クェーサー厨が行かされる難易度ちょっとハードモード 作:TFRS
「遊馬、やはり彼を守りながら戦うのは限度がある!」
壁に叩きつけられたダメージでアストラルの体は点滅し始める。アリトとの決闘でも同じようなことは起きたが今回のアストラルは更に苦しそうな表情を見せる。
「ごめん、だけど、俺は、俺は…………」
遊馬が謝ろうとしたその時、アストラルは目を見開き崩れ落ちる。
異変を察知した遊馬が駆け寄ろうとするよりも早く、
「遊、馬、どうやら私が付き合えるのはここまでのようだ、すまない」
アストラルが消えていく。
「アストラル!?おいアストラル!?」
「大丈夫だ、ダメージを受けすぎただけだ、君にカードを託す、少し眠る⋯⋯ぞ」
アストラルは皇の鍵へと吸い込まれていく。
遊馬は皇の鍵を心配そうに眺め、ギラグへと向き直る
「はっ、先にアストラルは限界のようだな、さあ次は足手纏いの真月、てめえの番だ」
ギラグ場 No.106巨岩掌ジャイアントハンド ATK2800 (ORU0)
LP4000 ファイアーハンド ATK1600
手札2 伏せ4
エクシーズ・ユニット
遊馬&真月場
LP2400
手札3・5
何度も何度も足手まといと呼ばれた真月はついに我慢の限界が来たのか、普段よりも声を荒らげ、ギラグを睨み付ける。
「僕だって、遊馬君の足手まといにはなりません、僕のターンドロー!」
「この瞬間、俺は罠発動、デス・ハンド! このカードは相手の手札の枚数×300のダメージを相手に与える。真月の手札は6枚、つまり1800のダメージだ!」
「まだ俺と真月のライフは尽きないぜ!」
「甘い、俺は更に罠カード、仕込みマシンガンを発動! 真月の手札は6枚、よって1200ポイントのダメージを与える!」
「させません、僕も手札から速攻魔法、サイクロンであなたの右端のカードを破壊します!」
真月が敗北を避けるためにデス・ハンドのダメージから逃れるべく、手札を減らしにかかる。
「さらに僕はそのサイクロンを墓地に送り非常食を発動、ライフを1000ポイント回復させます」
遊馬&真月LP2400→3400→2400→1200
手札からの速攻魔法2連発、そして非常食によって墓地に送ったことによりダメージは少なくなったがダメージが無くなった訳では無い。
飛んでくる銃弾が、黒い掌が遊馬達へと迫る。そして真月は遊馬の前に立ちその体で受け止める。
「うっぐぅううう!?」
「真月!?」
壁へとたたきつけられた真月へ遊馬は駆け寄る
「何で俺をかばったんだ!? 俺がお前を守るって」
「僕だって戦えます、そりゃこの状況をひっくり返すようなカードは持ってませんし、ナンバーズだって持ってません、だけど、僕だって決闘者です、守ってやるなんて言わないでください! 一緒に闘おうってそう言って欲しいです!」
珍しく真月が声を荒らげる姿に一瞬だけ虚を突かれた遊馬は、自分が真月を見くびっていたことに気づく。
弱いから守ってやる、そう遊馬は真月に言い続けていたのだ。
真月が怒るのも無理は無い。自分の考えを押し付けていただけだったと遊馬は自分の考えが間違っていると認め、遊馬は手を伸ばす。
ともに戦おうと、
「真月、ごめん! 俺と一緒に闘おう!」
「はい!」
遊馬に助け起こされ真月は笑顔を浮かべる。
「僕は手札のテテュスを除外し天空の宝札を発動させます、デッキから2枚ドローします」
いつもならば真月のデッキ、やりくりターボで中核を果たすテテュスだが、ナンバーズとファイアーハンドがいる状況では何も役には立たない。だからこそ真月は遊馬へとターンを回すためにドローする。
自分で言った通り自分では何もできない、だが今引いたカードに逆転する力は秘められている。
「僕はモンスターをセットしカードを3枚伏せてターンエンドです!」
遊馬&真月場
LP1200 セットモンスター
手札3・0 伏せ3
