クェーサー厨が行かされる難易度ちょっとハードモード   作:TFRS

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決意を新たに 下

「予定されているのは5人対5人、抽選によって選ばれた一般決闘者2人を含めたWDCチームとプロ決闘者チームによる相手チームを全滅させるまで戦う、総当たり戦です。使用するルールはプロ団体戦ルール2を使用します。そして一般決闘者枠は抽選とプロの推薦によって選ばれた2名が戦いの舞台に上がることを許されます」

 

「これが、招待状か」

 

裕の突然の行動に部屋の注目が集まる中、遊馬は裕が呟いた意味を聞く

 

「どうしたんだよ裕? 招待状って」

 

「今日、最上に決闘で負けてクェーサーを奪われた。それで堺って人が出てきて言ったんだ。招待状を送るって、これに出ろってことか」

 

 拳を握り裕は遊馬たちを見る、放送にあまり驚いてないところを見るとすでに話が通してあるのだろう、ともすればやることは一つ、

 

「無理と承知でお願いします! 俺を推薦してください!!」

 

 裕はその場で土下座した。

 

「ちょ、え!? 裕、おい、そんな事しなくても」

 

「そこをなんとか、あのバカを倒さないとクェーサーが返ってこないんです、何でもしますからお願いします!!」

 

 清々しいほどの土下座、それを見てカイトたちは呆れる様にため息を吐き、

 

「抽選先も何も聞かず即座に土下座か、遊馬、友達は選んだほうがいい。こういう目的のためなら何でも捨てられる奴に碌な奴はいねえ、いつか裏切る事を覚悟したほうがいいぞ」

 

「凌牙の言う通りだ、そもそも、抽選のあと俺達ではなくプロ決闘者が指名する話になっているのを忘れたか」

 

 ショックを受けたように口を開ける裕から目を逸らしカイト達は響子に向き直る。

 響子の目はまっすぐにスーツの男へ注がれており、ナンバーズをかざした手を下している。その様子を見て、凌牙は息を吐き、

 

「話が逸れてしまったからもう一度聞く、お前は何者だ?」

 

 視線を向けられ、幾分か思案したのち、観念したようにため息を吐き口を開く。

 

「……私はバリアン世界から来たこの少女の体に寄生している者だ、名をリペント、力を持たずただ観察して後悔するだけの過去の亡霊だ」

 

 無表情から僅かに少女の浮かべるような表情とは程遠い、泣くような、だが涙は流さずに、ただ終わった過去を後悔しているような、そのような表情で名乗った。

 

                     ●

 

「リペント、それがお前の名か、おまえはバリアンの仲間か?」

 

―――さてどこまで話すべきか。

 

 リペントと響子は別々の意思を持つ。

 考えを共有しているわけではなく必要な時に意思を言葉で示すだけで普段はひっそりと黙って観察している。

 そしてリペントは、アストラル世界とバリアン世界の対立も、一番最初にナンバーズがばらまかれた事も、バリアン世界の作られた当初も、そして人間世界が出来た理由をも知っている。

 問われれば教えるつもりもある、しかし教えたところで信じるわけがない。

 見ず知らずの得体の知れない者から教えられた知識を鵜呑みにするような底抜けの馬鹿はいないだろうと判断していた。

 真実を教えるべきか、そう考え、

 

「違う、私は本人の同意込みで少女に寄生させてもらい、ナンバーズからの力を少しずつ貰い生きているだけの存在だ」

 

 問われる事だけに応え、嘘を語らないでおく事にした。

 

「お前の目的はなんだ、生きるためにナンバーズを狙うのか?」

 

「確かに生きるためにナンバーズは必要だ、だがまだナンバーズを持っているから今は襲う必要はない、君達を襲い裏から全てを操ったのは多分、バリアン七皇の誰かの仕業だろう」

 

 そして興味を自分ではなく、九十九遊馬達の知りたい情報だけを与える事にする。

 このような時に表情が無くなってしまうことが利点になるとは、と軽く驚きつつリペントは質問を待つ。

 

「バリアン七皇だと、なんだそれは?」

 

