クェーサー厨が行かされる難易度ちょっとハードモード 作:TFRS
水田裕にとって最上愛は敵である。
カードをくれた事には感謝しているがそこに至るまでの経緯を思い出せば怒りがこみ上げみるし、あまり覚えていないが遊馬との決闘中に聞き捨てならない言葉を言われた気がする。
無論、最上の言動とやられた事だけを見て敵だと判断したわけではない。
1週間同じ部屋に居たが、彼女の事は性格のかなり悪いガチデッキを使う自己愛少女という評価しかできない。
最上の部屋は漫画や小説、パソコンやTVが置いてある普通の部屋であった。
前世、と裕はまだ認めていないが、小説や漫画が好きな人間の部屋だったように感じる。
その部屋で最上は漫画を読んだりしてパソコンでネットサーフィンをし、裕のデッキができたら見る、それだけを繰り返していた。
目標は安定した動きができ、あまり事故らず負けにくいデッキを作る事であり、酷い酷評もされた。
結局のところ、裕は同じ部屋で彼女と過ごしたが好みや趣向がわかっただけであり、彼女の良い部分を見つけることは出来なかった。
●
「さて、呼び出されたから来たはいいが何を言われるのか……」
裕は最上に呼び出され最上の住む高級マンションに来た。
足取りは重いままにマンションに入り最上の住む最上階へと足を運ぶ。
その中で時間があったために最上が自分を呼び出す理由を考えるも、思いつかない。
だが一つだけ言えることが在る。
最上が裕を呼び出すとすればそれは確実に裕にとって厄介な出来事にしかならないという事だ。
扉の前に立ち、もう一度、溜息を吐き、裕は呼び鈴を鳴らす。
「入れ」
扉が開かれ、鈍く輝く腕輪が見え、最上が顔を出した。
招かれるままに裕は下手に入ればいつもと変わらない部屋がある。
相変わらずゲームや漫画はほったらかしになり、カードも散乱している。
最上はその部屋を真っ直ぐに突っ切り、部屋の中央で振り返る。
振り向く動きに合わせ、最上の長い黒髪が翼の様に広がり、裕はその動きに一瞬だけ目を奪われてしまうも、すぐに復帰し最上を見、不機嫌さを隠さずに要件を聞く。
「で、用事ってなんだ?」
「いやなに、つまらない用事なのだがな。どうしても聞きたくなって呼び出したんだ。なあにこの用事が終わったら適当に決闘して終わったら適当なカードをあげるよ」
さっさと要件とやらを終わらせたい裕は座らずに最上へと問う。
「で、その聞きたい事というのは?」
「ああ、それはだな」
言いかけた最上の携帯が鳴る、それを最上はすぐさま手に取り会話を始める。
「もしもし、順調? 良いことだ、分かったこちらでも準備しておく」
最上が誰かと会話していて暇な為、裕は部屋を見回す。
乱雑に置かれた漫画とゲーム、部屋の隅に置かれた重々しいケース、掃除はある程度行ってるらしく埃も積もってはいない。
そうしている間に最上は会話を終え、何事も無かったかのようにこちらへ向き直るととんでもない事を言い放った。
「ああ、お前に聞きたいんだが、暇だからファンデッキ縛りで決闘してみたんだが、ちーーっとも面白くないのだけだ。どうしてお前はこういうのを使っていてあんなにも楽しく決闘が出来るのかを教えてほしいんだ」
裕は言われた言葉の意味が分からず呼吸を止めた。
そしてゆっくりと息を吸うと静かに聞く。
「…………もう一回言ってくれ」
ふん、と悩むように愛は口元に手を置き考えるようなそぶりを見せ、
「あんな薄っぺらで安定性も無いようなデッキを使っても私は全然、面白くないんだが、どうしてお前は面白そうに戦って、負けても微妙に楽しそうなのかが知りたくなったんだ」
噛み砕かれ分かりやすくなって再び言われた。
馬鹿でも理解できるようにはっきりと言われたその言葉に裕は怒りを押し殺しながらも、彼女がなぜそのようなことに興味を持ったのかと思った理由を聞く。
