魔界の大魔王(笑)として転生したが、ドラクエ世界ではなく恋姫†無双の世界に転生したのはおかしいんじゃないかな!?   作:てへぺろん

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もう一話だけ投稿しておきます。


それでは……


本編どうぞ!




影が薄い者同士はひかれあうのか!?

 「あ、あの……お、おじいさん……大丈夫ですか……?」

 

 

 つい声をかけてしまっていた。赤い髪のポニーテールの女性が心配そうに老人を見つめている……

 

 

 公孫賛だった。男達に恥辱を受ける寸前のところで現れた一人の老人に恐る恐る近づいていた。

 

 

 「あの……どこか体が痛むのですか……?」

 

 

 不安そうに優しく声をかけた。老人だから体に不自由なのではないか……唸っている姿を見てそう思った。だが公孫賛にはそのことよりも強く思うことが一つあった。

 

 

 【神様

 

 

 人のような姿をしているが肌の色も違い頭から角のようなものが生えている。そして老人から漂って来る今までに感じたことのない威圧感……そして自分の窮地に現れた救世主……数々の要因が重なって彼女はそう思ってしまったのだ。本来ならば信じることなど馬鹿げている。だが……『天の御遣い』という占い師が言った言葉が存在する。

 

 

 『乱世を治める天の使者が流星と共にこの地にやってくる』

 

 

 占い師の言葉が頭に過ぎる。単なる占い師の戯言かと聞き流していたが目の前の存在に公孫賛は息を呑む。

 

 

 何物も寄せ付けぬ威圧感を放つ老人は()ではないことが一目瞭然だ。天の使者ならば姿が違っていても違和感を感じない……だが、見れば見る程その威圧感に腰が抜けそうになる。

 

 

 圧倒的なのだ。老人の瞳を見れば全てを捧げてしまってもいいとさえ思える程の神々しさ、彼が居れば全ての者が彼に尽くす……そう思えてしまう程の圧倒的な存在だった。だから初めは「おじいさん」と声をかけるか悩んだ公孫賛だった。だがそれでも普段通りに老人に接してみることにした……様子見だ。相手が本当に『天の御遣い』かどうかなんてわからないのだから。

 

 

 「……」

 

 

 声をかけてもただ老人はジッと公孫賛を見ているだけだった。見つめられている公孫賛は跪いてしまいたい騒動にかられてしまう。自分と言う存在が、この世界全てがこの老人の為だけにある……まるで信仰心のような感情が彼女を襲った。

 

 

 「……っ!」

 

 

 公孫賛は息を吸い込んだ。自分でも呼吸をし忘れていたことに気づき慌てて呼吸を正す。それほどこの老人に夢中になっていた……

 

 

 ……なんで……?

 

 

 彼女は何故夢中になっていたのかわからなかった。困惑する彼女に聞き覚えぬ声が響いた。

 

 

 「……だれだ?」

 

 

 その声の主は老人だった。今まで一言も声すら発しなかった老人が初めて発した言葉は「だれだ?」と言う質問だった。公孫賛が初めて聞く声だったが、重く鋭い重圧がのしかかったように感じられた。

 

 

 ……なんて……素敵なんだ……

 

 

 はっと我に返る。自分は何を考えていたのかと思った。何故素敵と捉えてしまったのだろうかと更に困惑していると老人の視線がきつくなったのを肌で感じた。老人は待っている……自分が何者かを告げるのを。

 

 

 待ってくれている……待たせたらいけない!

 

 

 本能がそう告げた。この老人の怒りをかってはいけないと体力がないはずの体が告げていたのだ。

 

 

 「私は……公孫賛……姓が公孫、名が賛、字が伯珪です!」

 

 

 力強く自分を知ってもらうように老人にそう告げた。

 

 

 「……公孫賛?」

 

 「はい!」

 

 

 老人が自分の名を口にした瞬間、彼女の心は満たされたような気がした……

 

 

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 「あ、あの……お、おじいさん……大丈夫ですか……?」

 

 

 色々と考察していた時に話しかけてきたのは赤い髪のポニーテールの女性だった。

 

 

 おじいさんってお前……俺はまだ……あれ?俺って何歳だっけ?えっ……もしかして俺自身の記憶はほとんどないのか?そうだ名前……名前が……出て来ない!?嘘だろ俺!!?遂にボケ老人になってしまったのかって今は爺さんの姿だった!ってそんなこと言っている場合じゃない!!!

 俺は何者だ?……やべぇ本当に出て来ない……森に居た時より前の記憶が曖昧だ。名前や年齢はそうだが、どこに暮らしていたとか家族構成とか憶えていない。その代わり俺がプレイしたゲームやアニメ漫画、ドラクエ関係のことについては憶えていた。一般常識を憶えていたことは奇跡だが最悪な事態だ……いや、これを転生と考えればまだいいのではないか?ドラクエの世界に転生してミルドラースに憑依したと思えばまだ気が楽なのではないか!?

