クェーサー厨が行かされる難易度ちょっとハードモード 作:TFRS
補填大会が終わり、遊馬は学校で一躍有名人となった、と裕は遊馬や小鳥から聞いた。
その話によると遊馬は実力が本物だと認められファンクラブや新しい友達が出来たそうだ。
WDC補填大会が無事に終わり、響子やプロ組は明確にナンバーズを狙う理由のあった最上を置き、他の皆は元々ナンバーズには興味はなく元の生活へと戻った。
裕は学校が終わりいつもの公園へと走りながら思い出すのは打ち上げ決闘で乱入してきたアリトと名乗る少年だ。
突然乱入して遊馬は激しい決闘を繰り広げ、そして決闘後に握手をした二人は友情で結ばれたようだった。
何回か皆で遊びに行った際に裕もアリトと決闘したがかなり強かった事が印象的である。
一方、かなり頑張って最上を倒した裕は一躍有名人となった、訳では無い。
学校に行っても嫉妬の目で見られたり、小さな嫌がらせは続いている。
それでも知り合いや仲良くなり始めたクラスメイト、菅本や式原、エヴァにはプロとの決闘での勝利を祝福されたりした程度だ。
最上とはほとんど話さないが、稀に遊馬達の話を聞きたいと言ってきているので喋る、その程度だ。
そんな楽しい日々を繰り返す日常の中、裕は走る。季節は初夏であるが猛暑の日々が続いて、走るだけで汗が吹き出し喉が渇く。
裕は元の世界に変える方法が無いかと探すも、一般人である裕にそれを探し出せるような技能は無い。
最上に聞いたり、探してはいるが手がかりが無い状況だ。
そして今、裕は遊馬の住む隣町へと足を伸ばしている。
たまには羽を伸ばそうと遊馬にプールに誘われていたのだ。
「じゃ行くぞ! 決闘だ!」
待ち合わせの場所へと歩く中で裕は決闘盤を構え、決闘をする子供たちを見かける。
そこには笑顔があり、それにつられて裕も笑顔になる。
楽しく笑っていられる決闘は良いものだ、裕の抱く考えを表現する語彙力が少なくそう表現するしかできないが、とりあえずそういう日々は良いものだと思う。
だがそんな日も長くは続かない。
遊馬の話によるとバリアンが攻めてきているようであり、カードと怪しげな力を使って何人かの人間を洗脳し遊馬へと決闘を挑んで来ているらしい。
遊馬達は何度も襲われているという事だが、裕に攻撃が来たことは1度も無く、手出しされないところを見ると頭数に入っていないのだろうということは裕でも軽く考えれば分かる。
―――そもそもナンバーズ持ってないしな、まあ決闘で命賭けるなんて事をしたくないしするわけが無いんだが。
走りながら考え、木陰に座り込み誰かを待つように立ったままの状態で遊馬を見つけ走り寄る。
「おっす遊馬! んで今日はこれからプールだっけ?」
「おう、それと真月と妹シャを裕にも紹介しようと思って」
「いもしゃ?」
名前には到底思えない言葉が遊馬の口から飛び出し、裕は首を捻る。
元々が遊馬の語彙センスは微妙にずれていることが在るが、あだ名なのか、それとも抽象的な言葉なのか? と裕が悩んでいると遊馬の隣にいた小鳥が助け舟を出す。
「シャークの妹、神代璃緒さんよ、決闘の腕も強くて綺麗でかっこいいの!」
「へえ、それで真月ってのはどんな奴だ? やっぱり決闘強め?」
「決闘の腕は微妙だけど、すっげー良い奴だぜ!」
遊馬のいい奴だぜという言葉は微妙にあてにならないことを裕は知っている。自分で判断するか、と思い周りを見渡せば褐色肌の少年が人生を全力で楽しんでいるような笑顔でこちらを見つけると手をぶんぶんと大きく振り、走り寄ってくるのが見える。
「すまねえ、遊馬、遅くなった!」
「いやいいぜ、俺らもさっき着いたばっかだ」
汗をだらだらと書きながらもとても良い笑顔ではきはきと喋るアリト、そして反対側からコンビニの袋を手に下げたオレンジ髪の少年が走ってくる。
