クェーサー厨が行かされる難易度ちょっとハードモード   作:TFRS

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サルガッソ 上

 裕達は必死で逃げては決闘し、逃走を図るも、流れ込んでくる物量に押されてしまい、ついに取り囲まれてしまう。

 全周囲をバリアンに洗脳された決闘者がいる状況、その囲いの1部が割れ、底を1人の少年が歩いてくる。

 そして黒原と遊と最上が遭遇した。

 

「久しぶりだね」

 

 この状況でのんきにあいさつをしてくる黒原に言葉を失う裕、黒原の登場を予想していた最上は口元に苦笑いを浮かべる。

 

「お前がこの状況を仕込んだんだな」

 

「そうだよ。遺跡のナンバーズ、この状況、ベクターの行動、原作から外れている全ては僕が原因だ」

 

 笑顔のまま言われた台詞に裕は問う。

 

「なんで、だ?」

 

「そりゃ決まってるじゃないか、せっかくアニメの世界に来たんだ。もっと楽しまないといけないと僕は思うんだ。 カードの書き換え、カードで世界が滅ぶ、命を懸けた決闘、現実にない物をもっと楽しみたいだろ、だけど」

 

 黒原は裕を見る、睨み付けるというよりは忌々しいゴミを見る様に、

 

「それなのにここに邪魔者がいるんだ、せっかくアニメの世界なのに場外戦術も特殊能力もアンティ決闘も全て許さないっていう前世のルールに縛られたバカが」

 

 呆れた様に首を振り、ため息混じりに黒原は分かっていることを懇切丁寧に説明してやろうと言う様に話を続ける。

 

「ここはもうアニメの世界だ。普通の決闘なんて道端に転がってるじゃないか、ここでしかできない事を楽しみたいんだ、ぶっ壊れのチートカードをサーチなしで連射してそれをしのいでぶっ殺す、それが楽しいじゃないか。会話のドッジボール、意味不明にも見える台詞、カードを書き換える、創造する、現実じゃあり得ないその行動全てがあり得るこの世界は面白いじゃないか」

 

「カードを書き換えるだの、命を懸ける決闘だの、アンティ決闘だのふざけたことを言ってんじゃねえよ、そんなの楽しい決闘になる訳ないだろ!」

 

「だからお前はつまらないって言ってるんだ、ここはアニメの世界だ、現実のルールなんて存在するもんか! もうすでに遺跡のナンバーズは残り1枚、ドン・サウザントの力は解放され、あとは本体が解放されるのを待つばかりだ! そして僕が覚えていない原作の細かい部分を最上から手に入れることでこの状況は悪化する、さあ決闘だ、ここで邪魔者全てを倒して、僕は一番良い席でこのくそったれな状況を足掻く主人公達の活躍を見て楽しむんだ」

 

 黒原の独りよがりな言葉に裕は声を荒らげる。

 

「いい加減にしろ! チートドローだの、インチキ特殊能力だのもううんざりだっ! どいつもこいつも決闘をなんだと思ってやがる! カードを使う異能力バトルなんて他でやっとけ、命を懸けるなんてもってのほかだ! 人の大切なカードを奪うアホどもが多いこの世界なんて間違ってるよっ!」

 

 裕は激怒する。

 本人の願いは普通の楽しい決闘がしたいだけ、相棒と共に戦いたいそれだけだ。

 それ以外何も望んではいない。

 最上も黒原も決闘をやっている訳では無いと思う。

 運が良すぎるだの、望んだカードを引き当てるだの頭のおかしい事ばかりしている。それはもはやカードゲームではなくカードを使った能力バトル物でしかない。

 そんな物を許すわけにはいかない。

 

「てめえら全員、まじめに決闘してる奴に土下座しろ! ふざけたことばっかり言ってるやつら全員クェーサー地獄にたたき込んでやる!」

 

「いい覚悟だ!」

 

 決闘盤を構える裕に標的を定めた黒原は共に叫ぶ。

 

「「決闘!!」」

 

 

「僕の先攻だ、ドロー」

 

 ドローした黒原は舌打ちをする。

 

「初手がいまいちだな、やっぱりお前は邪魔だよ。普通の決闘なんてもう飽きたんだ、僕は普通なんていらない、強欲で謙虚な壺を発動」

 

