クェーサー厨が行かされる難易度ちょっとハードモード   作:TFRS

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とある少年との決闘 下

 遊馬の眼前、再び恒星龍が空に浮かんでいる。

 だがすでに和睦の使者は発動されており、裕が攻撃した所でダメージは与えられない。

 

「サンダー・スパークを守備表示にし、カードを1枚伏せてターンエンド」

 

少年場  シューティング・クェーサー・ドラゴン ATK4000

LP1000  No.91サンダー・スパーク・ドラゴン DEF2000 (ORU0)

手札0     

 

遊馬場   No.11ビッグアイ DEF2000 (ORU0)

LP1000  伏せ1

手札4

 

 空よりこちらを制圧するようを居降ろす恒星龍、その姿に遊馬は興奮を隠しきれない。

 

「すげえ、すげえぜアストラル!」

 

「ああ、このドラゴンを出すためにどれだけ手間がかかるかは分かった、その上で2度も出すとは、彼は中々の腕の前だな」

 

 シンクロモンスター2体とシンクロチューナーを1体、しかもレベルを12ぴったりにしないと出すことの出来ないこの恒星龍を相手は2回も出してきたのだ。

 それが成功したのは遊馬が裕の召喚を妨害するようなカードを伏せてなかったからというのもある。

 それを踏まえても、遊馬は笑顔で凄いとはしゃぎ、そして思い出した。

 

「アストラル、俺やっと思い出したんだ。あの人、前に広場で決闘をやってた。そん時は楽しそうに笑いながら決闘をやってたのに、どうしてこんな風になっちまったんだ?」

 

 悲しげに目を伏せ、少年を見るもまともな答えなど帰ってこない。

 相手の少年の目線はビッグアイをにらみつけたままだ。

 

「それについては私が話してやろう」

 

 バンの後ろから今まで隠れていた少女、最上が姿を現す。

 彼女を見た遊馬は、少し前に何度か決闘を挑まれ惨敗した思い出が蘇り、少し顔を引きつらせる。

 

「水田裕、そいつはそのカードを相棒と呼び、そいつを呼び出すための特化したデッキを作った、だがそのデッキは事故りやすく弱かった」

 

 軽く語られていく言葉、それに遊馬は耳を傾ける。

 

「そのクェーサーはちょっとした値段のカードで水田はいつアンティ決闘を挑まれるかってびくびくしていた。決闘では負けたくない、でもクェーサーで勝ちたいと悩みに悩んだこいつはそんなつまらない願望をナンバーズに付け込まれた、全く馬鹿だよなぁ」

 

 嘲笑い、口許に馬鹿にした笑みを浮かべた黒髪の少女は手を広げ、

 

「勝ちたいんだったらそういう信念を捨ててでも勝ちを狙えば良いのに、たかがカード1枚に拘ってその上、勝利を目指すだと? 欲深いにもほどがある。ロマンを夢見るのならそれだけにして隅っこでお友達と仲良く適当に過ごしとばいいのに、勝利すらも欲しがるとは傲慢だ。くだらねえなぁ」

 

「そんな風に馬鹿にするなよ!!」

 

 遊馬は決闘していたときに見かけた彼の嬉しそうに戦う姿を、負けて出せなくて悔しいと言った表情を思い出し、そして彼女が自分と決闘をしていた際に浮かべていた表情を思い浮かべ、比べて叫ぶ。

 

「俺はコイツのことをよくは知らねえ、でも俺にだって分かることはある! コイツは決闘は楽しいものだと思ってる。人のカードも命も何もかかっていない純粋にカッコいい切り札で勝ったり負けたかっただけなんだ、その思いをお前みたいに決闘を楽しんでない奴に馬鹿にされる筋合いはねえ!」

 

 その言葉に最上はため息を吐く。

 理解できない格下と付き合うのが嫌だというように、遊馬が言っている事がまるで間違っているとでもいうように、嘲笑いながら、

 

「ほんっとに、分かんないなぁ。言ってる事の意味が本当に分からない、勝たなきゃ楽しくないだろうに、負けてもつまらないだろうに。勝ちたいんだったら良い性能のカードを使って戦うだけで良いだろうに。切り札に拘るその気持ちが分からない。出せなければ切り札だろうがただの紙だろうに、どうしてそうも感情移入できるのか本っ当に分からない」

 

