魔界の大魔王(笑)として転生したが、ドラクエ世界ではなく恋姫†無双の世界に転生したのはおかしいんじゃないかな!?   作:てへぺろん

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遂に表舞台に立つ魔王は一体どんな反応をされるのか……


それでは……


本編どうぞ!




(大)魔王一匹が現れた!

 「魔界の王にして王の中の王 ミルドラースとは私のことだ

 

 

 天幕内から一切の音が消え去った。

 

 

 董卓を打つべく集まった者達で軍議会議を行っていたのだが、連合軍の総大将となった袁紹による一言により幽州で噂になっているミルドラースをここへ連れて来いとのことで劉備に連れられてやってきたのは白いフードを被った老人で会った。傍には趙雲が控えており、老人に何かあれば動けるような立ち位置にさり気なく移動して力を抜いていた。しかし趙雲が動くことはなかった……何故ならこの場にいた白蓮、趙雲、劉備を除く者達は老人の姿を見るなり動けなくなってしまったからだ。

 

 

 特徴的な緑色の肌に角が生えており人に似ているがそうではない。誰もが予想していた人物像とはかけ離れていた……

 

 

 「「「「「……」」」」」

 

 「……」

 

 「え、ええっと……み、みんな……それに……ミルドラースさんも……何かお喋りしてくれたらなって……思っちゃったりして……」

 

 

 劉備は沈黙した空間をどうにかしようとするが彼女にこの場を動かすほどの力量はまだ備わっていなかった……

 

 

 「わかったか、ミルドラース様の存在が如何に偉大であるかを!」

 

 

 公孫賛は誇った顔をしてミルドラースを称えており、この場の空気で明らかに浮いていた。

 

 

 「(………………どうしよう………………)」

 

 

 当の本人はこの場を和ませようにも和ませるような言葉は見つからず困惑するばかりであった……

 

 

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 ……どうすればいいんだよ……この空気……

 

 

 ミルドラースは動けない……全ての視線を独占しているがそれは決して嬉しくないことである。まるで氷の塊(マヒャド)が降り注いだように全員固まっている……否、硬直(アストロン)状態と例えた方がわかりやすいだろう。そんな状況に陥った原因は勿論彼である。彼の存在全てが原因であり、本人は汗を流せるならばびしょ濡れであるのは間違いない。

 

 

 「これでわかったか袁紹殿、ミルドラース様の威光こそが至高だ!」

 

 

 白蓮やめろ!袁紹を挑発するなよ!?この螺旋ドリルすっごい面倒なんだからよ!!

 

 

 ミルドラースは必死に心の中で訴えるが口が動いてくれない……また彼の想いは虚しく散った。

 

 

 「……ッ!」

 

 

 袁紹がわなわなと震えており、控えていた文醜と顔良は慌て始めていた。

 

 

 「お、おいお前!麗羽様に謝れよ!」

 

 「そ、そうですよ!麗羽さまに無礼過ぎます!」

 

 「私は袁紹殿に真の威光を見せてやっただけだ。ミルドラース様の威光はなにものよりも勝るもの……ああ!ミルドラース様の前では誰もが等しい存在として扱われてしまう。でもそれは当然なこと!私だって『白馬長史』と言われているが、そんなものなどミルドラース様の前では塵や屑同然!!

 

 「私も『神槍』と呼ばれたりしているようだが、主の前ではただの趙雲だ。主の前では我らなどただの人にすぎぬのだ。たとえ名門たる袁家当主のあなたであっても……お分かりですか袁紹殿?」

 

 

 おいやめろお前ら!星もここぞとばかりに煽るんじゃない!白蓮もそんな瞳で俺を見るな!!やべえよ怒らせちまったら面倒ごとしか起こらない……すいません心の中で謝っているのでお許しください!!