 忌々しいという感情を隠さずに、敵を排除する。そういう意思が裕を襲う。

 3枚のデッキトップ、捲られるのは岩投げアタック、神の警告、スキルプリズナーだ。

 

「僕は岩投げアタックを加える。そして成金ゴブリンを発動、僕はデッキからドローする……よし、ポイズンマミーを召喚」

 

 裕はポイズンマミーの効果を読むモンスター、リバースモンスターであり、何故、攻撃表示で召喚したのか、黒原の意図を理解できない

 最上はそれを見て、口を大きく開く。

 その行動だけ黒原が行おうとしている事が理解できたからだ。

 2人の間には膨大なカードプールと多彩な戦術を知っているか、知って居ないかという巨大な差があり、知識が乏しい裕はそれに気づけない。

 

「カードを5待伏せてターンエンド」

 

黒原場      ポイズンマミー ATK1000

LP4000    

手札0      伏せ5

 

裕場      

LP5000    

手札5

 

                      ●

 

「これ終わったかな?」

 

 最上は場に出てきたモンスターを見て裕が敗北するかもしれないと察し、注意深く周囲の洗脳決闘者を見るも動きは無い。

 黒原の決闘を邪魔しない様に動かず逃げる退路を塞いでいるだけだ。この状況を見る限り黒原が洗脳決闘者を操っている何者かと手を組んでいるのは理解できる。

 

「アイツが防ぐカードを引いてることを祈るか」

 

 そう呟く最上は裕の動きを見守るしかなく、裕がカードをドローした。、

 

「俺のターン、ドロー!」

 

「この瞬間、罠発動、岩投げアタック。デッキより岩石族モンスターを墓地に送り500ポイントのダメージを与える」

 

「やっぱりダメかぁ」

 

 最上は岩投げアタックで墓地に送られたカード、カオスポッドを見て、思い浮かべていたデッキが当たって居た事を理解する。

 防ぐ方法が無ければ無限ループで相手を焼き続ける必殺のデッキ。モンスターはたったの4枚しか入っていないが相手が防ぐカードを引けなければ敗北が決定する。

 そして黒原の持つ力は相手が妨害できず自分は望むカードを引く力だ。裕がナンバーズを持っていれば無効化できたかもしれないが今はナンバーズを持っておらずどうすることも出来ない。

 

「罠カード、ギブ&テイクを発動! そっちの場にカオスポッドを特殊召喚してポイズンマミーのレベルをカオスポッドのレベル分アップ。そして永続罠、召喚宣言―猛突するモンスターを発動! さらにカオスポッドに月の書を発動する」

 

 裕が困惑した表情のまま、棒立ちしているのを見、後ろから手札を確認した最上は重いため息を吐く。

 

「負けたな」

 

「えっ!?」

 

 裕はよく分からないが最上の言葉に本能的にまずいと悟るも、永続罠カードを破壊するカードがない。

 

「リバースしたお前の場のカオスポッドの効果発動、お互いのプレイヤーはそれぞれのデッキに加えた数と同じ数のモンスターが出るまでデッキをめくり、その中からレベル4以下のモンスターを全て裏側守備表示で特殊召喚する。そしてめくったカードは全て墓地に送られる。チェックメイトだ」

 

 裕は言われた意味が分からない。

 だが非常にまずい事態が起こっているのだろうと予測は出来る

 

 裕のデッキトップのめくりはすぐに止まる。

 レベル・スティーラーとジャンク・シンクロンだ。

 そして問題は黒原の方にある。

 膨大な、それこそデッキのほぼ全てが無くなるまで捲られ続け、ようやく黒原の手が止まった。

 

「カオスポッド2体をセット、そしてめくられたカードは全て、カード効果で墓地に送られる」

 

 デッキのほぼ全てを墓地に送った意味が裕にはまるで理解できずに首を捻る。

 

「なにこれ?」

 

 裕の決闘盤より黒原の墓地に送られたカードを確認した最上は、何が起こっているのか理解してない裕へと教えてやる。

 

「もう勝敗決定したから口出ししてやるとデッキタイプはカオポループって言いたいけどジャックポットワンキルか。これは酷い」

 

「え、ええっ!?」

 