 遊馬の知っている最上という少女は決闘を楽しいとは思っていない。

 決闘とは自分が楽しむだけの道具であり、他人を叩き潰し相手に自分の強さを見せ付けるだけの慰撫する物として扱う少女に決闘が楽しいと思う人間を笑う資格はない。

 遊馬は最上の考えを絶対に認めない、そう考える。

 しかしそれを指摘したところで彼女は意図を、込められた感情を理解しない、だから遊馬は、

 

「……お前は、決闘やってて楽しいのか?」

 

「勝ったら楽しいよ、勝てなきゃ面白く無い」

 

 当然のように言う最上からナンバーズの洗脳に捕らわれた水田へ向き直り、

 

「っ、俺のターン、ドロー」

 

 最上の事を頭の隅に追いやり、少年、裕へと向き合う。

 

「遊馬、あのモンスターを相手に長引けばいつかは突破されてしまう、ここは短期決戦だ」

 

「ああ、行くぜ、俺はエクシーズ・トレジャーを発動!」

 

 発動する2枚目のドローカード、これ以上ドローされる事を嫌ったのか、裕は、

 

「クェーサーの効果で無効にする」

 

 遊馬の前に広がった魔法カードはクェーサーの掌から放たれた光にかき消される。

 

「だったら俺はビッグアイのモンスター効果発動!」

 

「墓地からスキルプリズナーの効果発動、クェーサーを対象にするモンスター効果を無効にする」

 

「まだだっ、俺は貪欲な壺発動、墓地のホープ、ホープレイ、ゴゴゴジャイアント、ZW-一角獣皇槍、ガガガシスターをデッキに戻し2枚ドロー」

 

 引き抜きカードを見て、遊馬は即座にモンスターゾーンへと置く。

 

「ゴゴゴジャイアントを召喚、召喚時効果で墓地のゴゴゴゴーレムを特殊召喚、そしてレベル4のゴゴゴジャイアントとゴゴゴゴーレムでオーバーレイネットワークを構築、再び現れろ、No.39希望皇ホープ! バトルだ、ホープでサンダー・スパークを攻撃!」

 

 ナンバーズを倒せば少しだけでも正気に戻るかもしれない、そしたらもっと面白い決闘できるはずだと遊馬は考える。

 だから、

 

「いっけえホープ、ナンバーズをぶった切れ、ホープ剣・スラッシュ!」

 

 ひれを体に巻きつけ自身を守っていた魚竜をホープの剣が両断し爆発が生まれ水田は後ろへ吹っ飛ばされる。

 そのとき遊馬は上空から放たれた光が水田を更に打撃したのが見えた。ナンバーズの爆発の余波を耐えた水田は2撃目には耐え切れず地面を転がる。 

 しばらく眼を回していた水田は頭を左右に振りながら起き上がり、無表情、困惑と表情を次々に変え、呟き始める。

 

「俺は奪っていく奴に勝つんだ、違、勝たなきゃいけない。勝って全部ぶっ壊して、違う。ぶっ壊して、ぶっ壊すん、そうじゃない!」

 

 これは自分の意志ではないと、こんな物を望んでいないと、こんな全てを壊してまで願う事ではない。そう吠える。

 

「俺は⋯⋯俺はクェーサーと一緒に勝つんだ! こんなよく分かんねえもんに操られてたまるかぁ!」

 

 水田の叫びに弱く点滅していたナンバーズの刻印が薄くなり、消える。

 

「ナンバーズの刻印が消えた?」

 

 決闘を横から静観していた最上は驚きの声をあげる。

 裕はまるで今まで夢でもいていたかのように目を何度も瞬かせ、目を擦り、頭を振り、

 

「そうだ、俺、なんかに飲み込まれる夢を見て、そんで…………どうなったんだ?」

 

 ナンバーズによって強化された感情に振り回された記憶が無い裕はどうしてこの場所に居るのかと首を横に捻る。

 その上で周りを眺め、巨大な目玉と目が合った。

 目を限界まで広げ固まる裕、それを見たアストラルはナンバーズに操られていない事を確信し、遊馬へと聞く。

 

「どうやら正気を取り戻したようだな、遊馬、これからどうする?」

 

「どうするもこうするも、決闘の続きをやろうぜ!」

 

 遊馬の言葉に裕は目を見開き、笑みを浮かべ、そして場のビッグアイを敵のように睨みつける。

 

「おう、俺もちょうどその目玉野郎を殴り飛ばしたい気分なんでちょうど良い、よく分からない状況だけど、決闘だ!」

 

「へへっ、俺はビッグアイを守備表示に変更してカードを2枚伏せてターンエンドだ」

 