 

 

 当然この想いも儚く散った。今もわなわなと震えている袁紹は2、3度深呼吸をした後にゆっくりと向き直る。

 

 

 「……ミルドラースさん……でしたわね?」

 

 「うむ」

 

 「……連合軍に参加したからにはあなたにもしっかり働いてもらいますわよ」

 

 「……うむ」

 

 

 意外にも落ち着いている袁紹の姿にミルドラースは内心で首を傾げていた。彼女の性格ならば文句の一つぐらい出てもおかしくはない……人ではない存在に怯えている様子もないことから一体彼女が何を考えていることがわからなくなっていた。

 

 

 「……わたくしは少々用事がありますので失礼させていただきますわ」

 

 「は、えっ!?ちょっと麗羽様!?」

 

 「麗羽さまどこに行くのですか!?」

 

 

 彼女には似つかわしくない神妙な面持ちの表情を浮かべたまま天幕の外へと出て行ってしまった。これには旧知の仲である曹操も困惑を隠しきれてなかった。取り残された各諸侯の面子と場違いな存在のミルドラース……ただ沈黙だけが流れ時間が過ぎていくだけなのか……そんな時にやはり彼女が真っ先に動き出した。

 

 

 「……ゴホン、それでミルドラース……()は何者なのかしら?私達と同じ人ではないようだけど?」

 

 

 曹操だった。公孫賛に睨まれて仕方なく様付けにしている彼女は皆を代表するかのように誰もが思っていたことを本人にぶつけた。人ではなければ妖魔の類なのか妖術使いとも考えられた。その答えをまずは知りたかった……そしてミルドラースの口から出た答えが……

 

 

 「()()()

 

 「「「「「()()……()()()……?」」」」」

 

 

 大魔王……彼女達に聞きなれない言葉であったが、わかることがあった。それはミルドラースと言う存在を示すものであると……彼を象徴する言葉であるということが一同理解できた。妖魔でも妖術使いなど比較にもならない存在であることが体の奥底から本能的にわかってしまったが、それでも知りたいと願う欲が彼に興味を抱かせていった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「そう、そんな時にミルドラース様は私の前に姿を現してくれた……いや、降臨したのだ!この世を変えるため、私達を導くためにこの大地に降臨したのがミルドラース様なのだ!!私は救われた……そして私はその時に見た。ミルドラース様の偉大なる威光を!!私の心はもはやこのお方の為だけに存在している!!!

 

 

 これで何度目だろうか……公孫賛の演説が何度も繰り返され結局はミルドラース自身ほとんど喋ることなく今まで時間が過ぎてしまった。普段の軍議ならば誰か文句を言うだろうがそんな光景はなく、ただ公孫賛の声だけが周りに響いている。

 

 

 「七乃……もう帰りたいのじゃ……!

 

 「お嬢様、今は動かないでもらえますか……あれには関わりたくないものですから……

 

 

 そんな中で小さな体の袁術が怯えた様子で傍の張勲に小声で何かを言っていた。年端も行かぬ子供の袁術が軍議に参加する時点で間違いであると思うが、これでも君主である為に参加しなければならなかった。傍の張勲は袁術の補佐として参加したが、これほど参加したことを後悔したことはなかった。

 目の前には永遠と同じことを繰り返すまるで周りが見えていないかのようにミルドラースとの出会いから今までの経緯を力説している公孫賛が恐ろしく映っていた。話す度に表情豊かに変化していくが、正常ではない表情故にまた恐ろしさを倍増させていた。そして一番恐怖させている存在がずっとどこか遠くを見つめているだけの人ならざる存在だ。袁術は世の中のことなどほとんど知らないが、彼女でもこればかりはわかる……この世の存在ではないと。理解できぬ存在に人間は無意識に恐怖を抱く……彼女もその内の一人である。張勲ですらこの場から釘付けにされたように動くことはできなかった。公孫賛はともかく計り知れない存在がこれ程の将の前でも堂々としていることに危機感を抱いていた。

 

 

 「(お嬢様と一緒に逃げたいのですがねぇ……あれを横切るのは……)」

 

 

 張勲は冷静さを保とうとする……だが視界に映る()()を見れば見るほど体が勝手に震えだしていた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「「……」」

 

 

 孫策と周瑜は警戒していた。この場で騒いでいる公孫賛をなるべく視界に入れずにただ空間を見つめているミルドラースに対してのみ意識を集中させていた。

 

 

 「(……なんなの……なんなの……こいつは……)」

 

 

 孫策は噂の幽州に突如現れた象徴に対して胸を躍らされていた。この軍議で公孫賛と袁紹が言い争い噂の人物を連れて来ると聞いた時には興奮すら覚えていた。だが……いざ目の前に現れたのは人などではなく自身を【大魔王】と主張する存在だった。孫策は内に秘めていた興奮が一気に冷めてしまった……だがそれは興味を無くしてしまったのでは決してない。

 孫策は感じていた……自身の体に意識を向けざるを得ない程に全身から緊張を抜くことができなくなっていた。

 

 