「バリアン世界の中で特に力を持った七人の総称だ、彼らはナンバーズの持つ力を用いてアストラル世界を消滅させるつもりなのだろう」

 

「ふん、お前の話を信じるとしたら敵の目的は分かったということになるが、貴様がここで嘘を吐いている可能性もある、証拠が欲しい、敵ではないという証拠が」

 

 その質問をリペントは予測していた。しかし証明する物を持ち合わせていない。

 

「この3枚のナンバーズを渡すといっても…………ダメだろうな、突然言われた所で信じるほうが愚かな所業だろう、体も何もかもバリアン世界に捨てて来てしまって私は意識だけの存在だ。証拠になりそうなものを提示することもできない、だから信じてくれとしか言うしかない」

 

 リペントはため息を吐き、手を上に伸ばし抵抗しないという意思表示をし、無表情で遊馬をじっと眺める。

 会話から取り残されている裕を置き、3人は一度頭を突き合わせ相談に入った。

 

「どうする遊馬こいつのいう事を信じるべきか」

 

「分かんねえ、でもどうしてバリアンはアストラル世界を消滅させようとしているんだ?」

 

 遊馬も必死で考え、漏らした疑問の言葉、それをリペントは聞き逃さず答える。

 

「それはバリアン世界のためだ。バリアン世界は今、アストラル世界と融合しようとしている。融合すれば力の弱い世界が消滅を起こす。己の住んで居た世界の消滅、それを回避するためにナンバーズの力が必要なのだ」

 

 それを聞き、遊馬はリペントを見る。

 決闘で皆が友達になれる、そう信じている遊馬は大きく手を振り、自分の中にある考えを言い放つ。

 

「話し合いとかで解決できないのか!?」

 

 その言葉にリペントは目を閉じる、思い出されるのは自身が追放された理由、そして自分が行ってしまった所業だ。

 それら全てを金下、そして優しい考えを持つ遊馬を突き放す。

 

「無理だ」

 

 決闘を通して分かりあうことはできる、そう考える遊馬の問いをリペントは否定する。

 

「できないから、このような状況になっているのではないか。因縁が深すぎてどちらかが滅びるまで続くだろう、こちらを悪いものだと決めつけ、殺そうと攻撃を仕掛けてくる者に話し合いをする余地などあるものか」

 

 無表情のまま強く嫌悪の感情の含まれた言葉に遊馬は少し気圧され、そして気付く、

 

「それが本当だっていうんならアストラルは……!」

 

 その表情には自分が考え着いてしまった結論を信じたくないという否定がある。

 肝心のアストラルが記憶を失っているために断言できず、そしてそのアストラルは今、会話を出来る状況ではない。

 堺からのナンバーズの強奪、遊馬の魂へのダメージを身代わりとして受けたアストラルは傷を負い皇の鍵へと入り、体を休めているからだ。

 

「彼が君に嘘を吐いているのかは分からない、私は彼の関係者ではないので私はアストラルが何の目的でここに来たかは分からないが恐らくバリアン世界を消滅させるためにアストラルはナンバーズを集めていると予測する」

 

 狼狽し、遊馬が思わず声を大きく上げるもリペントは怯まない。

 

「っ!? だってあいつは」

 

「私の話は信じられないかもしれない、だから1つだけ君に進言しよう、迷ったときは自分のカオスを信じろ、聞いた話を鵜呑みにせず自分で検討し友と話し合え、一時期のカオスに飲まれるな」

 

 リペントは最後に自分の後悔から得た教訓を言い、手に力を込める。

 

「誰も置いていかない世界を望んだ私の願いは愚かだったのか、私はその答えが知りたいのだよ、そして私は、貴方達とは敵対はしない事を約束しよう。これはその証明だ」

 

 リペントは遊馬、カイト、凌牙へとカードを投げる。

 3人が目の前に飛んできたカードに目を取られた隙にリペントは病室を出て走り出した。

 後ろからは静止を訴えかける声が聞こえるモンスター、リペントはそれを無視して走り病院を出た。

 

                   ●

 

 フードの男、ベクターは部屋に集うプロ決闘者を見る。

 

「みなさん、首尾はどうでしたか?」

 

