クェーサー厨が行かされる難易度ちょっとハードモード   作:TFRS

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記憶 上

「先攻は私です、ドロー」

 

 先攻は璃緒によく似た少女、イリスだ。

 氷の結晶のような決闘盤を構え、同じくフードを脱ぎ捨てたアビスの前に立ち、カードを引き抜いた。

 

「私はゴルゴニック・ゴーレムを召喚。さらに岩石族モンスターが召喚されたため、手札よりゴルゴニック・ガーゴイルを特殊召喚する」

 

「ゴルゴニックだと……来るか」

 

 凌牙は補填大会においてゴルゴニック・ガーディアンという無気味なモンスターを眼にしている。

 あのとき感じた嫌な感じと、目の前の2人が何かを知っているという事と何か関係が在るのだろうか、と考えを巡らせていると、

 

「私はレベル3の岩石族モンスター、ゴルゴニック・ガーディアンとゴルゴニック・ガーゴイルででオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚。現れなさい,ゴルゴニック・ガーディアン!」

 

 強力な誘発効果持ちのモンスターエクシーズ、ゴルゴニック・ガーディアン。それを目にし凌牙と璃緒は言葉で言い表せない不安を受けていた。

 記憶にないのに、目の前に現れ攻撃を放ってきたようなそんな感じだ。

 そして凌牙が思いだすのは堺の言っていた海の中にある海底神殿、海の中に沈んだ遺跡、そこにはナンバーズが眠っているとされたその場所でゴルゴニックガーディアンは見つかったと言う。

 周りを見れば蒼い海の様な空、いや、よくよく目を凝らすと真っ青な海が凌牙達の上には広がている。

 

「ここは、海底遺跡なのか?」

 

「ええ、そうです、私のナンバーズとしての力と貴方様からお預かりした力で私はあの場にゲートを作り上げこの場所にお招きしました」

 

「俺が預けた? いったい何の話だ!?」

 

 凌牙の問いにアビスは答えずイリスはカードを伏せた。

 

「私はカードを3枚伏せてターンエンド」

 

イリス&アビス場   ゴルゴニック・ガーディアン ATK1600 (ORU2)

LP4000   

手札1 

手札5       伏せ3

 

凌牙&璃緒場     

LP4000  

手札5

手札5    

 

「璃緒、俺はゴルゴニックガーディアンを倒す算段がある、俺が先にやって良いか?」

 

「ええ、どうぞ」

 

 何もせずに先攻をとると後で何を言われるか分からないため凌牙は璃緒に了承を取りデッキトップに手を伸ばす。

 

「俺のターンドロー。サイクロンを発動、お前の右のカードを破壊だ」

 

 伏せられていたのはエクシーズ・リボーン。

 強力な効果を持つゴルゴニック・ガーディアンを墓地から特殊召喚されては厄介なのでここで早めに潰せた事に凌牙は安堵の息を吐き、

 

「俺はハンマー・シャークを通常召喚、そしてハンマー・シャークのモンスター効果発動」

 

「待て、まだだ」

 

 イリスはゴルゴニック・ガーディアンの効果を発動させようとしたがその手をアビスが止めた。

 凌牙としては発動された方が都合が良いのだが止められたというならば別の手段をとるだけだ。

 

「俺はビッグ・ジョーズを特殊召喚する。俺は水属性レベル3のビッグ・ジョーズとハンマー・シャークでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚! 現れろ、ブラック・レイ・ランサー!」

 

 ハンマー上の頭を持つ鮫と凌牙達が幼い頃に亡くなった父親から渡された鮫は渦へと飲み込まれる、そして現れるは自らの対ナンバーズ用の切り札、黒の槍術士が姿を現す。その姿を見てイリスは目を細める。

 

「俺はブラック・レイ・ランサーの効果発動、オーバーレイユニットを1つ使い相手モンスターの効果を無効にする!」

 

「ゴルゴニックガーディアンの効果発動、オーバーレイユニットを1つ使い、相手モンスターの効果を無効にし攻撃力を0にします」

 

 ゴルゴニック・ガーディアンの瞳より放たれた光が槍術師の体を石に変えていく。

 だがそこまでの展開を凌牙は予測していた。

 

