クェーサー厨が行かされる難易度ちょっとハードモード 作:TFRS
この話の大筋を考えたのが9月なので禁止制限はお察しって事でお願いします
クェーサー厨VS自己愛少女
部屋の中、2人の男女が向き合って立っていた。
腕に装着された決闘盤にデッキを装填し掲げ、2人は同時に息を吸いこみ、同時に叫んだ。
「「デュエル!」」
そして、
『禁止カードデース!』
という人を小馬鹿にしたような声、エラーを示す音が部屋に響いた。
「…………あれ?」
さあこれから楽しく全力で決闘するぞ。と意気込んでいた裕は決闘盤を見、最上へと目を移す。
見た先の最上はというと、
「…………しまった、テンションのままに突っ走り過ぎて禁止制限が変わってるって言うの忘れてた」
額に手を当て、反省するような素振りを見せ、おもむろに背後の机から1枚の紙を取り出した。
「これが最新式の禁止制限だ」
裕はそれを手に取り、眼を通し、動きを止めた。
「えっと、最上さん、大嵐が禁止って…………え? 羽根帚? えっとそんなカード持ってないぞ!?」
裕が決闘を始めたとき、当然、羽根帚は禁止カードであった。
そして使えないカードを買う金がなかった裕が当然、持っている訳も無くどうするんだよこれ、という叫びをあげる。
そして、そうなる事を事前に予測していた最上は裕へとカードを投げ渡す。
「貸しといてやる。新しいの手に入れたら返せよな」
裕は目を丸くし、最上へと笑いかける。
「最上、ありがとよ」
「ん」
裕は禁止制限とデッキを見比べていく。
その内に最上はとある事を思い出していた。
ドン・サウザンドの洗脳によって他人の為にデュエルするなどという最上からすれば吐き気がするような気持ちの悪い状態に陥っていた時、裕から言われた言葉、それを受けて自分はどう思ったのか、だ。
それを思い出し、考えれば怒りの感情がふつふつと湧き上がり、先程の決闘で使おうとしていたセイヴァーからバスターまで全部を詰め込んだレッドデーモンズドラゴン軸デッキを外し、最上は今できる本気のデッキを取り出していた。
まだ自分の力が最強に至っていないのでそれを補うために色々な物を詰め込んだデッキ、以前の最上ならばガチの中に紙を混ぜてんじゃねえと言うであろうデッキ構築、それでも今の自分の全力を詰め込んだガチデッキを手に取る。
最上が心の中で決意を燃え上がらせていると、裕が最上の方を向いて口を開いた。
「なあ、征竜とか魔導とか甲虫装機とかクリフォートとかがまとめて禁止や制限に入ってんだがなんでだ?」
「ああ、それか。ドン・サウザンドの馬鹿が私のカードをコピーしてくれてご丁寧にバリアン兵に持たせただろう、アレのせいでそこら辺のカードを使うと客から悲鳴というか非難の声が起こってな。私としてはどうでもよかったんだが大会側から出禁にするぞ、オラァって怒られたからしょうがなく崩した」
ドン・サウザンド事変とまで呼ばれるあの事件の爪痕は市民たちに深い爪痕を残していた。
ある者はバリアン兵が使っていたカードを見るだけで心の平静が保てなくなるほどに、またある者はその凄まじすぎるカード性能に心を奪われ欲するようになるなどという人それぞれ、千差万別ながらも全ての決闘者に等しくドン・サウザンドという存在を刻み込んでいた。
九十九遊馬がヌメロンコードを使って行った改変はドン・サウザンドを無かった事にする物ではなく、世界をつなぎとめる材料にされた市民達の魂にはドン・サウザンドと呼ばれる存在とそれらに関する恐れが色濃く残っている。
「カオスエンド・ルーラーも?」
九十九遊馬達とドン・サウザンドとの決闘はほとんどの者が知らない筈だったのだが、どこかの誰かが声や顔が分からない様に加工された上でドン・サウザンドと3人の名前も分からない決闘者達との決闘の全てがインターネット上にばら撒かれ、ドン・サウザンドの恐ろしさと凶悪さを再確認する事になり、カオスエンド・ルーラーというぶっ壊れカードはめでたく禁止カードにぶち込まれた。
「入れてやろうか?」
そのカオスエンドルーラーどころか禁止制限を全部無視してやろうかという笑みを最上が向ければ裕は慌てて首を何度も横に振る。