ギラグ場 No.106巨岩掌ジャイアントハンド ATK2800 (ORU0)
LP4000 ファイアーハンド ATK1600
手札2 伏せ1
エクシーズ・ユニット
「俺のターン、ドロー! アイス・ハンドを召喚、そして俺はファイアーハンドとアイスハンドでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚! 現れろ、鳥銃士カステル!」
「させません、僕はライフを半分支払ってカウンター罠、神の宣告を発動します、カステルの特殊召喚を無効です!」
「くっ、ならば俺はジャイアントハンドでセットモンスターを攻撃!」
遊馬達へと迫る巨岩掌、迎え撃つはローブ姿の男だ。それは真月のデッキではあまり活躍しないカードである。
強力ではあるが出しにくく真月も壁としてしか役に立たなかったカードである。
光の追放者 DEF2000 VS No.106巨岩掌ジャイアントハンド ATK2800
指先より放たれるビームを弾き飛ばし続けるも追放者は追い詰められていく。だが後方より飛んできた槍が巨岩掌に突き刺さり動きを鈍らせる。
「ダメーズステップ、禁じられた聖槍を発動、これで迎撃です!」
光の追放者 DEF2000 VS No.106巨岩掌ジャイアントハンド ATK2800→1200
ギラグLP4000→3200
「ちっ、悪運の強い野郎だ! 俺はカードを2枚伏せてターンエンド」
ギラグ場 No.106巨岩掌ジャイアントハンド ATK2800 (ORU0)
LP3200 伏せ3
手札0 エクシーズ・ユニット
遊馬&真月場 光の追放者 DEF2000
LP600
手札3・0 伏せ1
「俺のターンドロー、俺はガガガシスターを召喚、そしてモンスター効果」
「そうはさせるか、罠発動、ブレイクスルー・スキルだ、ガガガシスターの効果を無効にする!」
ギラグは徹底的に潰しにかかる。
遊馬のデッキで最も厄介なカード、ガガガシスターを放置することは出来ない。
そのモンスター効果を通してしまうと魔法カードにより破壊されるか、さらに強力なナンバーズを呼び出されてしまうからだ。
「まだだ! 俺は魔法カード、死者蘇生を発動。墓地から希望皇ホープを特殊召喚する!」
「ホープの特殊召喚成功に俺は奈落の落とし穴を発動する!」
何がなんでも切り札の特殊召喚を通さない、そうギラグは妨害カードを放つモンスター、
「速攻魔法、禁じられた聖槍を発動、これでホープは奈落の落とし穴の効果を受け付けない! そして希望皇ホープをエクシーズ素材としてカオスエクシーズチェンジ、現れろ、CNo.39希望皇ホープレイ!」
ギラグはこうなるかもしれないという予測はあった。だが九十九遊馬のデータを調べ上げたギラグには対策は出来ている。
遊馬の手札はすでになくZWを装備することは出来ない。そしてホープレイの効果さえ凌げば自分の勝ちである。
ギラグはそう確信し覚悟を決め奥の手を使う。
「お前らはこれで終わりだ、俺はRUM―クイック・カオスを発動! ジャイアントハンドをカオス化させる!」
巨岩掌は鎖によって扉より引きずりだされた塗りつぶしの力に飲まれる。
岩は内包するそのエネルギーを破裂させ溶岩流を生み出し莫大な熱を発生させながら掌の形を作り上げる。
「現れよ、CNo.106! 混沌なる世界を掴む力よ、その拳は大地を砕き、その指先は天空を貫く。溶岩掌ジャイアント・ハンド・レッド!」
そのモンスターが召喚された瞬間、僅かに遊馬のエクストラデッキが光を放った。
取り出してみると前日に裕から受け取ったナンバーズだ。呼応するように光を放つそれを見て、しかし現状では召喚する手立てがないNo.64をエクストラデッキへと戻し遊馬は叫ぶ。
「だけど、攻撃力は2600、この効果を使えば、俺達の勝ちだ! 俺はホープレイの効果発動、オーバーレイユニットを1つ使い相手モンスターの攻撃力を1000ポイント下げ、ホープレイの攻撃力を500ポイントアップさせる、オーバーレイ・チャージ!」