「ナンバーズのみつからなくなったよー」

 

「俺もだ」

 

 大崎と藤田が不満げに口を揃えて言い、

 部屋に集まった皆が不満を口にし、皆が1人の少年を思い浮かべる。

 それはベクターも同じだ。

 バリアン人である自分達からすれば人間など下位の存在であるが、プロ決闘者は人間の中でもマシな実力を持っており、WDCより数日でナンバーズはかなりの枚数が集まっていた。

 ベクターは遊馬がどれだけのナンバーズを集めているかは分からないが九十九遊馬達からナンバーズを奪えばそれでほぼ全てのナンバーズが集まるだろう。

 

「私が行ったように不意打ちでは少し奪うことしかできない事からもそれは明白だ」

 

 堺が机に置くのは九十九遊馬から奪ったナンバーズ、だが不意打ちのためか、それともアストラルが防いだのかは分からないがその枚数は少なく九十九遊馬の持つナンバーズの全てではない。

 それをベクターは受け取り、そしてもう1度、こちらを見るプロ決闘者達を見回し、

 

「どうやらナンバーズを集める最終段階に入ったようですね、ではすでに告知してあった通り今週末、九十九遊馬達を狩る為の大会に皆様はチームとして戦ってもらいます、主催者側からは良い勝負を望まれていますが、そんなことはしなくても結構です、皆様は本気で九十九遊馬達を倒してくれればよいのです」

 

 フードの人物がさらに計画の核心について喋ろうとすると、今まで何も声を上げなかった少女、氷村麗利は手を上げた。

 

「おや、氷村プロ、何か質問でもありましたか?」

 

「まだナンバーズを持っている人物について1人心当たりがあります」

 

「おや、そうなんですか、それでその人物の名前は?」

 

「氷村響子、私の妹です、彼女の事は藤田プロ達もご存じではないかと思われます」

 

 突然自分の名前が出たことに驚き、藤田はしばらくぽかんとした表情を見せ、顔色を変えて立ち上がる。

 

「あの女、お前の妹か!」

 

 食って掛かる藤田をなだめつつ、堺は問う。

 

「妹というならば君が一番適任では? 説得を試みてみましたか?」

 

「ええ、ですが否定されました」

 

―――はっ、不幸自慢かよ。

 

 ベクターは心の中で面倒に思いつつも黙って話を聞く事にする。

 

「私は妹とは不仲でした、それでも連絡は取ってましたがしばらく前から様子がおかしくなってきたのです、当初はナンバーズの仕業ではないかって思ったんです、ナンバーズを手放す様に説得しましたが拒絶され、決闘をするとシャドールという妹が本来使っていたデッキとは違う物を使ってきました」

 

 シャドールというカードシリーズはベクターも本局のデータベースにも存在しない。

 藤田の決闘映像を見る限り、融合によって凄まじいアドバンテージを叩き出すデッキであり、また光属性、闇属性を融合素材とする事から他の属性すらも融合素材とする事が窺える。

 その様なデッキとナンバーズを氷村響子はどこから入手したのか、そして何故ナンバーズを持ち続けるのか、それをベクターは知る必要はない。

 ベクターが行うべきは立ちはだかる敵を叩き潰し、ナンバーズを奪うそれだけだ。

 

「シャドールに関しては藤田プロの報告にあったな、まあ私の魔導や征竜ならば良い勝負か楽勝でしょう、だけど藤田プロのデッキでは負けてしまうでしょうねぇ」

 

「ちっ、だがデッキ傾向さえわかれば次は勝てる、俺の戦い方はそういうデッキだ」

 

 藤田の言葉を聞き流し、ベクターは麗利へと聞く。

 

「それで妹さんとの決闘の勝敗は?」

 

「勝ちました。ですが腕輪の力を使っても弾かれました」

 

 興味深げに声を挙げたのは堺だ。

 腕輪は堺の理論とベクターの与えた能力を組み合わせ創り上げた物である。その能力はトロンやフェイカーに与えた力よりも強大であり並大抵の力では打ち払う事など出来る訳が無い。

 

―――ますます気になるな、いったい何者なんだ?