遊馬場   No.11ビッグアイ DEF2000 (ORU0)

LP1000  No.39希望皇ホープ ATK2500 (ORU2)

手札2    伏せ2

 

裕場     シューティング・クェーサー・ドラゴン ATK4000

LP1000  

手札0     

 

「俺のターン、ドロー、俺も貪欲な壺を発動、クラウソラス、クェーサー、シューティング・スター、ロード・ウォリアー、フォーミュラ・シンクロンを戻し2枚ドロー。よし増援を発動!」

 

 遊馬と同じように墓地からカードを戻し、デッキからカードを加える。

 それはシンクロモンスターの連打の前準備だ。

 

「デッキから戦士族、ジャンク・シンクロンを手札へと加え、召喚。召喚時効果で墓地からアンノウン・シンクロンを特殊召喚する」

 

 行くぜ、そう呟き裕が笑顔でデッキを回し、遊馬も次に現れるのはどのようなシンクロモンスターなのか目を輝かせて見守る。

 

「クェーサーのレベルを下げてレベル・スティーラーを特殊召喚、レベル1のアンノウン・シンクロンにレベル1のアンノウン・シンクロンをチューニング。レベル2、フォーミュラ・シンクロン。フォーミュラの効果で1枚ドロー。更にクェーサーのレベルを下げてレベル・スティーラーを特殊召喚する」

 

 恐ろしい速度で墓地を行き来する天道虫、そして場にレベル・スティーラーとフォーミュラ・シンクロンが揃ったとき、遊馬の顔に焦りが浮かぶ。

 

「行くぜ! レベル1のレベル・スティーラーにレベル2のフォーミュラ・シンクロンをチューニング、シンクロ召喚、霞鳥クラウソラス! クラウソラスの効果発動、ビッグアイの効果を無効にし攻撃力を0にする!」

 

 再びばら撒かれる羽根により力なく地面に落下したビッグアイ、先程と全く同じように見えるが状況が違う。まだシンクロ召喚の連打は終わっていない。

 

「更にクェーサーのレベルを下げてスティーラーを特殊召喚、レベル3のクラウソラスとレベル1のレベル・スティーラーにレベル3のジャンク・シンクロンをチューニング、シンクロ召喚、レベル7、ジャンク・アーチャー!」

 

 光の中、現れたオレンジ色の弓兵は矢を番え、ホープへと狙いを定め放つ。

 

「ジャンク・アーチャーの効果発動、相手のモンスター1体をエンドフェイズまで除外する!」

 

 矢が突き刺さったホープは異次元へと飛ばされ、これによって遊馬の場を守るカードは伏せカードのみとなる。

 

「バトル、クェーサーでビッグアイを攻撃!」

 

 恒星龍が空を飛ぶ。

 手には2握りの光剣を生み出し、1振りでビッグアイを両断する。

 そしてもう片方の手を振り上げ、遊馬目掛けて振り下ろす。

 

「トラップ発動、和睦の使者!」

 

「クェーサーの効果で無効だ!」

 

 遊馬の眼の前に展開した罠に即座に打ち払いの光がくる。

 止める物が無くなった光剣がぶち込まれ、打撃音、砂煙と衝撃がぶわっとひろがり視界を覆う。

 

「さて、これで……」

 

 勝ったかと裕は思い近づこうと足を踏み出すと裕の耳に咳き込む様な音が聞こえる。

 そして砂煙を払いのけるように遊馬の前に身の丈ほどの盾を持った戦士が立っていた。

 

「俺は手札からガガガガードナーの効果を使った! このカードは相手の直接攻撃を受けたとき、このカードを手札から特殊召喚する!」

 

「だったらクェーサーでガガガガードナーを攻撃だ!」

 

「ガガガガードナーのもう1つの効果発動、このカードが攻撃対象になったとき、手札を1枚捨てることでこの戦闘では破壊されない!」

 

 ガガガガードナーの盾が遊馬の手札を吸収し盾が更に巨大に変形し光剣を受け止める。

 そのままクェーサーが膂力で押し込もうとするも、盾を破壊しきれず光剣と盾は共に砕け散った。

 

「だったらジャンク・アーチャーでガガガガードナーを攻撃!」

 

 遊馬の手札は無く、ガガガガードナーの効果は使えない。

 放たれた矢はガガガガ―ナーの額へと狙い、正確に中心を穿った。

 

「このまま、ターンエンドだ」

 

