クェーサー厨が行かされる難易度ちょっとハードモード 作:TFRS
赤く染まる氷河と狂ったように吹き荒れる吹雪を切り裂き塗り潰しの力が放たれ黄金の三頭龍が現れる。
膝を突いた堺の前に金髪の少年が召還したナンバーズの龍が現れる、自分の切り札、デッキをフルパワーを用いたが堺はこの龍の召還は止められなかった。
「ゆけ! ネオタキオン、アーティファクト・デュランダルを攻撃! アルティメット・タキオンスパイラル!」
黄金の龍より放たれる膨大な熱量を共なった一撃おれず曲がらずの神代の剣を砕き境へと直撃する。
堺は倒した数を数えていないがバリアン兵を数十人倒したところで金髪の少年が空から降りてきた。
あきらかに何かを探すような素振りを見せる少年はこちらに向かってくるといきなり決闘を申し込んできて、その少年は堺を倒しゲートへと進もうとしていることを悟った堺は少年を止めようとしたが龍の猛攻と少年の優れた実力の前に堺は敗北した。
少年は爆風に転がされた境を一瞥するとゲートへと歩き始める。
「通すと、思ったか」
それを遮り堺は手を伸ばす。
「その消えかけの体でなにができる?」
少年はこちらをあざ笑う様子は見せずただ敬意をわずかに含んだ視線でこちらをみる。
確かに自分の体はボロボロで下半身はすでにきえている、だがそれでもできることはある。
「ふむ、老兵であろうともできることはあるんだよ」
ずっとポケットに隠し持っていたままのスイッチを押した。
轟音が連続で響きわたる。
それとともに根元から爆破された氷河の大質量がバリアン兵へと降り注いでいく。
雪や氷が赤黒に乱反射し煌く、それは幻想的で美しい光景だった。
このような状況でなければきっと楽しめただろうと堺は悔しく思いながらDパッドを操作しⅤへとメールを飛ばす。
届くかどうかは分からないが最後に一言だけメッセージを伝えようとする。
「己のみを呈して仲間を守るか、賞賛に値するな、だが私もアストラル世界に行かねばならない! カイトと決着をつけるために!」
下半身がすでに消え上半身もなくなりかけている堺を見、少年はゲートの中へと走っていく。それを堺は止める事は出来ない。
メールが送信されたのを見て、堺は上を見る、大質量の氷がゆっくりと影を広げながら降ってくる。
氷に潰されて死ぬのが先か、体が完全に消えるのが先かは分からない、だが眼の前にある死よりも堺が思うのは自分の夢、障害を賭して望んだ未完の研究だ。
「ああ、研究、完成させたかったなぁ」
境の悔しい感情を込めた呟きは落ち轟く氷河の激突音にかき消された。
●
遊馬はバリアン七皇のナッシュが今は行方不明だった遊馬の仲間、神代凌牙に変わったのを見て目を大きく見開く、顔をひきつらせ遊馬は凌牙へと手を伸ばす。
「シャーク、なのか?」
「シャークか、そんな風に呼ばれてたのが懐かしく思えるぜ」
何もかもサルガッソで行方不明になったときと一緒の姿だ。
遊馬は生きてたんだな、と嬉しそうに呟き、一歩駆け寄ろうと踏み出すがそれ以上、遊馬が足を進めるのをアストラルが止める。
「待て遊馬、彼から溢れるカオスを感じれないのか!?」
カオスに詳しくはない遊馬だが凌牙からはバリアン七皇と対峙したときと同じ威圧感を感じる。だけどそれを信じたくない遊馬は笑顔から不安げな顔をし、
「シャーク」
「遊馬、先に謝っておく。すまない、ベクターの様にお前らを騙そうとしたんじゃない、俺は、本当に心の底からお前の仲間だった」
「だった? じゃあ今は?」
凌牙は拳を握り憎しみの感情をはっきりと示す、それに呼応し紫色のカオスが彼の体よりあふれ出していく。
「俺は過去を思い出した、バリアン七皇だったときの記憶を、メラグ、いや璃緒と一緒にベクターに殺されかけたことを」
「なんだって!?」
ベクターと寮牙の過去、それは因縁を越えた何かで結ばれている。
互いに憎しみ合い、殺意を抱き、生前やバリアン七皇、そして人間に転生してからもベクターは凌牙の前に現れる、それはもはや宿命とも言えるだろう。