 「(……私が……恐れているですって……!?)」

 

 

 ただ立っているだけ……しかしミルドラースから無意識に放たれる威圧感を孫策は人一倍感じていた。気を抜けば全身を覆いつくしてしまう……緊張を解いてしまえばそのまま孫策の存在もろとも支配してしまうかのように恐怖がすぐ傍にまで近づいているのを彼女は理解してしまっていた。

 周瑜もまた孫策ほどではないにせよ同じように理解していた。

 

 

 「(こやつ……力の底が見えぬ)」

 

 

 洞察力に優れた周瑜でもミルドラースの力が見えなかった。それ以前に何もわからなかった……ただわかるとするならば……

 

 

 「(一番敵に回してはいけぬ相手……やもしれぬ……)」

 

 

 彼女が眼鏡を正そうとした時の手が無意識に震えていることは彼女自身気づくことすらできなかった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「え、ええっと……そ、そろそろみんな準備しなくちゃいけないんじゃないかなぁ……なんてあはは……」

 

 「そうですな。白蓮殿、主、我らも戻りましょう」

 

 「それでミルドラース様が……なんだ星、今良いところなんだぞ?」

 

 「主もそろそろお疲れでしょうからお話はまた今度に致しましょう」

 

 「それもそうだな。ミルドラース様、こっちです!」

 

 「……うむ」

 

 「桃香殿も」

 

 「えっ?ああ……うん」

 

 

 ミルドラースは公孫賛に連れられて趙雲と劉備と共に天幕内から出て行った。その瞬間に凍りついていた空気が発散されて呼吸が楽になった。体から力が抜けてだらしなく机に突っ伏してしまう者もいた。

 

 

 「な、なによあれ……!?あんなの聞いてないわよ!?」

 

 

 そんな中で堪らず声を上げたのは荀彧だった。彼女の知識を持ってしても先ほどの光景は受け入れがたいものであった。それはこの場にいる全員が思っていたことでもあり、現実を見てきた彼女達の前にいきなり存在するかもわからなかった龍が突如現れたようなものだ。しかし龍ならばまだしも大魔王と聞きなれない存在が現れた……乱世に生きる彼女達でも理解しがたく困惑するしかなかった。

 

 

 「……」

 

 

 ガタンッ!

 

 

 「……華琳様!?」

 

 

 曹操は椅子から勢いよく立ち上がりそのままの足で早々と天幕から出て行ってしまった。残された荀彧は慌てて曹操の後を追ったが、彼女の足よりも速く歩きとある場所へと向かって行った……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「隊長、次の戦局をどう見ますか?」

 

 「いや、俺に言われても……」

 

 「沙和も隊長の意見も聞かせてほしいの!」

 

 「せやな、隊長も男や。男ならここはビシッと決めるべきやで!」

 

 「ええ……」

 

 

 北郷一刀は三人の女性と共に談笑している様子であった。一人は体に傷があり、名を楽進(真名は凪)であり、黄巾の乱の時に加勢した功績を認められ、曹操に仕えることになった元義勇軍の将である。そしてもう一人は豊満な胸に変わったドリルのようなものを持っているのは李典(真名は真桜)である。元義勇軍の一人であり、発明が大好きな人物だ。そして最後の一人は眼鏡をかけているのは于禁(真名は沙和)といい、楽進と李典とは黄巾の乱以前よりも友人の仲である。曹操に仕官した三人は今では一刀の指揮下に入り、警備部隊の一翼を担いでいる。

 そんな三人が他愛もない話で盛り上がっているところに彼女はやってきた。一番初めに気がついたのは楽進であった。

 

 

 「華琳様!?」

 

 「――ッなの!?」

 

 「――ッなんやて!?」

 

 

 楽進の言葉に反応した于禁と李典が振り向くとそこには怖い顔をした曹操が立っていた。曹操は傍にいた楽進達には目もくれず意識は一刀にだけ向けられていた。

 

 

 「……一刀」

 

 「な、なんだ……?」

 

 

 睨む形で名を呼ばれた一刀は身に憶えの無い重圧に耐えながら恐る恐る返事をした。

 

 

 「……()()()()()ってあなたは知っているかしら?」

 

 「……はっ?」

 

 「(大真桜……ウチのおっぱいがでかいっちゅうことを華琳様は言っとるんかいな?)」

 

 

