クェーサー厨が行かされる難易度ちょっとハードモード   作:TFRS

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ベクター襲来 上

「いやぁ今日もよく決闘したな!」

 

 のんびりと歩きながら遊馬は真月へと話しかける。

 遊馬は昨日の戦いで手に入れたRUMリミテッド・バリアンズ・フォースを使い、裕や陵牙達をバーンで焼き倒し、RUMの恐ろしさを全員に理解させた。

 その上で何が弱点なのか、どうすれば止められるかなどをみんなで知恵を出し合ったりもした。

 RUMの出所をを陵牙に聞かれるも真実を喋るわけにもいかないためにギラグからぶんどったと遊馬は心苦しい嘘を吐いた。

 その際、アンティ決闘に敏感な裕と一悶着あったが決闘にもつれ込み、裕はしぶしぶではあるが了承し、解決した。

 

「そうですね、今日も楽しかったですね」

 

 真月は話しながら、遊馬の周囲を見てアストラルを探す。

 ギラグの襲撃から1日立つがアストラルが負った負担が大きかったのかいまだに現れない。

 それを好機と受け取ってか、真月はポケットからカードを取り出す。

 

「協力してくれる遊馬君にこれを渡しときます」

 

「これは?」

 

 真月から手渡されるは2枚のカードだ。魔法カードとモンスターだ。

 

「もう1枚のリミテッド・バリアンズ・フォースと遊馬君のホープの強化するカードです。トレジャーシリーズと一緒のカードなので決闘盤でも問題なく読み取ってくれますから安心して使ってください」

 

「それってどういう?」

 

 あっ、しまった!? そのような表情を真月は浮かべ、

 

「詳しい事情は落ち着いてから話します。とりあえず今はベクターをどうにかしないといけません、全てが終わってから全部話させてもらいます」

 

 どこまで信用していいのか、そしてどこまでが真実なのか、遊馬は与えられる情報を鵜呑みにするしかない。

 

「……お前がそう言うんならありがたくもらっておくぜ、この前の決闘じゃお前に助けられたし俺にできることがあったら何でも言ってくれ!」

 

 遊馬は心の底から感謝していた。 

 ギラグとの決闘、ギラグが繰り出したバーンも真月の非常食で凌ぎ、猛攻も凌ぎ、そしてもうだめだと思った瞬間のRUMーリミテッドバリアンズ・フォース、それを思い出すだけでありがとうと言いたくなるほどに助けられたからだ。

 

「あはは、遊馬君が協力してくれるんですから僕としてはありがたいですよ。あーでも助けてほしいときに助けてくれたら僕的には助かりますね、ほら、僕って腕力も苦手ですし決闘も弱いですし……」

 

 真月は自分の事を言っていて気落ちしたのか徐々に語尾が小さくなっていく。

 そんな真月を励ますように遊馬は背中を叩き、

 

「おう、お前がピンチになったら絶対に駆けつけてやる、そしてまた一緒に闘おうぜ!」

 

 夕暮れの中、肩を並べ、歩く2人の姿は仲の良い友達同士の様だった。

 

                      ●

 

「おっ、2人ともおはよう!」

 

 土曜日、遊馬たちと遊ぶ約束をした裕は歩いていると真月と璃緒に出会った。

 

「あっ、おはようございます、裕さん!」

 

「おはようございます」

 

 元気よく挨拶を返される。

 璃緒の横を見るも凌牙の姿は無い。

 その事に疑問に思っているとその事が表情に出てしまったのだろう、璃緒はくすりと笑って、

 

「陵牙なら来ませんよ」

 

「えっ、なんで? 俺みたいに夏風邪?」

 

「いえ、今日の朝、寝ぼけてたのかパジャマ姿で外に出まして。しばらく二人で歩いて周りの人の様子でようやく気が付いたようで急いで家に戻ってしまいました。ですから来るまでにもうちょっとかかるでしょうね」

 

 面白いものが見れたと笑う璃緒、裕は若干冷や汗をかきつつ、

 

「えっと、一緒に居たんだよね、指摘とかしなかったの?」

 

「そういうちょっと抜けている陵牙を見てて面白いんですわ。しばらく一緒に居れなかったけど抜けているところは抜けている。そういう所は変わってないって事が発見できただけで嬉しいです」

 