「知ってたさ。俺は俺は手札からサイレント・アングラーを特殊召喚する、そして装備魔法アクア・ミラージュを装備させる。このカードは水属性モンスターに飲み装備が出来る!」

 

 サイレント・アングラーの横に水で出来たサイレント・アングラーの偽物が作り上げられる。

 

「アクア・ミラージュは装備モンスターをエクシーズ素材とする場合、この装備カードは装備モンスターと同じレベルのモンスターとして扱ってエクシーズ素材と出来る。俺はサイレントアングラーとアクア・ミラージュでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚、現れろ、バハムート・シャーク!」

 

 現れるのは水色の鮫型竜、その咆哮は仲間を呼ぶ呼び声となる。

 

「バハムート・シャークの効果発動、オーバーレイユニットを1つ使いエクストラデッキから水属性モンスターエクシーズ、航空母艦エアロ・シャークを特殊召喚する、更にエアロ・シャークをエクシーズ素材としてFA-ブラック・レイ・ランサーをエクシーズ召喚する」

 

 航空母艦を装備外装としたもう一体の黒い槍術師が姿を見せる。

 凌牙の場に並び立つは凌牙がナンバーズを使うずっと前から使い続けたカード達だ。

 そして更に展開を続ける。

 

「俺はエクシーズ・トレジャーを発動、デッキから4枚ドロー、俺はバハムート・シャークにエクシーズの王冠を装備させる、これでバハムート・シャークはレベル4の2体分のエクシーズ素材と出来る、更に俺は死者蘇生を発動、俺は墓地のサイレント・アングラーを特殊召喚だ」

 

 これでレベル4のモンスターが3体分、現るは今の切り札、遊馬達とフェイカーやトロン一家との戦いを潜り抜けたナンバーズだ。

 

「俺はレベル4のサイレントアングラーとレベル4、2体分のエクシーズ素材に使用できるバハムートシャークでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚、現れろ、No.32海咬龍シャーク・ドレイク!」

 

 アビスは現れた海龍に目をやり懐かしいというように笑みを浮かべる。

 その姿を見て、凌牙は一瞬だけ問うか悩む。

 

―――何を知っている? それとも何かの策略か?

 

「まあいい、バトルだ、シャーク・ドレイクでゴルゴニック・ガーディアンを攻撃! デプス・バイト!」

 

 口より放たれたはサメの頭部を象った青白い光線が石像を直撃する、爆散した石像の破片がイリス達に直撃しイリス達は苦悶の声を上げる。

 

No.32海咬龍シャーク・ドレイク ATK2800 VS ゴルゴニック・ガーディアン ATK1600

破壊→ゴルゴニック・ガーディアン

イリス&アビス LP4000→2800

 

「さらに相手モンスターを戦闘破壊したときシャークドレイクの効果発動、オーバーレイユニットを1つ使い戦闘破壊したモンスターエクシーズを特殊召喚し1000ポイント攻撃力を下げる。そしてもう一度このカードは攻撃が可能となる!」

 

 オーバーレイユニットを食らった鮫龍は水の渦を飛ばして、現れた紫色の円からモンスターを引きずり出し、武装した黒の槍術師が突撃する

 

「バトルだ、FAブラック・レイ・ランサーでゴルゴニック・ガーディアンを攻撃、ブラック・ブライト・スピアー!!」

 

FAブラック・レイ・ランサー ATK2300 VS ゴルゴニック・ガーディアン ATK600

 

「罠発動、ガードロー、ゴルゴニック・ガーディアンを守備表示に変更しカードをドローする」

 

 投げ放った槍は力なく項垂れる石像を貫くもダメージは与えられなかった。

 

FAブラック・レイ・ランサー ATK2300 VS ゴルゴニック・ガーディアン ATK600→DEF1200

破壊→ゴルゴニック・ガーディアン 

 

「ちっ、戦闘ダメージは免れたか、だがFAブラック・レイ・ランサーの効果発動、相手場の魔法罠カードを一枚破壊する、俺が破壊するのは左のカードだ」

 

 武装した槍術師の投げ放った槍はイリスの場のカードを破壊する。タッグ相手に渡すために伏せたのか大嵐を砕く。

 罠カードではないが大嵐という脅威を排除した事に凌牙は僅かに口元を緩め、

 