「俺は昔の仲間をもう二度と失いたくねえ、だが遊馬、俺はお前らも仲間だと思っている」
「だったら」
俺達が戦う理由なんてないだろ、その遊馬の言葉は、届かない。
「過去の仲間も今の仲間もどちらも失いたくねえ、だからアストラル世界も人間世界も全てをバリアン世界にする」
●
「ヌメロン・コードの力で未熟なバリアン世界を完全なる世界にする、アストラル人も人間も全てをバリアンにして、そして誰も喪わない世界を造る!」
凌牙は、ナッシュは叫ぶ。
ヌメロン・コードの力を使えば彼の判断によって喪われバリアン人へと転生した兵士達も人間として生き返らせることが出来るかもしれない。だがそれではいつかまた喪われる。
だからこそ世界を全てをバリアンにする。
魂の輪廻転生がバリアン世界の理だ、決闘に敗北すれば体は消え、時間をかけ好きな肉体を作ることが出来るだろう。
それはある意味、不死の存在だ。
現在、バリアン世界の住人は外部からのエネルギー補給をしなければ動けなくなってしまうがその概念すらも塗り替えればその先にあるのは誰も喪われない世界だ。
「そうすれば仲間が死なず平和に暮らしていける、だからアストラル世界をバリアン世界にするためにナンバーズを俺に渡せ!」
バリアン世界を成長させたのは過去のナッシュの選択によっておこった戦争が原因だ、そしてバリアン世界が大きくならなければ今回のようなアストラル世界とバリアン世界の戦争は起こらず、ナンバーズの戦いに遊馬が巻き込まれることも無かったはずだ。
間接的では在るが自分の行動が遊馬を危険な戦いへと導いたともいえる。
―――もう仲間も遊馬を危険な目に合わせたくない、だから。
「ここで俺が全てを終わらせる、ナンバーズは全て集まらないかもしれない、だがお前が集めたナンバーズの力で俺達の力を増幅させればアストラル世界を塗りつぶすことだって可能になるはずだ、さあ遊馬、決闘だ!」
「シャーク、俺は!」
「もうすでに俺は覚悟を決めた、俺は俺の道を行く!」
ナッシュの言葉に揺るがない意思を感じ取ったのか遊馬は少しだけ苦悩し、Dパッドを取り出す。
「シャーク、お前がバリアンのリーダーだって言うんなら、俺は何度だってお前とぶつかる、そしてバリアン世界のみんなとアストラル世界のみんなと人間世界のみんなで未来に行くための方法を一緒に考えるんだぁ!」
決闘盤を装着し二人は絶対に譲ることの出来ない意思と感情を込め、アストラル世界とバリアン世界に届くように高らかに叫ぶ。
「「決闘!!」」
●
「先攻は俺だ、俺のターン、ドロー。俺はガガガマジシャンを召喚、そしてガガガマジシャンを召喚したとき手札からカゲトカゲを特殊召喚する」
遊馬の場に並ぶはレベル4のモンスター2体、ナッシュは王たる威厳を崩さず場の2体を見つめ呟く
「来るか」
「行くぜシャーク、俺はレベル4のカゲトカゲとガガガマジシャンでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚、現れろNo.39希望皇ホープ!」
幾度と無く戦い続け、ときには相対し、ときには背中を預けた戦士の姿にナッシュは言葉に出来ない感情が沸きあがって来る。
「俺はカードを1枚伏せてターンエンドだ」
遊馬場 No.39希望皇ホープ ATK2500 (ORU2)
LP4000
手札3 伏せ1
ナッシュ場
LP4000
手札6
「俺のターン、ドロー、俺は手札のハンマー・シャークを墓地に送り昇格の天地降札を発動。俺はデッキからRUM-バリアンズ・フォースを手札に加える」
「バリアンズ・フォース……!」
「やはり彼もランクアップマジックを使うのか」
「そしてダブルフィン・シャークを召喚、召喚時効果で墓地のハンマー・シャークを特殊召喚する」
凌牙の場、鮫達の前に現れる蒼い渦、それから発せられる力にアストラルは顔色を変えて遊馬へと注意を促す。
「遊馬、来るぞ、彼のオーバーハンドレッド・ナンバーズが!」
「俺はレベル4のダブルフィン・シャークとハンマー・シャークでオーバーレイネットワークを構築!」