「いや、止めてくれ」
裕はデッキと睨めっこし、何回かデッキをシャッフルしては何枚かカードを抜く作業を繰り返しようやく決闘盤にデッキを装填し最上の方を向いた。
「できたか?」
「ああ、出来たぜ。やろうぜ」
最上は楽しげに口元を緩め裕を真っ直ぐに見て、裕も真っ直ぐに最上を見返し、示し合わせたわけでもなく、同時に言い放つ。
「「決闘っ!」」
●
画面の点滅がゆっくりになるのを裕はごくりと固唾を飲んで見守る。
最上がどのようなデッキを使うにせよ、相手はあの最上だ。
できることならば先攻が欲しい、先攻をとって有利に決闘を勧めたいと思うも、
「私の先攻!」
点滅は最上で止まる。
そのまま最上はデッキに手を置かないのを見て、裕は首を傾げる。
「あれ、ドローしないの?」
「うん?」
何を言ってんだこの馬鹿は、そういうニュアンスの言葉を裕へと吐き、しばらくして最上は納得したように頷く。
「ああ、半年にルールが変わってな。ペンデュラムの事とか先攻ドローの廃止とか色々変わったぞ」
「ああ、そうか。ペンデュラムがなぁ」
最上と一緒にバリアン世界に堕ちペンデュラム召喚による初見殺しに合いかけたり、クリフォートという強烈なペンデュラムモンスターに苦戦した事は裕は裕にとって忘れられない思い出である。
それと同時にこれから出会うであろう決闘者達がペンデュラム召喚を使ってまだ見た事の無い戦略を見せてくれるであろうと思えば、裕の口元にはそれらを楽しみにする笑みが浮かぶ。
「楽しみだなあぁ」
無意識に呟いたそれを最上はそれをどのように受け取ったのかは知らないが、妙に良い笑顔で頷き、
「さて」
最上が手札を見、裕を見た。
その口元は明るく笑っているのだが、眼は全く笑っていないのを裕は見て、裕の全身に悪寒が走った。
「私を待たせてくれやがった上に弱いだの言ってくれた大遅刻野郎の大馬鹿野郎との久しぶりの決闘、私もちょっとだけ本気出しちゃうぞー」
言葉は感情がこもらない棒読みなの更に恐ろしさを増長させ、裕が何かしたのかと疑問に思うよりも先、最上は1枚のカードを抜く。
「魔法カード、マジカル・ペンデュラム・ボックスを発動、デッキより2枚ドローしそれがペンデュラムカードならば手札に加え、違った場合は墓地に送る」
当たったら手札増強、外れても墓地肥やしにもなるカードの発動に裕の頭の中の警報がガンガンと鳴り始める。
裕の顔色が変わったのを見、最上は愉悦に口元を緩めながら2枚ドローし、裕へと見せ付けて来る。
「私がドローしたのは
最上の場に黒とピンクのタキシードの少年が降り立ち、すっと1礼する。
そして新たな役者を出迎える様に拍手をし始め、それに呼ばれたかのように赤い服の少年が現れる。
「ドクロバット・ジョーカーの召喚時効果でデッキよりEMモンスター、EMペンデュラム・マジシャンを手札へと加え、私はスケール3のEmボーナス・ディーラーとスケール5のEmヒグルミでペンデュラムスケールをセッティング、これで私はレベル4のモンスターを同時に特殊召喚可能になった!」
最上の背後、2つの光の柱が構築され、その中間に巨大な振り子が構築される。
ペンデュラムスケールがペンデュラムスケールなだけに揺れ幅は少ないが、それでも振子は揺れ、最上の頭上に光の軌跡で陣を描き始める。
「さあ、私の全力全開を味わうショーへようこそ。まずは軽く行くよ。ペンデュラム召喚、手札よりEmダメージ・ジャグラー、Emトリック・クラウン、EMペンデュラム・マジシャンを特殊召喚する!」
最上の手札より放たれたモンスター達が同時に降り立ち、その中で立派な振子を持った少年が一際派手に躍り出る。
「ヒグルミとボーナス・ディーラーを対象に特殊召喚されたペンデュラム・マジシャンの効果、更に手札よりEM、Emモンスターを3体以上ペンデュラム召喚した時、ボーナス・ディーラーの効果発動、まずはボーナス・ディーラーの効果で2枚ドロー、そしてペンデュラム・マジシャンの効果でヒグルミとボーナス・ディーラーを破壊しEMモンスターを2枚、デッキから手札に加える。私がサーチするのはEMギータートルとEMモンキーボード!」