「これでお前の場のモンスターは居なくなった、俺はシャーク・ドレイクで直接攻撃! デプス・バイト!」

 

 鮫龍の放った攻撃は二人を直撃した。

 爆風は建物を長年積もった埃を巻き上げ、二人の姿は見えなくなった。

 攻撃を無効にされたようなエフェクトは起こらず、凌牙は勝利を確信し、つい言葉を呟いてしまった。

 

「やった」

 

「まだ終わっていないです」

 

「何!?」

 

 砂煙を裂くように投げかけられたイリスの声、そして砂煙が晴れるとそこに居たのは黒、赤、濃青の毒々しい体色をしたオウムガイのようなモンスターがいた。

 そして凌牙はイリスの最後に伏せていたカードが無くなっている事に気づいた

 

「私はダメージを受ける瞬間、罠カード、デプス・ガードナーを発動しました。このカードは直接攻撃で受けるダメージを0にこのカードをモンスター扱いで特殊召喚します。そしてこのカードの攻撃力と守備力はこのカードの発動時に受けた戦闘ダメージと同じ数値になります」

 

デプス・ガードナー ATK???→2800 DEF???→2800

 

 凌牙はブラック・レイ・ランサーの効果を外したことに舌打ちをしつつも、後ろに控える璃緒の為にカードを伏せる。

 

「ちっ、俺はカードを2枚伏せてターンエンド」

 

凌牙&璃緒場   FAブラック・レイ・ランサー ATK2300 (ORU1)

LP4000     ブラック・レイ・ランサー ATK2100 (ORU1)

手札0      No.32海咬龍シャーク・ドレイク ATK2800 (ORU1)

手札5      伏せ2

 

イリス&アビス場   デプス・ガードナー DEF2800

LP2800   

手札2 

手札5       

 

 次に前に出るはアビスだ。

 青い鎧を着込んだ男は決闘にふさわしい立派な決闘盤を構え、カードを引き抜いた。

 

「我のターンドロー、相手フィールドにモンスターが2体以上存在するとき。我はイーグル・シャークをリリース無しで召喚することが出来る。そして場にイーグル・シャークが存在するとき、我は手札からパンサー・シャークを特殊召喚する」

 

 シャークと名の付いた2体のモンスター、それは凌牙がデッキにいれようかと思っていたカード達だ。

 レベル5のモンスターを入れる事によってシャーク・フォートレスを出せるのだがレベル3から5までの広範囲を同時にカバーするデッキ構築は難しく、断念したことが覚えがある。

 相手は同じカテゴリーの鮫デッキとなれば負ける訳にいかないと凌牙は更に気合いを入れていると、

 

「我は水属性のレベル5、パンサー・シャークとイーグル・シャークでオーバーレイネットワークを構築」

 

 蒼色の渦が構築されていく、衷心より浮かび上がるは蒼い宝玉を包む青い球殻だ。

 渦を裂き現れたモニュメントを青い波が包み込み戦士を作り上げる。

 錫杖、鎧が構築されアビスと名乗る男と同じような海神が姿を現す。

 

「現れろ、No.73! カオスに落ちたる聖なる滴。その力を示し、混沌を浄化せよ! 激瀧神アビス・スプラッシュ!!」

 

「ナンバーズ!? だが罠発動、強制脱出装置! アビス・スプラッシュを手札に戻してしてもらう!」

 

「手札より禁じられた聖槍を発動。アビス・スプラッシュは攻撃力が800ポイント下がる代わりに罠、魔法のカード効果を受け付けない」

 

 錫杖を持つ手とは違う手でアビスより投じられた聖槍を握り海神は今にも自分を打ちあげようとする装置へと聖槍を叩き込み爆散させた。

 

「さらに私はおろかな埋葬を発動、ゲイザー・シャークを墓地に送る。そして我はエクシーズ・トレジャーを発動、場には4体のモンスターエクシーズよって4枚ドローする」

 

 凌牙がモンスターエクシーズを連打した事がここにきて裏目に出る。

 大量ドローが行われてしまい、次にどう来るのか、凌牙が身構えていると、

 

「我はデプス・ガードナーを攻撃表示に変更しバトルフェイズに入る、デプス・ガードナーでブラック・レイ・ランサーを攻撃!」

 