渦より浮上するは死者を載せた箱舟だ。
一度は喪われ、そして彼の守るべき存在となった魂達の住まう船は彼らの王と共に戦うために空へと登る。
「現れろ! No.101! 満たされぬ魂を乗せた方舟よ。光届かぬ深淵より浮上せよ! S・H・Ark Knight! Ark Knightの効果発動、オーバーレイユニットを2つ使い相手モンスターをこのカードのオーバーレイユニットにする、エターナル・ソウル・アサイラム!」
箱舟より射出されるのは生者を死者の仲間に引き入れる巨大なアンカーだ、直撃すれば死者の仲間にされ2度と現世に戻ってこられないだろう。
「させるか! 俺はスキル・プリズナーをホープに発動、これでホープは対象をとるモンスター効果を受け付けない!」
戦士の前に膜が張られる、巨大なアンカーを弾いた膜を見、ナッシュはそうではなくてはと息を掃き、手札に加えたばかりのカードを抜く。
バリアン七皇の最強の力の存在に周囲の建物には罅が入り、地面は砕けていく。
「躱したか、だが俺はRUMーバリアンズ・フォースをNo.101 S・H・Ark Knightを対象に発動、俺の場のモンスター・エクシーズをカオス化させる、カオス・エクシーズ・チェンジ!」
死者の魂を乗せる
希望と可能性を信じ戦い続けることを選択した遊馬と喪われてしまった死者を守り平穏を勝ち取るために戦うナッシュ、2つの意思と力はぶつかり合い相克し、アストラル世界にカオスをばら撒いていく。
「現れろ、CNo.101! 満たされぬ魂の守護者よ、暗黒の騎士となって光を砕け! S・H・Dark Knight、RUM-バリアンズ・フォースの効果でホープのオーバーレイユニットを1つ奪う、カオス・ドレイン!」
ホープのオーバーレイユニットが1つ、守護騎士へと吸収され菱形のカオス・オーバーレイユニットへと変換された。
守護騎士は真っ赤な槍を振り回し希望の戦士へと切りかかる。
「バトルだ、Dark Knightでホープを攻撃!」
「ホープの効果発動、オーバーレイユニットを1つ使い攻撃を無効にする、ムーン・バリア!」
ホープのオーバーレイユニットを失わせることが目的でありナッシュは攻撃が防がれることまでは想定済みである。
次の目的のためにナッシュはカードを伏せる。
「俺はカードを2枚伏せてターンエンドだ」
ナッシュ場 CNo.101 S・H・Dark Knight ATK2800 (ORU2)
LP4000
手札2 伏せ2
遊馬場 No.39希望皇ホープ ATK2500 (ORU0)
LP4000
手札3
凌牙の切り札であるCNo.101の効果を遊馬は確認しようとするが巨大過ぎるバリアンの力がDパッドへ影響を及ぼし画面にノイズが走り始め、確認は出来ない。
効果も分からないオーバーハンドレッド・ナンバーズを前に遊馬とアストラルは顔を見合わせ、頷き凌牙へと向き直る。
「俺のターン、ドロー!」
遊馬の引き抜いたカードより黄金の光が放出されていく、それはカオスに飲まれそうになっていたアストラル人へと優しく降り注ぎカオスを少しずつコントロールしていく。
ナッシュはそのバリアンズ・フォースと対になる光に眼を細め
「俺は速攻魔法、サイクロンを発動、シャークの伏せカードを破壊する!」
遊馬は破壊したブレイクスルー・スキルを見て少し考え込み、今しがたデッキより引いたエリファスより託されたアストラル世界のランクアップマジックを見る。
このタイミングでこのカードが来たことはタイミング的に最悪である。
この場でこのカードを使えばシャークはアストラルを消滅させないために戦ってきた遊馬がアストラル世界と本格的に手を組んだと勘違いするかもしれない。
だけど、本心を曝け出して、隠し事はせずぶつかり合わないと何も分かってもらえない、遊馬はそれを今までの経験より学んだ。
故にアストラル世界のトップであるエリファスより渡された力を使う、アストラル世界は遊馬の希望と可能性を信じてくれた事をシャークに示すために。
「俺はRUM―アストラル・フォースを発動!」