「すいません、遊馬君、良かれと思ってアイスを買って来たら遅くなっちゃいました!」
「大丈夫だって、真月、アイスありがとよ!」
遊馬と仲良く会話をするオレンジ髪の少年、遊馬達と同じ制服を着ていてかなり親しげな様子からこれが話に出てきた真月なのだろう。
裕は真月を見る。
普通そうで純朴な少年だ。
体いっぱいに良い奴っぽい空気をまとった少年はこちらを見ると微妙に足を止め、向かってきた。
「君が、水田裕君?」
警戒するように恐る恐る聞くようにこちらをみる真月の様子に人見知りかな? と考えつつ裕はとりあえず挨拶をする。
「はじめまして、水田裕です、遊馬とはまあ友達だ、よろしく頼むな」
「……真月零です、よろしく」
裕が伸ばした手をおずおずとした様子で真月が握り握手をする。
「あとは妹シャとシャークだけか」
「だからその呼び方を止めなさいって何度言わせればいいんですか」
凛と響く厳しめの声色が遊馬を叱咤する。
声の方へと裕が振り返ると陵牙とは似ても似つかない美少女がいた。
気高く氷の様に輝冷たく鋭い雰囲気を纏う少女、璃緒と凌牙を見比べても気の強そうな目元ぐらいしか似ていない気がするが本当に兄妹なのかと疑問に思うほどだ。
裕達、初顔合わせ組の軽い自己紹介の後、遊馬は拳を天へと突き上げ、元気いっぱいに声を張り上げる。
「よし、全員揃ったしプール行くぜっ!」
「え、カイトは、というか他の皆は?」
「鉄男君達は季節外れの夏風邪をひいちゃって今日は学校休んだの⋯⋯」
「カイトは、なんだっけ⋯⋯ほら打ち上げ会でいきなりゴーシュから連絡が入ってなんか飛び出していったろ、あのあと連絡がつかなくって」
ゴーシュという名を裕はあまり知らない。
WDCで遊馬と戦った人だっけ? と記憶を洗い直していると、遊馬が元気良くジャンプし、
「じゃあプールに行こうぜ!」
●
カイトは打ち上げ決闘の途中、ゴーシュから興味深い話を聞いた、
記憶をなくした友人のプロ決闘者、そして湖の底より現れたコロッセウム遺跡、そして観客席には苦しみもがき、掻き毟ったような爪痕が無数に残っていおり、湖の中にあった際に調査したときは無かった闘技場の中央に出現した巨大な手の石像。
警察や学者が調べれば調べるほど異常とも言うべき状況。それらの話を聴きカイトは直接現地に出向き調査を始めた。
普通ならば調査に出向くまでもない事なのだが、堺の言っていた遺跡にあるナンバーズの話を聞き、突然出現した遺跡、一晩だけ失踪し遺跡に倒れていたというプロ決闘者の話を聞きバリアンが関わっているのではないかとカイトは考えたのだ。
だが、
「やはり収穫は無しか」
カイトは現地に出向き遺跡について町で調べるも何故その場所にあったのか、何か残っていないかを調べ、歴史を調べるも何も問題はなく収穫は無い。
一緒に着いてきたオービタルに遺跡の歴史と九十九一馬の手記に何か残されていないかを同時に調べさせている。
「他を当たるか」
ゴーシュが町で行なわれる大会でプロ決闘者相手に勝ち残っている映像を見て、頬を緩めながらカイトは遺跡へと歩く。
森の中を進みながらカイトは今日で手に入れた情報を整理する。
オービタルが見つけ出したのはフェイカーより渡された資料の中から見つけた九十九一馬の手記だ。
その中に記されているのは無数の伝承と点で記された23の遺跡、その中の1つにこの場所が記されている。
九十九一馬が手記にあったのはこの遺跡の伝承、皇子とその親友の拳闘士の話だ。
その拳闘士は低い身分の出から拳一つでコロッセオの覇者へと上り詰め、皇子と拳を幾度となく交わらせ親友となったという。
老若男女全ての人々から慕われていたというその男のその成り上がり人生、そのような話が聞けるのだろうと、カイトは飛行機の中で考えていたのだが、