デプス・ガードナー ATK2800 VS ブラック・レイ・ランサー ATK2100

破壊→ブラック・レイ・ランサー

凌牙&璃緒 LP4000→3300

 

「くっ、これはいったいなんだ!?」

 

 爆発の余波、それは凌牙に痛みを与える。それと共に脳裏に浮かび上がるのは自分の知らない光景だ。

 自分が王と呼ばれ兵士に囲まれる姿。

 璃緒と同じ顔の人物からお兄様と呼ばれる姿。

 穏やかで美しい海の都より二人で眺た事。

 まるで与えられた痛みと共に何かの記憶が流れ込んできたように感じる。

 そして、それを普通なら不気味に思う所なのだが懐かしいと思ってしまう自分が居た。

 

「更に我はアビス・スプラッシュでNo.32海咬龍シャーク・ドレイクを攻撃、ファイナル・フォール」

 

 海神は鮫龍に走りかかる。聖槍を使用したために力は減っているが真っ直ぐに走ってくる。

 だが鮫龍の力の方が上である。鮫龍の放った光線は海神を直撃し海神の肌に傷をつけていく。だがそれでも止まらない。

 錫杖を振り打ち据えようとするのを鮫龍は宙を飛び回り回避し一瞬のスキを突き押し倒し、首元に牙を突き立てようとする。

 だが凌牙は渋い顔をしていた。

 このナンバーズによって構成された空間の性か、それとも何か別の何かの性なのか、カードテキストは読み取ることが出来ない。

 それでもナンバーズとはいえ攻撃力は下であるこの状況で戦闘を仕掛けるとなると可能性は2つしかない。モンスター効果による戦闘補助か除去どちらかだろうと辺りを付けた凌牙は叫ぶ。

 

「何が来る!?」

 

No.73激瀧神アビス・スプラッシュ ATK1600 VS No.32海咬龍シャーク・ドレイク ATK2800

 

「この瞬間、アビス・スプラッシュの効果発動、オーバーレイユニットを1つ使い、攻撃力を倍にする!」

 

 胸に吸い込まれたオーバーレイユニットは鮫龍に喉笛を噛み千切られようとしていた海神に力を与える。

 腹に蹴りを入れ鮫龍を引きはがした海神は錫杖を振りかざし鮫龍の放った光線を叩き割り顔面を叩き砕いた。

 

No.73アビス・スプラッシュ ATK1600→3200 VS  No.32海咬龍シャーク・ドレイク ATK2800

破壊→No.33海咬龍シャーク・ドレイク

凌牙&璃緒 LP3300→2900

 

 爆風は凌牙達を襲う。そして再び記憶が来た。

 戦争だ。大きな国が攻めて来て多くの死傷者を出した。

 敵国の船にはベクターの人間形態の真月と同じ顔の人物がふんぞり返って座っていた

 

「すまない、シャーク・ドレイク!」

 

 アビスの言葉に凌牙は現実へと引き戻された。

 凌牙は先ほどより脳裏に叩き込まれる映像に混乱しながらも、己が中にある疑問を叫ぶ。

 

「お前が何故、シャーク・ドレイクに謝る必要があるんだ!? お前はいったい何を知っている、このダメージと共に見えるこれはなんだ!?」

 

「シャーク・ドレイク、そしてリバイス・ドラゴン、この名前を貴方様は知っているはずだ、あれらは私の配下だ」

 

「配下だと?」

 

「ええ、貴方にカオスと記憶を渡す任務に就いた2体、他にももう1体いましたがもう1体は貴方様はまだ触れていないようだ。そして過去の貴方様の力を見事に受け継いでいる。いやそれ以上だ。カオスの操り方と大量のカオスを持たせたとはいえ、手にし少しでランクアップマジック無しでナンバーズをカオス化させる事、それは他の皆には出来ぬこと、流石はバリアン七皇のリーダー、ナッシュ様だ」

 

 過去に凌牙は突然現れたリバイス・ドラゴンに取り込まれ遊馬と決闘し敗亡した。

 そして自分でもどうやってか分からないがトロン一家の策略によって自分の手に渡って来たシャーク・ドレイクをカオス化させた。

 トロンはバリアンと繋がっていて何故か凌牙を必要とした、流れ込んでくる自分と同じ顔の見覚えのないが懐かしい記憶、リバイス・ドラゴンとシャーク・ドレイクのみが自分に語り掛けた事、それらがすべて繋がっていたと今、目の前のアビスは凌牙に言い放ったのだ。