 曹操が意外な言葉を口にしたために一刀は思わず思考が停止してしまった。傍では李典が真名が真桜(まおう)なので自分のことかと思ったが、ポカンと口を開けたままの一刀しか見ておらず呆れながら詰め寄った。

 

 

 「一刀は知っているの知らないの?」

 

 「え、えっと……俺が知っている言葉だよな?」

 

 「そうよ。教えなさい」

 

 「い、いいけど……えっと……大魔王ってのは……」

 

 

 一刀は曹操の迫力に押されて困惑しながら知っていることを話すと彼女は浮かない顔をしていたのをこの場にいる全員が目撃していた……

 

 

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 「……」

 

 「なぁ斗詩、麗羽様がずっと黙り込んだままだ……どうすればいい?」

 

 「文ちゃん……私に言われても……」

 

 

 いつもならば高笑いを上げる姿を見せるはずだが、今は黙り込んで地平を見つめるいつもと様子の違う袁紹にどうするべきか悩む文醜と顔良の二人組は顔を見合わせていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『魔界の王にして王の中の王 ミルドラースとは私のことだ

 

 

 あの言葉……あの姿……あの光景が頭から離れませんわ……

 

 

 公孫賛さんの態度に腹が立ったわたくしは恥ずかしながらムキになってしまいました。なぁにが『幽州の英雄』ですって!そんなわけのわからない輩にこのわたくしの威光が薄れるなどあり得ませんわ!直接名門たる袁家の当主であるわ・た・く・しの前にひれ伏させてあげますわ!!

 

 

 ……わたくしはそう思っていました。ですが……あの方を見た瞬間にわたくしは……こう思ってしまいましたわ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『な、なんて……素敵なお方なのでしょうか……!?』

 

 

 名門たる袁家の当主のわたくしが……そう思ってしまいました。あり得ないことのはずなのですけど……おかしいのです。なんですの……この胸の高鳴りは……胸が苦しい!?

 

 

 袁紹は胸の高鳴りを感じた。今まで一度も感じたことのない程に胸がはち切れんばかりに鼓動を鳴らしていた。あの場にいることも我慢できずにそのまま外へと逃げるように去り、現在も鼓動の高鳴りを抑えきれていない。

 

 

 はぁ……はぁ……公孫賛さんの言う通りあのお方の威光がハッキリと見えました。このわたくしが……ひれ伏してしまいそうな……この袁本初がですわよ?わたくしよりも上の存在などあり得ないと自負していましたわ。けれど、あのお方を思い出す度に……!

 

 

 『魔界の王にして王の中の王 ミルドラースとは私のことだ

 

 

 ドクンッ!ドクンッ!!

 

 

 「――ッ!?」

 

 

 グラリと体が揺れて膝をついてしまいそうになった。

 

 

 「麗羽様!?ど、どうしたんっすか!?」

 

 「麗羽さま!?も、もしかして体調が悪いんじゃ……?」

 

 「い、いえ……なんでもありませんわ」

 

 

 傍に駆け寄る文醜と顔良を手で制止して平静を装おうが、二人の目から見てみると袁紹の顔がほんのりと赤色に染まっていた。

 

 

 ………………………………なんなのですの……この苦しさは……?

 

 

 胸の高鳴りが収まらぬまま彼女は戦場に立つこととなった。

 

 

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 「いよいよ……明日ね……」

 

 「詠ちゃん……」

 

 

 そっと一人の女性に肩を乗せて心配そうに見つめるのは反董卓連合のターゲットになっている人物こと董卓(真名は月)本人である。そして董卓の優しさに触れているのは幼馴染の賈駆(真名は詠)であった。

 軍議が終わりこの部屋には董卓と賈駆の二人だけ……そんな中で今まで我慢して来たのか賈駆は溜まっていたものを吐き出している。

 

 

 「月は何もしてないのに……月は悪い事なにもしてないのに……!」

 

 

 悔しそうに苛立ちを含めてまだ見えぬ連合軍を睨む。連合軍は董卓の悪政に正義の鉄槌を下そうと動き出している。だが、実際は董卓は悪政など行っておらず寧ろ民たちから感謝される善政は働いているぐらいだ。それなのにどう言うわけかわからないが大事な幼馴染を討伐しようと各諸侯が集まっている……おそらく董卓を利用して実権を欲しようとする者の罠に嵌められてしまったのだろうと推測される。賈駆はそのことに怒りを覚え、震える拳を今にも机に向かって振り下ろしたいのを我慢しているぐらいに腹が立っていた。