 笑いながら話す姿に裕は凌牙へと心の中で合唱しつつ、真月へと話しかけようと口を開く。

 

「っ! 何か来ます。それも害意のある邪悪な者が!」

 

 璃緒が突然、大きく声を上げる。何か異常な力を察知したのか射抜くように鋭い視線は前を向く。

 それと同時に真月がいつもの動きからは想像できない様な機敏な動きで裕と璃緒の前に出る。

 そして、それは現れた。

 黒いフードをかぶった人物だ、仮面のような物をつけているのか素顔は見えない。

 真月はその人物へ決闘盤を構えようとするも見えない掌で首元を掴まれ宙吊りにされる。

 

「えっ、えっ!?」

 

 突然突き飛ばされたあげく真月が宙づりになっている状況をうまく飲み込めないも裕は五指を空に伸ばしているフードの人物へと飛びかかる。

 

「てめえには用は無い、邪魔だ!」

 

 見えない障壁の様な物に阻まれ裕はフードの人物へ触れることが出来ない。

 喉元を掴まれている真月、その表情はいつも朗らかに笑っている彼からすれば想像できないほど激情に染まっている。

 

「ギラグ様やアリト様をよくも! 絶対に許さないぞベクタァッーーーーー!」

 

「様を付けろ、最下級のバリアン兵如きが! まあいい。今日俺様がお前に態々会いに来てやったのは、お前を洗脳させてもらうからだ!」

 

「僕がそんな簡単に操られるわけ」

 

「そうだなぁ、だがナンバーズの力があればどうだろうななぁ」

 

 フードの男の手が真月の頭へ伸ばされる。

 

「させるか!」

 

 真月の前に紫色の力場が発生する。それは真月へと伸ばされる手を阻む。

 

「えっ!? 何この状況!?」

 

 裕が叫ぶ。

 目の前で繰り広げられる超能力バトルに呆気に取られていると、

 

「だが甘いんだよぉ」

 

 フードの男は一旦手を引き、エクストラデッキからカードを指先で摘み力場へとたたき込む。

 発生するのは激しい衝突音、そしてそれに続き光が道路を包み込む。

 裕はその光景に目を覆う。

 目が潰れるのではないかと思うぐらいに眩しい光はバリアンとアストラル世界の力の衝突による副産物だ。

 そして突き出されたそのナンバーズの能力が真月の力場をこじ開けていく。

 

「こいつの名前はマスター・キー・ビートル。あらゆる次元を抉じ開け、あらゆる物の鍵を抉じ開けていくナンバーズだ。バリアン世界の力だってこじ開ける事が出来る! 態々プロ決闘者をかき集めてまでこいつを捕まえたんだぜ、さあ邪魔な障壁を開けてもらう!」

 

 真月の力場が砕け散り、ベクターの手が真月の頭を掴み取る。

 

「さあ、よからぬことを始めよう、親友同士の殺し合いをなぁっ!!」

 

「うわぁああああああ!?」

 

 真月の頭を掴むフードの男の手より紫電が放たれた。

 

                     ●

 

 遊馬はのんびりと遊馬と裕達を待っていると裕から電話がかかってきた。

 

「も」

 

「遊馬、やべえぞ、バリアンが真月を洗脳しやがった!」

 

 遊馬が喋る前に裕が話し始める。

 

「えっ、真月は!?」

 

「俺と璃緒を決闘で倒してどっか走って行きやがった。あのエクシーズ、あんなの俺のデッキじゃどうする事も出来なザ⋯⋯! あっ、なんだっけえっと、べ、ザ、ベク、ザザッ、ベクター、そうベクターがどうとか言っザザザザザッ」

 

「ベクターだって!?」

 

「遊馬、ナンバーズの気配がする!」

 

 裕との通話の中、所々ノイズが入り始め完全に会話が途切れる。それはバリアン世界の刺客が遊馬達を襲う際によく使う手段である。

 そして裕との会話の途中、皇の鍵の中よりアストラルが姿を現す。

 まだ本調子ではないのかたまに半透明になりながらも用心深く辺りを見回す。そして今何が起こっているのか知らない小鳥が指を指し、

 

「あ、遊馬、真月君がきたわよ」

 

 小鳥が指さす方向、真月が走ってくるのが見える。

 真月は遊馬のすぐ傍まで来て立ち止まると無言で決闘盤を構える。

 