 

「何を言っている、そんな事あるわけが無いだろう!?」

 

 そんな事、信じられないと凌牙は否定を示す。

 自分がバリアン七皇である等信じられる訳がない。そんな記憶を自分は持っていないのだから。

 凌牙の声にアビスは目を閉じ、

 

「まだ記憶が十分に渡っていないようですね、ならばまだ攻撃を続けるのみです。我はカードを4枚伏せてターンエンド」

 

イリス&アビス場  デプス・ガードナー ATK2800

LP2800       No.73アビス・スプラッシュ ATK2400 (ORU1)

手札2 

手札1        伏せ4

 

凌牙&璃緒場     FAブラック・レイ・ランサー ATK2300 (ORU1)

LP2900    

手札0       

手札5        伏せ1

 

                      ●

 

 2人に知られず、氷と水に包まれたドルベは抵抗を止め、今聞かされた言葉に衝撃を受けていた。

 自分が長年追い求めていた凌牙がナッシュであると言われたからだ。

 

「馬鹿な、ただの人間が、神代凌牙がナッシュだと!?」

 

 声は聞こえず届かない。

 ドルベは更にあがきを続ける。張り付いた皮膚が裂けるのを顧みず今までびくともしない氷を何とか破ろうとする。

 

―――なんとか、奴に問い詰めなければ、本当なのかと、本当だとすれば……!

 

 ドルベは全身からバリアンの力を放出し氷を砕こうとするがナンバーズによって構築された氷は敗れる気配を見せない。

 だが何とか破ろうとドルベは努力を続けた。

 

                       ●

 

 No.96と遊馬との決闘がDゲイザーを通じて聞こえてくる、それは遊馬の劣勢を伝えるものだ。

 No.96によって遊馬のエクストラデッキから特殊召喚されたのは以前、トロンとフェイカーが使ってきた切り札、それがカオス化した物だ。その圧倒的ともいうべき能力が遊馬達を追い詰めていく。

 カイトはそれを聞き、崖を登る手を早める。

 自分にナンバーズを任せ足止めのために遊馬達は戦っている、自分よりも年齢の下の皆がだ。

 頼られた以上は自分は早くナンバーズを手にし彼らの場所に戻るべきだ、その思いがカイトを急かす。

 カイトが今いるのは切り立った崖だ。命綱もなしに上っており決闘者でも油断して落ちれば死ぬレベルの高さまで登っている。

 少し先には霧がありその先には己と銀河眼を呼ぶ何かがいるとカイトは確信して腕を早め、そして登り切ったカイトを待っていたのは巨大な門だ。

 中華風の門、そして家屋が奥に見える。

 

「こんな場所に建物だと?」

 

 呟き踏み出したカイトの足元にカードが突き刺さった。

 岩盤を軽く貫通したカードは一歩間違えば足の甲を貫通し、カイトは地面に縫い付けられていた危険な物だ、そして投げられた横を見れば人間形態のアリトがいた。 

 そしてもう1人、霧の中より姿を現すのは大男だ。

 その顔を海とは遊馬の見せてくれたDゲイザーから知っている。バリアン七皇のギラグだ。

 共に遊馬に敗北し姿を消した二人は決闘盤を構えてくる。

 ギラグの話だとアリトは大怪我を負ったようだがピンピンしている様子から回復したのだろう、つまり本気で攻撃してくると言う事だ。

 正面に門は見えるが距離がある、走った所で追いつかれてしまう事を考え、カイトは避けては通れないか、と決心し決闘盤を構えようとすると後ろから伸びてきた手によって止められた。

 

「おっと、そこまでだ、そこの良いノリしてそうなガキ、お前の相手はこのゴーシュが行ってやるよ!」

 

「先に行けカイト、お前はお前の名すべきことをしろ」

 

 後ろから追いついてきた二人は共に決闘盤を装着しカイトへと笑いかける。

 

「ドロア、ゴーシュ……すまない、気をつけろ」

 

 カイトは一言、礼を言い門の中へと走った。


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