「その力、この輝き、アストラル世界のランクアップマジックかっ!」
遊馬の手にあるカードより万物をランクアップさせる力が放たれる。
その力はアストラル世界へと降り注ぎカオスに飲まれたアストラル世界の人々の精神を正しい方向へと導いていく。
「この力は俺がエリファスと決闘して分かり合って託された未来の可能性だ! 俺がアストラル世界もバリアン世界も人間世界も全部見捨てないって気持ちをアストラル世界のリーダーが認めてくれた証だ、だからあとはお前らが俺と共に力を合わせれば全部救えるかも知れねえんだ! だから俺を信じてくれ!」
「俺は、俺はお前どんな人間か理解している」
遊馬の言葉にナッシュは凌牙の姿へと戻る。
遊馬とアストラルの姿を見ればボロボロであり決闘盤も今にも壊れそうなほど傷ついている、サルガッソで凌牙が遊馬と別れてからもずっと激戦を繰り広げた証だ。
戦い、相手の気持ちを理解し、自分の気持ちを理解されるまでぶつかり合った証だろう。
「だけど、アストラル世界と手を組んだところで未来で俺達のカオスの力が危険だと判断されまた捨てられる可能性だってあるはずだ、そしてらまた俺の仲間が喪われる事だってあるはずだ」
「そんな事は!」
食い縛るように刃をむき出しにして凌牙は叫ぶ。
自分の中にある感情を噛み殺し、もう仲間を喪う悲しみを味わいたくないという自分の身勝手と理解している望みともう交わることのない道を示すために遊馬に叫ぶ。
「ある、人がどんなにランクアップしても、どんな思いを抱いても、人は過去を繰り返す生き物だ! アストラル世界も、バリアン世界も、人間世界も、その運命から逃れることは出来ない!!」
それは凌牙がアビスの力によって見せられた過去で自分が考えた末に決断したことが過去の自分と全く同じことだったことを示し、アストラル世界がカオスの力を危険視し排除しようとした事だ。
「だが俺はお前が人間かを理解している。どんな意思で、どんな感情を持ってその言葉を言っているか分かっている、だけど、俺はバリアン七皇のリーダーとして全てを救うと決めてここに居る、俺の世界と俺の仲間を守るためにこの場所に居る、だからお前も本気で戦えっ!」
凌牙の姿はナッシュと塗り潰される。
眼に宿る本気の意思を見て、遊馬も唇を噛み締める。隣で寄り添うアストラルも遊馬を気遣うような視線を送る。
遊馬は自分の中にある感情を抑え込む。分かり合っているのに共に進もうとしない仲間を見て何度でもぶつかる為にカード効果の処理を行なう。
「……このカードは自分の場の最も高いランクのモンスターエクシーズのランクを1つ、または2つ上げる、俺は希望皇ホープでオーバーレイネットワークを再構築、カオス・エクシーズチェンジ!」
アストラル世界のランクアップ・マジックによって現れるはカオスの力だ。
サルガッソで始めて目にしてからずいぶんと時間がたったものだとナッシュは自分が何も知らなかった日々を思い出し懐かしく思う。
だがもはや引き返すことはしない。できないではなく、自分の意志で道を決めたのだ。
「現れろ、CNo.39希望皇ホープレイ・ヴィクトリー! さらに俺は手札からゴゴゴゴーレムを召喚」
相手を無効にし常勝不敗の戦士であるヴィクトリーの一撃、そしてゴゴゴゴーレムの攻撃が通れば勝敗は決する。伏せカードが機になるところだが相手の伏せがブラフである可能性も捨てがたい。
故に遊馬は進む。
「バトルだ、ヴィクトリーでDark Knightを攻撃!」
CNo.39希望皇ホープレイ・ヴィクトリー ATK2800 VS CNo.101 S・H・Dark Knight ATK2800
希望を掲げる戦士は2刀を抜き放ち、守護騎士へと切りかかる。
手数では希望の戦士が勝っており、息もつかせぬ連撃が叩き込まれるがそれを守護騎士は槍を巧みに使い払いのける。
お互いの攻撃力は同じでありこのままでは勝敗は付かない。
「この瞬間、ヴィクトリーの効果発動、オーバーレイユニットを1つ使い相手モンスターの攻撃力分、ヴィクトリーの攻撃力に加える、ヴィクトリー・チャージ!」