 墓地より強欲な壺が置かれたスロットマシーンが3つ、裕を取り囲むように現れる。

 今も周り続けているドラムの右が止まる。

 7だ。

 カオポループと言うのはカオスポッド3枚、そしてポイズンマミーの4枚のモンスターと36枚の魔法罠で構築されたデッキだ。

 勝ち筋は先ほどと同じく、裏側守備のカオスポッドとそれ以外のモンスターを自分の場に特殊召喚し、そして召喚宣言―猛突するモンスターを発動するだけだ。

 それを発動するだけでカオスポッドとポイズンマミーが場とデッキを跳ねまわり相手は敗北する。

 ポイズンマミーにはリバース効果としてリバースした時、相手に500ポイントのダメージを与える効果を持っており、それによるバーンか。それとも相手のデッキ切れかによる勝利を狙うデッキだ。

 だが今回、黒原が使ったデッキは少しだけ違う。

 

「墓地より相手のカード効果で墓地に送られたジャックポット3枚の効果発動」

 

 今度は左が止まる。

 7だ。

 

「このカードを3枚を除外、そしてジャックポッド自身のこの効果で3枚のジャックポットが除外されたこの瞬間」

 

 そして中央のドラムが動きを止める。

 

「僕の勝利となる」

 

 裕が黒原が使った特殊勝利カードの内容に気付いた時にはもう遅い。

 大当たり、ジャックポットを告げる目が焼けるほどの光、運を祝福するファンファーレ、そして大量のコインが裕目掛け殺到し金属音を響かせながら直撃した。

 

勝者 黒原

 

                   ●

 

 真月を助けるために飛行船で出発した遊馬達の旅路は一見、順調に思えたのだが、船の前方に突然出現したブラックホールに吸い込まれてしまった。

 飛行船がブラックホールに巻き込まれた際の激しい衝撃で遊馬達は意識を失ってしまった遊馬はアストラルの呼びかけで目を覚ました。

 

「ここはいったい?」

 

 見渡す限り青と黒の空間が広がっている。

 飛行機や母艦、船の残骸があちこちに浮かび墓場のような印象を与えるその区間、そこに黒いシミのような光が生まれ、人型をとる。

 遊馬が忘れられない宿敵、ベクターだ。

 

「ようこそサルガッソへ、お前らが最後に見る場所だ」

 

「ベクター、真月はどこだ!?」

 

「ふっ、くくく、そんなに真月に会いたいか! なら合わせてやるよ、そのお友達をなぁ」

 

 ベクターが指さした場所、黒いもやが噴出し真月が現れる。

 目はうつろで額にはバリアンの紋章をつけ、ゆっくりと遊馬へと歩み寄ってくる。

 

「遊馬!」

 

 カイトが遊馬の元へと駆け寄ろうとした目の前に黄色い光が手により降り注ぎ阻んだ。

 その光は収束し人の形を取り、決闘盤をカイトへと向ける。

 

「貴様が銀河眼の光子竜を使う天城カイトだな、裕から話を聞いているだろうが名乗らせてもらう、私の名はミザエル、貴様の銀河眼を手に入れる最強のドラゴン使いだ!」

 

「貴様がミザエルか、もう一つの銀河眼を使う決闘者……!」

 

 カイトはちらりと遊馬を心配げに見るもミザエルの構えに隙は無く、ミザエルを避けて遊馬の助けに行くことを断念する。

 

「さあ、カイト、最強のドラゴン使いを決める決闘を始めよう!」

 

                       ● 

 

 ミザエルとカイトが決闘を始めたのをみて凌牙は遊馬の元へ行こうとするも、カイトと同じく、白い光に阻まれる。

 ミザエルと同じく光は人型を成し、灰色の肌をした男が凌牙へと決闘盤を向ける。

 

「貴様が神代陵牙か」

 

「誰だてめえ?」

 

「私の名はドルベ、お前を決闘で倒す者だ。さあ私と決闘だ!」

 

「凌牙、気をつけて!」

 

 璃緒は飛行船の甲板に立ち凌牙の身を案じ声をかける。

 そしてそれを見たドルベは目を見開く。

 璃緒の顔は遺跡で襲撃してきた2人の片割れと同じ顔だったからだ、遠目で背の高さまではわからないが同じ姿に心が動かされる。

 

「あの少女の名はなんだ?」

 

「ああ? 何言ってやがる」

 

「答える気はないか、ならば直接聞くまでだ!」

 

