魔界の大魔王(笑)として転生したが、ドラクエ世界ではなく恋姫†無双の世界に転生したのはおかしいんじゃないかな!?   作:てへぺろん

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明けましておめでそうございます!今年はいい年になるといいですね。


アンケートは終了いたしました。投票してくださった皆様に感謝いたします!


それでは……


本編どうぞ!







董卓軍VS反董卓連合

 「……さ……」

 

 「……」

 

 「……麗羽様!」

 

 「――ッ!?な、なんですの猪々子さん?」

 

 「なんですのって、麗羽様の指示待ちっすよ?」

 

 「そ、そうでしたわね……さ、さぁ皆さん!雄々しく、勇ましく!そして華麗に董卓を打ち滅ぼすべく出陣しますわよ!!」

 

 「(麗羽さま……どうしたのでしょうか……?)」

 

 

 袁紹は命令を高らかに宣言した。文醜に声を何度もかけられるまで彼女は上の空だった。顔良も様子がおかしい袁紹のことが心配になっていた。周りも彼女を挙動不審に感じた者は多いだろう。しかし今はそれよりも気になる存在がいる。その存在というのは……

 

 

 「な、なんだよ……あれ……」

 

 「俺に言うなよ……」

 

 「人間……じゃないよな……」

 

 「味方……だよな?」

 

 

 ガヤガヤ……ざわざわ……

 

 

 「……」

 

 

 連合軍の一片に佇む異形の老人の姿がそこにあった。

 

 

 俺自身の存在が浮き彫りになったことで、軍部内で出回った俺の容姿に初めは半信半疑だった兵士や軍議に参加していなかった諸侯らも今や俺を見て落ち着きがない様子だった。馬もどこか落ち着きがなく息が乱れていた……元々連合軍として集まったが、それぞれの諸侯が己の目的に集まってついでと言わんばかりに董卓を討伐するような状態だったのだ。元々息が合っているわけもないし、袁紹の部隊なんて驚くべき事に軍の連中全員が、金の鎧を身に纏っていた。この時代に加工技術などあるわけもなく、金そのものと言っていいだろう。それが兵士にも全員金ぴかだらけで遊園地のパレードかと思った程だ。その袁紹はと言うと、自分が総大将になって大喜びと思いきや意外と落ち着いていたし、視線は目の前の汜水関よりも俺の方を窺っている様子が見て取れた。この中で俺だけが人外だから誰だって気にするよな……周りの視線が辛い……

 

 

 「おや?主どうしました?」

 

 

 隣にいる趙雲が一早く気持ちの変化を感じ取り一声かける。

 

 

 「……なんでもない。それよりも白蓮はどうしたのだ?」

 

 「白蓮殿は張りきっていますぞ。なんたって主に見守られているのですから気合が入っているようですぞ」

 

 

 白蓮は先鋒(せんぽう)として桃香達と孫呉の連中と共に進軍している最中だ。朱里と雛里の策により挑発にのって現れた華雄を囮に城内の敵を引きずり出す作戦は上手くいった。そこをついて汜水関に攻め入っている状態である。しかし相手もそう簡単には通してくれずぶつかっている状態である。そんな時に俺と星は何をしているかって?袁紹からの通達で俺は待機だとよ。俺が活躍したら自分の立場がなくなると思っているのだろうか?真意は不明だが、今は護衛として星を引き連れて待機しておくしかない。いざって時に向かう準備は既にできているしな。しかしこうしてみると大人数での戦は目を見張るものがある。

 白蓮による白馬の騎馬部隊が戦場を駆け巡り、孫呉の屈強な兵士達が敵をなぎ倒していく。相手側も奮闘しているため数で劣っていても士気は最高潮と言っていいだろう。そして白蓮の部隊も背中に俺が見ているため不甲斐ないところを見せないように奮起しているのがわかる。白蓮含めあの部隊の連中は俺にぞっこんだからな……桃香達がついていけてないように見えるな。俺の存在一つでここまで変わるとは……凄いな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「はっ!ミルドラース様に褒められた気がする!!こうしてはいられない、私自ら先頭に立ってもっと活躍しないと!!」

 

 「はわわ!?白蓮さんお、おちついてくだしゃい!」

 

 「あわわ!?い、いまは……堪えてくださいお願いしましゅ!」

 

 

 異常に士気が上がった公孫賛を宥めるのに奮闘しているちびっ子軍師達であった。ともあれ策が上手くいき戦況は数が勝っている連合軍に優勢であり、陥落するのは時間の問題であった。

 