背中の剣より光が放たれる。それは今まで全ての敵を切り伏せてきた光の剣だ。
そしてギラグはその効果を知っていてその対策も出来ていた。
「終わりだと言ったはずだ、ジャイアント・ハンド・レッドのモンスター効果発動、カオスオーバーレイユニットを1つ使い場の表側のカード効果を無効にする! 紅漠無惚!!」
全てを切り開く光の大剣が溶岩掌の放つ波動に塗り潰されていく。
光は徐々に力が失われ収縮していく。
遊馬は必殺の切り札の効果が打ち消されたことに驚きと僅かな絶望の表情を隠せない。
「これでお前らからの希望は失われた、これで俺の勝ちだ!」
「終わり…………なのか?」
「まだです!」
遊馬が諦めそうになった瞬間、真月が叫ぶ。
「真、月?」
「まだです、まだ僕の伏せたカードが残ってます!」
遊馬は場に残った最後の一枚を見て目を見開く。
「これは、RUM―リミテッド・バリアン・ズフォース? バリアンズってなんでお前が?」
「なんだと、バリアンズだと!?」
遊馬の呟きに反応したのはギラグだ。ギラグの声を無視し真月は遊馬だけを見て話し始める。
「絶対に後で説明しますので今は僕を信じてください」
「……分かったお前を信じるぜ、かっとビングだ俺!」
真月が何者なのか、自分がこのカードを使って体に何もないのか、そしてアストラルに何か悪い影響が出るのではないか、そう頭をよぎるも、手札はもう使い切っておりこの状況をどうにかしないと敗北、アストラルが消滅してしまう。
そして何よりも真月の言葉を信じよう、遊馬はそう考え、
「俺はRUM-リミテッド・バリアンズ・フォースを発動! 俺は場のCNo.39希望皇ホープレイを1つ上のカオスと名の付いたモンスターエクシーズに進化させる! カオス・エクシーズチェンジ!」
モニュメントへと回帰していくホープレイ。
そして門を砕き発生するはバリアンの力、全てを塗り潰す力だ。
その力は全てを守り育む希望を外敵全てを征服する希望へと塗り潰されていく。
「出でよ、CNo.39! 混沌を統べる赤き覇王。悠久の戒め解き放ち赫焉となりて、闇を打ち払え!」
剣は赤と黒のコントラストの大剣へと変わる。
それは華やかさの欠片もない無骨で、ただ敵を斬るためだけの剣だ。
真っ黒に全て塗りつぶされたその剣は光を放ち手足を再構成、人の形が構築されていく。ホープレイよりもさらに鋭角の翼、2振りの長剣、肩に39というナンバーを光らせ赤黒の剣士がフィールドに降りる。
「降臨せよ、希望皇ホープレイV!」
ホープレイVの赤黒の姿、それはまるでバリアン七皇の使うカオスナンバーズのようである。
それを見てギラグは呟く。
信じられない、と。
先程放たれた塗り潰しの力は弱くなっているが自分が使っていたバリアンの力そのものだ。
「馬鹿な、人間がそんな力を持っている訳が、だとしたら、お前は……!」
「ホープレイVの効果発動! カオスオーバーレイユニットを1つ使い、場のモンスターを破壊する、いっけえ! ホープレイV! ジャイアント・ハンド・レッドを破壊しろ! Vブレードシュート!」
カオスオーバーレイユニットを吸収したホープレイVは腰の二振りの剣を連結、溶岩掌へと投げつける。
丸鋸の様に猛回転したそれは中心に叩き込まれ、苦悶に身をよじる溶岩掌を真っ二つにし、爆発する。
「さらに破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを与える!」
「ぐああああっ!?」
ギラグLP4000→1400
爆発に巻き込まれたギラグはバリアンズ・スフィア・フィールドへと叩きつけられ苦悶の声を上げる。
ホープレイVが翼へとエネルギーをため始めたのを見て、ギラグは目を閉じ
「すまねえ、みんな、アリト⋯⋯!!