それを打開するのは新しく作られる2腕と脇より現れる2刀だ。不意を突き作り上げられた2腕が守護騎士の腕を切り飛ばした。
「行け! ホープレイ・ヴィクトリー! ホープ剣・ダブル・ヴィクトリースラッシュ!」」
がら空きとなった胴体へ2刀が叩き込まれ守護騎士は爆散した。
CNo39希望皇ホープレイ・ヴィクトリー ATK2800→5600 VS CNo.101 S・H・Dark Knight ATK2800
破壊→CNo.101 S・H・Dark Knight
ナッシュ LP4000→1200
「ぐううううう!?」
カオスとアストラル世界の力が爆風と共にナッシュに叩き込まれる。一瞬だけ凌牙へと戻るもすぐさまナッシュの姿へと戻る。
それでも一瞬だけでも手ごたえを感じた遊馬がガッツポーズを取るが、
「この瞬間、Dark Knightの効果発動!」
「なに!?」
「墓地にS・H・Ark Knightがあり、カオスオーバーレイユニットがあるこのモンスターが破壊された時、このカードを特殊召喚する! リターン・フロム・リンボ!」
爆炎を裂き守護騎士は地獄より浮上する。
黒い体は裂傷がみられるがそれを構わず大切なものを守るためになどでも蘇り戦う意思を見せる。
「そしてDark Knightの攻撃力分、ライフを回復する」
ナッシュLP1200→4000
「そんな、ダメージを回復された!?」
「更に俺は伏せていたパワー・ストリームを発動、Dark Knightのカオスオーバーレイユニットになる」
「これで彼のオーバーハンドレッド・ナンバーズが再び墓地から特殊召喚できるようになった……!」
アストラルは不死身の守護者の恐るべき力を目の当たりにし僅かに恐れの感情を見せる。
バリアン世界の物なのか、溢れ出したナッシュの膨大なエネルギーのせいなのかは分からないが、カードテキストの確認をしようとするが僅かに罅の入ったDパッドの画面には砂嵐しか表示されない。
そしてゴゴゴゴーレムではDark Knightを破壊することは出来ず、遊馬は守りに入るしかない。
「遊馬、今のところ我々はそのカードを伏せるしかないようだ」
「ああ、俺はカードを1枚伏せてターンエンドだ」
遊馬場 CNo.39希望皇ホープレイ・ヴィクトリー ATK2800 (ORU0)
LP4000 ゴゴゴゴーレム ATK1800
手札0 伏せ1
ナッシュ場 CNo.101 S・H・Dark Knight ATK2800 (ORU1)
LP4000
手札1
「俺のターンドロー、俺は手札からエクシーズ・トレジャーを発動、場のモンスターエクシーズは2体、よって2枚ドローする、サイクロンを発動、遊馬の伏せたカードを破壊する!」
「くっ、ゴゴゴゴーレムを対象にガードローを発動、ゴゴゴゴーレムを守備表示にして1枚ドローする!」
遊馬の場に伏せカードが無くなったのを確認しナッシュは動く。
「俺はDark Knightのもう1つの効果発動、オーバーレイユニットを使わずに特殊召喚された相手モンスターをこのカードのオーバーレイユニットにする!、俺はホープレイ・ヴィクトリーを選択する!」
「オーバーレイユニットを使わずに、なんて効果だ!」
「だけど俺は墓地からスキルプリズナーの効果発動、このカードを除外しヴィクトリーを守る!」
守護者の槍より放たれた赤い光を墓地より発生した膜が打ち払う。だがもう遊馬が妨害する手段は残っていない。
「俺はダブルフィン・シャークを召喚、墓地からハンマーシャークを特殊召喚する、更に手札からサイレント・アングラーを特殊召喚、そして俺はレベル4のモンスター、3体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚、現れろ、No.32海咬龍シャーク・ドレイク!」
赤紫の鮫龍が遊馬へと吠える。
今まで肩を並べ合い激戦を戦い抜いてきた戦友に訣別するために牙をむき、鮫龍が宙を泳ぐ。
「バトルだ、シャーク・ドレイクでゴゴゴゴーレムを攻撃、デプス・バイトぉおおおお!」
