないのか?」
「今はアストラル世界を離れる訳に行かないと彼は言っていた、なにか策があるのだろう」
エリファスの言葉に遊馬は少しだけ寂しそうにし、
「だったら伝えておいてくれ、俺は皆と決闘を通じて友達が出来た、分かり合えねえ奴がいるかもしれないけど何度だってかっとビングしてみるって」
「ああ、分かった。確かに伝えよう」
エリファスの言葉に安心したように笑顔を見せ、遊馬は飛行船へと走って行った。