 

 ベクターは黙って思案し、更に氷村響子につい聞き出しにかかる。

 

「ふむ、九十九遊馬と同じ現象ですか、それで今、妹さんはどこに?」

 

「連絡先しか知らないんですよ。だから、この大会で引き摺り出します」

 

                   ●

 

「なるほど、貴様もあの女について何も知らないという事か」

 

 ベッドに座り中二発言をした後、消えた響子の事を根掘り葉掘り喋らされた裕はようやく解放されたと言わんばかりに両腕を上げ大きく伸びをする。

 

「裕、だったな、お前は」

 

「おう、えっとシャーク、さん?」

 

「凌牙でいい、それよりもお前と遊馬は赤い光を放つ腕輪を付けた連中にやられたということでいいな?」

 

 遊馬と裕が頷くのを待ち、凌牙は言葉を続ける。

 

「とすればリペントだったか、あいつが言っていた話を信じるんならバリアン七皇の誰かが攻撃していたって事になる、この補填大会だってそいつの計画なんだろう」

 

 先ほどから飛び交う意味不明な新たなワードに裕は困惑した表情を見せるも3人はそれを置いてヒートアップしてしまう。

 

「大丈夫だって、俺たち三人の絆のパワーがあれば何度だって打ち破ってやるさ!」

 

「ふん、あいつらが攻撃を仕掛けて来るってんならこちらから食い破ってやる」

 

「俺以外のナンバーズハンター、面白い、俺の銀河眼でそいつらのナンバーズを狩ってやるだけだ」

 

「あ、あのー」

 

「しかし相手はプロ決闘者だぜ。今の俺達じゃ勝てねえかもしれねえ……そうだ! 俺がここを退院したら決闘庵に行ってみんなで特訓しようぜ!」

 

 遊馬が拳を天に突き上げると2人が別々の方向を向きながらもそれに同意を示す。

 

「ふん、まあいいだろう」

 

「ちっ、しょうがねえな」

 

 裕は話の流れからここでタイミングを逃したらいつ会話に入れるか分からない、そう判断し、遊馬に近寄り、腰を90度に曲げ頼み込む。

 

「頼む、それに俺も参加させてくれ!」

 

「当たり前だろ、一緒に強くなって、俺らみんなでかっとビングだ!」

 

                     ●

 

 夕暮れの中、響子は1人で歩いている。

 周囲に人影はない。響子は1人先ほどまでの現状を思い出し溜息を吐き1人で会話をする。

 

「ばれないようにするんじゃなかったの? そうしたかったが何故かは知らないが神代凌牙にばれてしまった、ある程度の真実を与えてあの場を引くしかなかった、分かってくれ」

 

 2人で意見を交換しながら響子はホテルへと歩く。

 その足取りは重く、響子の頭の中にあるのは、本来の目的である取材も行わずに逃げ出してきて、次に九十九遊馬と顔を合わせ辛いこの状況でどのように九十九遊馬に取材を行うかだ。

 1人で頭を悩ましても良い案は浮かばず、もう1人も良い答えを教えてくれない。

 

「そもそもあなたの目的を話してしまえばよかったんじゃ? そこまでする必要はない。どのみち彼らがナンバーズを求め続けるというのならば過去の全てを知る。その時彼らはどのような行動をとるのか、そして私は……」

 

 瞬間的に無表情、呆れ顔へと変わるその様は異様に映るだろう、知り合いが居ないこのこのハートランドだが他人に変な目で見られたくない。

 誰にも見られてないことを祈りつつ響子はDパッドを取り出し、今日在った出来事を調べると見出しに踊っていたのは病室で見たWDC補填試合の事だ。

 裕達は分からないだろうが響子には分かることがある。

 あのWDC補填大会を発表した男からは姉が使ってきたのと同じ力が感じられた、つまり、

 

「あの大会にはバリアン七皇が関わっている、そしてお姉ちゃんもナンバーズハンターとして関わっている。 何種類かの攻撃が予測できる、その中で1番厄介な攻撃は君の立場を利用した補填試合への強制参加だ」

 