 

 「……」

 

 

 矢も飛んで来ない安全な後方で支援する形で待機していた劉備の視線は汜水関へと向けられていた。矢が飛び交い剣同士が交差し血しぶきが飛び散り、人の命が散っていく……仲間が打ち倒されても逃げ出すこともせずに果敢にそれ以上進ませないと奮起する敵兵の姿が瞳に映る。遠くからでもわかるぐらいに今の董卓軍には熱気があった。そんな光景を彼女はただ見つめているしかできなかった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「くっ!私としたことが……!」

 

 「今はそんなこと言うてる場合とちゃうで!はよ撤退するんや!!」

 

 「くそ!」

 

 

 汜水関を守護していた華雄と張遼は勝ち目がないと悟り撤退した。

 

 

 案の定、汜水関は陥落した。そして汜水関の戦いから二日後に連合軍が最後の要である虎牢関にまで押し寄せた。初日は奮闘した公孫賛と劉備らは功を立てすぎて後方へと回されることとなり、ミルドラースも戦場に出ることなく終わった。次の日に曹操と孫策率いる軍勢により汜水関は頑なであったが、董卓軍勢は撤退を余儀なくされ、現在は虎牢関の前には連合軍が攻め入る準備を整えていた。

 

 

 そんな中で出番がなかったミルドラースは自軍の天幕内で……

 

 

 「気持ちいいのだ♪」

 

 「はわわ♪」

 

 「あわわ……ですぅ♪」

 

 

 幼女三人を膝枕中であった。汜水関が陥落すると戦場を駆けた小柄な張飛は疲れた体を癒すためにお気に入りとなったミルドラースの膝枕を所望したのだ。すると諸葛亮と龐統との約束もあったのでついでのつもりで誘ったのだが、膝枕と頭を撫でられる感触が意外と気持ち良かったのか二人もご満悦のご様子だ。お爺さんが孫を膝枕している光景に見えて周りの者達はほっこりとしていた……のだが、一人だけは周りとはかけ離れた様子であった。

 

 

 「ガルルルル!!!」

 

 

 公孫賛である。汜水関攻めの時は戦で手が離せなくミルドラースとはほとんど会えないでいた。汜水関が陥落した後、ここまで来るまでも休息など無く、虎牢関攻めは他の諸侯に任せてゆっくりとミルドラースとの時間を過ごそうかとしていたところに先を越された次第であった。そのためにご立腹の様子で狼のように唸り声をあげている。

 

 

 「おや?これは白蓮殿どうかなされたか?『白馬長史』ともあろうお方が、馬ではなく狼とは面白いですな」

 

 「星……こいつらを斬れ

 

 「白蓮殿!?」

 

 

 趙雲の揶揄いも耳に入らず、斬首命令を出す公孫賛に驚愕する関羽は慌てている。冗談にも思える発言だが、張飛達を睨む瞳は本気であった。

 

 

 こらこらやめろって……俺の目の前で首が飛ぶとか本気でやめてください。そんな怖い瞳で睨んだら鈴々達が怯えてしまうだろうが……

 

 

 「……やめよ白蓮」

 

 「――ッ!はい!」

 

 

 ミルドラースが注意すると公孫賛は素直に引き下がる。彼女にとってミルドラースが全てであり彼の命令は絶対的な力を持っているのである。彼から言われたら彼女も大人しく従う程に心酔しているのである。なんとか大事には至らなかったものの公孫賛の暴走に悩まされるミルドラースである。そんな時に劉備が天幕内へと入って来た。しかし雰囲気は暗く、その表情は曇っていた。

 

 

 「……ミルドラースさん……白蓮ちゃん……」

 

 「桃香か、どうしたんだ?元気がないじゃないか?」

 

 

 学友の曇った表情を見て公孫賛は声をかけた。

 

 

 「……私達のやっていることって正しいのかなって……思っちゃって……私は人を助けたいって思ってこの戦場に出たけど、董卓さんのしていることって悪い事のはずなの。でもあの人達を見ていると董卓さんに脅されている目じゃなかった。亡くなった方も最後まで戦っていた……そうだよね愛紗ちゃん?」

 

 「……そうですね、最後まで自身が仕える主のことを思って準じて亡くなって逝ったのだと思います」

 

 「それでね……本当に正しいのかなって思ったの。もし本当に悪政を行っているなら董卓さんは許せないけど、もしも私達の勘違いだったりとかしたらどうしようと。戦っている様子を見ていて心が動かされたって言うか何と言うか……わからなくなっちゃって……これ以上命を失っていくのを見てるのが辛い……どうにか話し合いで解決できないかなって……」