 

 

 「ごめんね……詠ちゃんまで巻き込んで……」

 

 「そ、そんなことないよ!月は悪い事してないのに……連合軍の奴らが悪いんだ!ボクは月を悪いなんて思ってないから!」

 

 「詠ちゃん……ありがとう」

 

 

 賈駆は董卓の幼馴染で大切な存在だ。その董卓に刃を向ける輩に打ち勝とうと仲間を集った。多くの兵士が董卓のために立ち上がり、信頼できる将も武器を取った。

 

 

 昔ながらの付き合いがある華雄、武と義を重んじる張遼(真名は霞)と新たに仲間に加わった賈駆と同じ軍師である陳宮(真名は音々音)にそして……

 

 

 誰もが認める、大陸最強の武人……呂布奉先(真名は恋)彼女がこちらについたのが何よりも運がついていたことだった。無口・無表情で何を考えているのか伝わりにくいが、戦乱の世で大量に発生している捨て犬や捨て猫を集めて飼っており、動物たちを家族と呼んでいる。彼女と偶然に出会い動物達を養うために仕えてもらったことで連合軍の連中に取られることなく済んだ。ちなみに陳宮は呂布に拾われて以来ご執心なのであった。

 しかし先ほどの軍議中に違和感を感じた。ご執心の陳宮以外にも参加していた華雄も張遼、月や賈駆でさえも呂布が何かに怯えている様子を見てしまった。陳宮は勿論のこと、同じ将である華雄も張遼も心配して声をかけたが返って来たのは「……こわい……」と体を縮めていたのを思い出す。あの大陸最強と言われている天下無双の呂布が何かに怯えている……それだけでこの場の空気が重くなったのを感じることができた。結局最後まで呂布が何に怯えていたのかもわからずに心配した陳宮に連れられて出て行った。呂布のことは陳宮に任せるほかないので、華雄も張遼も連合軍を迎え撃つために不安を抱えながらも準備しに出かけることになった。

 

 

 「ねぇ……恋はどうしたんだろうね?」

 

 「恋さん、怖いって言ってたね。震えていたし……」

 

 

 二人は見たことも無い呂布の様子に更に不安を募らせる。連合軍とも合わさって不吉なことが起こる前触れではないかとも思ってしまう。

 

 

 「……不吉だけど、月には指一本触れさせない!ボク達の策で連合軍に打ち勝ってやるんだから!」

 

 「詠ちゃん……」

 

 「(これ以上月に辛い思いはさせられない。実際に手を下すのは、ボクだけで十分だ!)」

 

 

 賈駆は覚悟する。例え連合軍と刺し違えてでも董卓には手出しさせないと決心するのであった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「なぁ、恋ちんはどないしたんやろな?」

 

 「ああ、怖いとか言っていたな」

 

 

 連合軍と対峙する準備をして目指しているのは汜水関。衝突するならばここしかない……張遼と華雄は馬上で軍議の時の呂布について考察し合っていた。

 

 

 「意外やったな。あの恋ちんが怖いと言った時は何かの冗談かと思ったで」

 

 「あいつと戦ったが……私ではまるで歯が立たなかった。そんなあいつが怖いと言うなど考えられないな」

 

 「せやな、ウチも戦ったからわかる。けれどわからんなぁ……なんか不安やでこの戦」

 

 「……そうだな」

 

 

 張遼と華雄の不安はますます募る一方だった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……恋殿、大丈夫なのですか?」

 

 「……」

 

 

 軍議前から様子がおかしいことに気づいていた陳宮の言葉にも反応を見せずにただ空を見つめている。ずっと様子がおかしい呂布の姿を見ていると陳宮もおかしくなってしまいそうだった。陳宮は呂布を敬愛している。それ故に彼女を恐怖させている何かを許さなかった。だがその何かはわからない……連合軍か、はたまた違うものか……いずれにせよ陳宮は彼女のために全力を尽くすと決めている。

 

 

 「(恋殿を怖がらせる奴は……このねねが許さないのです!)」

 

 

 陳宮は決意を抱き、呂布には自分がついているから心配いらないと心から支えるのであった。

 

 

 「……」

 

 

 呂布はそれでも……恐怖を拭い去ることはできなかった……

 

 

質問です。魔王は一匹で十分ですか?

  • もう一匹で十分だ!
  • 最低もう一匹仲間が欲しいぜ!
  • そんなことよりも次話投降しろ!

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