「真月、おい、どうしちまったんだ!?」

 

「くくく、ふっはははっ、無駄だぁ、真月は今、この俺、ベクター様が操っている、どんな言葉をかけた所で反応しねえよ」

 

 真月の背後より渦が生まれ中より紫色のローブの人影が現れる、声からすれば男だ。

 そしてそれはフェイカーとの決闘で聞こえてきた声であり、補填大会などの策略を仕掛けてきた大本命の名前だ。

 

「くっくっく、真月は俺がナンバーズを使って入念な洗脳を施した、逃れられることはできん、さあ九十九遊馬、そしてアストラル、決闘だ! 決闘しなければこいつの命はねえぞ」

 

 またしても人質となった真月、無表情のはずの真月だが、その表情はまるで泣いているようにも見える。

 

「くっ、アストラル……!」

 

 真月の命が握られている以上、決闘を受けないと言う選択肢は遊馬にはない。

 それでも遊馬はアストラルへと了承を求め、

 

「分かった。行くぞ、遊馬!」

 

 アストラルが本心で何を思っているかを表情に出さず、即座に了承する。

 

「おう、決闘盤セット!」

 

 真月と遊馬は同時に決闘盤を展開、Dゲイザーを装着し、

 

「「決闘!」」

 

                      ●

 

「さあ、よからぬことをはじめようじゃないかぁ!」

 

 ベクターの叫びで決闘の幕が開く。

 真月のデッキからドローする動きによどみはない、だが声にいつもの元気は無く、目は虚ろでどこを見ているかも不明だ。

 

「先攻は僕です、僕のターンドロー、僕は召喚ができなくなる代わりにアンブラル・ゴーストを特殊召喚します」

 

 影の中より現れるのはベクターと同じようにフードをかぶった幽霊だ。

 

「てめえ、真月のデッキをどうした!?」

 

 遊馬が問いかけるのは今特殊召喚したモンスターだ。

 真月のデッキはテテュスを生かした天使デッキであり悪魔族は使わない、そしてアンブラルというカード群を遊馬は見たことも聞いたこともない。

 

「はっ、あんな雑魚デッキ、サイクロン等の使えるカード以外捨てちまったよ、まあ良いパーツに取りになったけどなぁっ!」

 

「ベクターっ!!」

 

「遊馬落ち着け! 怒ってしまえば奴の思うつぼだ!」

 

 アストラルも注意するが心境は同じだ。

 決闘者として自分が苦労して汲み上げたデッキを本人の預かり知らぬところで弄くられ捨てられるなどあってはならないことだ。

 だがそれでも落ち着かないと行けない場所でもある。

 明らかに敵はこちら側を挑発している、その意図をくみ取ったためにアストラルは注意を促すが親友のデッキを勝手にいじられた事で頭に血が上った遊馬は聞こうともしない。

 

―――遊馬が怒るのも当然だ、だが今の状況で怒りに身を任せるのは得策とは言えない。

 

 アストラルは遊馬がどうしてあれほどまでに怒るのかを知っている。

 もともと真月のデッキはシャイニングというカード群で構成されていた。

 そして勝てない事に悩んでいた真月が遊馬達に相談し、そしてと一緒に作り上げたのがテテュスターボだ。

 拾ったり相性の良い安いカードを手に入れてはデッキを作り直し、決闘で勝てる様になったのは遊馬にとって良い思い出だ。

 そしてそのデッキを雑魚デッキと呼ぶベクターを遊馬は許さない。

 

「そして僕はアンブラル・ゴーストの効果で手札よりもう1体のアンブラル・ゴーストを特殊召喚、そして2体のモンスターを対象にターンホイザー・ゲートを発動。2体のレベルを合計した数値にする」

 

 2体の亡霊はは手を取り合うと現れた機械ゲートへと吸い込まれる。

 吸い込まれ射出された先、広がる渦が2体を飲み込む。

 

「これで闇属性、レベル4モンスターが2体そろった、さあ真月、俺様が渡したナンバーズを召喚しろ!」

 

 大げさな動きでベクターの腕が広げられる。

 そして真月の額にバリアンの紋章が浮かび上がる。

 

「僕はレベル4、闇属性のアンブラル・ゴースト2体でオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚。現れろ、No.66覇鍵甲虫マスター・キー・ビートル」