裕場      シューティング・クェーサー・ドラゴン ATK4000

LP1000    ジャンク・アーチャー ATK2300

手札2    

 

遊馬場     No.39希望皇ホープ ATK2500 (ORU0)

LP1000    

手札0     伏せ1

 

「楽しいな、凄く楽しい、久々に凄く、凄く楽しい!」

 

 伏せるカードが無く悔しげな表情をしながらも裕は満面の笑みを作っていた。

 それにつられるように遊馬も笑顔を見せる。

 

「ああ、俺もだ、だけど勝つのは俺だ!」

 

「いいや、俺が、じゃなかった、俺とクェーサーが勝つんだ!」

 

 2人は競い叫びながら、声を張り上げる。

 そして遊馬が後ろへと走り助走距離を作る。

 

「かっとビングだ、俺ぇっ! ドロー!!」

 

 遙か後方から助走をつけ、全力で飛び上がった遊馬はカードを引き抜く。カードを見た遊馬は笑顔を浮かべる。

 そしてバランスを崩しながらも地面に立った遊馬は、

 

「行くぜ! この力が勝利の道を切り開く! 俺は希望皇ホープでオーバーレイ・ネットワークを再構築、カオス・エクシーズ・チェンジ! 現れろCNo39希望皇ホープレイ!そしてホープレイの効果発動、オーバーレイユニットを使いジャンク・アーチャーの攻撃1000ポイントダウンさせホープレイの攻撃力を500ポイントアップさせる、オーバーレイチャージ!」

 

「クェーサーの効果、その効果を無効だ!」

 

 恒星龍の放った光剣とホープレイの振るう光剣が正面から衝突し、周囲へと火花と光を振りまいていく。

 鍔迫り合いを続けるうちにホープレイの光剣は罅が入り、破砕音を響かせ砕ける。

 

「俺は罠カード、エクシーズ・リボーンを発動! 墓地よりモンスターエクシーズを特殊召喚する。甦れ希望皇ホープ! そしてこのカードはホープのオーバーレイユニットになる! バトルだ、俺は希望皇ホープでシューティング・クェーサー・ドラゴンを攻撃!」

 

 ホープの振るった刃をクェーサーは手で受け止め、もう片手から光の柱をホープへと振り下ろし両断を試みる。

 裕が知っている限り、このタイミングでホープが攻撃を仕掛けて来る訳を1つしか思いつかない。

 

「オネストかッ!?」

 

「いいや違うぜ! この瞬間、希望皇ホープの効果発動、オーバーレイ・ユニットを一つ使い攻撃を無効にする!」

 

 ホープの持つ最後のオーバーレイユニットが剣へと消え、刃は空中で消失する。

 

「なんで!?」

 

「攻撃が無効になったとき、俺は速攻魔法、ダブルアップ・チャンスを発動! 攻撃が無効になったモンスターの攻撃力を2倍にしてもう1回攻撃が出来る!」

 

 そしてホープの腰に新たな二刀が出現する。

 上より盾に振り下ろされる光の柱を避け、加速するように周りを駆け巡り腰の二刀を抜き放ち、ホープはクェーサーへと切り掛かる。

 

「いっけえホープ、シューティング・クェーサー・ドラゴンを攻撃、ホープ剣・ダブルスラッシュ!!」

 

 光の軌跡を描く2刀は恒星龍を捕らえ、切り裂かれた恒星龍は無念の声を響かせながら爆発する。

 爆風は裕を飲み込み、決闘の終了のブザーが鳴った。

 

No.39希望皇ホープ ATK2500→5000 VS シューティング・クェーサー・ドラゴン ATK4000

水田裕 LP1000→0

勝者 九十九遊馬

 

                       ●

   

「チックショー! 負けたー!」

 

 爆発で転がった裕は体を大きく伸ばし悔しそうに叫ぶ。

 

「勝ったぜアストラル!」

 

「遊馬、ナンバーズを回収していいか彼に聞いてくれ」

 

「おう、あのさナンバーズを渡してくれないか、それ凄く大事な物なんだ」

 

 そう言われた裕はすぐに墓地にあるナンバーズを手にし遊馬へと渡し、

 

「おう。ありがとう」

 

 遊馬と力を貸してくれたナンバーズへと感謝する。

 そして負けた悔しさを吐き出すように息を吐き、展開されたままの決闘盤の上、置かれたままのクェーサーを手に取る。

 