最上の手札は1枚しかなかったはずだった。
それが次の瞬間には5枚にまで戻り、更に最上のエクストラデッキより火の粉が噴出する。
「そしてカード効果で破壊されたヒグルミのモンスター効果でデッキからEmモンスター、Emボール・ライダーを特殊召喚する」
更に最上のデッキよりモンスターが特殊召喚され、これによって最上の場がすべて埋まる。
それらのモンスターのレベルは4、これから起こるであろう事が裕には容易に想像でき、苦悶とも絶望とも呼べるような唸り声を漏らす。
それを楽しげに聞き流し、最上がエクストラデッキよりカードを抜く。
「さて行くぞ、レベル4のEMドクロバット・ジョーカーとEmダメージ・ジャグラーでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚。まずは、ラヴァルバル・チェイン」
先陣を切るのは燃える体躯を持つ海竜、その身に宿す能力は多くのデッキの潤滑油として力を発揮している。
だが最上は即座に効果は使わずに次のモンスターを呼び出しにかかる。
「レベル4のEmボール・ライダー、Emトリッククラウン、EMペンデュラムマジシャンでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚」
「レベル4が3、体…………っ!?」
先攻でレベル4のモンスターを3体も要求するエクシーズモンスターを裕は考え、1つ思い当るカードがある。
それを出されてしまえば裕は非常に苦しい状況に追い込まれるため、出さないでくれと願うも、裕のその願いは踏みにじられる。
眩い渦の中、構築されていくのは紫色の板達、それらが合致し、オレンジ色の数字が刻まれていく。
「No.16色の支配者ショックルーラー!」
「やっぱりお前かぁっ!?」
WDC補填大会での藤田プロ、最上と続けて出され防戦を強いられたNo.が裕の眼の前で嘲笑う様に浮遊する。
「オーバーレイユニットを使いチェインの効果でデッキより
オーバーレイユニットだったダメージ・ジャグラーのサーチ効果をしっかりと生かし、最上は更なるエクシーズの弾を補給し、裕の何とも言えない表情を見て、本当に、心の底から楽しいという表情で最上は更なる蹂躙を開始する。
「まあ、ショックルーラーの効果の前にスケール6のEMギータートルをまずセッティングし、そのあとスケール1のモンキーボードをセッティング、EMペンデュラムモンスターがセッティングされたのでEMギータートルのペンデュラム効果で1枚ドロー、そしてモンキーボードのペンデュラム効果でデッキからEMモンスター、EMドクロバットジョーカーを手札へと加える」
EMドクロバットジョーカー、EMモンキーボード、EMペンデュラムマジシャンというこれらのサーチの輪を止めなければペンデュラムの動きは止まらない。
裕はそれを今頃になって痛感するも時すでに遅し、最上によるエクシーズの連打はまだ止まらない。
「装備魔法、エクシーズの王冠をラヴァルバル・チェインに装備させてエクシーズ・トレジャーを発動、デッキから2枚ドロー、そしてショックルーラーの効果で、まず、魔法カードの発動を封じる」
「くっ」
異形の天使より放たれた棘が裕と最上の中心に着弾し紫電をまき散らしていく。
これによって裕のエンドフェイズまで魔法が発動すらできなくなった。
「更に墓地に送られたトリッククラウンの効果でEmモンスター、トリッククラウンを攻守を0にして特殊召喚し私は1000ポイントのダメージを受ける、ん」
ショック・ルーラーの効果のコストとして墓地に送られたトリッククラウンがポンと言う小爆発と共に最上の場に現れ、最上はその爆風に僅かに押される。
ライフ4000のこの決闘で1000ポイントのダメージはかなり大きいのだがその効果ダメージすらモンスターの展開の役に立ってしまう。
「そして効果ダメージを受けたので墓地よりサウザンド・ブレードを攻撃表示で特殊召喚、私はエクシーズの王冠の効果でレベル4の2体分の素材となっているラヴァルバル・チェインとトリック・クラウンでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚」