 

 

 しかし俺はこの時またしても勘違いをしていた。ここがドラクエの世界などではないと言う事に気づくのはすぐ後のこと……

 

 

 「あの……どこか体が痛むのですか……?」

 

 

 傍で女性が何か言っている……なに?俺が爺さんの姿だからって心配しているのか……老人扱いするんじゃねぇぞコノヤロー!!俺はまだピチピチの……何歳なんだよ俺は!?記憶が曖昧過ぎてわかんねぇよ!!!とりあえずこの女性に事情を聴いてもらおう……信じてはくれないだろうけどな。

 

 

 ミルドラース(仮)の俺は女性に喋りかけようとした。だが、口が動いてくれない……はっ?なんで口が動かないの?ただ「俺は転生したらしくゲームのキャラに憑依してしまったから助けてください」そう言いたかった。絶対信じてくれないけど反応が欲しかった。それなのに口が動いてくれない……どうしてなん?それに俺自身自然と堂々としていることに違和感を感じない……もしかしてあれか?某深夜アニメのようにオンラインゲームのサービス終了時にギルドに残っていた骸骨主人公が異世界転生して自分の性格が自身のアバターの影響を受けて人間に対して感情が薄く冷めてしまったとかそういうものかこれ?だとすると俺はミルドラースのようではなく、ミルドラースになってしまっているってことかよ……マジかぁ……それはそれでありかも。

 

 

 しかしそうなれば困ったことだ。何故か……それは俺の予想では魔王的に振舞わないといけないと言う事だと思う。ミルドラースの役をやれじゃなくミルドラースになれが正しいのかもな。絶対不自由に決まっている。だってドラクエの世界でラスボス務めた俺が町とかで暮らしていけるわけがない。中には魔物と一緒に暮らしている場所があるが見つかるかな……もし勇者に見つかって問答無用で狩られたらシャレにならなんし、勇者と関わらず田舎で引きこもるのが得策だ。よしまずこの女性が誰か聞いてみるか。姿は見たことも無いキャラだが、ドット絵だったからかもしれないし、たまにドット絵からリアルになるとまるで違うキャラとかいるし一応聞いておいた方がいい。それに名前を聞いておかないと何かと呼ぶときに不便だ……ってかなんで息を吐いたり吸ったりしているんだ?この女性の行動がわからん……

 

 

 「……だれだ?」

 

 

 なんか見られている……ずっと見られているんですけど……なに?俺なんか変なこと言った?何も言ってない、ただ「だれだ?」と聞いただけなのに上の空だとこの人……それにしてもこんな綺麗な人を襲うだなんてクズだな。見ろよ肩の部分、手を挙げたら脇見えるじゃん!!エロいって!!その格好じゃ襲ってくださいと言っているもんだぞ……ドラクエ世界の女性って露出多かった気がする……そう思えば控えめだよな。一般村人かな?でも鎧らしいもの着ているしな。しかしどこかで見たことあるんだよなこの人……どこだったかな?

 

 

 俺はこの女性を睨んでしまっていたに決まっている。女性が慌てた様子で答えたからだ。

 

 

 「私は……公孫賛……姓が公孫、名が賛、字が伯珪です!」

 

 

 公孫賛かなるほどな。後漢末期の歴史上の人物ではないかそうかそうか………………はっ?ん……んんん?チョットマッテイマナンテイッタノ?

 

 

 「……公孫賛?」

 

 

 間違いであってくれと願いを込めて再度確認する形で聞き返した。

 

 

 「はい!」

 

 

 ………………………………………………………………

 

 

 

 

 

 ……………………………………

 

 

 

 

 

 ………………

 

 

 

 

 

 …………

 

 

 

 

 

 ……はぁあああああああああああああああああああああ!!?

 

 

 ちょっとどういうことだよ!?公孫賛って三国志に出てくる武将じゃんかよ!!しかも女……性別は男だったはず……いやちょっと待てよ、この顔に性別が女……俺知ってる!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 もしかしてドラクエではなく、『恋姫†無双』って世界じゃないですかね?

 

 

 『恋姫†無双』

 

 

 三国志の世界を舞台としたアドベンチャーゲームだが、武将を初めとした登場人物が、本作ではほぼ全員女性として登場するアダルトゲーム。また、ゲーム独自の設定として女性武将は【真名(まな)】という姓・名・字以外の名を持つ。この真名(まな)は、本人が心を許した証として呼ぶことを許した名前であり、本人の許可無く真名(まな)で呼びかけることは、問答無用で斬られても文句は言えないほどの失礼に当たるという設定がある世界なのだ。他にも細かいところがあるが今はこれぐらいでいいだろう。

 

 

 そして俺がその世界だとわかったのはある意味で奇跡だった。歴史が疎いはずの俺でもエロゲなら少しはやったことがあり、この顔をよくよく思い出してみれば恋姫†無双に出てくる公孫賛その人じゃねぇかよ!!嘘だろお前よぉ!?俺てっきり初めはドラゴ〇ボールかと思って次はドラクエかと思ったら今度は何の関係もない恋姫†無双の世界でしたなんて冗談きついぞ!!しかも何で俺がミルドラースになっちゃってんのよ!!?世界観守れよどうなってんだよ!!?