「うん、そうだな。昨日な同僚に九十九遊馬が言ってたのと同じような事を言われたんだ。てっきり弱いデッキでギリギリの決闘をして勝ったときの嬉しさと達成感を味わうのが楽しいのだろうとまず考えたんだ。実際、安定性がまるでないロマンの塊なんかを使って事故って負けかけもした。だけどまあ、私は勝った。当然だ。だけど勝ってもまったく、楽しくない」
やれやれとでもいう様に首を横に振り、ため息を吐きつつ最上は続ける。
「前世で言うキャラに成り切ったり、10回やって1回成功できるようなコンボを成功させても面白くも何とも無いんだ。そこで私の周りでそういうデッキを使ってるお前に聞こうと思ってな、どうしてクェーサー縛りで決闘して勝っても負けても楽しそうなんだ? 教えてくれよ」
明るい笑顔で聞かれたそれに裕は拳を握りしめ、胸に膨れ上がる感情を押し殺そうと息を吐く。
それでも言われた言葉の内容が、その言葉の裏にある自分よりも下の連中をバカにする意志が、裕を嬲る。
「クェーサーを出すのならラヴァルでも使えば楽に出せるだろうに、そもそも、わざわざローレベで単体じゃ使えないモンスターばかりで固めたデッキを使って楽しいのか? それともあれか、そういう環境トップレベルになれないような雑魚デッキを使い続けて自分の価値観を貫いてる自分がカッコイー的な感じなのか?」
難しい難問に出会ったように形の整った眉を寄せ悩む最上。
裕は自分の中の沸き上がった感情を抑えず、
「ふざけんなっ!」
睨め付け裕は叫ぶ。
以前のようにデッキをバカにされただけではない、自分が今まで決闘してきた全てを否定される言葉に裕は様々な言葉を込めて叫ぶ。
「クェーサー縛りじゃねえ、クェーサーで、相棒を活躍させて勝つんだ、勝って楽しい、負けたら出せなかった悔しい次は絶対に出す、そう思えるから決闘は楽しいんだろうが、勝ち負けじゃねえ、活躍している相棒を見たいから、いやそうじゃなくても楽しいから決闘してるんだ!!」
「やっぱりこだわってる自分がかっこいいって事じゃないか。難しいカード出せる自分がカッケーってことだろ? え、違うのか、それとも他人とは違うコンボデッキを使って勝ってる自分がスゲーってのを楽しむのんだろ? 違う? 分からないな、本当に分からない、そういう感情を楽しむ訳でもなくただ単に出せて嬉しい? 意味が分からないなぁ」
裕の必死に叫ぶ声、様子を最上は嘲笑う。
いかにも理解でいない、そんな意味の無い者を信じるのはバカのする事だと笑う。
「お前、本気でそんなこと言ってんのかっ!?」
「本気だよ。熱く楽しい決闘? 一方的に楽に勝ったほうが楽しいじゃん。コンボを決めたい? 一人で壁とでもやってろよ。デッキを信じる? 絆に仲間に友情? なにそれ必要なの? 決闘ってのはデッキから引ける確率計算して、相手の裏を読んで勝つことだけ考えるゲームでそんなの必要ないだろ」
―――こいつは本当に分かってない、いや、理解する気が無いんだ。
これ以上、声を張り続けた所で最上は裕の言いたい事など理解しないだろう。
裕は最上の表情から自分達は平行であると、分かりあえることは出来ないと理解し、
「もういい、お前に勝ってこれまでの因縁すべてを終わらせる!」
「ふん、答えは出なかったが。まあ、ちょうどいい時間だし始めようか」
最上はバカにした笑みを浮かべ、裕は激怒の表情を浮かべたまま、決闘盤を付け構え、叫ぶ。
「決闘っ!!」「決闘」
●
「先攻は俺だ、ドロー」
叩き潰す、その事だけを考え、裕はカードを引くも、今の手札ではクェーサーは出せない。
幸いにも手札誘発カードはある、手札もある程度揃ってる。運がよければ次のターンにクェーサーを出せる、だから今は墓地を肥やすべきだ、裕はそう考え、