「だけど、ゴゴゴゴーレムは守備表示で破壊されない!」
「いや、これは不味いぞ」
「更にこの瞬間、俺の墓地のブレイクスルー・スキルの効果発動、このカードを除外しゴゴゴゴーレムの効果を無効にする!」
No.32海咬龍シャーク・ドレイク ATK2800 VS ゴゴゴゴーレムDEF1500
破壊→ゴゴゴゴーレム
「この瞬間、シャーク・ドレイクの効果発動、オーバーレイユニットを1つ使い今戦闘破壊したゴゴゴゴーレムの攻撃力を1000ポイントダウンさせお前の場に特殊召喚する! そして再びバトルだ、シャーク・ドレイクでゴゴゴゴーレムを噛み砕けぇっ!」
No.32海咬龍シャーク・ドレイク ATK2800 VS ゴゴゴゴーレムATK800
破壊→ゴゴゴゴーレム
遊馬LP4000→2000
「うぁあああああ!?」
破裂したゴーレムの破片が遊馬とアストラルを傷つけていく、その姿にナッシュは少しだけ心を痛め、表情には出さず更に追撃する。
「バトルだ、Dark Knightでホープレイ・ヴィクトリーを攻撃!」
CNo.101 S・H・Dark Knight ATK2800 VS CNo.39希望皇ホープレイ・ヴィクトリー ATK2800
守護者の槍とヴィクトリーの剣が再び交わる。
何度でも戦い続け、自分の主の目的を果たすために相手とぶつかり傷つけ傷つきながらも戦い続ける。
「この瞬間、カオスオーバーレイユニットになっているパワー・ストリームの効果発動、このカードをオーバーレイユニットにしているモンスターとが戦闘を行うダメージ計算時に攻撃力を1000ポイントアップする!」
「なんだって!?」
CNo.101 S・H・Dark Knight ATK2800→3800 VS CNo.39希望皇ホープレイ・ヴィクトリー ATK2800
カオスオーバーレイユニットより放たれた水流が守護者の槍の勢いを増大させていく。
すでに数えることも放棄するほどの打ち合いがなされる戦場でそのその後押しは絶大な効力を発揮する。
守護者の横薙ぎの1撃が2刀を弾き飛ばしヴィクトリーの胴体へと直撃する。
打撃の威力は凄まじくはヴィクトリーの体を吹き飛ばし背後の建物へと叩きつける。建物に激突しその場に崩れ落ちたヴィクトリーの頭を握り持ち上げ、守護騎士は槍を手にする。
そしてヴィクトリーの胴体へと、その背後の遊馬へと今出せる全力と、拒絶の意志を込め叩き込んだ。
破壊→CNo.39希望皇ホープレイ・ヴィクトリー
遊馬LP2000→1000
ヴィクトリーを貫いた槍はその威力を殺しきれず遊馬へと叩き込まれる。
主の危機を察した虹クリボーがデッキより実体化し槍から遊馬を守ろうとするがその槍に乗せられたカオスの力を防ぎ切ることは出来ず、虹クリボーを貫いた槍は遊馬を僅かにそれ足元へと叩き込まれた。
すでに何度も放出される濃厚なバリアン世界とアストラル世界の反発するエネルギーに耐え切れなくなったのか槍の直撃した道は蜘蛛の巣が張るように罅割れ砕ける。
幾ら決闘者といえどDホイール無しで空は飛べない。遊馬がゼアルになっていればなんとかなったかもしれないが今の状況では遅すぎる。
遊馬は発生した亀裂へと飲み込まれた。
対戦相手が居なくなってしまったためナッシュの作り上げる決闘盤も光を失い強制的に決闘が終了してしまう。
「くっ、だが」
遊馬を追うために足を踏み出したナッシュの足元に球体が転がってくる、危険なものかもしれないと判断し蹴ろうとすると球体より白い煙が噴き出しナッシュの視界を遮る。
視界は白く塗りつぶされ何も見えない。その中でナッシュは足音がこちらへと歩いてくる音を聞いた。
「誰だ?」
「遊馬が居なくなっちまって決闘は中止だ、凌牙」
声が聞こえる、それは凌牙であった時、ナンバーズを巡る戦いの中で知り合った男の声だ。
「ここからは俺のファンサービスをたっぷりと味わってもらう」
煙をDark Knightで払いのけた先、Ⅳを筆頭にⅢやⅤ、アンナ達が遊馬の落ちた穴を守る様に立っていた。