 飛び上がろうとするドルベの目の前に凌牙が立ちふさがる。

 

「なんだかよく分からねえが璃緒にちょっかいは出させねえ! 決闘だ!」

 

 立ちふさがった凌牙へとちらりと目を向けるもドルベはすぐさま璃緒の方へと向ける。

 まるで凌牙の事をどうでもいいとでもいうように、一心不乱に璃緒を見、告げられた名を呟く。

 

「璃緒と言うのか、良い名前だ」

 

「てめえっ!」

 

 ドルベは凌牙を無視し、遺跡のナンバーズにとてもよく似ている少女の元へと向かおうと思った。

 だが周りを見ればミザエルはバリアン世界の敵である銀河眼の光子竜を操るカイトと決闘をはじめ、ベクターの卑劣な策は動き出している。

 自分だけが使命を忘れ、我欲に流される事はあってはならない、そう自制し、凌牙へと向き直った。

 

「まあいい。まずはバリアン世界のために、貴様の持つナンバーズを渡してもらう!」

 

                       ●

 

「さあ決闘です遊馬君、僕が強いってこと教えてやる!」

 

 ナンバーズによって洗脳されて無表情だったころとは違い、怒りの表情をみせる真月に遊馬はどう言葉をかけていいのか迷う。

 

「真月……」

 

 その変わり果てた姿に呆気にとられる遊馬、それを満足げに眺めていたベクターは笑いながら、

 

「ああ、そうだ良いことを教えてやる、俺がナンバーズを使って洗脳した際に使った感情を教えてやるよ、遊馬君に勝ちたい、だぜ」

 

 ベクターは大笑いする。

 

「分かるか? お前が守ってやるだの言ってたよな、コイツにはそれが悔しかったんだよぉ。一緒に戦ってくれる仲間って思われてなかったんじゃないかって、いつか置いてかれるんじゃないかって、そんなくだらねえ感情を利用したんだよ!」

 

「ごめん、真月、おまえの気持ちを理解してやらなくって」

 

 目を閉じ、遊馬は思い出すのは真月との日々だ。

 そこにはアリトや裕、ナンバーズクラブの皆がいる。

 楽しそうな笑顔の裏で何を考えていたのか、それを決闘を通じて感じ取れなかった自分を恥じ、そしてその感情を利用するベクターを絶対に許さないと誓う。

 

「決闘だ九十九遊馬、そしてアストラル。楽しい友達同士の命がけの決闘の第2ラウンドの始まりだ!!」

 

「許さねえ、絶対に許さねえぞ! ベクター!!」

 

 諸悪の根源であるベクターへと決闘盤を向ける遊馬だが、それを嘲笑うように顎を前に突き出し、ベクターは喜色を隠さない声色で遊馬を煽る。

 

「俺が憎いか、そうかそうか、だけどなぁ俺と決闘したきゃ真月と決闘してもらうぜ。俺を倒したところでナンバーズが憑りついている以上、決闘で勝たなきゃこいつの洗脳は一生解けないのさ!」

 

 下手にここで強引にベクターへと決闘を挑めば、真月とベクター対遊馬という遊馬の不利な状況になる可能性が高い。

 それよりはまず、真月の洗脳を解除して今度こそ本当に肩を並べてベクターと決闘した方がいい。

 遊馬は静かに決闘盤を真月へと向ける。

 

「くっ……真月、俺と決闘だ」

 

「だが遊馬、これではベクターの思う壺だ」

 

 アストラルは遊馬に注意を促すも遊馬は止まらない。

 

「だけど、真月を助けないと」

 

「遊馬」

 

 心配そうに遊馬を見つめるアストラルを置き遊馬は構える。

 

「行くぞ、真月!」

 

「「決闘!!」」

 

                       ●

 

「先攻は俺だ! 俺のターンドロー、俺はゴゴゴゴーレムを墓地に送りオノマト連携を発動。デッキからゴゴゴジャイアントとガガガシスターを加える。そして俺はゴゴゴジャイアントを召喚、墓地からゴゴゴゴーレムを特殊召喚するぜ!」

 

 初手からのサーチカード、遊馬のデッキに置いて一番理想的となる動きだ。

 手札の充実しこれならばどんなナンバーズが来ようとも真月を助けられるだろうと遊馬は思い、自分のエースを呼び出す。

 