「レベル4が3体分!? って事はまさか、また!?」
「そうもう1体、No.16色の支配者ショックルーラー! ショック・ルーラーの効果でモンスター効果を発動させなくさせる!」
魔法カードとモンスター効果を発動させずに攻撃力2300のショックルーラーを2体とも倒すというのはほとんどのデッキにおいて不可能に近い。
そして守備に回ってしまえば次のターンも、また次のターンも封殺されてしまうだろう。
「それ通したら負けるんだよ! 俺はエフェクト・ヴェーラーの効果発動! このカードを墓地に送りその効果を無効にする!」
モンスター効果と魔法カードを封殺する事に失敗した最上だったが大して悔しそうな様子を見せずに、
「やれやれ、じゃあ場に2体以上のモンスターがいるので手札よりEmハットトリッカーを特殊召喚、レベル4のサウザンド・ブレードとEmハットトリッカーでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚、
下半身が馬、上半身が人のエクシーズモンスターが銀河色のマントを振りかざし裕へと天体の形をした杖を向けてくる。
裕が動かないのを見て、最上は何もカードを伏せずに、
「エンドフェイズ、プトレマイオスの効果発動、エクストラデッキよりステラナイトカード、
最上場 No.16色の支配者ショック・ルーラー ATK2300 (ORU2)
LP3000 No.16色の支配者ショック・ルーラー ATK2300 (ORU1)
手札5 星守の騎士プトレマイオス DEF2600 (ORU3)
EMモンキーボード (スケール1) EMギータートル(スケール6)
裕場
LP4000
手札4
ターンを始めるよりも前、裕はまず、プトレマイオスの効果を読むことにする。
リペントとの最終決戦では裕はその効果を見る事が出来なかったが、今の普通の決闘ならばその効果が読むことが出来る。
そしてその効果を見て裕は渋い表情になるも、とりあえずドローした。
「俺のターン、ドロー!」
ショックルーラーの効果によって今、裕は魔法カードを発動できない。だがこのまま何もせずにターンを終える事は即座に敗北に繋がるだろうと裕は考える。
そしてドローしたカードを見る。
―――いけるか?
ドローしたのは運が良ければこの状況を吹っ飛ばせるような可能性を持ったモンスター、それを裕は決闘盤に置こうとし、最上の言葉によって動きを止める。
「この瞬間、プトレマイオスの効果発動、オーバーレイユニットを3つ使いこのカードよりランク1つ高いNo.以外のエクシーズモンスターをコイツを素材としてエクシーズ召喚する。ランクアップ・エクシーズ・チェンジ、ランク5!」
プトレマイオスの持つ天体状の杖に3つのオーバーレイユニットが収束しエクシーズ召喚に使われる渦を構築する。
それの中へと身を躍らせ、体を分解し、ランクの1つ高い姿へとランクアップさせていく。
白と金の躰は黒の汚泥の様な躰へと、眼も口も無数に分裂し汚泥の中を泳ぎ回るように動き回り、その中で一際大きな口が息を吸い、身の毛のよだつ様な咆哮を上げる。
「ランク5、外神アザトート」
その咆哮に怯えたように、裕の手にあったモンスターカードは白く濁っていく。
「えっ!?」
「アザトートの効果発動、このカードがエクシーズ召喚したターン、相手はモンスター効果を発動できない!」
最上の大量展開を止められなかった時点で、この裕のターンは何もできなかった事は確定していたのだ。
それでもプトレマイオスとアザトートという厄介なカードを使わせたと裕は前向きに考え、
「くぅ、俺はモンスターをセット、カードを3枚伏せてターンエンドだ!」
裕場 セットモンスター
LP4000
手札1 伏せ3
最上場 No.16色の支配者ショック・ルーラー ATK2300 (ORU2)
LP3000 No.16色の支配者ショック・ルーラー ATK2300 (ORU1)
手札5 外神アザトート ATK2400 (ORU1)
EMモンキーボード (スケール1) EMギータートル(スケール6)