「俺が町で調べた事実とあの手記の話が食い違っている……?」
オービタルが見つけたその手記に記されていた事とこの国のあのコロッセウム遺跡と同じような年代の手記をあたってもそのような人物は出てこないのだ。
否、似てる人物はいるのだがその人物は卑怯者としての誹りを受け、国の人々、老若男女全てから憎まれ罵声を浴びせられ処刑されたと残っている。
その2つを繋ぐ仮説をカイトは頭の中で立て、そして相棒のオービタル7へと聞く。
「オービタル、お前が調べてくれた結果とこの町にある伝承、この2つのどっちが本当なんだろうか?」
「……
オービタルは足である車輪を回しながらカイトを追いかけ、話を続ける。
「そしてこの町にある伝承は多くの人が知っている有名な話です、客観的に見れば、カイト様の調べたこの町の伝承が正しいと判断できます」
「そうだな、だが仮に九十九一馬の手記が正しいと言う可能性も捨てきれない」
「えっ!? カイト様それはいったいどういう意味ですか?」
「確証はない、ふとそう思っただけだ」
カイトは遺跡に着き調べるも警察の現場検証は終わり遺跡には何も残されていなかった、
すでに周囲は暗くなっており気味の悪い空気が流れている。
「カイト様、ホテルに帰りましょう。ハルト様もきっと帰りを待ってることだとオイラは思います。折角の家族仲直りの旅行なんですからたまにはしっかりと兄として行動された方がハルト様も楽しめると思います、きっと怒ってますぞ、出てくるときのカイト様だってハルト様の膨れっ面をご覧になったはずです」
カイトはそれはオービタルから言われる前もなく分かっていた。
この場所に来るのだって最初はカイトの父であるフェイカーに無理を言って一人でここまで来ようとしたのだがWDC以降、親バカであることが大々的に露見しついに隠さなくなったフェイカーが必死で抱き止めカイトを引き止め、そこへハルトが何処からとも無く現れてカイトの服の袖をつかまれ、オービタルを勘定に入れた家族4人での世界旅行へとなったのだ。
今日だけは無理言って一人で行動していたが明日からはハルトとフェイカーと一緒に行動しようと考えていた。
「そうだったな、ハルトのご機嫌を取るためにホットチョコレートとキャラメルでも買って帰るか」
コロッセウムの外壁、夕日で赤く染まっていたそれが徐々に黒に塗り潰されていくその姿をカイトは眺め、
―――もしも、その拳闘士が最初は英雄だったが何者かの策略で無実の罪を着せられ死罪になったとすればある程度、筋道は通る。だが国民一人一人が彼を罵倒したというのはどう考えても異常だ。
カイトが想像する英雄とは人の心に色濃く残るものだ。
人は心に残る印象深い出来事や思い出を美化する物であり、自分の持つ英雄像を汚され必要以上に彼を攻撃した可能性は否めない、だが誰一人彼を擁護しようと思わなかったとも思えない。
歴史に残されていた国は圧政も強いていなければ王も暴君ではなかった、九十九一馬の手記を信頼するならばその拳闘士は国中の人々から愛されていた。
ならば誰かが何かがおかしい、と疑問の声を上げる事も出来る筈だ。
疑問の声が上がったことを歴史に書かれなかっただけなのか、それとも本当に誰一人彼を擁護しなかったという懸念が2つが上げられる。
そして後者ならばそこには誰の何の意図があり、そしてどうやってそれを行ったのかが非常に大きな問題となる。
バリアン世界にはカードを通して洗脳するという力がある。
フェイカーが操られていたように、遊馬が学校でバリアンに襲われているらしいが、大勢で遊馬を倒しにいかない所を見ると大勢の人間を洗脳することは出来ないのかもしれない。そうするとまたしても大きな問題が浮かび上がる。