「終末の騎士を召喚、召喚時効果でデッキから闇属性のレベル・スティーラーを墓地に送り、カードを2枚伏せてターンエンド」
裕場 終末の騎士 ATK1400
LP4000
手札3 伏せ2
最上場
LP4000
手札5
「ドロー、お前は私に勝つと言ったな。理解する気が無いようだから分からせてやる、そんな雑魚デッキごときで私に勝てる事なんてありえないって。全て更地にしてやるよ。手札から闇の誘惑を発動、2枚ドローし闇属性の甲虫装機ダンセルを除外」
「そのカードは!」
裕でもその除外されたカードの恐ろしさは知っている。
始めたばかりの時、世界大会も国内大会の上位ほぼ全てが甲虫装機というカテゴリーで埋まった。それだけの暗黒期の時代を築き上げたデッキが目の前にある。
しかも問題はそのデッキの中核を担う制限に指定されたパワーカードを除外するという事だ。
前の世界ではあまりのカードパワーにより制限カードに指定された物だが、この世界では制限カードに指定されていないという事だ。
裕は甲虫装機のメタカードを入れていない状況で全盛期の甲虫装機を相手にしなくてはいけない、その事に裕は一瞬だけ弱気になる。
「甲虫装機ダンセルを召喚、ダンセルの効果で手札の甲虫装機ホーネットを装備魔法扱いとしてこのカードに装備する。そしてホーネットの効果で装備カード扱いのこのカードを墓地に送りお前の伏せを破壊する」
赤い装甲服を着込んだ人のような姿をしたモンスターが現れる、そして黄色い蜂の針のようなロケットランチャーを手にすると肩に担ぎ、裕の伏せに狙いをつけた。
撃ち抜かれるのは、サイクロン。今の状況では役に立たないカードだ。
そして最上の蹂躙が始まる。
「そしてダンセルの効果発動」
手札、墓地の甲虫装機を装備し墓地に送ったとき効果を発揮するタイプと装備され墓地に送られて効果を発揮する2種類で構成された昆虫装機シリーズの基本的な動きが裕の場を削り落としに来る。
黄色いロケットランチャーを捨てた赤い人型虫は仲間を呼ぶ。
「このカードに装備されていた装備魔法が墓地に送られた事によりダンセルの効果でデッキから甲虫装機センチピートを特殊召喚。センチピートの効果で墓地のホーネットを装備する」
茶色でダンセルと比べると虫に大分近い外装をした人型モンスターがのっそりと姿を現し、黒い穴の底から再び蜂の針ロケットランチャーを取り出し慣れた手つきで肩に担ぐ。
「ホーネットの効果でもう1枚の伏せを破壊する」
「くっ、禁じられた聖槍をダンセルに発動!」
意味はないが無駄に破壊されたくはない、そう考え発動する。
そして最上が次に出して来るカードを裕は分かっていて、そして同時に蹂躙はまだ終わらない事も理解している。
「装備魔法が墓地に送られた事によりセンチピートの効果発動、デッキから甲虫装機と名の付くカードを手札へと加える。私が加えるのは甲虫装機グルフ。そしてレベル3のダンセルとセンチピートでオーバーレイ、虚空海竜リヴァイエール。効果発動、オーバーレイユニットを墓地に送り除外されているレベル4以下のモンスターを特殊召喚する。ダンセルを特殊召喚」
海竜が銀河の渦より現れ、即座にオーバーレイユニットを喰らい叫ぶは別の次元へ飛ばされてしまった者を呼ぶ声だ。それと共に黒紫色の裂け目が空間に広がり再び赤い人型が姿を現す。
「っ」
「再びダンセル効果、手札の甲虫装機グルフを装備。甲虫装機グルフの効果発動、装備カード扱いのこのカードを墓地に送り場のモンスターのレベルを2つまで上げる」
最上の動きは滑らかである。
ひたすらに相手の場を削り、デッキから特殊召喚とサーチを繰り出し続け勝利する事のみを考えている。