最上は裕が伏せた3枚のカードを見て、少しだけ考えるも、とりあえず封じてみる事にした。
「私のターン、ドロー! 行くぞ、私はショック・ルーラーの効果発動、オーバーレイユニットを使い罠カードを発動できなくさせる!」
「罠カード、ブレイクスルー・スキル! 効果を発動していないショック・ルーラーの効果を無効にする! 更に和睦の使者を発動!」
これによって最上はこのターンでは裕を倒せなくなった。
最上は手札と場を見比べ、相手のカードを削り取り、次のターンで殺しに行ける準備を整えにかかる。
「となると、エクシーズ・トレジャーを発動、3枚ドロー。運試しといこうか。速攻魔法、竜呼相打つを発動、デッキより竜魔王、竜剣士ペンデュラムモンスターを1体ずつ選びシャッフル、相手に1枚を選んでもらう」
2枚の竜魔王ベクター
裕は臆することなく即座に右のカードを指差す。
「こっちだ!」
「相手が選ばなかったカードはエクストラデッキに表側で起き、選ばれた方は特殊召喚、またはペンデュラムゾーンにセッティングする。今回選ばれたのは竜騎士ラスターP、このカードを特殊召喚する」
最上の場に竜剣士が特殊召喚され、ユニットはそのカードテキストを見て、驚きの声を挙げた。
「チューナー? そのデッキはシンクロ召喚まで使うのか!」
「ああ。EMドクロバット・ジョーカーを召喚。召喚時効果でデッキからEMモンキーボードを手札に加え、私はレベル4ペンデュラムモンスターのEMドクロバット・ジョーカーにレベル4のラスターPをチューニング」
竜剣士は4つの輪へ、黒とピンクの少年は4つの星へと分解され、天に昇っていく。
4つの輪の中に星が跳びこみ、光を放ち、その中より生み出されるのは赤い爆炎だ。
赤々と燃える爆炎は渦を巻き、一回り成長した竜剣士と紅い盾、剣、鎧と成る。
「シンクロ召喚、レベル8、爆竜剣士イグニスター
呼び出されたモンスターもレベルは4、つまりは最上のエクシーズの連射は止まらないという事だ。
げんなりとした表情の裕へと爆竜剣士は巨大な剣を向ける。
その剣へと最上の背後で柱となっていたモンキーボードが炎となり吸い込まれ、巨大な爆炎で作られた剣を生み出す。
「そして私のペンデュラムカード、モンキーボードを破壊し場のカードをデッキへと戻す。私が選択するのはセットモンスターだ」
巨大な爆炎剣による薙ぎ払いは裕のモンスターを撥ね飛ばし、デッキへと叩き込む。
「くっ、モンスターまで!」
裕の場のセットされていたモンスターは居なくなり、残るは裕の場に伏せられたカードのみとなり、最上はそれを壊しにかかる。
「さらにエクシーズモンスター、外神アザトートとシンクロモンスター、イグニスターPを墓地に送りエクストラデッキより旧神ヌトスを特殊召喚する」
融合される際の渦に似た物がアザトートとイグニスターPを飲み込み、新しい姿に生まれ変わってく。
渦の中より手に矛と盾を持つ女性型モンスターが現れ、手に持った矛を空へと翳す。
「ヌトスの効果発動、手札よりレベル4のモンスター、シャドール・ドラゴンを特殊召喚する。私はレベル4の旧神ヌトスと竜剣士マスターPのオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚。ダイガスタ・エメラル」
最上によるエクシーズの連打は止まらない。
そして裕は最上が召喚したモンスターを見て、顔を青ざめるも動かない。
―――つまりヴェーラーは無いって事だな。
裕が動かないのを見て、最上はそう判断し、これからどうするかを悩むも、とりあえずドローして考える事にした。
「エメラルの効果発動、墓地よりプトレマイオス、アザトート、セイクリッド・ダイヤをエクストラに戻し1枚ドロー、更に墓地に送られたヌトスの効果発動、場のカード、私の場のシャドール・ドラゴンを破壊、更にカード効果で墓地に送られたシャドール・ドラゴンの効果で、最後の伏せカードを破壊する」
最後の方で役に立つだろう仕込みを終えつつ、最上は裕の伏せを破壊する。
だが破壊されたカードを確認した最上は舌打ちをする。