 

 「「「「「……」」」」」

 

 

 劉備は胸の内をさらけ出した。董卓が悪政を強いているというのを実際に見たわけではない。それでも彼女は思わずにはいられなかった。彼女は優しすぎる故に現実を見ることを拒絶する……これ以上血を流したくないのだ。しかし今更思っても汜水関を落とした時点で沢山の戦死者や負傷者が出ている。戦争には生き死には付き物であると劉備だってわかっているはずなのに、彼女の心は理想を抱いている。その理想はまさに今の時代では夢物語を語っているもので現実味がない。争いを無くし、誰もが平和に暮らせる世の中……誰もがそうなればいいと思っている。だが、現実は血を流さなければどうしようもないし、死は避けられないもの。連合軍の立場である以上総大将でも勝手なことなどできない。ここまで来て連合軍から抜け出るという行為も愚かなことである。

 どうすればいいのかわからなくなってしまったのだ。疑問と不安に駆られてこのことを聞いてもらおうとここへやってきた。

 

 

 桃香には曹操や孫策のような決断力はまだ備わっていない……朱里と雛里もいるが、今は連合軍に属している為に好き勝手に行動すれば周りから睨まれる可能性はゼロではない。最悪向こう側についたとなればあの袁紹のことだから董卓もろとも潰しにかかってくるかもな……けれど桃香の理想は俺は嫌いになれない。その優しさに魅了されて愛紗や鈴々、朱里と雛里も桃香についているんだ。白蓮も星も……そして俺もいる。現実を見なければならないが今回は董卓が嵌められた形だしな。それに次は虎牢関ならあの子が出てくるはず。武力では誰も止めることが出来ない存在……

 

 

 脳内に影が浮かぶ……大陸最強の武人の姿がそこにあった。

 

 

 呂布奉先……言葉に表すならば『最強』これほど相応しいものはないし、誰もがそう言うだろう。人間では決して到達することができない領域に足を踏み入れた人物だ。その武で何百何千と敵をなぎ倒し、その武を見た者は恐怖し逃げ惑う。彼女に勝てる人間などこの世にいない……そう人間ならば。

 

 

 ……以前の俺ならば彼女の姿を思い出せば一目散に逃げだす準備をするだろうが、今はそんな感情など現れない。寧ろ会いたいと心がざわついていた。今の俺は人ではない……心臓があるのかわからないが高鳴るのを感じた。最強の武に挑んでみたい……心の底から熱が湧き上がるように俺は立ち上がる。

 

 

 「にゃ!?」

 

 「はわ!?」

 

 「あわ!?」

 

 

 急に立ち上がったことで張飛達が膝から滑り落ちる形になるがミルドラースは今はどうでもいいとさえ感じていた。ただ虎牢関に浮かぶ最強の武人の姿を求めて歩き出す。

 

 

 「ミ、ミルドラース……さん?」

 

 「……誰も死ななければいいのだろ?」

 

 「えっ?」

 

 

 劉備に一言だけ声をかけてミルドラースは天幕から出て行った。あまりのことに全員ポカンとしているしかなかった。

 

 

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 「敵が迫って来てるで!ここで抑え込まんと洛陽になだれ込まれるだけや!後がないからみんな頑張りどころやで!!」

 

 「「「「「おおー!!!」」」」」

 

 

 張遼は兵士達を鼓舞する。汜水関は守り切れずに連合軍に乗っ取られる形となり、張遼と華雄は退却した。しかしこれも作戦の内で、本番はここ虎牢関での戦いで決着を付ける手はずだ。

 

 

 「霞、こっちも準備万端だ」

 

 「わかったで!でも華雄、今度は挑発されても我慢せいや。失敗は許されへんのやから」

 

 「わ、わかっている……」

 

 

 汜水関ではまんまと挑発に乗ってしまい開門してしまうという失態を犯した。張遼に救出されて何とか命は繋がったものの危うく味方もろとも敗北してしまうところだった。釘を刺されてしまった華雄はしょんぼりとしてしまう。

 

 

 「張遼様、兵の配置整いました!」

 

 「ご苦労さん、あんたも配置に付き」

 

 「はっ!」

 

 

 兵士は持ち場に戻り後は連合軍を迎え撃つのみ……だったのだが、予定が一つ狂っている。張遼は壁際にうずくまって縮んでいた呂布の存在だ。大陸最強の武人と言われている彼女だが今の姿を見てしまうとそんなすごい人物とは思えない。普段の姿を知っている張遼や華雄から見ても普段は無口で大人しい呂布であるが、ここまで何かに怯えるのは見たことがない。傍には陳宮が何度も声をかけて元気づけようとしていた。