「ダンセルのレベルを2つあげる、ダンセル効果でデッキよりセンチピートを特殊召喚、センチピートの効果で墓地のグルフを装備、グルフの効果でセンチピートのレベルを2つ上げ、センチピートの効果でデッキからダンセルをサーチ、んー、ヴォルカがまだ無いからこれでいっか。レベル5のダンセルとセンチピートでオーバーレイ、甲虫装機エクサスダック」
最上の場に現れるのは甲虫装機の名を持つ白銀色のクワガタムシ型の鎧だ。
鎧は周囲を飛び回るオーバーレイユニットを吸収し、裕の場に居る終末の騎士へと走り迫り、内部へと吸収する。
「オーバーレイユニットを使いエクサスダックの効果、相手の場、墓地のモンスターカード1枚をこのカードの装備カードとする。お前の場の終末を装備」
エクサスタッグは自身の持つ効果で装備したカードの攻撃力と守備力の半分の数値分、攻撃力と守備力をアップする。
今のエクサスタッグの攻撃力は1500と非常に低い。
だがそれで終わらない事をまだ裕は理解している。
「そしてランク5のエクサスタッグを素材に迅雷の騎士ガイアドラグーンをエクシーズ召喚」
瞬間的に裕の場はがら空き、2体の総攻撃力は4000をオーバーする。
たかがライフ4000、伏せカード2枚など最上の持つデッキの前には1ターンも持たない。それが最上の持つデッキの普通の光景なのだ。
最上と裕の持って居るカードパワーが違い過ぎる。
「バトル、リヴァイエールで直接攻撃」
「手札から速攻のかかしを発動、攻撃は無効だ!」
「じゃあ2枚伏せ、エンド」
最上場 虚空海竜リヴァイエール ATK1800 (ORU1)
LP4000 迅雷の騎士 ガイアドラグーン ATK2600 (ORU2)
手札2 伏せ2
裕場
LP4000
手札2
―――まだだ、まだ負けてねえ、こんな奴に負けてたまるか!
「ドロー、幻獣機オライオンをコストにクイック・シンクロンを特殊召喚、墓地に送られたオライオンの効果で俺の場にレベル3の幻獣機トークンを特殊召喚する!」
裕も先程の蹂躙に負けじと疾風の如く展開する。
負けない、こんな奴に負けるものか、と裕は感情に乗せ叫び、
「クイックのレベルを下げ、墓地のレベル・スティーラーを特殊召喚、レベル3の幻獣機トークンとレベル1のレベル・スティーラーにレベル4となっているクイック・シンクロンをチューニング、シンクロ召喚! レベル8、ジャンク・デスト」
その声は届かない。
「ライフを2000支払いカウンター罠、神の警告、特殊召喚は無効だ」
シンクロ召喚を潰され次は? と問いかける最上の眼には何をやっても無駄だと言う嘲笑いと、次に何が来ても叩き潰せる自信がある。
それを理解し、だがどうする事も出来ない裕は、
「っ、モンスターをセット、ターンエンド」
裕場 セットモンスター
LP4000
手札0
最上場 虚空海竜リヴァイエール ATK1800 (ORU1)
LP2000 迅雷の騎士 ガイアドラグーン ATK2600 (ORU2)
手札2
墓地6 伏せ1
「ドロー、ダンセルを召喚、効果発動」
動かない裕を見、最上は圧倒的に敵を叩きつぶす愉悦に酔い痴れながら墓地よりカードを抜き、
「墓地のホーネットを装備、ホーネットの効果でセットモンスターを破壊」
破壊されるジャンク・シンクロン、裕の場、手札に何もない事を見て、鼻で笑い、愛はデッキへ手を伸ばす。
「わざわざ少し遊んだっていうのにこのざまか、いつになったらクェーサー地獄ってのを味わえるんだろうねぇ、一生見れないんだろうなぁ。デッキからセンチピートを特殊召喚、センチピートでホーネットを装備し、バトル全てのモンスターでダイレクトアタック」
全てのモンスターが裕へと襲い掛かった。
どうする事も出来ない裕が出来るとすればどうする事も出来ない悔しさ、最上に対する怒りの感情を吐き出すだけだ。