今回の遺跡の場合、その力を誰かが使ったとして民と王とその臣下全てを洗脳した可能性がある。
だが一時的な洗脳ではなく一生効果が残るほどの洗脳をバリアン七皇が行えるのか、そして出来ないとすれば七皇よりも力を持った何かが裏にいるのではないか。
そう予測するもそれが真実なのか分かる筈もない、だがカイトはいくつもの予測を立てながら、歩き出した。
●
プールに来ていたアリトは即座に走り出しプールに飛び込んだ。
裕も負けじと即座に飛び込み、遊馬は慎重も柔軟体操を行いアリトを追い飛び込んだりと大賑わいだった。
途中、裕はアリトと競泳したり、遊馬が真月と一緒に凄い高さから落ちてきたり、女子2人が微笑ましい水遊びをしたりしていた。
陵牙はというと1人でプールを泳ぎ続けていた。
鮫の様に早い陵牙を見てアリトと裕が負けじと泳ぎ、遊馬達が応援したりした。
昼飯を皆でとり、プールを満喫した後はもちろん本当の自己紹介も兼ての決闘の時間だ。
一通りフリー決闘を行い、皆が実力を確認したところで、遊馬が、
「みんなでトーナメント決闘をやろうぜ!」
と言い出したのでくじ引きをし、トーナメントを行う事になった。
陵牙は一人で泳いでくると言ったが妹の璃緒に掴まれ、強制参加を余儀なくされたが決闘になればやる気を全力で出し、今はアリトと決闘している。
裕はくじ引きで相手がいなく不戦勝でコマを進め、真月を倒した小鳥と決闘した。
小鳥は決闘者として何かを持っているらしく、拾い集めたカードで作ったデッキ、TG六武代行天使という強烈なデッキを作り上げた。
そのデッキはエクシーズとシンクロ、そして大型モンスターをフルに活用し、裕は小鳥の操るシエンとトリシューラの直接攻撃を叩き込まれて敗北してしまった。
決勝戦はアリトを倒した遊馬対小鳥だ。そして3位を決める戦いはは裕とアリトだ。
裕はアリトとは何回か決闘しているがアリトに負け越しており、今日は何とか勝ちたいと思っている。
「へへっ裕、悪いが今回も勝たしてもらうぜ!」
「いや何言ってんだよ、今回勝つのは俺だ!」
「俺だって言ってんだろ!」
「じゃあ白黒はっきりつけるか!」
「望むところだ!!」
裕とアリトは徐々にヒートアップし決勝が始まる前に勝手に始める。
「「決闘!!」」
●
「俺の先攻だ、俺のターンドロー!」
裕は笑顔でデッキから一枚ドローする。
「俺はドッペルウォリアーをコストにクイック・シンクロンを特殊召喚しチューニング・サポーターを召喚! レベル1のチューニング・サポーターにレベル5のクイック・シンクロンをチューニング、レベル6、ドリル・ウォリアー!」
空から落ちてくのは全身茶色の手足がドリルになった戦士だ。
「チューニング・サポーターの効果でデッキから1枚ドロー、ドリルの効果発動、手札を1枚捨てて次の俺のスタンバイフェイズまでこのカードを除外する!」
足元に穴を掘り上げ別の空間へと退避する、そして墓地に送られたタンポポ獅子が綿毛を飛ばす。
「そして墓地に送られたダンディライオンの効果で綿毛トークンを2体特殊召喚し、カードを2枚伏せてターンエンドだ!」
裕場 綿毛トークンDEF0
LP4000 綿毛トークンDEF0
手札1 伏せ2
アリト場
LP4000
手札5
裕のドリル・ウォリアーとダンディライオンのコンボは毎ターン、壁トークンを並べ続け、その間にドリル・ウォリアーによる直接攻撃を重ね相手のライフを削る戦法だ。
その戦法の厄介さを知っているアリトは殴り砕こうとデッキよりカードを抜く。
「ドロー! 行くぜ! 俺は
デッキトップをめくり、それを確認したアリトは目を輝かせながら裕へと見せ付けてくる。
「へへっ、裕、見ろよ! こいつらもお前を倒せって言ってくれてるようだぜ! 俺は墓地に送ったばかりのBKグラスジョーを守備表示で特殊召喚するぜ!」