「レベル4のゴゴゴゴーレムとジャイアントでオーレバーレイ・ネットワークを構築、エクシーズ召喚、頼んだぜ! No.39希望皇ホープ! 俺はカードを2枚伏せてターンエンドだ」

 

遊馬      No.39希望皇ホープ ATK2500 (ORU2)

LP4000  

手札3     伏せ2

 

真月場      

LP4000    

手札5     

 

「おっと? いきなりエースの召喚とは余裕がないなぁ!」

 

 棒立ちとなっている真月の肩に手を置きベクターは煽る。

 

「僕のターンです、ドロー、ダーク・グレファーを召喚」

 

 手札コストを必要とするが自身を特殊召喚できる効果と墓地肥しを可能とするカード、遊馬は嫌な予感を感じ妨害に走る。

 

「させるか! 罠発動、奈落の落とし穴だ!」

 

「ちっ、おしい、だがこんなもんで止めたと思うなよ!」

 

「僕はカードを3枚伏せます、おろかな埋葬でデッキからそしてヘルウェイ・パトロールを墓地に送ります。そして墓地にあるヘルウェイ・パトロールの効果発動、このカードを除外する事で手札から攻撃力2000以下の悪魔族モンスターを特殊召喚します。現れてください、インフェルニティ・デーモン!」

 

 羊頭の悪魔がヘルウェイパトロールのバイクの後ろに乗り場に登場する。

 バイクはそのまま空間の裂け目へと突撃していく。

 

「インフェルニティだって!?」

 

 インフェルニティというデッキタイプを遊馬は知っている。手札0のとき恐ろしい効果を発揮する特殊なデッキであり制圧力も高い事で有名だ。

 中でもキーカードであるこのインフェルニティ・デーモンの効果が発動するときに妨害をできないと敗北が目に見える状況に陥る。

 

「僕の手札が0枚でこのカードが特殊召喚に成功した時、デッキよりインフェルニティカードを手札へと加えることが出来ます。僕がサーチするのは」

 

「させるか! 俺は手札からエフェクト・ヴェーラーのモンスター効果発動、インフェルニティ・デーモンの効果を無効にする!」

 

「ならば伏せていたカードを発動します、ライフコスト1000を支払って簡易融合を発動、エクストラデッキよりカオス・ウィザードを融合召喚し、レベル4のインフェルニティ・デーモンとカオス・ウィザードでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚、ラヴァルバル・チェイン」

 

 墓地肥やしとデッキトップ操作を行える燃える体の海竜がのそりと渦の中より姿を現し、真月のデッキへと向かう。

 

「ラヴァルバル・チェインの効果でオーバーレイユニットを1つ使いデッキからヘルウェイ・パトロールを墓地に送ります」

 

 またしても墓地に送られるヘルウェイ・パトロール、それが意味しているのは真月の展開がまだ終わらないと言う事だ。

 

「さらに僕は伏せていた死者蘇生を発動。インフェルニティ・デーモンを特殊召喚する。さらにインフェルニティ・デーモンの効果でデッキからインフェルニティ・デーモンを加える。さらにヘルウェイ・パトロールの効果で手札からインフェルニティ・デーモンを特殊召喚しデーモンの効果でデッキからインフェルニティ・ブレイクを加える」

 

 連打される特殊召喚とサーチ、そして真月の伏せカードとモンスターがどんどん溜まっていく。

 その動きに遊馬は圧倒され、言葉も出せずにいた。

 

「インフェルニティ・ブレイクをセット、レベル4のインフェルニティ・デーモン2体でオーバーレイネットワークを構築」

 

 渦より現れるは光り輝く金剛石の大結晶だ。

 そしてそれは動き始める。丸まっていた躰を動かし両鋏、脚、眼を動かし青色の蟹が姿を見せる。

 

「エクシーズ召喚、現れてください! No.52ダイヤモンド・クラブ・キング」

 

「このナンバーズから発せられるこの力は、それが真月を操っているナンバーズか!」

 

「よく気づいたなぁ、アストラル、このカードが今回の真月の洗脳しているキーカードさ、まあ今回は様子見ってところだがなぁ」

 

「ダイヤモンド・クラブ・キングの効果発動です! オーバーレイユニットを1つ使い攻撃力を3000にします。バトルです! ダイアモンドクラブキングで希望皇ホープを攻撃!」