 言葉の途中、Dパッドでニュースを見ているうちにメールが届いた。それを見ると響子はその場に立ち止る。

 予想外のメールの内容に響子は呆然とし立ち竦んだ。

 

「え? 予測通りか、君の新聞会社にも同じ物がすでに届いているはずだ、そして上司から大会に参加しろと、九十九遊馬達やプロ決闘者と親しくなれと命令される筈だ、もう我々も彼等から逃げられないようだ、覚悟を決めろ、響子」

 

 響子へと届いたメールには挨拶と共に大会の出場者の抽選に選ばれたというある意味死刑宣告に近いことが書かれていた。

 そして電子音を響かせDゲイザーが鳴った。

 

                  ●

 

 晴天、まっさらに晴れた空の下、観客達は再びWDC会場に集っていた。

 目的はもちろん、補填試合と称されるプロ決闘者とWDC連合によるチーム戦だ。

 報道では一般人を取り入れ、さらにプロ決闘者ばかりのチーム戦にWDC連合は敗色が濃厚と報道されている。

 ネットにおいてもそれは同様だ、どう考えても勝てるわけがない、一矢報いて負けるだろうという予測ばかりがなされた。

 その予想をさらに補強するのは一般人枠から選ばれた2人だ。

 氷村響子は氷村麗利の妹ということもあり実力はそこそこあるのだろうと予測されるも、水田裕に関しては何一つ情報がなく同級生からインタビューしても知らない、または弱いと言った意見が多く寄せられ足を引っ張るのではないかと危惧されていた。

 

                   ●

 

「さあ、いよいよ始まりましたプロ決闘者連合VSWDC連合による交流戦、解説は私、ベルアッカと片桐大介プロとでお送りいたします、本日はよろしくお願いします」

 

「よろしくお願いします!」

 

 放送を聞きながら裕達はゲートをくぐり歩き始めた。

 遊馬を先頭にし裕は1番背後、向けられる場違い者に対する視線をひしひしと感じながら裕は前だけを見て進む。

 裕達と反対側から来るプロ決闘者はいずれも強者の風格を漂わせ、そして皆が同じ腕輪を付けている。

 

「選手の入場が始まりましたぁっ!」

 

 主催者の前に並び、裕は目の前にいる最上を睨む。

 睨まれた本人はこちらを見ようともせず、ただ前をだるそうにしながら見ている。

 

「何やら一部険悪なムードが漂っていますがあれは一体どういうことだーー!」

 

「資料によると同学校のようですね、絶対に勝ちたいという意志の現れなのでしょう、凄い気迫です、エンジョイしてもらえれば見るこちらとしても楽しめるのですが、さてどうなるのでしょうか」

 

「では控室へ!」

 

 主催者が大きく手を上げ指示をする。

 

「さあお互いが控え室へと戻りました、ここからは第一試合の発表場へ移したいと思います、静間さん」

 

                     ●

 

「さて諸君、この場はナンバーズの狩場だ、相対する決闘者はいずもナンバーズに操られず自らの意志でナンバーズを駆使する強敵ばかりだ、今までのようにはいかないだろう」

 

 軽い鼓舞のつもりで堺は控え室で4人を前に話す。

 皆が歴戦のプロを名乗れるレベルのプロであり本来はしなくてもいいだろうが少しばかり高ぶっている自分を納める意味でも話しつづけた。

 

「WDCでの事を我々は知っている、彼等がどのような激戦をくぐり抜けたかを、彼等の振るうナンバーズも戦術も、そしてそれに宿りし意志と力と運を私達は知っている、だからこそ手を抜かずにいこうではないか」

 

「知ってるっての」

 

「そう言う藤田プロはこの前あの女の人に負けてナンバーズを奪われたじゃないですかやだー!」

 

「てめえ!」

 

 笑われた藤田は大崎にくってかかろうとするのを最上はやんわりと止めつつテレビに視線を移す。

 

「すいません、トイレに行ってて遅れました、発表されちゃいましたか?」

 

「いやまだだよ、氷村プロ、だがそろそろだろう」

 

 テレビの中、箱へと手を突っ込んだ進行役は手を回し腕を引き抜いた。


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