「うわぁ! グラスジョーが落ちたのかよ!?」
BKグラスジョー、そしてこれから繰り出されるエクシーズモンスターの厄介さを裕も理解し、頭を抱える。
「さらに俺は永続魔法、カイザーコロシアムを発動。へへっ、これで裕のお得意の連続シンクロは使えねえぜ!」
「それを通したら負けちまうんだよ! サイクロンでカイザーコロシアムを破壊する!」
「ちっ握ってたか、まあいい、バトルだ。ヘッドギアで綿毛トークンを攻撃」
綿毛トークンへと接近し、拳の一撃が綿毛を貫通する。
「俺はメイン2、2体のBKグラスジョーとヘッドギアでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚! 魂に秘めた炎を、拳に宿せ! BK拘束番兵リードブロー!」
首、両腕を巨大な巨大な枷で拘束された男が姿を見せる、男を見張る様に周囲をオーバーレイユニットが飛翔する。
「出やがったな、アリトのエースが!」
何度も決闘するうちにお互いの手の内は分かってくる物だ。
アリトのデッキはオーバーレイユニットを使う事で効果、戦闘破壊を免れ、オーバーレイユニットが無くなる事で攻撃力が上がっていくリードブロー、そしてそれを守るカウンター罠、展開を封じるカイザーコロシアムによる戦闘主軸のデッキだ。
除去しても除去しても攻撃力の上がるリードブローに裕は何度辛酸を舐めさせられた事を裕は忘れられない。
「さらに俺はカードを3枚伏せ、俺はこれでターンエンドだ。さあ、撃って来いよ裕!」
アリト場 BK拘束番兵リードブロー ATK2200 (ORU2)
LP4000
手札0 伏せ3
裕場 綿毛トークン DEF0
LP4000
手札1
墓地5 伏せ1
「あぶねえ、サイクロン引けてなかったら軽く詰んでたよ⋯⋯俺のターン、ドロー! スタンバイフェイズにドリル・ウォリアーは俺の場に特殊召喚され、墓地からモンスターを加える、俺はダンディライオンを加えぜ!」
地中より飛び上がったドリル・ウォリアーの勢いにより大量の土砂と一緒に墓地のタンポポが引き抜かれる。
カードとなったそれを手にし裕は宣言する。
「俺はドリル・ウォリアーの効果発動、攻撃力を半分にし直接攻撃ができる! バトルだ、ドリル・ウォリアーで直接攻撃! ドリルシュート!」
「へっ、そんな攻撃じゃ、俺のハートには響かねえぜ!」
ドリルウォリアーの右手のドリルが発射されアリトを直撃する。
アリトは僅かに体をよろめかせただけであり、挑発的に犬歯をむき出しにし笑い、しまいには右手でもっと撃って来いとジェスチャーをしてくる。
だが裕はそれに乗らずにダメージを重ねる戦法をとる。
「お前の殴り合いに付き合ってたら負けちまうんだよ! メイン2、ドリルの効果でダンディライオンを捨ててドリルを除外、そして綿毛トークンを2体再び特殊召喚、ターンエンドだ!」
裕場 綿毛トークン DEF0
LP4000 綿毛トークン DEF0
手札2 綿毛トークン DEF0
伏せ1
アリト場 BK拘束番兵リードブロー ATK2200 (ORU2)
LP2800
手札0 伏せ3
「へへっ、俺の策略の前にビビっちまったか、だったら動かしてやるぜ! 俺のターンドロー、俺はBKシャドーのモンスター効果、リードブローのオーバーレイユニットを1つ取り除きこのカードを特殊召喚するぜ。そしてリードブローの効果、そしてシャドーの特殊召喚時、罠発動、激流葬だ!」
「させるか、スターライト・ロードだ!」
「甘いぜ! 俺の得意のカウンター戦法を受けやがれ! カウンター罠、神の宣告を発動、裕の罠カードをを無効にする!」
アリトLP2800→1400
「くっ!?」
発生した激流が綿毛トークン達、そしてBKシャドーを洗い流す。