 

 巨大な鋏を打ち鳴らし、金剛石で出来た蟹がホープへと襲い掛かる。

 大質量が叩き込まれる寸前、ホープは翼盾を展開し、鋏の一撃を受け止める。

 

「俺は希望皇ホープのモンスター効果発動、オーバーレイユニットを使い、モンスターの攻撃を無効にする!」

 

「ダイアモンド・クラブ・キングは攻撃した後、守備表示になります。僕はこれでターンエンドです」

 

真月場     No.52ダイヤモンド・クラブ・キング DEF3000 (ORU1)

LP3000    ラヴァルバルチェイン ATK1800 (ORU1)

手札0      伏せ2

 

遊馬      No.39希望皇ホープ ATK2500 (ORU1)

LP4000  

手札2     伏せ1

 

「俺のターン、ドロー! 俺はおろかな埋葬を発動、ガガガマジシャンを墓地に送る、そしてガガガシスターを召喚、デッキからガガガリベンジを加え、ガガガリベンジを発動」

 

 遊馬が真月との決闘でいつもの使っていた様にガガガシスターとガガガマジシャンを並べようとする。

 だがそれを分かっている真月は、

 

「罠カード、インフェルニティ・ブレイク発動します。墓地のインフェルニティ・デーモンを除外しガガガリベンジを破壊です!」

 

「だったら俺は死者蘇生を発動! 墓地のガガガマジシャンを特殊召喚する。俺はガガガシスターのモンスター効果発動するぜ。ガガガマジシャンとガガガシスターのレベルを6にする、そしてレベル6になったガガガシスターとガガガマジシャンでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚、撃ち抜けガントレットシューター!」

 

 現れたガントレット・シューターを真月は者も言わずに見上げている。

 

「ガントレットシューターの効果発動、オーバーレイユニットを1つ使い相手モンスターを破壊する、まずは真月を洗脳しているナンバーズを破壊する!」

 

 ガントレット・シューターの巨大な手甲がオーバーレイユニットの力で発射される。 金剛石の殻を持つ蟹も膨大な質量の塊を叩き込まれれば砕けるしかない。

 そしてナンバーズが破壊されたことによりベクターが焦り始める。

 

「くっ、まずい、これじゃ真月の呪縛が!」

 

 その焦りの言葉を証明する様に、真月の額についていたバリアン紋章に罅が入っていく。

 

「遊馬、君。うっ」

 

 紋章に大きな罅が入り、真月は頭を押さえ苦しみだす。

 それを見た遊馬はいけると確信し、この決闘を早く終わらせるようともう1枚のオーバーレイユニットを抜く。

 

「さらにもう1つのオーバーレイユニットを使いラヴァルバル・チェインを破壊する!」

 

 更なる爆発が発生し、真月のバリアンの紋章が砕け散る。

 そして苦しみもがいていた真月の表情から苦悶が無くなり、真月の眼に理性が戻って来る。

 ベクターはそれを苦々しげに見て、

 

「ちっ、ナンバーズが破壊されてコントロールが効かなくなりやがったか」

 

 洗脳から解け始めた真月から離れ始めたベクターだったが、そうするには遅すぎた。

 先に理性を取り戻した真月はベクターを追い、ベクターを羽交い絞めにする。

 その行動に呆気に取られていた遊馬へと真月は力の限りに叫んだ。

 

「遊馬君、このまま僕と一緒にこいつを攻撃してください!」

 

「真月、お前」

 

「操られてすいませんでした、でも僕はこいつを倒さないといけないんです。幸いここにはドルベ様もいます、こいつを倒しドルベ様に突き出せばこいつは終わりです!」

 

「ひっ、や、止めろぉおおお!」

 

 怯えた様子を見せ背中に張り付く真月を振りほどこうとするも真月の決意は固く離れる様子は無い。

 目の前に迫るホープの姿に目を見開きベクターは必死に抵抗を始める

 

「分かった、いっけえ! 希望皇ホープで直接攻撃!」

 

 ベクターごと真月に剣を叩きつけようとするホープの眼前、自身の姿が映る。

 

「えっ!?」

 

「なぁんちゃって、罠発動、聖なるバリアーミラーフォース!」

 


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