 本気でそう叫びたいがそうはさせてはもらえないようだ。自分でもわかるぐらい無表情を貫いて一言も喋らない爺さんの俺……そして精神が鎮静化してもう受け入れてしまうとさえ思えるようになっている。

 

 

 もう……受け入れてしまおう……オレハミルドラース……マカイノオウ二シテオウノナカノオウ……ミルドラースダ。

 

 

 うん……俺は……現実を受け止めることにした。それが一番手っ取り早いから……

 

 

 そういうわけでもういいや……俺はミルドラースってことで話を進めるわ。そんでなんだが……魔王がエロゲに転生とか誰得だよって話だ。いや、日本のエロゲは幅が広くあり得ない話や内容があるからあっても不思議ではない。けれどエロゲキャラを攻略していく魔王とかどんなんだよ!?しかも俺は爺さんの姿でこれはエロゲではなくバカゲーか!?そう言いたいが言えない……もどかしい……それにこの女性……公孫賛に何故か親しみを感じてしまっている自分がいる……それは俺ことミルドラースと同じく影が薄いと言う事だ。

 

 

 悲しい話公式ネタとして董卓軍討伐後に、幕間で袁紹軍に攻められて死んだという一文のみで彼女の死が語られていたり(後にこれは色々なところでネタにされた)袁紹と言う人物にあっさりと自国を滅ぼされてしまう&なんとなくで影が薄く忘れされられていたこともある。つまり影が薄いことが個性として定着してしまった残念で不幸なキャラだ。それを知っている俺は公孫賛にますます親しみを感じてしまう……ミルドラースもネタにされているからな。

 

 

 そんなわけで彼女がいるこの世界が恋姫†無双だと言う事を確信してしまった俺は更なる悩みが増えた。

 

 

 この世界に魔王である俺が居ればどうなるのか……人々からは人外の妖怪だと思われて恐怖を抱かれてしまうというのは間違いないと予測する。それにこの世界は残酷で過酷だ。きっと公孫賛は俺が来なければ今頃先ほどの男達に辱めを受けていただろう。だからと言って特に憎悪する気持ちにはなれなかった。おそらくだがこのミルドラースの肉体が俺の精神に影響を及ぼしているものだと思う。人間を虫けらのように見下している魔王だから人間に感情移入しないのは無理もないのだが、俺自身の意思もあってか比較的に穏やかな感情だ。プラスとマイナスが合わさってゼロになるような感じだろうなきっと。

 これはまだ何とかなる……しかし問題は俺の強さ=ミルドラースなのか……検証してみたい悩みがある。もし形だけのミルドラースならば大魔王(笑)が成立してしまう……それだけは絶対に嫌だ!大魔王(笑)なんて笑わせない!このミルドラースこそ魔界の大魔王であると世に知らしめるのだ!……魔界なんてこの世界にないだろうけどな。

 

 

 早く強さを知りたい……知りたいが……目の前の公孫賛を放って置くわけにはいかない。はだけた服は戻してくれたが、疲れが残り体が痙攣しているのが見てわかる。男達から逃げのびようと必死だったのだろう……恐怖も感じていただろうな。それでも俺から視線を逸らさずにこちらの様子を窺っている公孫賛は大したものだと思う。それに俺の姿を見てもこう接してくれると安心する。彼女の傍に居れば何かと俺の知り得ないことをもたらしてくれるのでは?そう思い口角が上がる。それでは……行動に移すかな。

 

 

 「公孫賛か……いい名だ」

 

 「あ、ありがとう……ございます……!」

 

 

 よそよそしいな……見た目が人ではないし、少なからず警戒はしているんだと思う。仕方ないと言えば仕方ないな……

 

 

 そんな時に彼女の方から声がかかった。

 

 

 「あ、あの……な、なまえを聞いても……いいですか……?」

 

 

 公孫賛の体が限界だと主張する。手足が震えて瞳も閉じてしまいそうだった。だがそれでも彼女は老人の名前を知りたいと思った……否、知らなければならないと感じた。

 

 

 「私か?私は……」

 

 

 ゆっくりと息を吸って俺は自分の名を伝える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「魔界の王にして王の中の王 ミルドラースとは私のことだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ミ、ミルド……ラース……さま……」

 

 

 そうして彼女は意識を失った……俺はこの時知らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ハイライトの無いうつろな瞳を宿していたことなど知りえることなどなかったんだ……

 

 

質問です。魔王は一匹で十分ですか?

  • もう一匹で十分だ!
  • 最低もう一匹仲間が欲しいぜ!
  • そんなことよりも次話投降しろ!

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