だが全てを押し流す激流の中でリードブローは立ったまま微動だにしない。
「激流葬の効果で場のモンスターは全て破壊する。この瞬間、BKリードブローの効果発動、オーバーレイユニットを1つ取り除き、BKモンスター1体の破壊を免れ、攻撃力がさらにアップする!」
2つのオーバーレイユニットが時間を置き取り除かれた事によりリードブローを拘束していた拘束具が砕け落ちる。
その結果、リードブローの攻撃力は3800まで上昇した。
「さらにカード効果で墓地に送られたBKグラスジョーのモンスター効果! 墓地よりBKスイッチヒッターを手札に加え、俺は、BKスイッチヒッターを召喚! さらにスイッチヒッターのモンスター効果で再び墓地よりグラスジョーを特殊召喚する! バトルだ、スイッチヒッターで直接攻撃!」
「ぐぅふうう!?」
赤いグローブによるアッパーが腹を直撃、裕はぶっ飛ばされるも即座に起き上がり、最上戦でも窮地を救ってくれたカードの効果を発動させる。
裕LP4000→2500
「まだだ! ダメージステップ終了時、冥府の使者ゴーズの効果発動、手札から特殊召喚し、先ほど受けたダメージの攻撃力を持つカイエントークンを特殊召喚する!」
「へえ、だが無駄だ、グラスジョーでカイエントークンを、そしてリードブローでゴーズを攻撃、ライトニング・ファースト!!」
2体のモンスターの放つ拳が裕の場に居るモンスターを粉砕する。
あっという間に裕の場は空になり、そして再びアリトの前に渦が発生する。
「更に俺はスイッチヒッターとグラスジョーでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚、再び現れろ、BK拘束番兵リードブロー!」
枷を付けた戦士が拘束を解かれた戦士の横に並ぶ。
これによって攻撃力3800のリードブローはカード効果、戦闘では2枚まで破壊されない強固な耐性を得る。
さらに言えば、オーバーレイユニットにはグラスジョーがあり、無理に破壊しようものならば次のターン、リードブローが追加されるという悪夢の様な状況になる。
「俺はこれでターンエンドだぜ!」
アリト場 BK拘束番兵リードブロー ATK2200 (ORU2)
LP1400 BK拘束番兵リードブロー ATK3800 (ORU0)
手札0 伏せ1
裕場
LP2500
手札1
「ドロー、そしてスタンバイフェイズ、ドリルの効果でドリルを特殊召喚し墓地よりダンディライオンを加える!」
「へっ、また壁を並べる気か?」
「いいや、そろそろ殴らせてもらうぜ! 俺は手札からジャンク・シンクロンを召喚、効果で墓地よりドッペル・ウォリアーを特殊召喚する」
ドッペル・ウォリアーの名にアリトは好戦的な笑みを浮かべる。
「来るか、シンクロ召喚!」
「レベル2のドッペル・ウォリアーにレベル3のジャンク・シンクロンをチューニング、レベル5、現れろ、ジャンク・ウォリアー!!」
青紫の戦士は仲間の力を拳へと一点集束、背中のブースターを思いっきり噴かせる。
「ジャンク・ウォリアーの効果発動、そしてシンクロ素材となったドッペル・ウォリアーの効果発動! ドッペル・トークンを2体、特殊召喚しドッペル・トークン2体分の攻撃力をジャンク・ウォリアーに加える、パワー・オブ・フェローズ!!」
攻撃力の合計は800、よってジャンク・ウォリアーの攻撃力は3100まで上昇する。
だがそんな攻撃力では俺は倒せない、そうアリトは考え、
「そしてドリルの効果で自身の攻撃力を半分にし直接攻撃ができる。行くぜ、ドリル・ウォリアーで直接攻撃、ドリルシュート!」
「くっ」
アリトLP1400→200
「そしてジャンク・ウォリアーでオーバーレイユニットを持ったリードブローを攻撃、スクラップ・フィスト!!」