 呂布には家族が大勢いる。董卓や賈駆も呂布は家族として見ているが、その他にも動物たちがいる。様々な理由で捨てられた動物たちを保護し続けていつの間にかその数は何匹にもなっていた。今は洛陽の呂布の家に隠れているし、呂布の愛犬であるセキトが番をしている。この虎牢関が落とされ連合軍が洛陽に流れ込めば動物たちにも被害が出るかもしれない。連合軍が結成されていると知ると、自分達を養ってくれた董卓や動物たちの為にも力を振るうことを覚悟していたはずだったのだが、その覚悟は今は影も形もなかった。

 

 

 「恋殿大丈夫です!ねねがついています!だから何も怖くないのです!」

 

 「……」

 

 「霞、私が見たところこの前よりも震えてないか?」

 

 「ああ……恋ちんどないしたんや?恋ちんがおらんと虎牢関は守りきれへんのや。ここが落ちたら後は連合軍の輩が洛陽になだれ込んでしまうんや。だから……力を貸してほしいねんって!!」

 

 「……」

 

 

 張遼の必死な声に呂布は静かに立ち上がった。微かに震えているがその瞳には覚悟が戻っていた。不安も残るが陳宮をはじめ張遼も華雄も呂布の復活に喜んだ。

 

 

 「ちょ、ちょうりょう様ー!!!」

 

 

 そんな時に慌てふためく兵士が駆け寄って来た。只ならぬ様子でやってきた兵士の様子に鎮まった不安がまた増してしまう。

 

 

 「どうした!?何があったんだ!!」

 

 「華雄様、それに張遼様!れ、れんごうぐんの……連合軍の一将がこちらに一騎打ちの申し出を要求してきました!!」

 

 「「「――ッ!?」」」

 

 

 その言葉に張遼だけでなく華雄も陳宮も驚きを隠せない。汜水関の時に関羽と名乗る将に挑発されて華雄が飛び出して行ったのを経験している。またもや同じ手でこちらの指揮系統を乱そうとする作戦かと思ったが、何故またと疑問に思う。流石に同じ手は二度も通用しないとわかるはずなのに……華雄本人ですら今回は冷静でいるぐらいに落ち着いている。引っかかる訳はないと……そう思っていた。しかし張遼は相手側がまた華雄を指名すると睨んだがそれは外れていた。何故なら指名した相手が華雄ではなかったからだ。

 

 

 「敵は……呂布奉先との一騎打ちを要求しております!!」

 

 「――ッなんやて!?」

 

 

 華雄ではなく呂布を指名したことに更に驚いてしまう。呂布の存在は噂になるぐらい大陸に広がっている。もしその噂を耳にして興味を持ち、自身の力量を過信しての一騎打ちならば納得しよう……そうであってほしいと願った。しかしそう思えなかった……呂布の様子が先ほどまで何かに怯えていた。そして誰かが呂布と一騎打ちを申し出た。偶然にしては違和感を感じた。そしてそう思わせている一番の原因が只ならぬ兵士の様子であったことだ。

 

 

 「恋殿に一騎打ちを申し込むバカは誰なのですか!早く言うのです!!」

 

 

 陳宮が堪らず声を張り上げる。呂布を敬愛している陳宮にとって許されぬ報告であった。

 

 

 「そ、それが……」

 

 

 兵士は何故か言いにくそうにしていた。言うべきか迷っていると言った方がいいだろう。

 

 

 「どうした早く言え!」

 

 「は、はい!!」

 

 

 華雄にせかされて兵士はこう言った。

 

 

 「()()()()()……()()()()()()と名乗っていました」

 

 「「「………………はっ?」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「な、なんだあれは……!?霞は知っているか!?」

 

 「ウチに聞かんとって!あんなん知るわけないやろが!!」

 

 

 城門から戦場を見渡せる位置へとやってきた張遼達だったが、そこには一騎打ちを申し出た人物が堂々と立っていた。傍には赤髪の女性と水色の短髪女性も共に居たが、一人だけがその場にいるだけで感じさせる存在感を放ち、ジッと静かに佇んでいる。

 老人にしては異常な姿をしていた。その姿を見た兵士達は動揺を隠しきれない。華雄も張遼も眼下に存在しているはずなのに、自分達が見下ろされているような錯覚を覚えてしまう程の威圧感に跪いてしまいそうだった。そして張遼はその老人に対して一つの感情を抱く……