「破壊されたミラクル・シンクロ・フュージョンの効果発動、デッキからカードをドロー!」
「だったらモンキーボードをセッティング、ギータートルの効果でドローしモンキーボードの効果でペンデュラム・マジシャンを手札へと加える。ペンデュラム召喚、エクストラデッキからEmヒグルミ、手札よりEMペンデュラムマジシャンを特殊召喚」
裕の手札が増えた事をやってしまった物はしょうがないと切り捨て、最上は前のターンよりアドバンテージを叩き出し続けるコンボを連射していき、アドバンテージを稼ぎ続ける。
裕の顔を見れば渋い顔をしており、ミラクルシンクロフュージョンの効果でドローしたカードは増殖するGのような手札誘発ではない事が理解できる。
「ペンデュラム・マジシャンの効果でヒグルミ、ダイガスタ・エメラルを破壊しEMドクロバット・ジョーカー、EMモンキーボードを加え、破壊されたヒグルミの効果でデッキからEmダメージ・ジャグラーを特殊召喚、更に私の場に魔法使い族モンスターが存在しているのでデーモン・イーターを特殊召喚する」
並べるだけ並べて最上は裕を見る。
最上が思い描いた封殺状況と違うからだ。
最上が最善とするのはショックルーラー2体によって魔法、罠カードを完全封鎖しフレシアの蟲惑魔で出てきたモンスターをも破壊する物である。
今からでもサウザンド・ブレードとトリック・クラウンのコンボを使えば出来ない事はないのだがその為には効果を無効にされているショックルーラーの効果を発動しなければいけない。
―――トリック・クラウンを温存しようとしたのが間違いだったかなぁ?
トリック・クラウンをプトレマイオスのオーバーレイユニットにして裕のターンに特殊召喚するという事を最上が考えなかったわけではない。
だがそれそれをすると攻守0のトリック・クラウンを攻撃されトリック・クラウンとサウザンド・ブレードによるエクシーズの連射が途切れる恐れがあった。
それを防ごうと温存したのだが結果的に微妙な状況になった。
―――出してもいいけど、この状況を崩されたら裕の動き妨害するのがプトレアザトートだけになるんだよなぁ、しかもブレスルがあるから相手のターンにプトレアザトートが出来ないし…………。
他人をバカにしたがる最上だが裕のドロー力はバカにしない。
ここで最上がフレシアまで出しても裕ならば手札3枚からでも逆転してくる可能性はあるのだ。
普通なら逆転がありえないと思える状況からでも逆転してくるのが水田裕とデッキの力であり、その力によってある意味、全盛期だった最上は敗北したのだから侮れるわけが無い。
となれば、そう最上は考え、
「デーモン・イーター、ダメージ・ジャグラー、ペンデュラム・マジシャンでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚。3体目のショック・ルーラーだ!」
出し、潰しにかかる。
「ショックルーラーの効果でモンスター効果を発動できなくさせる」
紫電が裕と最上の場を覆う。
裕が目を見開く中、最上は軽く笑いかける。
裕は強い決闘者と決闘し追い詰められ、追い詰められ、チャンスを見逃さずにワンショットキルによって勝利してきた。だがそれを可能にしたのはモンスター効果が主である。
裕のシンクロンデッキは効果モンスターを連射しライブラリアンなどによるドローを連打し必殺の1撃を通す事に力を入れたデッキであり、それを封じてしまえば何とかなる、そう最上は考えた。
その上で9枚もある手札から手札調整によって捨てないために3枚ほどカードを抜く。
「俺の最強の相棒を目に焼き付けろ、だっけ? やれるもんならやってみろよ。私はお前に絶対に、一歩も引かないぞ。カードを3枚伏せてターンエンドだ」
最上場 No.16色の支配者ショック・ルーラー ATK2300 (ORU2)
LP3000 No.16色の支配者ショック・ルーラー ATK2300 (ORU1)
手札6 No.16色の支配者ショック・ルーラー ATK2300 (ORU1)
伏せ3
EMモンキーボード (スケール1) EMギータートル(スケール6)
裕場
LP4000
手札2