仲間の力を込めた拳を叩き込むべく戦士はブースターを吹かせて宙を駆ける。だがにやりとアリトも笑う、彼の独壇場に上がってきたことを喜び、そしてカウンターを浴びせる。
ジャンク・ウォリアー ATK3100 VS BK拘束番兵リードブロー ATK2200
「へっ、甘いぜ、ダメージステップ、俺はジャンク・ウォリアーに禁じられた聖槍を発動、これでジャンク・ウォリアーの攻撃力は下がる!」
ジャンク・ウォリアー ATK3100→2300 VS BK拘束番兵リードブロー ATK2200
体の中央へと槍を叩き込まれバランスを崩した青紫色の戦士、だが勢いは止まらない。だがこのままではアリトのライフを削り切れない、そしてこの状況を放置すれば次のターン攻撃表示のドッペルトークンに攻撃されると敗北する、だが裕は笑みを崩さない。
「そこまでは予測済みだ! 俺のピンチを幾度となく救ってくれたこのカードを食らえ! 俺も手札から速攻魔法、禁じられた聖槍をリードブローに発動、これで決まりだ! 穿て!」
ジャンク・ウォリヤー ATK2300 VS BK拘束番兵リードブロー ATK2200→1400
「……くっ、今回は負けか」
「ああ、貰った! 必殺のスクラップフィスト!!」
拳を叩き込もうとする拘束戦士に合わせる様に青紫の戦士の腕も伸ばされる。クロスカウンターがお互いに直撃する。
そして崩れ落ちたのは拘束戦士だ。仲間の力を結集させた拳が僅かに長く深くリードブローの頬を捕らえていたからだ。
アリトLP200→0
勝者 裕
●
「いえーい! 勝ったぜ! へ、へ、へっくしょん!」
浮かれていた裕がくしゃみをする。
微妙に寒気があるが大丈夫だろうと裕は判断し、座っていたアリトへと歩く。
真夏に長袖のコートをいつでも着込むカイトへと裕はその服装暑くないかと聞いたことがある。
返って来たのは、決闘者ならば体の体温調節機能をもコントロールできるという凄まじい物だった。
自分も決闘者の端くれ、ならば免疫機能を活性化させれば風邪の病原菌など焼き払うことが出来るだろう、そのためにももっと熱い決闘をしなければいけない、そう考える裕は攻撃の余波で倒れたアリトに駆け寄る。
手を伸ばしアリトを引っ張り起こすとアリトは鼻の下をこすり笑いかける。
「まったく俺のカウンターを恐れないのはお前と遊馬だけだぜ!」
「ははは、それって俺が遊馬と同じ考えなしの馬鹿ってか、ん?」
笑いながらも遊馬の方を見る。
どうやら遊馬達の決闘も終わったらしい、どうやら遊馬が膝をついているところを見るとあっちもあっちでやられたのだろう。
「ヒュペ怖い、クリスティア怖い、ヒュペ怖い、クリスティア怖い」
永遠と呟いているところを見るとその胸の内が居たいほど理解でき裕はあいまいな笑みを浮かべる。
「裕、もう一回決闘だ!」
「おう、今度も勝ってやるぜ!」
楽しげにもう1度立ち上がる裕は決闘盤を再び構える、そして裕は気づかない。
裕の様子をじっと観察する様に見つめる真月の視線に。
その日は何事もなく夜になり夏の定番だろ! という遊馬の意見から遊馬達の学校で肝試しを行った。
仕込みがあるわけでもないが夜の学校というだけで雰囲気が抜群であり、遊馬が物陰から突然出て来て驚かしたときはペアであった真月を置いて、裕は全力で逃げ回り悲鳴を上げた。
その後はよくある学校に伝わる七不思議を話し合ったりした。
踊り場にある鏡に映る自分が勝手に動く、誰もいない教室から声が聞こえる、なんか人が住んでる気配のする体育倉庫で自分以外誰も居ないのに足を引っ張られた、等何処にでもあるような話をし、互いに怯えさせたりしながら笑い合った。
戦いの雰囲気も、気配も微塵も感じさせない日常が過ぎていく。