―――この決闘やら他の決闘をあんまり良く覚えていないけど遊馬がナンバーズをぶっ倒した時、クェーサーに怒られた気がする。もっと俺は頼りになるから頑張って出せって、浮気すんなって言われた気がするなぁ。

 

 言われたような気がするであり、気の迷いの様な物なのかもしれない。

 それでも裕は自分が信じたい事を信じ、クェーサーへと感謝し自然に、心の底から笑顔を浮かべる。

 

「そっか、じゃあアストラル、頼む」

 

 半透明の腕が彼の胸へ吸い込まれ、裕の体に入り込んでいたナンバーズの力の残滓を取り出した。

 だがその行動を裕は見えていない。

 ナンバーズというカードを渡せば終わりなのだろうと思っていた裕は先ほどのより宙に向けて話す遊馬へと聞く。

 

「それよりアストラルってなんだ、それにさっきからどこに向かって話してんだ?」

 

「えっとそれはな、俺の相棒みたいなもんで……」

 

 遊馬がアストラルについてかなりフワフワな説明をし、裕はそれで納得した。

 

「なるほど俺でいうクェーサーだな。やばいときはクェーサーに祈ると良いカード引けそうな感じになるしそういうもんだな!」

 

「いやそういうものじゃなくて実際にいるんだがなぁ……」

 

 まあいいかと遊馬は笑いだし、その笑いは裕へと伝播する。

 2人で声を揃えて笑ってい、打ち解け会話を始めた2人、そして今の今まで隠れて観戦していた黒原達はバンへと乗り込んでいく。

 その動きの中でエヴァが1人は慣れて、裕へと近寄りじろじろ眺め、

 

「水田、俺らは帰るけどお前はどうする?」

 

「もうちょっとここでゆっくりしていくよ。それよりもありがとな。なんか色々迷惑を駆けちまったみたいだ」

 

「気にすんな、うちのボスと最上の対決にお前は巻き込まれただけなんだろ」

 

 裕はその言葉を受け感謝の言葉を言返し、ふと貰ったままにしていた連絡先を取り出す。

 

「あっ、そうだ。今度一緒に遊びに行こうぜ。どっか面白い場所教えてくれよ」

 

「おう! 町の面白いとこにたくさん案内してやるから覚悟しとけ!」

 

 そう言ってエヴァはこちらの背中を力強く叩き、バンに乗り込んでいく。そして最後に残ったのは最上だ。

 彼女はこちらを見て、

 

「うやむやにはなったが介入してナンバーズが手に入らないって事も分かったし、黒原とも話を付けれた。カードは約束どおりお前にやる。いつかまた、お前の力が必要になったら頼るからそう思っとけ」

 

 言いたい事だけを一方的に言い捨て、最上hあ踵を返しバンへと歩いていく。

 

「最上っ」

 

「なんだ、恨み言でも言うか?」

 

 背中からかけられた裕の言葉に最上は首だけを裕に向ける。

 キラリキラリと髪が日の光に輝く中、裕もずtっと言いたくて言えなかった事を言う。

 

「これだけは言っておかないといけないって思って。カードをくれて、色々戦略を教えてくれてありがとう。だけど、いつか絶対にお前を倒す」

 

 明確な宣戦布告、それを受け最上は笑い声を響かせる。

 可笑しくて可笑しくてしょうがないというように、腹を尾さえ目に涙を浮かべ、

 

「ああ、やれるもんならやってみろ」

 

                    ●

 

 裕を置いていき走り出したバンの中、最上と黒原は話し込んでいた。

 

「さてナンバーズの能力も分かったし、持っているだけで色々な効果も有るってことも分かった。それでどうする?」

 

「僕達にはナンバーズを奪うことはできない、手に入れても暴走するだけっていうんならこのまま静観するべきだな」

 

 シートへと体を預ける黒原、その言葉や態度には不満が隠さず示されている。

 そこを聞き、最上は口元を吊り上がらせる。

 

「じゃナンバーズが回収出来るようになったら?」

 

「……そしたら介入しようかな、できたらだけど」

 

 返された言葉、それを満足げに頷き、最上は裕と遊馬の決闘中にDパッドに送られてきたメールをもう1度見て、

 

「じゃ、よからぬことを始めようではないかぁ」

 

「一応真剣に話しているんだからネタに走るの止めようよ」

 

 黒原はちゃかすような最上へと批判の視線を向ける。

 それを受けた最上は冗談の通じない奴だ、と呟き、メールの文章を黒原へと見せる。

 

「私は面白そうだから参加するが、黒原、お前はナンバーズハンターになるか?」


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