 

 渦より現れるは「?」の形をしたモニュメントだ。

 それの切っ先には遊馬の持つ皇の鍵のような鍵先があり、カブトムシの幼虫のような持ち手がある。

 そしてそれは軽い音を立て変形が始まる。

 鍵先は伸び角へと、そして金色の六肢が広げられる。

 そして目玉の様な甲殻が威嚇するように広げられ折りたたまれていた翅が広がり金色の甲虫型モンスターが現れた。

 

「ナンバーズか!」

 

 あのエクシーズと裕が罵っていた状況から察するにこのカードによって裕達は敗北してしまたのだろう。

 ランク4、そして攻撃力はホープと同じ2500、そしてその身に秘める効果は強力だ。

 遊馬はテキストを確認しながら対策を考えていると相手が動いた。

 

「僕はカードを1枚伏せます、そしてキー・ビートルの効果発動、オーバーレイユニットを1つ使い伏せカードをあらゆるカード効果で破壊されなくします、僕はこれでターンエンドです」

 

真月場    No.66覇鍵甲虫マスター・キー・ビートル ATK2500 (ORU1)

LP4000    

手札2    伏せ1      

 

遊馬    

LP4000  

手札5    

 

「俺のターン、ドロー! 俺はゴゴゴゴーレムをコストにオノマト連携を発動、俺はデッキからゴゴゴジャイアントとガガガシスターを加える、そしてゴゴゴジャイアントを召喚、ゴゴゴジャイアントの効果で」

 

「ハッ! やれ、真月、さっき二人をぶっ倒したコンボを見せてやれ!」

 

「僕はこの瞬間、永続罠、虚無空間を発動させます」

 

 広がるは何人たりとも現れることを許さない空間だ、ゴゴゴジャイアントはその空間に取り込まれるも気にも留めず拳を打ち下ろす。

 しかし、

 

「ゴゴゴゴーレムが特殊召喚できない!?」

 

「こいつが表側で有る限り、お互いにモンスターは特殊召喚できない。まあこいつには真月の場のカードが墓地に送られると自壊しちまうってデメリットがあるんだが、マスター・キー・ビートルの効果で破壊はされねえ、さあどうするぅ?」

 

 ベクターの煽るような言い方に遊馬は更に頭に血を上らせるも何もできないため、

 

「くっ、俺はカードを2枚伏せてターンエンドだ」

 

遊馬     ゴゴゴジャイアント ATK2000

LP4000  

手札3    伏せ2

 

真月場      No.66覇鍵甲虫マスター・キー・ビートル ATK2500

LP4000    

手札2      虚無空間      

 

「僕のターンドロー、マスター・キー・ビートルでゴゴゴジャイアントを攻撃! キー・ブラスト!!」

 

No.66覇鍵甲虫マスター・キー・ビートル ATK2500 VS ゴゴゴジャイアント ATK2000

 

 ベクターの声と共に鍵先より放たれた雷撃は茶色の巨人を砕く。

 

「くっ!」

 

破壊→ゴゴゴジャイアント

遊馬LP4000→3500

 

「メイン2、カードを2枚伏せてマスター・キー・ビートルの効果発動、オーバーレイユニットを1つ使い今伏せたばかりのカードは破壊されなくします」

 

「速攻魔法、サイクロン! マスターキービートルの効果対象になっているカードを破壊するぜ!」

 

 破壊されたカードをは安全地帯という永続罠、それを見てアストラルは安堵の息を吐く。

 

 破壊したカードを見てアストラルは顔を僅かに引き攣らせながら、

 

「危なかったな遊馬、あのカードを破壊しなければ次のターンにあのモンスターは効果対象にならず戦闘破壊、効果破壊されない、そしてお互いに特殊召喚が一切できない状況で我々は戦わなくてはいけなくなっていた」

 

 アストラルの呟きが聞こえてか、ベクターが舌打ちをしながら腕を組む。

 

「ちっ、運の良い奴、まあいいだろうよぉ」

 

「僕はこれでターンエンド」

 

真月場    No.66覇鍵甲虫マスター・キー・ビートル ATK2500 (ORU0)

LP4000    虚無空間

手札1     伏せ1

 

遊馬     

LP3500  

手札3    伏せ1


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