「畜生……畜生っ!!」
裕4000→0
勝者 最上愛
●
「さあ、私の研究の始まりだ」
モンスターからの連打を受け倒れた裕の耳に届いたのは男性の声だ。
声の方に目を動かした裕が見たのはこちらに腕を伸ばす最上の姿、次に感じたのは胸の奥を掻きむしられるような凶悪な痛みと嫌悪感だ。
「ぎ、ぎぎ、がああああ!」
臓器に届くような傷口を撫で回すように手が何かを探すように動き、神経全てを逆立てるように隅々まで触られる。
涎を垂らし、どころではないような尋常ではない感触に悲鳴を上げ裕は転げ回る。
「魂を触るってのはこんな感触か、お、カード発見、けど張り付いてるな」
爪が重要な言い表せない何かに立てられた、何かから引きはがすように丹念に掻き、掻き立て、ガリガリと毟られ、爪が何かを引っ掻き回すたびに裕はのたうち声にならない音を吐き出し続ける。
最上はそれをうるさい騒音だと言わんばかりに眉をしかめ、更に引っ掻く指の力を込め、範囲を大きくする。
数回、掻き毟り、
「取れた」
「ッ!?」
何かを引き抜かれる感触と余りの激痛に裕は叫び声すら上げられなかった。
空気のみが息として漏れ、天井を向いて倒れた裕の耳に届くのは何かを言っている老人らしき人の言葉だが上手くは分からない。
それほどの痛みの中、焦点すらも合わなくなるような視界の中、はっきりと見えたのは最上の手に握られた1枚のカードだ。
ぼんやりと光る白枠、そしてその中に描かれる龍のカードが握られている。
「か、えせ」
手を伸ばすも届かない。
最上は立ち上がり裕の手が届かない高所までカードを持ちあげ、
「返してほしかったら私達に勝ってみろ、そしたら
「え、ん?」
倒れたまま、裕は聞きなれない単語を口に出す。
「そうだ、なんでも人と運命のカードってのは縁で繋がれてるらしい。それによって決闘中に運が良くなったり、トレジャーシリーズ等のカテゴリーシリーズが楽に揃ってデッキとして使える様になるってこいつは言ってるんだ。今お前の体から掻き出したのはクェーサーとお前を結ぶ縁、それを本物のクェーサーに移し替えた物だ、これは私が持っておく」
中折れ帽子を被った初老の男性、堺が玄関から姿を見せる。こちらを注意深く観察しつつ口を開く。
「ただこのままでは分からないことだらけだろう、だから説明しよう。君にとっての魂のカード、君風に言うならば相棒はシューティング・クェーサー・ドラゴンであるように、私にとっての魂のカードはアーティファクト・デュランダルというカードと1枚のナンバーズだ、そのおかげで私は難易度の高いカードシリーズを楽に手に入れることが出来た、その恩恵の中、私はあるとき思ったのだ、この魂のカードは他人に移植できないかと」
「いしょ、く?」
「そうだ、移植できればその人間のもとにカードシリーズが楽に集まるのではないか、そうすれば貧乏、不運、環境等の問題が消えプレイングさえ磨けば誰もが楽しく決闘ができるのではないか、そう私は考えたのだ、君も1度は思ったはずだ」
「なにをだ?」
「彼女から聞いて興味が沸いて調べさせてもらった、君だって怨んだのではないか、金が無くて強いカードが手に入らず環境のせいで切り札は奪われた、不運の連続だったはずだ、悔しく思わなかったかね?」
裕もそれを思った事は何度もあった。
思い返すまでもない、最上と手を組まなければいけない状況に陥ったこと、勝ちたいと思いすぎてナンバーズに取り込まれ勝ったこと。
全てはこちらの世界に来て、いや向こうの世界に居た頃から思ったことだ。
欲しいカードがあったけど金が無くて買えなかった、ちょっと運試しにパックを買ってもめぼしい物が出なかった。
「それが手に入るのだ、私が求めるのは誰もが平等に強いデッキを組め決闘を楽しめる、そういう世界だ」