「いっけえ! ホープレイV、ギラグに直接攻撃、ホープ剣・Vの字斬り!!」
爆発より回収した二振りの剣を分解、そして羽にエネルギーを集め急接近、両腕に握る2刀でVの字を叩き込んだ。
ギラグLP1400→0
勝者 遊馬&真月
●
アリトと同じようにギラグの背後に渦が発生しギラグの体は光の粒となり消えていった。
決闘が終わり、バリアンズ・スフィア・フィールドがゆっくりと降下していく。その時間に遊馬は真月へと聞く。
「お前がいてくれてた本当に助かったぜ、真月、ありがと」
「いえ、こちらこそ、僕が無実だって信じてくれてありがとうございます」
「でも真月、あのカードはいったいなんなんだ? まさか、お前は⋯⋯バリアンなのか?」
恐る恐る聞く遊馬に真月は顔を横に逸らし、観念したように目を閉じ、
「…………今まで黙っててすいません、僕はバリアン世界の人間です」
「えっ」
アリトと同じように襲い掛かってくるのではないかと身構える遊馬の姿に真月は慌てたようにわたわたと手を振り、
「いえ、遊馬君と敵対する気はありません、僕はとある組織の下っ端でただ任務でここにきています」
「任務?」
「僕はバリアンズガーディアン、こちらの世界で言う警察でしょうか。七皇のベクターが最近妙な動きをしているという話が入ったので調査しにきました」
「ベクターが!?」
「ええ、遊馬君に手を出してきた際に取り押さえようとしたんですが奴は直接手を出してこなかった。今回のギラグの攻撃もベクターが裏から糸を引いているに違いないっていうのが僕達の推論です」
「でもどうしてずっと黙ってたんだよ」
「それは、君達がアストラルとずっと一緒に居るからです。その、非常に言いにくいんですけど」
顎に手を当て辺りを見回し、真月は耳打ちする。
「僕って決闘も弱い上にバリアン人としての力も弱いんですよ、それなのにあのアストラル世界最強と呼ばれるアストラルに見つかったら一瞬で消されちゃいます、なんたってバリアン世界の神、ドン・サウザンドと互角に戦い倒した人ですよ。任務でアストラルを見張れって言われてますけど薄月給のために殺されたくないですよ」
消されると言う言葉に遊馬は一瞬で怒りが湧き上がり、真月へと詰め寄る。
「アストラルは、アストラルはそんな事しねえ!」
「今はそうかもしれません、ですがバリアンサイドはアストラルがナンバーズを集めている理由はバリアン世界を破壊する目的があるのではないかと考えています」
「そんな!?」
WDC補填大会前に病室で聞いた話、それと全く一緒の話に遊馬は目を見開き、皇の鍵を手に取る。
「スパイではないか、そう疑われてしまい、アストラルが本気の力を振るわれてしまえば僕なんて瞬間的に消し飛びますよ。彼はそれほどの力を持ってます」
真月の話を聞き黙り込んでしまった遊馬、そして困ったように頭を掻きながら真月は話を続ける。
「アリト、様が重傷を負ったのをはベクターによって行われたのではないかと僕達、バリアンズガーディアンは睨んでます。確かに遊馬君の攻撃は強力だった、アストラル世界のZWに、ナンバーズの一撃で彼が大きなダメージを受けたのも事実です」
徐々に近づいてくる地面を見ながら真月は話を続ける。
「だけどあの人は自力でバリアン世界に帰ることができたはずでした、そしてベクターが何らかの手段で襲いかかり七皇の力を奪い去ったのではないか、その証拠を集めて来いって新しい任務を受けました。七皇同志が殺し合いを始めてしまうかもしれない、僕達が恐れていたことが起きてしまった。こうなっては一刻も早くベクターを倒しドルベ様の元へ送らなければいけません、遊馬君、君もベクターを捕まえる手伝いをしてくれないでしょうか?」
遊馬は言葉に悩む。
因縁は確かに存在する。たくさんの人を巻き込んだ影の支配者であり真月の話が正しければアリトを襲ったのもベクターだ。
だがアストラルがどのような行動に出るか分からない。だけど遊馬は真月の言葉を信じる事にする。
「……ああ、俺も協力させてもらう」
「ありがとう、でも奴は狡賢く狡猾だ。今度はどんな手段でくるかわからない、十分に注意してください」
地面に脚が着きバリアンズ・スフィア・フィールドは消滅していく。
「あ、そうそう、遊馬君に最後の質問なんですが、僕が見ている限りそんなそぶりは見えませんし本当に記憶喪失だと思うんですけど⋯⋯」
「?」
言われた意味が分からず遊馬は首を傾げ、
「いえ、上から言われたんですよ、九十九遊馬はアストラルに騙されてナンバーズを集めさせられているだけの被害者だって」
「なっ!?」
掴みかかった遊馬、首を絞められて苦しそうにしながらも真月は話を続ける。
「いや、上の人たちがそう疑ってるって話ですよ、記憶喪失って自分以外に誰も分からないですし騙すには楽な手口だって、相手が善人であればあるほど有効だって言ってます。そして最終的には遊馬君の手によって全てナンバーズが集まったらバリアン世界を消滅させる目的なのだろうって上は疑ってます」
「そんなわけ…………ない」
遊馬は言い切りたかった。
だがアストラルの本当の使命という物がはっきりとしない現状では言い切ることは出来ない。
「まあとりあえず、ベクターを捕まえるまで協力関係ってことで、もしもばれたら口裏を合わせてください。あ、出来るだけアストラルには僕の正体がばれないようにお願いします」