 

 

 「(恐ろしい……あんなんと戦ったら勝てるのか……いや、勝てるわけはない。そう決めつけてしまえる程にウチの体が警告を鳴らしている!)」

 

 

 自分の感じた感情を察してしまった張遼は思い出す。先ほどまで()()に怯えていた少女がいたこと、そしてその()()を理解してしまった張遼は少女へと視線を向ける。

 

 

 「――ッ!!!」

 

 

 少女の手に持つ方天画戟が音を立て体が震える。冷や汗を流して呼吸が途切れ途切れで乱れている……見たことも無い呂布の姿に周りの者達の不安は現実のものとなった。

 

 

 「恋殿!?恋殿!!!」

 

 「――ッ!ち……ちん……きゅ……?」

 

 「良かったのです!恋殿にはねねがついていますから怖がらなくていいのです!!」

 

 

 陳宮の必死の呼びかけと言葉に我に返った呂布。少し落ち着きを取り戻したところではあるが、これで呂布が怯えていた正体を掴むことができた。しかし誰もが予想だにしていない存在からの申し出がこの場を混乱させる。

 

 

 「呂布が怯えていたのはあれか……確かにあれは……」

 

 「せやな華雄……ウチもあれとはやりあいたくないわ」

 

 「恋殿!あれには関わってはいけないのです!一騎打ちの申し出なんて無視するのです!!」

 

 「お、お待ちください!」

 

 

 報告しに来た兵士が割り込んだ。まだ伝えていなかったことがあるらしい……

 

 

 連合軍の申し出はミルドラースと呂布奉先が一騎打ちをして、ミルドラースが勝てば降伏する条件であり、呂布が勝てば連合軍は撤退して今後一切関わらないとの条件であった。

 この条件を蹴るには決断を迫られた。兵士数もこちらが不利であり、連合軍には得体の知れない存在がついている……少なからず呂布は大陸最強と言われている。実際に連合軍が呂布一人に攻めかかろうとも倒すことができるか不明である実力を保有している。それに一騎打ちに勝てば連合軍は戦場から撤退し関わらないとのことだ。しかも総大将である袁紹が真名に誓って約束を破らないとの報告まで告げられた。

 

 

 この世界で真名に誓うとは約束を反故に出来る訳が無い程の拘束力を持つ。しかも名門袁家と言う自身の家柄に執着する袁紹が誓うのだからそれこそ約束を破れば名が地に落ちることになる。彼女ならばそんなことは絶対にしないと言う確証があった。それ故にこの条件を逃すのは惜しい……だが負けた時のことを嫌でも考えさせられる。今度の相手は人ではない何かなのだから。

 

 

 「……」

 

 

 張遼は考えた。この場にいない賈駆ならばどう指示を出すか脳の片隅まで使って絞り出そうとした時だった。

 

 

 「……受ける」

 

 「恋殿!?」

 

 

 呂布が一騎打ちを受けると言った。辺りが静まり返る……

 

 

 「あれとやり合うんか?勝てる見込みはあるんかいな?」

 

 「……わからない。だけど……やるしかない……怖いけど……あれとは……戦わないといけない気がする……」

 

 

 呂布の瞳には新たな覚悟を宿していた。この戦いを終わらせる……そしてみんなを守るという強い意思が伝わって来た。先ほどまでの怯えもなく、方天画戟を握りしめる手には力が籠っていた。

 

 

 「……わかった。好きにせえや」

 

 「霞!?」

 

 「霞殿は何を言っているのです!?恋殿にあれの相手をしろと!!」

 

 「恋ちんが決めたことや。それにあれ相手に作戦が上手くいくかわからんようになった。それに条件も捨てがたい……詠がいたならば恋ちんの判断に任せたはずや……ウチはそう思う」

 

 「「……」」

 

 

 華雄と陳宮は反論できなくなった。自分達には理解できない存在が現れて策が上手くいくかと言ったら不明である。それに呂布を見ればその瞳の輝きに全てを託したくなってくる。

 

 

 「恋ちん……勝ってな」

 

 「……うん」

 

 

 門が開く……呂布は張遼達に背を見送られながら得体の知れない存在の元へと歩いて行く。その姿はまるで強大な闇に立ち向かう挑戦者であった。

 

 

質問です。魔王は一匹で十分ですか?

  • もう一匹で十分だ!
  • 最低もう一匹仲間が欲しいぜ!
  • そんなことよりも次話投降しろ!

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